続きです
「トウマ、新しい契約に行ってらっしゃい」
壮絶な鬼ごっこを乗り越えた上条に新たな
ちなみに昨日に訪れた契約者の人からは契約は取れなかったが「話ができて良かった」との感想があって、悪魔としては例外みたいだ。
「とりあえず部長に言われて来てみたものの……」
自転車を民家の中にまで入れさせてもらう。
学園からの備品なの貧乏性が板に付いた上条には無くしたくない一心でいた。
「すいませーん」
インターホンを何度も鳴らすものの、応答する声はない。
リアスから渡された住所を間違えたかとも思ったが、何度見比べても住所に間違いはなかった。
「居留守でも使われてるのか?」
上条は徐にドアノブを捻ってみた。
バキンッ!! とドアノブが一回転して壊れてしまった。
「あ、あ……れ?」
全身の血の気が引いていくのが分かる。
「これは……間違いなく」
弁償をするはめになる。
バレぬ内に逃げ出してしまいそうになった……が、
「あの、どなたかいらしたのでしょうか?」
家の方から声を掛けながら今更顔を出す住人。
この状況は非常にまずい。
ドアノブの破壊も向こう側が意図したテロ行為なのかもしれない。
貧乏人から弁償代と称して金を巻き上げる手筈なのかもしれない。
「すいませんでした!!」
とにかく日本の固有文化。DOGEZAを披露する。
人間、誠意を見せるのが結局一番だ。
「いや、故意じゃないんです。ちょっとドアノブ回したら偶然にも壊れてしまいやして……」
「上条……さん?」
まさか名前まで知られてしまったのかと上条は更なるピンチが訪れる。
一体何処の手の者がこの不幸な体質の少年の名前を好き好んで覚えているのか?
「あの上条さん。私です。アーシアです」
「はい!! アーシアさんすいません!! でも私が悪いのではなく、この不幸を呼び込む神様もビックリ仕様な私めの不幸体質が原因でございまして!! 決してドアノブを壊したのは私だけの責任では――」
「顔を上げてください」
上条は頬を手で添えられながら優しく頭を上に向けさせられた。
そこには金髪シスターのアーシア・アルジェントさんが頬を膨らませているではあーりませんか。
「ア、アーシア? 何で?」
上条の顔を顔文字で表現するなら『( ・◇・)?』である。
こんな一般人が住むような場所に似つかわしくない格好をしたアーシアが出てくるだなんて、上条には不思議で仕方無い。
「実は……私が連れてこられた教会の上司の人に連れられて」
「上司なんて居るのか」
神様を信じる業界から聞きたくなかった事柄である。
「ドアノブもその上司の人が『こ~んなの、斬っちゃいますよ~』と言って剣で斬ったのを私が大慌てで直したばかりだったんです」
「良かった……上条さんの吹けば飛ぶお財布が文字通り無くならなくて……」
随分とバイオレンスな上司だが、そのおかげで上条の冤罪は証明できた。
しかし、内容からアーシアの気苦労も窺えるもので――
「ちょっと待てアーシア。お前今“上司が剣でドアノブを斬った”とか言ったよな?」
「は、はい」
初めて見るだろう上条の真剣な顔付きに圧されながらもアーシアは“肯定で以て返した。”
「――っ!!」
瞬間、鳥肌を立たせながら家の中に突入した。
血相を変えて走り出す上条にアーシアは驚きながらも後を追い掛けた。
(何処だ!?)
