今年もこの作品及び、他の作者の作品をよろしくお願いします。
え~、遅れてすいません。
続きをどうぞ。
出会いというのは突然に起こるものだ
「ちくしょー!! 不幸だぁぁぁあああああっ!!」
開幕、自身の不幸を叫びながら街中を駆ける変人――もとい、高校生がいた。
ツンツン頭の中肉中背の少年。
我らが上条当麻が半泣きで全力疾走しているではないか。
「待ちなさい!! 乙女の胸を揉んだ行為は万死に値しますのよぉぉぉおおおおおーーーーっ!!」
金髪のクルクル頭の服装も豪華そのものな、如何にもお嬢様と言わんばかりの少女に追いかけ回されていた。
上条が何を仕出かしたのか――追いかけてくる彼女の表情が般若と化している事が大体を物語っている。
何が起きたのかを知る為に時間を少し巻き戻そう。
レイナーレとアーシアが上条のクラスに転校してきて一週間が過ぎた。
美少女の転校という事もあり男子は言わずもがな沸き立つ。
好意的に接してくれるアーシアやレイナーレに女子一同もすぐに仲良くなった。
特に吹寄と姫神とは仲が良い。
帰りのHRを終えた放課後に集まって話していた。
「どう? 2人とも新しいクラスには慣れた?」
「ええ、皆優しいからね」
「はい。隣のクラスの桐生さんや松田さん、元浜さんとも友達になりました」
「それは良かった」
吹寄、レイナーレ、アーシア、姫神は仲睦まじく話している。
アーシアは意外と対人スキルが高い。
いつの間にやら隣のクラスの人とも仲良くなっていたらしい。
「にゃーっ!! 元浜と松田には気を付けるんだにゃー!!」
「その通りや!! 僕らに負けず劣らずの女好きやからな!!」
「あんたら3人に言われたくないでしょうよ」
土御門と青髪ピアスの2人が騒ぎを聞き付け滑り込みで乱入してきた。
それに対し、吹寄は2人と上条の方も見て冷たく言い放つ。
「上条、土御門、青髪ピアスのデルタフォース。浜松、元浜のエロコンビ――学園内だと悪い意味で有名なのよ」
「俺が然り気無く入ってるんですが!!」
上条の叫びなど無視して、吹寄はアーシアとレイナーレに今のメンバーには気を付けるように諭す。
「でも上条さんはそんな事をするとは……」
聖女アーシア様は上条に悪評が轟いているとは思わなかった。
「うう、アーシア……お前は俺の味方でいてくれて嬉しいよ~」
涙を流しながら、降って沸いた幸福を噛み締める。
こんなにも美少女に心優しい言葉を掛けられる。
「「か~み~や~ん~」」
青筋を立てる2名からの怨嗟の籠った声音で睨んでくる。
上条は冷や汗を流す。
幸福の裏には不幸がある。
上条は思わず後ずさる。
身の危険を察知したのだ……。
「あっ!! そういえば母さんから買い物を頼まれているんだった!!」
そう言いながら上条当麻は鞄を持って全力で逃走をする。
「「待てやゴラァッ!!」」
土御門と青髪ピアスが叫びながら追い掛け回す。
上条が無事に2人を振り撒くまで命懸けの鬼ごっこは続いた。
2人に追い掛け回された後、上条当麻は本当に母親に頼まれた物を買いにスーパーマーケットまで来ていた。
今晩はアーシアに日本食を食べさせたいという事と、レイナーレのリクエストで肉じゃがとなった。
その材料を買いに来た訳だ。
「これでラストか」
学園都市で独り暮らしの経験のある上条ではあるが、大体が何かしらの「不幸」に巻き込まれてタイムセールを取り逃す。
そもそもスーパーに来れる時点である種の奇跡だ。
しかも肉じゃがの主賓であるじゃがいもがラスト一袋5個入りであった。
しかし、そこは自称「不幸の擬人化・ジェントルマン上条」だ。
何事もなく過ごせるといつから錯覚していた?
「お待ちなさい」
ああ、不幸な予感――振り返らずとも上条当麻は現在進行形で不幸の渦中に飛び込んでいるのだとはっきり分かった。
気の強そうな雰囲気をビンビンに感じ取りながら上条は相手を窺った。
金髪ツイン縦ロールの少女だ。小柄な割りに胸が豊かで――ゲフンゲフン。
首回りは白の、胸に赤いリボンの付いた桃色のワンピースを着用している。
「どちら様でせうか?」
お嬢様然とした彼女に何か睨まれる事なんてしただろうか?
