ぐらんぶる〜とあるカップルとPaBの物語〜 作:あーくこさいん
駅に着いた俺達は、歩いて下宿先へと向かった。
仁美
「そういえば…下宿先のダイビングショップには誰が住んでいるんだっけ?」
志郎
「親父から聞いたんだが店長と姉妹、そしてもう1人下宿する奴が居る。そいつの名は分からん。」
仁美
「ふ〜ん…楽しみだね、ダイビング。」
志郎
「そうだな…仁美は昔からダイビングに憧れているんだったな。」
仁美
「うん、だって幻想的じゃない海の中の景色って。」
志郎
「まぁな、正直俺も楽しみだ。」
そんな会話をしながら歩いて行く。
仁美
「着いた〜♪」
しばらく歩いた後、目的地に着いた。
着いた頃には辺りは暗くなっており、店には灯りが付いていた。
それに中から声が聞こえる。
志郎
「…なんか騒がしくないか?」
仁美
「確かに……とりあえず中に入ろっか。」
そう言って中に入ろうとしたその時ーーー
???
「あの、お客様ですか?今日はもう閉店なんです……」
声がしたので振り向くと、何やら茶髪のショートヘアの女性がいた。
背丈は仁美と同じくらいだ。
仁美
「あっ、いやお客さんじゃなくて私達は今日からここに住む事になった川西仁美と……」
志郎
「同じく天風志郎です。」
???
「あっ、貴方達が川西さんと天風さん?」
仁美
「そうです!」
千紗
「えっと、私はここの店の店長の娘、古手川千紗です!伊豆大の新1年です!」
仁美
「えっ⁉︎私達も新1年生なの!同級生だね!」
志郎
「そういう事になるな…タメ語でいいか?」
千紗
「いいよ。よ、よろしく!」
仁美
「それと千紗って呼んでいい?私の事は仁美、彼の事は志郎でいいからさ!」
千紗
「い、いいよ!」
千紗という子はちょっと緊張しているが、なんだかクールな印象を受けた。
志郎
「ところで、学部は何処だ?」
千紗
「工学部機械工学科だよ。」
仁美
「えっ、そうなの⁉︎私や志郎くんと一緒だ!」
千紗
「本当⁉︎す、凄い偶然だね!」
仁美
「ね〜♪」
工学部機械工学科では女子は少ない為、仁美は貴重な女友達を得た事に彼女はとても喜んでいた。
志郎
「自己紹介も終わった事だし、中に入るか。」
仁美
「そうだね。」
そう言うと俺達3人は店の扉を開ける。
この時の俺は表情に出していないが内心ワクワクしていた。
今日から始まる大学生活で俺達はどんな出会いをするのだろうと思っていた。
そんな気持ちを胸に店の扉を開けるとーーーーーー
???
「だっしゃーーっ、ナンボのもんじゃい‼︎」
パンツ一丁の青年と全裸の男達が酒盛りしていた。
状況から察するに野球拳だろう。
???
「ヒューッ!やるじゃねえか伊織!」
???
