新約? ハイスクールD×D   作:ゼガちゃん

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これを完成させるのに遅くまで起きててもうた……続きでさ!!


幻想殺しの少年

 先制攻撃を仕掛けたのはレイナーレだ。

 上条1人に的を絞って、白い光のレーザーが飛んできた。

 学園都市第三位が放つ『超電磁砲(レールガン)』と酷似していた。

 

 上条は恐れず、右手を前に翳す。

 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を宿した右手を基点とし、白い光のレーザーは左右に割れた。

 左右に別れたレーザーはベンチを跡形もなく吹き飛ばし、教会の壁の一部に大穴を作成した。

 

「っ!?」

 

 あまりの威力に背筋の凍る思いがした。

 今、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は機能はした。

 だけども、消し去るまでに“多少なりとも時間を有した。”

 

 一度だけでは消しきれないという揺るぎない事実。

 上条は知らず、血の気が引いていった。

 これをまともに喰らえば一溜まりもない。

 せめて自分の身体を一度は強化しなければ粉々に吹き飛んでもおかしくはない。

 

「上条さん!!」

 

「アーシア。お前は外で待っててくれ!!」

 

 アーシアを庇いながら戦う事が無理なのは承知していた。

 だから、彼女へこの場を離れるように告げる。

 アーシアの方も上条の意思を汲み取り、一目散に建物の外へ駆ける。

 悔しいが自分では上条の手助けは難しい。

 

「させないわ!!」

 

 レイナーレがそれを許さない。

 白い光が槍を象る。

 翼を用いて上空に浮上し、光を放り投げようとして――

 

「させるか!!」

 

 翼で浮き上がった瞬間に上条に足を掴まれた。

 『神器(セイクリッド・ギア)』で身体能力を引き上げ、ここまで一気に加速してきたのだろう。

 その隙を突かれ、アーシアに外まで退避を許してしまった。

 

「ええいっ!!」

 

 上条の身体を掴み、翼を羽ばたかせて上空まで持ち上げた。

 空を飛ばれた事に一瞬の驚きを見せた。

 そこを突き、足を動かしながら上条の頭を押した。

 

「うおっ!?」

 

 不意を突かれた行動に上条は短い悲鳴と共に落下した。

 固いコンクリートに背中から打ち付けられる。

 小さな痛みが波となり、全身に広がっていく。

 

「がっ、あっ……」

 

 呼吸が一瞬止まりそうになったが、レイナーレが光の槍を再度造り出したのを見て別の意味で呼吸どころか心拍も止まりそうになった。

 

「くっ!!」

 

 頭で考えるより、身体が勝手に動いていた。

 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が先程に消しきれなかった攻撃だ。

 無意識に逃げの選択をするのは生物としての本能だ。

 

 起き上がると即座にレイナーレに背中を向けて講堂の入り口まで全速力で走る。

 

「無駄よ」

 

 レイナーレはもう1つ。同じものを造って2つ同時に投擲した。

 

「くそっ!!」

 

 短い舌打ちと共に上条は身体を旋回させる。

 2本は隣り合わせで投げられていた。

 上条は自身から見て左側へ有らん限りの力を振り絞って跳躍した。

 完全に条件反射の行動。

 しかしながら、それは“意図された事だ。”

 

 2本の内の1本は完璧に回避した。

 そして、残るは真正面に迫る1本のみ。

 右手を突き出して光の槍に触れた。

 しかし、一瞬で消えない事からタイムラグが生じると分かるや“右手をそのまま上へと突き上げた。”

 光の槍もそれに連動して真上へ……上条の背後にあった壁の上部を壊す結果に繋がった。

 

「それなら……これは?」

 

 予想外の上条の奮闘振りにアーシアから彼へと完全に狙いをシフトした。

 このままアーシアを狙っても、この少年が必ず障害になると直感したからだ。

 だからこそ、持ちうる力を引き出す。

 次いで、レイナーレの攻勢は物量による押しの一手。

 光の槍を複数生成し、それを幾重も投げ付けてくる。

 

