新約? ハイスクールD×D   作:ゼガちゃん

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すいません。

本当にお待たせしました。

続きです。


自身の内から湧く感情に従って真っ直ぐに進む者

 上条が床に腰を落としたのと木場と小猫が戻ってきたのは同時だった。

 

「終わったみたいだね上条君」

 

「おう。何とかな」

 

 とは言え相変わらず全身はズタボロである。

 綺麗な勝利とは言えない。

 

「レイナーレはどうしたんですか?」

 

「あいつなら外で倒れてる」

 

「拾ってきます」

 

 疲れた様子は微塵も見られず、小猫は外へ出て行った。

 

「それにしても凄いね。悪魔に成り立てで堕天使と戦って倒してしまうなんて」

 

 バイサーと戦って勝った経緯は把握していた。

 まさか、堕天使まで倒してしまうだなんて――驚天動地である。

 

「さすがにあちこちボロボロだけどな」

 

 戦闘終了後の上条らしい姿だ。

 このまま病院まで運ばれるのは上条のいつものパターンだ。

 

 アーシアの治癒能力は異能であるが故に上条には機能しない。

 人間の自然治癒力に期待するしかない。

 毎度毎度、半身ミイラ男になる自分の姿を思い出して気が滅入ってきた。

 

「終わったみたいね皆」

 

「お疲れ様です」

 

 上条達を労いながらリアスと朱乃が教会に現れた。

 

「ども、リアス部長」

 

「随分とボロボロねトウマ。でも、目的は果たしたみたいね」

 

「はい」

 

 リアスには随分と迷惑を掛けたと思う。

 でも、彼女のおかげで上条はアーシアを救う事が出来た。

 

「連れてきました」

 

 ぐったりと精魂尽き果てたと言わんばかりのレイナーレを引き摺って、小猫が戻ってきた。

 小猫は彼女を床の上に転がす。

 

「ごきげんようレイナーレ」

 

「リアス……グレモリー!?」

 

 驚きと悔しさ――双方を入り混ぜた感情がレイナーレの中を渦巻く。

 彼女の眷族である上条達が来たなら主が許可したのは明白。

 だが、念のために王は後ろに控えているべきだ。

 なのに、何故こんなところまで来ている?

 

「これ、あなたのお仲間の羽です」

 

 リアスと共にやって来た朱乃が黒い羽を何枚か見せてきた。

 それを見たレイナーレの血の気が引いていく。

 間違いなく、彼女に加担した堕天使のものだ。

 ドーナシーク、他2名程に協力を仰いでいて、全員の羽がそこにはあった。

 

「ちょっと事情があって、今は捕まえさせて貰ったわ。殺しまではしてないから」

 

「どう、して?」

 

 その質問には複数の内容が蔓延っていた。

 何故殺さないのか? というのが内容の8割は占めているだろうが。

 

「私のところの新人悪魔が“そういうの”は嫌いみたいなのよね」

 

「まさか……“それだけで?”」

 

 グレモリー家は仲間内や下僕となる悪魔にも情を持つのが特徴だ。

 だが、だからといって害為す存在を放っておくなんて信じられない。

 害をもたらすなら、消す事を躊躇わない。

 それは、下僕1人の意見で変えられるものでもない。

 

「普段なら答えはNOだけどね。トウマが持ってきた案件だし、彼が嫌がってる事みたいだから尊重したまでよ」

 

 リアスは肩を竦めながら告げる。

 レイナーレの方も気にしてる余裕などない。

 今まさに自身に危地が訪れているのだから。

 

「さて、あなたの敗北の理由を教えてあげる。

 トウマの『神器(セイクリッド・ギア)』がただの肉体強化する『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』だと勘違いしていた――この一点に尽きるわ」

 

「勘違い、ですって!?」

 

 上条の方を見ながら開いた口が塞がらないとばかりにあんぐりとする。

 言われた上条の方も何が何やらさっぱり分からない。

 