「三人抜きとは恐れ入ったぜ!」
周りの男達がその青年に向けて喝采を浴びせている。
俺達はこの状況を飲み込めずにいた。
志郎
「(……うーん、とりあえずツッコミたい事は山ほどあるが一言でまとめるなら)違う‼︎俺の想像したのとこの光景は180度真逆なんだよ‼︎」
俺は崩れ落ちた。
まさかダイビングショップに入って男達が野球拳してるって誰が想像出来ようか………
仁美
「すっ、凄いわね………」
千紗
「……………」
仁美が若干引きながらも驚き、千紗に至っては何やらゴミを見る目をする中、何より俺が解せないのはーーー
志郎
「それより何で
俺はそう言うとカウンターにいる男の人に尋ねた。
志郎
「すみません、登志夫さん。もう1人下宿してくるって人は……」
登志夫
「ああ、
俺は頭を抱えた。
よりによって
あの男…北原伊織との出会いは伊豆大学の入試の時だ。
あの時俺は午前の試験を終え、仁美がこの入試の為に作ってくれた弁当を食べていると………
伊織
「なぁお前、それって誰が作った弁当なんだ?」
志郎
「えっと、誰だ?」
伊織
「あ、いきなり声かけて悪いな。俺は北原伊織だ。とりあえずよろしくな!」
志郎
「よろしく、俺は天風志郎だ。」
伊織
「それでその弁当は?」
志郎
「ああ、この日の為に彼女が作ってくれたんだ。」
伊織
「……彼女?」
志郎
「彼女。」
伊織
「Really?」
志郎
「Really」
しばらく間が置かれるとーーー
伊織
「HAHAHAHA☆ 死ね‼︎帰れ‼︎それともお前をカンニングした事にして落としてやろうか?そうすれば合格者が減って俺に枠が回ってくるからな‼︎」
弁当が彼女のものだと分かった途端、初対面でいきなり罵倒してきた。
志郎
「ふざけんな‼︎そんなんだから彼女が出来ないんだよ‼︎」
伊織
「なんだと⁉︎ぶち殺すぞ‼︎」
言い争いしていたら監督官に注意されたので一旦休戦したが、入試が終わった時に襲いかかってきた為、仁美を連れて逃げた。
合格発表の時に伊織も合格している事が分かった為、アイツとは関わらないと決めたが、下宿先に一緒に住む事になってしまった。
新生活がいきなり不安しかないと思ったら、千紗と伊織の目が合った。
伊織
「………(や、ヤベェ)」
千紗
「………(この虫けら)」
千紗の目は完全にゴミを見る目をしている。
伊織
「よ、よう久しぶりだな千紗。俺のこと覚えているか?これから同じ学校の仲間になるわけだし仲良くー」
伊織は千紗の肩に手を置くが跳ねられる。
千紗
「お姉ちゃんこれもう捨てないとダメみたい。」
伊織
「汚れてないよ⁉︎お前が思う程俺はまだ汚れてないよ⁉︎」
千紗
「伊織がこんな頭の悪い人間になっているとは思わなかった。」
志郎
(…完全にバイ菌か何かの扱いだな……)
伊織
「ち、違うんだ!俺のこの姿は本意ではない!」
千紗
「じゃ、さよならゴミク…虫けら。」
伊織
「話を、話を聞いてくれ!」
仁美
「……ドンマイ。」
完全に伊織を軽蔑している。
伊織
「うああああ…、なんでこんなことに………」
伊織は完全に落ち込んでいる。
俺達は早急に部屋に入ってこの飲み会を回避する様試みた。
仁美
「登志夫さん、私達の部屋は?」
登志夫
「ああ、君達の部屋は三階にあるよ。流石に部屋は別々だけど。」
志郎
「そうですか…仁美、俺達はさっさと部屋にー「待ちたまえ志郎君‼︎」ガシッ‼︎ー チッ…」
退出を試みるが、伊織に阻止される。
明らかにあの時の事根に持っているな。
志郎
「おう久しぶりだな、北原…」
伊織
「久しぶりだな‼︎そう言うお前は彼女と同棲とはいいご身分じゃねぇか…!」
志郎
「お前もな、親元を離れて海の見える部屋に引っ越し。しかも同じ家には美人と一緒に住むとは、誰もが羨むシチュエーションだな。」
俺はさっきの状況を踏まえて皮肉混じりに言う。
伊織
「たった今汚物のように扱われたばかりだけどな……だがまだ俺には奈々華さんがいる。それだけで俺は満足だがな……!」
???
「……ああ、それは諦めろ伊織。彼女はお前になびかない。」
伊織
「む…どういう意味ですか?」
???
「いやな……奈々華さんは隠しているつもりだろうし、実際当事者にだけはバレちゃいないんだがー」
長髪の女性…奈々華さんが先程千紗が脱いだ服を持ってキョロキョロしている。
そしてその服に顔を押し付けている。
奈々華
「ぶはああああ❤️」
???
