「よう・・・あんたが木山春生だな」
真夜中の駐車場、車に乗り込もうとしていた女性を呼び止めたのは――九条貴利矢。
「そうだ――そういうあなたは確か、九条貴利矢」
「俺の事を知っているのか?」
「無論だとも。ここでは有名な監察医だろうに。何でゴロツキ相手に情報屋なんてものをしているのかは知らないがね」
「TeamNeoは、良いお得意さんでね」と貴利矢が取り出したのは、黄色いゲームの
カセットのような何かだ「あんまり悪く言わないでくれると助かるな」
「・・・で?護衛を引き連れて何の用だ?」
「さすがは腐っても科学者。そういうところはご立派だな」とジンがハルカと同じベルト
――アマゾンズドライバーを装着して現れた。
「あんたが幻想御手に関わっているっていうのはとっくに分かっている――知っている
ことを全部吐け!」
「おや。九条先生ともあろうお方が――関わっている、程度の情報しか調べられないとはな」
「どうでもいいんだよ、そんなことは」
「?」
「あんたが諸悪の根源であろうとなかろうと――あんたが次に目覚めた時はブタ箱だ」
貴利矢がカセット――爆走バイクガシャットを起動した。
[爆走、バイク!!]
「――ほう」
「ゼロ速、変身」
貴利矢は、装着していた少し派手めなベルトにガシャットを装填し、閉じていたレバーを
開いた。
[爆走、独走、激走、暴走、ばーくそーう、バーイク!!]
ベルトから展開されたシールドを通り、貴利矢は黄色い配色のアーマードスーツを
着込んでいた。
「痛い目を見たくなけりゃ、さっさと吐いちまえよ。ゲロと一緒で、すぐ楽になるぜ」
「おい、九条」とジン「相手はただの科学者なんだろう?ゲーマドライバーのテスト相手に
しては弱すぎないか?」
「それ、本気で言ってんのか?」
「あ?」
そのとき、木山がふいにつきだした掌から――炎が放たれた。
「ッ――アマゾン!!」
驚いたが、それも一瞬で、ジンは、ハルカと同じようにベルトのアクセラ―グリップを
捻った。
[αALPHA]
爆発と共に現れたのは、ハルカと似たような魚のような――どれかといえばピラニアに
近い赤い配色の怪物が現れた。
「ほう。ただの護衛ではなく、能力者。それも異形形か。珍しいな」
「おい、九条。話が違うぞ」とジン「奴はただの『大脳生理学の研究者』じゃなかったか?」
「あぁ、そのはずだった――どうやら、幻想御手を利用して、能力を得たらしい」
「なるほど、読めた――幻想御手の脳波の基準はこいつのものか!」
「ほほう、これは面白い。今のでそこまでたどり着けるとは・・・そこの異形能力者。
元は研究者だな?」
「ッ・・・だったら、何ダッテンダヨッ!!!!!」
ジンは、手に生えたカッターで木山を切り裂く――が。
「ッ・・・なんでもありかよ」
木山には傷一つついていなかった――膜のような何かがカッターを防いでいた。
「デュアルスキル、いや、マルチスキルか?」と貴利矢がさらにガシャットを取り出した
「引くぞ、ジン!」
「あぁ」
「させるか」と木山が雷撃を走らせた。
同時に貴利矢もアローのような武器に取り出したガシャットを装填した。
[ギリギリ、クリティカルフィニッシュ!!]
「はァッ!!」
アローから矢の形をしたエネルギー弾が発射され、電撃を相殺し、弾幕を作り出す。
木山の視界が晴れた時には、すでに襲撃者はいなくなっていた。
「というわけで、幻想御手の大本は木山春生――とある実験で教師時代の教え子を
昏睡状態にしてしまった過去を持つ」
「してしまった?」
「木山は実験が非人道的なものであると知らされていなかったのだろう」とジンは、
少し苛立たしげに答えた「実行者は、学園都市の科学者、それもとびきりな鬼畜変態野郎とみて間違いない」
「ま、その実験がどんなものだったかは関係ない」と貴利矢「ようは、木山の今回の悪行は、その昏睡状態の教え子を目覚めさせるために行っている。だが」
「所詮、そいつのやっていることも同じだよ」と涙子「自身の為に他者を犠牲にする・・・悪人だよ。どんな綺麗ごとを並べようと、ね」
「何はともあれ、依頼は達成だ」とジン「アンチスキルにはすでに報告した。あとは
そういう偽善者共の仕事だ」
「・・・いや」と涙子「私たちは私たちで木山を追う」
「!」
「木山は私たちを始末しにかかるかもしれない。自身の目的が露見してしまった。私たちを
警戒はしないものの、邪魔になりそうなものは潰すかもね」
「考え過ぎじゃないか?」
「かもね。でも――やられっぱなしは嫌だ。私の“獣”がそう言っている」
「!・・・くくく」
「ジンさん・・・」
「いやいや、若いっていいね・・・俺の狂気も鈍ったかな?」
「私・・・間違っている?」
「間違っているな」とジン「奴は危険だ。だが、手を出さずとも事件はあっさり解決する。何せ核弾頭を撃ち込まれたって平気な顔出来る能力者だっている。マルチスキルといえど、
本物には敵わないだろうな」
「・・・」
「だが・・・リーダーは、涙子ちゃんだ。そう決めたなら、そうすると良い」
「!」
「僕もそれでいいと思う」とハルカ「僕らを襲う可能性が奴にはある。なら、それは僕の
線引きを超えるかもしれないってことだ・・・アマゾンを名乗るものとして、奴を狩る!」
「面白そうだな」と貴利矢「それじゃあ、俺も力貸すぜ」
「・・・ありがとう」