「彼の『神器(セイクリッド・ギア)』は『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』と呼ばれる代物よ」

 

 ここまで言えば分かるでしょ? と言わんばかりにリアスはレイナーレに勝ち誇った笑みを見せながら伝えた。

 自分の事なのに全く分からない上条はクエスチョンマークが飛び出るばかりだ。

 けれど、その意味を“正しく理解している”レイナーレは震えていた。

 

「『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』ですって!? 神殺し――ロンギヌスの異名を持つ『神器(セイクリッド・ギア)』の1つ!!」

 

「ご名答よ。レイナーレ」

 

 驚き余ってレイナーレが上条に宿る代物の説明をしてくれる。

 ただ、残念な事に悪魔歴2日の上条には知識のない事柄だ。

 それを察した朱乃が上条の隣で教えてくれる。

 

「10秒強化する毎に身体能力を倍増させてくれる能力といったところでしょうか。強化を続ければ“神さえも凌ぐ”と言われている『神器(セイクリッド・ギア)』ですの」

 

 そんな優れたものが上条の中にあるのかと思うと訝しい気持ちになる。

 チラリと、己の右手に視線が移る。

 

 そこにも「異能なら神の奇跡さえも打ち消せる」がキャッチコピーの、これまでも上条が扱ってきた『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っている。

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の説明がそうなら、“何故右手がある自分の中にそんな御大層なものが存在するのか?”

 起動する事そのものが奇跡過ぎる。

 

 

(考えるのは……後か)

 

 上条は頭を掻きながらリアスとレイナーレの方を見る。

 今はこちらを何とかするのが大事なのだ。

 

「私の可愛い下僕のみならず、仲間を消そうとしたあなたを――許しておけないわね」

 

 リアスの目付き、雰囲気が一変した。

 彼女の手のひらが赤く光る。

 

「あれは部長の得意な『消滅』の魔法」

 

「『消滅』だって……!?」

 

 リアスはレイナーレを消し去ろうとしている。

 小猫の呟きで上条は即座にそこまでの思考に至る。

 その前に上条には確かめたい事があった。

 一旦、思い止まるように上条は口を開き――

 

 

 

 

 

「あ~れ~!? あ~くま君達が勢揃いじゃ、あ~りませんか~?」

 

 

 

 

 

 ふざけた口調で不良少年神父――フリードがそこには居た。

 

「助けなさい!! 今すぐに!!」

 

 フリードを見た瞬間、レイナーレは叫び声をあげた。

 彼に助けを求めなければ自分は消滅する――それを理解しているから、こうも慌てた口調になる。

 

「助けたいのは山々なんですがね~。こうも人数が多いと無理なんで、逃げさせて貰いま~す」

 

「なっ!?」

 

 暗にレイナーレを見捨てるのだと――フリードは告げるのだ。

 それを聞いたレイナーレの憤怒は計り知れない。

 同時、利害でしか一致してない以上はこういう展開になるのは心の何処かで思っていた。

 

「いくら上司がピンチでも、こんな俺も勝てないような状況……見捨てるしかないじゃないですか~。

 それに、そっちだって腹積もりは一緒だったでしょ~?」

 

 悔しい――レイナーレの中で真っ先に生まれた感情は「それ」だった。

 自分は敬愛すべきアザゼル様やシェムハザ様の為に尽くしてきた。

 なのに、誰も理解してくれていなかった。

 フリードは悪魔が斬れればそれで良かったのだ。

 自分の成す事など、彼には端からどうでも良い事柄で。

 

「ふ――ふざけるな!! 助けろ!!」

 

 彼の言うように、分が悪ければフリードを囮でも盾にでもして生き残るつもりだった。

 自分の事は棚に上げ、生に執着する愚かしさを隠しながら叫ぶ。

 しかしながら、フリードは聞く耳持たず。

 スタスタと、この場を去ろうとしている。

 丁度、向こうとこちらとでは10メートル以上は距離がある。

 即座に間合いを詰めるには難しい。

 