ドアノブを“切り裂く”だなんてやり方で強引に家に土足で踏み居る奴がまともな訳はない。
今ここには“危険な香りを漂わせた奴が居る。”
玄関を入って、長く続く廊下をゆっくりと歩いていく。
やがて、リビングらしき場所のガラス張りの扉から照明が漏れていた。
「……」
手汗で湿った手のひらでリビングの扉を開いた。
ゆっくりでもなく、勢いを付けるでもなく……普通のペースでリビングに入る。
「あ、れ~? お客さんですかね~?」
白い髪の、年頃は上条とそう変わらない、剣を肩に担いでおり、神父の格好をした少年が狂気を宿した瞳で
いや、睨んでいるのではなくて“見ているのだ。”
上条当麻という少年を見極めているようだ。
「た、助け……て、くれ」
少年神父の下から今にも消え入りそうな声が上条の耳に届いた。
その正体を知った時、上条は戦慄した。
身体を右肩からばっさりと縦に袈裟斬りにされた男性が仰向けに、しかも傷口を目の前の少年に踏まれて倒れている。
「お前!! その人をどうするつもりだ?」
「あん? こいつの知り合いじゃないんだ」
まあ、いいや――目の前の少年神父は世間話でもするかのような気安さで上条に答えてやった。
「このクソ野郎は“悪魔なんて呼ばれる”クソみたいな存在を呼び出そうとしていた」
少年の言葉は淡々としていた。違うか、眼は本当に“愉悦に浸ってるように見えた。”
その時、上条の疑問は点と線で結ばれた。
「まさか『悪魔を呼び出した』だなんて理由で家に押し入って、その人を斬ったのか?」
「その通りその通り!! 大正解!!」
何のけなしに伝えてきた内容に拍手喝采でもあった。
「て、めえ……」
上条の頭の中が沸騰していく。
右手を強く握り込む。
「それにしてもよ~。お前はこのクソに何か用でもあって来たのか?」
「そいつに呼ばれた……悪魔だよ」
上条は左腕に『
「悪魔……?」
少年神父は上条の言った事を怪訝に思っていた。
「そ、そんな……上条さんが悪魔?」
遅れて来たアーシアが青ざめた表情で上条を見ていた。
教会と悪魔が敵対してるみたいな話を上条は思い出す。
「すまんアーシア。言い出せなくて」
「上条さ……っ!?」
上条の名前を言い切る前にアーシアは青かった筈の顔を更にひきつらせた。
彼女の視線の先、そこには血塗れとなって倒れた男性とそれを踏みつけて剣を肩に担ぐ上司の姿があっからだ。
「フリード様……これは!?」
あの少年神父の名はフリードらしい。
今更手に入った情報をインプットしながら上条は油断なく両者を窺う。
「ああ、このクソは悪魔を召喚したからね~。これは神の裁き――つまりは、お仕置きだよ。お・し・お・き」
フリードに浮かぶは「愉悦」の2文字。
身の毛も弥立つフリードの姿に上条はこれまで相対してきた様々な敵を思い浮かべる。
彼は何か目的があってやっているのではない。
ただ、“人を傷付ける事に快楽を抱いているのだ。”
破壊を楽しむ不良神父――上条とは水と油のステイルだってこんな事はしやしない。
「今回は悪魔を呼んだ所を襲撃したから、こいつ以外の事にはノータッチだよ~。いや~、俺ってば凄い物に優しい!! まさにエクソシストの鑑だね~」
自画自賛も甚だしい。
それにしても気になる単語がフリードから出された。
エクソシスト――マンガや映画何かでもよく扱われる悪魔を祓う存在。祓魔師とも呼ばれる連中だ。
「ふざけんな!! 今すぐその人を解放しろ!!」
叫び、狂喜を振り撒く似非神父を睨み付ける。
フリードも上条の怒号に表情を殺した。
「気配は感じないが……確かお前も悪魔だったよな? 僕ちゃんの仕事は悪魔の殲滅ですから……殺しちゃいますよ」
担いでいた剣を口元に持ってきながら、面を舌で舐める。
目元は完全に悦楽に浸っており、神父とは思えない。
「んじゃ、ま……」
ようやく男性が解放されるが、早く病院で適切な措置を施さなければならない。
(こんな奴に構ってる余裕はない)
上条は身を屈め、戦闘体勢に入る。
幽気のように歩み寄るフリードから目を放さず、後ろに控えるアーシアに向けて声を掛けた。
「アーシア、下がっててくれ。それであの馬鹿上司は俺が引き付けるから、お前はあの男の人を頼む」
「上条さ――」
またも、アーシアは上条の名前を言い切る事が出来なかった。
直後、フリードが上条との間合いを詰めていたからだ。
『Boost!!』
厳格な音声が『
「っ!?」
強化された身体能力とこれまで培ってきた上条の戦闘の勘が働く。
半身を左にずらし、その勢いに任せて地を蹴った。
空振りに終わったフリードの剣は家のフローリングを傷付ける。
「やるじゃ~ないですかーっ!!」
フリードの反応速度も異常だった。
上条が咄嗟の判断で跳んだ方向に意図も簡単に追い付いた。
「くっ!!」
苦悶の表情を浮かべながら上条は何とか後退して距離を取ろうとする。
「無駄だよ~っ!!」
フリードの剣が再び上条に牙を剥いた。
縦から振り下ろされる剣。明らかに上条に直撃のコースだった。
両者を阻むように上条がドアを閉めなければ。
「何ですと!?」
フリードの一閃は上条が閉めたドアに突き刺さる事で制止をした。
「うらぁっ!!」
そこへ空かさず、上条の強化された前蹴りがドアに命中した。
勢いに負けたフリードは背中を強打し、ズルズルと腰を床に下ろした。
「アーシア!!」
「はい!!」
上条が名を呼んだだけで、自分が何をすべきなのかを悟る。
上条の一撃を諸に受けたフリードを無視し、アーシアは男性へと駆け寄る。
「しっかりしてください」
きっと男性にはアーシアの言葉は異国のものとして耳に届いていると思う。
(それに……)
彼女の手のひらから発せられる優しい光――それが彼女が敵ではないと伝えている。
忌み嫌われたと言われるその力を、アーシアは惜し気もなく“誰かを助ける為に”使っている。
その姿は、彼のよく知る……今はお隣で暮らしているシスターにそっくりだ。
「あ~、悪魔君……痛いじゃないのさ」
ドアを蹴って、剣を肩に担ぎながらフリードが立ち上がる。
しかも立ち上がる際、奇妙な笑い声まで上げるのだ。
恐怖を通り越し、違和感を抱く。
上条は何事かと訝しい顔付きで見る。随分とタフな奴だと自分を棚上げする。
「怒っちゃったよ~。もう本気で斬り殺すかな~」
「やれるもんならやってみろよ」
フリードの言葉を受けながら、尚も上条の心は揺れない。
アーシアと傷付いた男性を守るようにフリードとの直線上に立つ。
(けど、どうする?)