「やべっ!!」

 

 意識的にせよ、無意識的にせよ、上条にとっては最悪の攻撃パターンだ。

 投擲された数は目算で10。

 右手1本で打ち消せる筈は無し。

 

「頼む」

 

『Boost!!』

 

 この戦いで初めて『神器(セイクリッド・ギア)』を使用した。

 上条の身体能力が飛躍的に上がる。

 

 向かい来る光の槍の雨は右側が弾幕が薄かった。

 右へ身体を傾けて体重を乗せてダッシュして回避する。

 だが、全てを避けきるのは難しかった。

 ザシュッ!! と肉に刃物が突き刺さる。

 

「ぐあっ、くぅ……っ!!」

 

 左肩に光の槍が刺さる。

 それを右手で触れて消し去る。

 

 『神器(セイクリッド・ギア)』の効力で痛みが消える事はなかった。

 ただ、アドレナリンが出まくっているが故に痛みを感じる暇もない。

 それ以前に、レイナーレが休まる暇をくれなかった。

 

「ふーん。よく“分かったわ”」

 

 レイナーレの呟きに上条は背筋を震わせた。

 彼女の呟いた内容の意味に“気付いてしまった。”

 

「こうやって戦うのが一番のようね」

 

 不敵な微笑を浮かべるレイナーレは手を前に突き出した。

 瞬間、光の槍が5つ。時間差を置いて連続で放たれる。

 

 まさしく上条の戦闘スタイルの穴を突いた形だ。

 1つ2つを消したところで上条が打ち消せる範囲は右手だけ。

 しかも複数で来られた日には一目散に逃げるしか出来なくなる。

 

「こうなったら……」

 

 防戦一方なのが転じ、前へ足を踏み出した。

 迫り来る光の槍を右手で1つ、2つと消したところで確実に“右手は”間に合わない3つ目が上条の頭部を串刺しにしようとする。

 しかし、間に合わないのは右手による動作のみ。

 腰を落とし、上条は3つ目をやり過ごす。

 残る2本も軌道が同じなのでやり過ごす事が可能だ――

 

「それ」

 

 レイナーレの分かりやすい掛け声と共に、光の槍が方向転換した。

 向いたのは腰を落とした上条。

 このままでは、まず間違いなく上条に牙を剥くだろう。

 

「プロモーション・ルーク」

 

『Boost!! ROOK!!』

 

 しかし、“それを想定していた上条は動いた。”

 自身の位を兵士から戦車へと引き上げる。

 籠手を胸、右手を頭部に持ってきて光の槍を“その手で受け止める。”

 

 正確には、籠手のある左腕を右手よりも前に突き出して光の槍が当たった瞬間にルークの力で強化し、頑丈になった腕を振って横へ受け流す。

 その後、右手で光の槍を掻き消す。

 

 一度でも『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を行えば強化は消えてしまう。

 ならば、消える前に左腕を突き出していなせば良いと考えたのだ。

 同時に来ているのだから左腕を先に仕事をさせるのは用意だった。

 

「本当、戦い慣れているという感じね」

 

 でもね――逆接の言葉をレイナーレは語尾に付け加えた。

 

 

 

 

 

 ザシュッ!! と、上条の右の脇腹を光の槍が貫いた。

 

 

 

 

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 絶叫と共に、上条は貫いてきた槍を打ち消してそのまま傷口を右手で抑える。

 何があったのか考えるまでもない。

 上条の背後に用意してあった光の槍が脇腹を貫いた……それだけの話だ。

 左手を床に乗せて、何とか倒れるのだけは阻止する。

 

「やはり。打ち消すには効果範囲が決まっているようね。

 しかも先程にプロモーションした筈なのにそれが無くなっているように見えるわ。

 と言うことは、打ち消す能力とは併用できない訳ね」

 