「あの人、重度のシスコンなんだ。」
伊織
「この10年であの人に何があったんだ⁉︎あんまりだ…今日会った人の中で唯一の癒しが…」
伊織が崩れ落ちる。
仁美
「あ〜…でも分かるな〜〜奈々華さんの気持ちも。」
志郎
「ん?どういうことだ?」
仁美
「だって、私も志郎君の身体のにおいを嗅ぐと幸せな気持ちになるんだよ。特に……志郎君のイチモツとか❤️」
仁美に発言に俺はずっこけそうになり、なんとか踏み留まってやれやれ…と思っているとーーー
伊織
「キサマヲコロス」
伊織が襲い掛かってきた為、全力で取っ組み合いをする。
その間に仁美は先輩方に挨拶していた。
仁美
「先輩、初めまして。今日からここに住み、伊豆大学工学部機械工学科に入学する川西仁美です。で、向こうにいるのが同じく機械工学科に入学する天風志郎君です。」
時田
「ああ、俺の名は
寿
「俺は
志郎
「天風志郎…です。よろしく……お願いします……!」ゼーゼー
俺は取っ組み合いになんとか勝ち、息切れしながら自己紹介をした。
時田
「ところで2人とも、サークルは決めてあるか?」
仁美
「はい!ダイビングに興味があるので『PaB』にしたいと思います!」
志郎
「俺も一応、ここにします。ダイビングというのも悪くはないかなって…」
寿
「そうか…なら俺達の後輩か〜」
と嬉しそうに話すが表情が段々歪んでいく。
寿
「なら話は早い‼︎」
時田
「そうだな‼︎お前ら、新入部員の歓迎をするぞ‼︎もっと酒を持ってこい‼︎」
先輩達
「おっしゃーーー‼︎」
寿
「志郎、おまえも飲め‼︎」
志郎
「…因みに拒否権というものは……」
時田&寿
「「…ない‼︎」」
デスヨネー
観念した俺はジョッキに注がれたビールを飲み干す。
伊織
「中々の飲みっぷりだな、志郎!」
志郎
「なんか上機嫌だな。あれだけの事があったのに。」
伊織
「憧れの大学生になったんだ!俺は絶対にドラマの様なキャンパスライフを…」
すると志郎は考え、
志郎
「140:3これ何だと思う?」
伊織
「なんだ?」
志郎
「絶望する前に教えておく、男女比だ。」
伊織
「………女:男だろ?」
志郎
「夢を壊す様で悪いが逆だ。」
突きつけられた現実に伊織は固まる。
すると小声で何かを言うとーーー
伊織
「やけ酒じゃーぁ、ゴラァ‼︎」
先輩達
「よっしゃー‼︎」
伊織達は飲み始めた。
その間に俺は仁美の所へ行きーーー
志郎
「よし、今のうちに部屋に退避するぞ。」ヒソヒソ
仁美
「りょーかい。」ヒソヒソ
その隙に俺達は部屋に退避し荷解きは明日にしようと決め、明日のガイダンスに必要な物だけを用意して俺達は寝た。
それからしばらくしてーーー
時田
「さて片付けも終わったし次はどこで飲む?」
寿
「そうだな…」
東
「俺は帰るぞ、明日の朝バイト早いし。」
横手
「俺も終電あるから。」
先輩達はそれぞれの事情により帰っていく。
伊織
「じゃ、じゃあ俺も」
寿
「おい待て伊織。お前は終電関係ないだろう。」
時田
「お前の家はGrand Blueだもんなぁ。」
伊織
「いやいやいや!俺も明日は朝からガイダンスですから。朝9時に間に合う様にしないと……ん?志郎の奴いねぇし。」
時田
「そういえば。」
寿
「あ。本当だ気付かなかったな。」
伊織
「あの野郎、逃げやがったな……」
時田
「まぁ仕方ない。なに、任せておけ。」
寿
「絶対に遅刻しない様にしてやるから。」
伊織
