ハッピーエンド。…そう、ハッピーエンドだ。
闇の帝王は「生き残った男の子」に倒され、多くの犠牲を払いながらも世界は平和に向けて歩みだす。
今、俺はその始まりを見ている。
俺、ルイス・ハワードの半生で語れることがあるとするならば自分が転生者であるということだろう。
だが、この世界では、俺にとってはそれらの知識は大して役に立つものではなかった。
自分が持っているものなんて人とそう変わりはない。そう思いながら生きていた。
11歳の時、ホグワーツから当時住んでいた孤児院に手紙が来て、俺は自分がいるのがハリー・ポッターシリーズの世界だと知った。
熱心な読者だったわけではないが、それでも何回も通して読んだことがあったし、そもそも自分で魔法が使えるのだから嬉しくないはずがない。
先生に連れられて、教科書を買い、道具を買い、杖を手に入れた。
自分が物語の主人公になったかのように思えた、幸福だった、どうしてここにいるのかさえわからないまま、必死で孤児院で生きてきた自分にやっとツキが回ってきたのだと思った。
――でも、あの日、9と4分の3番線で
恵まれない幼少期を過ごし、仲間たちと出会い、巨悪と闘い、そしてそれを乗り越え世界すら救った英雄。
彼を知っていることは苦痛で、舞い上がっていた自分がみじめですらあった。
――彼のような主人公になれないことなど自分が一番わかっていた。
そして始まった魔法学校生活。
魔法が使えるとはいえ別に才能にあふれているわけでもなかった。
全ての授業でそれなり程度でしかなかったが悪くはない成績を収め、学友たちと議論を交わし、魔法の研鑽に励む。いたって普通でしかなかったが、平和な毎日に安堵を覚えなかったといえば嘘になる。
例のあの人が毎年「生き残った男の子」にちょっかいをかけているのは承知していたが、何も知らないふりをして勉学に励んだ。
いずれ来る例のあの人から自分の身を守るため、というのは無論だが諦めの方が大きかった。
結局、いまさらになってそれを後悔している。
だってそうだろう?俺みたいなモブが、これから先彼らにかかわることなんてない。
俺の物語はここで終わり。あるいは始まってすらいなかった。
いくらでも近づけた、望めば、ともに戦うことすらできたかもしれない。
けど、俺は選ばなかった。利口なふりをしてずっと逃げた。
――本当は憧れていたのに、望んでいたのに。
――なぜか視界がゆがんだ。
大丈夫か、と声を掛けられる。
酷く反響しているその声に答えようと顔を上げて、
見慣れた孤児院の椅子、机、やたらと低い視界、記憶にあるより少しだけ若い目の前の人物。
大丈夫ですか、ともう一度声を掛けられる。
ありえない光景に視界がぐらぐらと揺れた。頭の芯がしびれるような感覚。
嘘だろ、と言葉が漏れる。
「ええ、ミスターハワード。あなたが魔法を信じられないというのはわかります。今までそういった子は数多くいました、しかし―」
聞き覚えのある口調、呼び方、声。すべてが記憶の中のミネルバ・マクゴナガルと一致する。
その生真面目な話ぶりにどうやら冗談でも何でもないらしい、と認めるしかなかった。
しかしその困惑の中に