実際、上条は今後の方策を迷っていた。
アーシアを守りながら戦うだなんて男としては素晴らしいの一言に尽きる。
しかし、上条の戦闘スタイルはあくまで肉弾戦だ。
右手に宿る力は剣を相手に力を発揮できない。左腕に装着された武器も完全に近接戦闘を主体とする。
しかも、左腕に巻き付いた籠手と剣ではリーチがありすぎる。
(懐に飛び込むしかない)
そこで必殺の一撃をお見舞いして沈める。
『Boost!!』
籠手から2度目の音声が流れる。
直後、上条は床を蹴って駆け出した。フローリングに穴が空いたらどうしよう……と似つかわしくない心配もしていたりした。
「大人しく、斬られろ!!」
振りかぶった剣が振り下ろされるタイミングで上条は身体を左へ動かした。
フリードの右横を取り、両の拳を握り締め――
「甘めぇっての!! あ~くまく~ん!! 速度と光を入り混ぜた剣を喰らっちゃいなさ~い!!」
狂った笑い声と共にフリードが力任せに剣を上条の胴へめがけて振るってきた。
「上条さん!! それに斬られたら悪魔のあなたでは死んじゃいます!!」
治療の事を頭から抜け落ちたとばかりにアーシアが腹の底から叫んだ。
危険なのだ――アーシアに言われてから上条は“止まらなかった。”
彼はきっと、この場の誰もが予想できない事を考えていた。
「貰った!!」
その一言に凝縮された意味は何だったのか……1つ思い付くのは“チャンスだと”彼が思い込んだ事だ。
上条の右手が剣の軌道に合わせられる。
これまで電磁砲だの、音速だのを伊達に相手取ってきた訳じゃない。
こういった攻撃の予測への直感力は上がってるのだ。上条の右手が剣に触れた瞬間だった。
パキンッ!! という甲高い音に続いて剣の速度が0となったのは。
「なっ……はっ!?」
フリードの口から間抜けな声が出た。
この瞬間、上条は『
そして、その作用で上条の身体能力は元の数値へと戻る。
「おっ、」
しかし、上条は果敢にも一歩を踏み込んだ。
ぐっと強く握り締めた拳がフリードの頬を捉えた。
「らあっ!!」
振り抜かれた拳に耐えられず、フリードの身体が真後ろに飛んでいく。
フローリングの床を滑っていき、フリードは倒れ伏した。
「アーシア!! そっちの方は?」
急いで上条はアーシアと男性の元へ駆け寄る。
「とりあえず血は止まりました。傷口も塞がっています」
「そっか。良かった」
上条は心の底から安堵した。
ただ単に巻き込まれただけの赤の他人の生命がこの場で断たれてしまうだなんてあってはならない。
「とにかく病院に連れていこう」
上条は男性をおぶさる。
アーシアの治療の力で一命を取り止めたと言っても、念のために病院に行った方が良い。
「私も行きます」
「あいつは……良いのか?」
アーシアが来てくれるのは心強いが、フリードを放置したままで良いのかという疑問は残る。
「あの人は人を傷つけすぎました。私はもう……付いていけません」
はっきりとした拒絶の色が汲み取れた。
それを聞き、上条も「そっか」と答えた。
どのみち、フリードに反抗する態度を見せたアーシアには彼伝で良からぬ噂が立つやも知れぬ。
「よし、行こう」
アーシアの手を取り、男性を救うべく上条当麻は動き出す。
いかがでしたでしょうか?
本編とは違った筋書きになりましたが、皆さんが満足してくれたのか心配です。
やっぱ身体能力が上がると上条さんの戦闘が捗る。
まさしく鬼に金棒だね~
次回の更新予定は再来週の木曜日です。次は間に合うよう頑張ります