「は?はあ……」
〜翌日〜
俺は仁美と千紗と一緒に登校していた。
仁美
「そういえば伊織君と先輩方はどうしたの?」
志郎
「店の中には居なかったし……伊織の奴間に合うのか?」
3人で談笑しながら登校し、大学に着くと何やら人だかりが出来ていた。
店の中で見つかった
志郎
「まさか……仁美、千紗、先に行っててくれ。」
そう言うと俺は人だかりの中をかき分けて進む。
そこにはパン一の伊織と全裸の先輩方2人が講堂前で寝ていた。
志郎
(やっぱりこうなったか………)
そう思っていると伊織が目を覚ます。
伊織
「う…ん、なんだ夢か…痛って。あんな飲み会付き合ったせいだ……えっと、今何時だ……?」
今現在の時刻…8時54分
伊織
「げぇっ!遅刻寸前じゃんか!何が『絶対に遅刻しない』だよ……」
そう言いながら周りを見渡すと伊織達を核に人だかりが出来ており、撮影までされていた。
伊織
「………」
後ろを見ると講堂が見える。
寿
「な?これなら絶対に遅刻しないだろ?」
伊織
「アンタはバカかああーーっ‼︎」
時田
「何故だ?むしろ柔軟な発想だろう?」
伊織
「どこかですか!よりにもよって初日にこんな……」
寿
「伊織、そんな事言ってると遅刻するぞ?」
時田
「俺達の心遣いを無駄にするつもりか?」
伊織
「ああああ!チクショー‼︎この恨み忘れませんからね‼︎」
と伊織は走り去る。
志郎
「………ドンマイ。」
寿
「おう、志郎、おはようさん。」
時田
「おう、志郎。」
志郎
「おはようございます……一応聞きますが、いつまで飲んでいたんですか?」
時田&寿
「寝る直前まで。詳しい事なんぞ分からん!」
志郎
「デスヨネー……あ、これ先輩方の服です。」
時田
「取りに行ってくれたのか?」
志郎
「店の中に鍵やら財布やら置きっぱなしでしたよ。」
寿
「気が利くな!ありがとよ。」
志郎
「それじゃあ自分はガイダンスへ。」
寿
「行ってらっしゃーい。」
時田
「後で新入生歓迎コンパがあるから来いよ。」
志郎
「分かりました。」
そう言ってその場を後にする。
そして講堂ではーーー
モブその1
「おい、アイツ凄い猛者らしいぞ…」
モブその2
「ああ、初日の朝から講堂前で酒盛りしてたらしいな…」
モブその3
「すげぇな……」
モブその4
「酒くせぇ……」
伊織は完全に他の新入生から悪い意味で注目の的になった。
伊織
(シバく…あの先輩共絶対にシバき倒す‼︎)
ちょうど志郎もガイダンス会場に入る。
仁美と千紗は隣同士で座っていた。
志郎
「おーい仁美、千紗。この後のPaBの歓迎コンパ行くのか?」
仁美
「私は行くわ。」
千紗
「あまり乗り気じゃないけど、お父さんも行けって言うと思うから…志郎君は?」
志郎
「俺も顔を出すつもりだ。昨日の様に逃げられると思うし。…問題はどうやってバカ飲みを回避するかだが……」
千紗
「伊織を身代わりにするのは?」
志郎
「いや、それは昨日使った。」
仁美
「…えっと千紗ちゃん?仮にもいとこだよね……?」
千紗
「仮だからいい……」
千紗の思いがけない返答に仁美は苦笑する。
俺は伊織の隣に座り、ガイダンスが始まる。
俺の大学生活の1ページは先輩達や
因みにガイダンス担当の教員は伊織のパン一姿に何も言うこと無くスルーした。
その光景にちょっと驚いた俺達であった………
次回、PaBに生粋のオタクが舞い降りる。(というか伊織に嵌められて)
乞うご期待ください。