 このまま消滅するのだとレイナーレは悟る。

 涙が出そうになるのを必死に堪える。

 

 このままでは終われない。

 消えるのだとしても簡単には消えたくない。

 上条を一緒に道連れにしてやる。

 自分がこうしてピンチに陥っているのは悪魔になったばかりの彼の仕業だ。

 レイナーレのやる事は逆恨みも良いところなのは分かっている。

 それでも、ただで死にたくは無い――

 

 

 

 

 

 だが、当の上条当麻はそんなレイナーレの思惑よりも前にフリードを殴り飛ばしていた。

 

 

 

 

 

 身体能力を予め強化させていたのだろう。

 追い付けた理由は考えるまでもない。

 そもそもどうして彼はフリードを殴る? そこが分からない。

 

 殴り飛ばされたフリードは入り口の扉に背中を打ち付ける。

 上条は殴ったモーションのままで、フリードを睨んでいた。

 

「ふざけんなよテメェ。仲間なんじゃないのか? 簡単に見捨てるのかよ?」

 

「じゃあ聞きますけど、自分よりも格上の存在に突っ込んでいく心意気があるんですか~?」

 

 フリードはヘラヘラと笑いながら言った。

 どうせ答えなんて決まっている。

 これでYESと答えられる奴なんて居る訳が――

 

「そんなの、何度だってやって来た」

 

 上条の迷いのない――しかし、“訳の分からない”返答に大いに訝しい気持ちとなった。

 

 彼らは誰も知らない。

 学園都市最強の化物と相対し、数百人のシスターを相手にしようとし、天使に近しい力を持つ聖人とぶつかり、魔神と呼ばれる神にも等しい力とも真正面から拳を交えた。

 

 他にも上条は自身の天敵とも呼べる存在と何度も戦い、そして今こうして生きている。

 そんな彼が格上の存在に臆して逃走する姿など想像も出来ない。

 

「何、で……こんな?」

 

 レイナーレの疑念は自然と言葉になっていた。

 上条は笑いながら言った。

 

「言わなかったか?」

 

「何を――」

 

 端と、レイナーレは気付いた。

 自分の目の前が涙で霞んでいるのを。

 必死に涙を堪えて「死」という摂理に怯えているのを。

 そして思い出す。彼がアーシアに、そしてレイナーレに言い放った事を。

 

 今にも泣き出しそうな女の子を守る側に立てりゃあ、こっちはそれで本望なんだよ!!――と。

 

 今度はこっちが笑ってしまう。

 敵なのだ。敵なのに彼はどうしてこうも熱くなってくれる?

 

「簡単に人を切り捨てる奴を、人を簡単に泣かせる奴の根性を叩き直さないでなんておけるかよ」

 

 上条の瞳に宿る強い意志。

 敵とか味方とか、上条には関係なんて無いのだ。

 助けなくちゃいけないと思ったなら、誰であろうと助ける。

 アーシアを助けに来た時から察していた。

 

「は、はは……上条当麻くんだっけ? お前の事はよ~く覚えておくよ~」

 

 フリードは開いた殴り飛ばされ、開いた間合いを利用して外へダッシュした。

 

「ごめん。逃げられた」

 

「構わないわ。どっちにしたって、追うのは彼女をどうにかしてからよ」

 

 ハッと、自分の置かれた状況がどんなものなのかをレイナーレは思い出した。

 このままでは、自分は消されてしまう。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

 

 そんな中、上条は制止の声を掛けた。

 

 

「トウマ?」

 

「すいません。少しレイナーレと話をさせて下さい」

 

 上条は床に転がるレイナーレの近くに寄り、腰を下ろした。

 

「お前に聞きたい事がある」

 

「何よ?」

 

 どうせ消える運命なのだ。

 どんな質問が来ようがレイナーレにはどうでも良――

 

 

 

 

 

「私と付き合って下さいって言ってたけど、あれって何の罰ゲームだったんだ?」

 

 

 

 

 

 どうでも良くなくなった。

 上条の台詞は初めて出会った際に彼を殺す際に言った嘘だ。

 その時に確かに彼は信じていなかった。

 嘘なのは本当だし、向こうも分かっているみたいだ。

 何も言わなかったが……まさか罰ゲームだと“勘違いしているのか?”

