でもやっぱり少し短かったり。
上条は自転車を走らせていた。
目的地は教会――確証はないが、アーシアはそこに連れていかれたのだと思う。
そう推論付けた理由は似非少年神父とアーシアというシスターの組み合わせ。
アーシアはこの街に着いた時には教会を探していた。
無事に送り届けた後にフリードと来たという事は……即ち、教会が絡んでいる。
そして関係性皆無とも思えるレイナーレではあるが、偶然にもアーシアと一緒に居る所に出会したとは思えない。
フリードとアーシアの両方を監視していたからとしか考えられない。
状況証拠ばかりで、物的な証拠はないが……上条には他の手懸かりもないので教会に急ぐ。
その矢先だった。
上条の携帯が震えたのは。
「誰だ?」
上条は自転車を漕ぎ続けながら携帯を取り出した。
電話相手はリアスだった――。
「リアス部長?」
上条は漕ぐのを止めて、通話ボタンを押した。
「どうしました? リアス部長?」
『トウマの依頼者の家に居るのだけれどよ。そっちは今何処に居るの?』
「教会」
部長で、年上である事など上条の頭の中からすっ飛んでいた。
向こうから教会へ向かう理由を問われたので包み隠さずに答えた。
出会ったばかりの友を拐われ、今まさに殺されるのを黙っておけない。
「だから俺、アーシアを助けに――」
『駄目よ』
しかし、リアスからの通達は「却下」だった。
『彼女を助ける事は構わないわ。でも、教会を敵に回して……堕天使だけじゃない、天使の側と問題になるかもしれないわ』
だからこそ、手を出せない――リアスは電話口の向こうで歯噛みしてるようだった。
上条もリアスの気持ちを汲んで黙り込んでしまう。
以前、上条当麻はたった1人の少女を救う為に全世界を敵に回した。
その代償に彼に牙を剥ける
その時は上条1人の問題でもあった――けれど、今回は如何に上条が大声で叫ぼうとも「悪魔の仕業」と「リアスの部下の仕業」という事実が消えなくなる。
だから……突っ走る事は上条には出来ないのだ。
「なら、俺を眷属から外す……というのは?」
一応、リアスからの説明は受けていた。
はぐれ悪魔――言い換えるなら眷属を外された放浪の身となった悪魔の俗称。
そうすれば上条はリアスとは無関係となり、迷惑を被る悪魔側も上条の仕業だと仕立ててしまえば良い。
悪魔サイドには痛手となる部分もあろう。けれど、それを差し引いてでも上条はアーシアを助けたいのだ。
『そんなの、私は許さないわ』
当然と言うべきか……上条の提案はリアスの鶴の一声で掻き消された。
『ねえトウマ。チェスって分かる?』
「えと、ポーンとかナイト、ルークにビショップ、それからキングとクイーンがあるという事なら」
唐突に振られた話題に何の意味があるのかを上条はいまいち把握できずにいた。
今の状況とはうって換わった内容過ぎて。
『それが分かってるなら話が早いわ。悪魔の持つ「
ポーン――それは『兵士』の意味を持つ
しかし、確か何か特殊な能力があったのではないかと上条はいつだったかに読んだ漫画の知識から絞り出そうとする。
『ポーンには敵陣に入った時に“好きな駒に変化できる能力があるの。”それは「
プロモーションと言ったか。
上条はなけなしの記憶のタンスからその単語を引き出した。
つまり、今の話から要約すると――
『ごめんなさい。私はこれから用事があって朱乃と出掛けなければならないの。祐斗と小猫があなたを探しに出掛けたわ。寄り道しても良いけど、ちゃんと帰りなさい』
年上のお姉さんのように優しく諭した後、通話を切られた。
「ありがとうリアス部長」
今更、わざわざ『
通話間際に「木場と小猫が探している」と「寄り道しても良いけど」と言われた。。
まるで、アーシアを助けに行くお膳立てをしてくれているようだ。
きっと、彼女なりの“何か”があったのだ。
それは上条には分からない。
眷族であっても、出会って間もない上条に行動させてくれるのかという疑念は付いていた。
それでも――自分の我が儘の為に、それとは気付かせないよう許可をくれたリアスに礼を再度述べる。
「さあ!! 行くか!!」
上条はあらんかぎりの力で自転車を漕ぎ始める。
悪魔や天使、堕天使の関係など悪魔歴2日の上条当麻に分かる筈もない。
それでも上条の目の前で今まさに助けなければ後悔する相手が敵の手中に居る。
知らず、上条の拳は強く握り締める。
内から沸き出す信念を胸に秘めて――。
如何でしたでしょうか?
色々と端折っていたので今回で今まで上条に説明をしていなかった悪魔の駒の説明を。
次回はなるべく早くお届けできるように頑張ります。
一応、再来週の日曜日の予定です。