 レイナーレは完全にこちらの能力、それに伴う効果を理解していた。

 

 抜かった――上条自身が一番に後悔の念に囚われた。

 相手がこちらの手の内を見透かしているというのに手を打たない筈がないと考えなかった事をだ。

 

「上条さん!!」

 

 中での上条の悲鳴に触発されたのか、アーシアが戻ってきてしまった。

 絶叫が聞こえた時点で彼女は遠くには逃げていなかった。

 

「アー、シア……逃げてなかっ、たのかよ……」

 

「上条さんを置いて逃げられません!! 待っててください。今治しますから」

 

 有言実行。彼女は『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を使う。

 それにより、たちまち上条の傷が塞がっていく――

 

 

 

 

 

 何て事は、ガラスが割れる音と共に幻想となった。

 

 

 

 

 

 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が発動してしまった。

 異能であれば“善悪問わずに”全てを殺す力――。

 それを知らないアーシアが健気に上条に回復を続けてくれる。

 

「くっ、はは……まさか、そんな欠点もあるのね」

 

 レイナーレは笑いを堪えきれないと言った様子だ。

 上条は今、アーシアから回復をしてもらっている。

 回復したいなら打ち消す能力を止めれば良い。

 今しがたにルークの力が消え失せたのは仕様かと思っていたが、この分だと上条自身がコントロール不能な力なのだと確信が持てる。

 

「無様ね上条当麻。あれだけ豪語をしていたというのに」

 

 レイナーレは笑う。

 勝利に酔いしれている様子だ。

 

「アーシア。あなたのせいよ。あなたが彼と関わったから、彼はこうなっているの」

 

「そ、そんな……」

 

 一方、アーシアは青い顔で上条を見ていた。

 そんな彼女の頭を上条は籠手が付いた手で撫でてやる。

 

「心配、すんな」

 

 上条当麻は立ち上がる。

 不屈の闘志――まさしくその言葉が似合っていた。

 

「ちょっと訳があって、さ。俺は異能を、何でも消し……ちまうんだ」

 

 息は切れ切れだった。

 それでも、上条はアーシアに伝えねばならない。

 

「お前は、何も……悪くない」

 

 上条は声を振り絞り、出来るだけ優しい声音で告げる。

 

「俺が此処に居るのは……俺の意思だ」

 

「上条、さん」

 

「それに、最初に……言っただろ?」

 

 痛みを無理矢理に畳み込み、上条当麻は笑って言った。

 

「今にも泣きそうな女の子の守る側に立てるなら……本望、だってさ」

 

 そこまで言われ、アーシアは嬉しさで胸一杯だ。

 トクンッ!! 今までに感じた事のない想いが胸に起こる。

 痛みとか、息苦しいとかはない――上条さんを見ていると、むしろ心地良い。

 こんな事は初めてだった。

 

「それにさ、お前を利用しようとしてるのに……放っておけない。この街に何らかの危害を加えるのは確かなんだ」

 

 だから、上条当麻は黙っていられない。

 もしもアーシアのような心優しい少女を見殺しにするのかと思っていたら。

 

「はあ……本当、嫌になる位に的を射るじゃない」

 

 上条の推測は正しかった事をレイナーレは認めた。

「もう良いわ。知ったところであなたは此処で死ぬんだから」

 

「死なねえよ。俺は――死なねえ」

 

『Boost!! Boost!! Boost!! Boost!!』

 

 上条の静かなる決意に『神器(セイクリッド・ギア)』が熱く応えた。

 彼の身体を強化、強化、強化、強化――強化していく。

 

「行くぞ。レイナーレ!!」

 

 上条は強化された身体能力に物を言わせて走り出した。

 レイナーレは無防備なアーシアを狙うつもりだった。

 しかし、上条の素早さはレイナーレの予測を遥かに上回っていた。

 必然……レイナーレの狙いは上条に向けられる。

 

「くっ!!」

 