 いや、上条を殺すと宣言していたのだから勘違いの線は消えるはずだ。

 

「何でそんな事を?」

 

「いやだって、俺に近付いて殺したいだけならこんな嘘を吐かずに直接殺しに来れば良かったんじゃ?」

 

「それは……油断させて確実に殺したかったのよ」

 

 あまりにも上条が偏屈な事を言っていたので勢い余って馬鹿らしくなってネタバラしをしてしまった。

 

「そうだったのか、てっきり罰ゲームで言わされてるとばかり思ってた」

 

「どんな罰ゲームよ……」

 

 この少年と話しているとペースが乱れる。

 しかも大真面目に聞いているものだから突っ込むのも疲れる。

 

「それなら、買い物に付き合ってくれよ」

 

「はい……?」

 

 今度こそ、レイナーレは目が点になる。

 この少年は何を言い出す?

 何がどうして買い物に付き合わなくちゃならないのだ?

 

「いやほら、上条さんは純情さんだからデートとかほとんどないのですよ。

 ここは騙してたお詫びって事で、彼氏彼女ムードでお出掛けして欲しいのです!!」

 

 後半から力を込めて告げる上条。

 その姿と、先程までにフリードに食って掛かった姿とが噛み合わない。

 でも、どちらも同じ上条当麻であるから不思議だ。

 

「私が、あなたを殺すとは思わないの?」

 

 まさか、フリードに食って掛かったのを見て彼に心を許しているのかと思う。

 態度が軟化しているのが自分でも分かった。

 

(ああ、そうか……)

 

 多分、違う。

 彼が初めてなのだ。自分を真正面から受け止めてくれる人が。

 否定をせず、肯定もせず、ただ上条当麻はレイナーレを見てくれている。

 そんな彼にきっと自分は惹かれているのかもしれない。

 我ながらなんてチョロい。

 恋愛もののハーレム漫画のヒロインもビックリのチョロさだ。

 でも、実際になってしまったものは仕方無い。

 

「大丈夫だ。そんな事はないから」

 

 自信を持って言う上条。

 まさか、自分が心変わりをし始めている事に上条は気づいているのか?

 だとしたらどうしよう。

 いや、ここは素直に言ってしまえば――

 

 

 

 

 

「何と言っても上条さんには『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』なんて素晴らしいアイテムがあるなら殺される心配なんてないのですよ!! ええ!!」

 

 

 

 

 

 千年の恋も絶対零度に晒されてしまいそうな発言が飛び出した。

 この胸のトキメキをどうしようか――うん、決めた。

 

「あんたは……」

 

 魔力を右手に集中させる。

 有らん限りの力を振り絞って、立ち上がる。

 

「私のトキメキを返しやがれぇぇぇえええええーーーーっ!!」

 

「ぐど、ばれあがぁっ!?」

 

 顔を真っ赤にさせたレイナーレの拳が上条の顎にクリーンヒット。

 上条は意味不明な事を言いながら宙を舞い、床に倒れ伏すのだった――。




如何でしたでしょうか?

今回のサブタイはエイワスの例えを文字ってます。
本当はそのまま書いても良かったのですが、これをサブタイで使う事が他の場面でありそうなので文字っただけにしておきます。

さて、次回で遂に1巻も終了です。
暇つぶしに書いていた割には続けられてビックリしてます。

さて、2巻の内容をやるか否か……10巻くらいまでは考えてあるんですけど、どうしようかな。
ああ、転移魔法の件なら既に考えてあるのでそこでつまずく事は無いので大丈夫です。

次回の更新は再来週の水曜日の予定です。
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