 複数の攻撃は回避する他にない。

 1度でも打ち消せば、上条の身体能力は0に戻る。

 

 先程と同様、光の槍を時間差で5つ発射した。

 この隙に背後に5つ光の槍を生み出す。

 

 

 

 

 

 しかし、今度の上条の動きはレイナーレが見たものよりも速すぎた。

 

 

 

 

 

 投げられる光の槍を右へ左へ、時には籠手で弾いて“全てを回避して見せた。”

 いくら身体能力が高くなってきたからとは言え、そんないとも簡単に出来る芸当な訳がない。

 予定より早いが、背後に忍ばせていた3つで光の槍が後ろから襲い掛かる。

 

「上条さん!! 後ろから攻撃が来ます!!」

 

 上条が気付いていない事をアーシアが教えてくれた。

 顔を横に向けて視線で位置取りを把握し、紙一重で“全て回避しきった。”

 身体を横にし、伏せ、籠手で弾いてみせた。

 

「嘘……でしょ!?」

 

 レイナーレの声に力が抜けていくのが分かった。

 アーシアの掛け声があったとして、上条は見事に反応できた。

 

「それなら!!」

 

 彼は一度も翼を出さず、空も飛べない。

 1度、中空にて遠距離からの攻撃を測る。

 

「逃がすかよ!!」

 

『Boost!! Boost!! Boost!!』

 

 逃げると思い込んだ上条。

 身体を強化し、思いっきり跳躍した。

 

(神様――)

 

 身体能力が引き上げられた事でのジャンプ力は建物内部とは言え、空を飛んだレイナーレの高さに匹敵する。

 

(もし、あんな心の優しい女の子(アーシア)が苦しむ物語(せかい)神様(アンタ)の作った奇跡(システム)通りに動いてるってんなら――)

 

 上条当麻は必殺の右を後ろに引く。

 まるで溜めた弓矢を発射するかのように。

 そして、強く――強く、拳を握った。

 彼の想いはその拳に乗っかり、レイナーレの右肩を左手で掴む。

 

「そんな馬鹿な!? ただの人間だった悪魔にこの私が――」

 

 レイナーレの絶叫が木霊する。

 彼女は知らない。

 今目の前にいる少年の武勇を。

 戦争の中心へ突っ込んでいき、その根幹を見事に叩き潰して終戦に結び付けた事を――。

 そんな彼の拳は、レイナーレ、そして“誰かも知らない、この世界の創始者へ向けられていた。”

 

 

 

 

 

「その幻想をぶち殺すっっっ!!」

 

 

 

 

 

 ドゴォォォォォッ!! 

 

 上条の右拳はレイナーレの頬へと吸い込まれていった。

 強化された身体能力による一撃――それを諸に喰らった彼女はボールのように吹き飛んでいった。

 壁に激突し、そのまま穴を空けて外へと放り出てしまった。

 

 上条が地面に着地する間際に穴から覗き見たレイナーレは――ボロ雑巾のように地面に仰向けに倒れ伏していた。

 

 強化がリセットされ、緊張の糸が切れたのもあって、地面に尻を突いて着地した。

 痛みが上条にどっしりと襲い掛かる。

 でも、そんなものは今の上条にはどうでも良かった。

 

「上条さん!!」

 

 満面の笑みを浮かべたアーシアがこちらへ駆け寄ってくる姿が何よりの薬だから――。




如何でしたでしょうか?

ここまで上条さんが無双ばっかしてたので、ここで1つ苦戦を(後半には尻上がり的に主人公補正ヤバかったですが)

久々に戦闘シーンがっつりかきました。
いや~、捗りますわ

最近は弱い能力でまさかの使い道で無双する話をここでオリジナルで書いてたらはまってしまって……逆に強すぎる主人公には無双をさせづらくさせたかった。

そして遂に上条お馴染み「そげぶ」「ゲンコロ」のお時間です!!

説教は今回は無しなのが残念で……

さて、次回は再来週の日曜の予定です!!
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