無意識に上条は不安に駆られる。
「そちらのじゃがいもを譲っては頂けないかしら?」
「えと……何で?」
「決まっていますわ」
何を分かりきった問い掛けをするのかと少女は不適に笑う。
「私は……カレーが食べたいのです!! そう、じゃがいもの入ったカレーが!!」
握り拳を作った金髪ツイン縦ロールの美少女が「カレーを食べたいからじゃがいも寄越せ」と言ってきた。
何というか、どう反応を示して良いのやら。
ともかく、別に上条はこの場で言い争うつもりはない。
母親には買えなかったと伝え、そそくさと退散するに限る。
「分かったよ。じゃあ、このじゃがいもを――」
そう言って籠からじゃがいもを取り出そうとし――こちらに向かってきていた人に前に押されてしまった。
押した人は謝ってくれたが上条の耳には届かない。
バランスを保つ為に籠を落とし、ついでにじゃがいももぶちまけてしまった。
そして上条本人は倒れるのを回避すべく、何処かに捕まって体勢を立て直すべく手を伸ばして……
目の前の少女の胸を掴む事で見事に回避はされた。
しかしながら、それで「めでたしめでたし」だなんて都合の良い童話話は起きない。
手のひらに男子の夢の詰まった感触がある。
だけども、それには相応――否、それよりも倍近い代償を払う事となりそうだ。
美人な顔も、般若の面によって凶悪なものとなる。
「何をしてますかぁぁぁあああああーーーーっ!!」
「事故だぁぁぁあああああーーーーっ!!」
当然、上条の叫びなど少女の耳には届かない。
かくして、壮絶なる鬼ごっこの幕が開始されたのだった……。
話は冒頭に戻る。
地の利はこちらにあるようで、少女との距離は開いていく。
ビルとビルとの隙間に入り込み、入り組んだ場所を利用して撒くのが手っ取り早いと判断した。
「ええい!! 面倒ですわ」
しかし、背後から追い回していた少女は突如として“上条の目の前に上空から降り立った。”
彼女の背中には“悪魔特有の翼が生えていた。”
つまり、彼女も悪魔という事になる。
「お前……」
上条は堪らず、身構える。
もはや身体が戦闘体勢を取るのだ。
「これを見ても驚かないという事は――こちら側に関して知っているみたいですわね」
記憶を消す手間が省けて嬉しいですわ――などと最後に付け加えた。
なるほど、アフターケアもしっかりと考えてはいたらしい。
「ならば尚更、このレイヴェル・フェニックスが消し炭にしてさしあげます」
彼女の手のひらに『ゴオッ!!』という轟音と共に炎が灯った。
この距離でも熱が伝わってくる。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!! 俺は別に争うつもりはない!!」
「ええい!! 問答無用!! 私の胸を触ったのですから――」
「オメーら、人の縄張りで何をしなやがる?」
上条の弁解も、レイヴェルの文句も、突然の乱入者に掻き消された。
そいつが立っていたのはレイヴェルの背後。
毛むくじゃらで筋肉質な体つきの存在は、まさしくゴリラに等しい。
ただ、身長が3メートル近くあり、巨体なので狭い路地ではそいつの存在が壁の役割を担っている。
「あんたは?」
上条はさりげなくレイヴェルの手を引っ張って、庇うように後ろに追いやって前に立つ。
そして、乱入者に鋭い視線を叩き付けてやる。
「この辺りにははぐれ悪魔が多く来てな。それを仕切っているゴーラだ」
一文字違いで、外見とマッチした名前だなと密かに思った。
「オメーらは何だ? はぐれ悪魔か?」
「何をふざけた事を――」
「そうじゃないと言ったら?」
レイヴェルの売り言葉を遮り、上条はゴーラと相対する。
「このオレの庭に土足で入ったんだ。はぐれだろうが無かろうが……罰は受けて貰う」
「…………ちなみに、その罰って言うのは?」
「な~に、少し凹されてくれるだけで良い」
拳をゴキゴキと鳴らし、ゴーラは上条達に近寄ってくる。
パッと見、パワーファイターに見えるけれども油断は禁物だ。
狭い路地とは言ったが、ゴーラが腕を曲げて真上に振り上げるだけの幅はある。
しかしながら後ろに回り込めば、身体を旋回させるのは難しいと読む。
「面倒ですわ。私が一撃で葬ってあげます」
彼女の手に灯していた炎が光線よろしく一直線に突き進む。
正確な判断は出来ないが触れれば火傷では済まない事は熱量から伝わる。
「ふん。そんなもの……」
ゴーラは息を大きく吸うように口を大開く。
レイヴェルの放った炎は磁石に引き寄せられるようにゴーラの口へと吸い込まれていった。
「う、うそですわ!? 摂氏1000℃は超える炎を飲み込むだなんて……」
「これが現実、だよ!!」
レイヴェルの放った炎はバットで打ち返されるように、ゴーラの口から再度解き放たれた。
虚を突かれ、速度も先程より速い。
彼女にはかわす術はなかった……が、目の前には少年の背中が映った。
「なっ!! 逃げな――」
レイヴェルの言葉は最後まで続かなかった。
パリィィィンッ!! 『
「えっ!?」
「何だと!?」
上条はレイヴェルとゴーラ、双方からの驚きをその身に受ける。
それによって隙を作り、上条はゴーラへとダッシュした。
「来い。『
『Boost!!』
1段階ギアを上げて、上条当麻はゴーラめがけて駆け抜ける。
「オラァッ!!」
懐に飛び込んだ上条の鉄拳がゴーラの腹筋を撃ち抜く。
ゴーラはゆったりと前のめりに倒れていく。
強化された身体能力は凄まじい。
これ程の巨体を一撃で熨してしまった。
「ふう……終わったな」
あとは主のリアスに連絡をするだけだ。
彼女に連絡をしておけば問題はあるまい。
「あの……」
レイヴェルが上条へと手をモジモジとさせながら寄ってきた。
上条は胸を揉んだ事を思い出しながら後ずさる。
もしや、その事で制裁を加えるつもりでは……
「ありがとうございました。助けて頂いて」
意外や意外。
レイヴェルは誠心誠意、頭を下げて礼を述べる。
これには上条もポカーンとする。
「助けて頂いたのですから、胸を触ってしまった件は不問にします。今後は注意してくださいね」
「へ、へい!! あざーっす!!」
まるで下っ端のような言い方になってしまったのは助けたとは言え頭の上がらない事を仕出かしたからだ。
「すいません。私は家族を待たせてしまっていますので、これで失礼しても大丈夫でしょうか?」
「ああ、あとは俺に任せておけ」
「では、失礼します」
丁寧に頭を下げ、レイヴェルは背中を向けたところで振り返る。
「名前を窺っても?」
「上条当麻」
「では上条さん、また会いましょう」
今度こそ、レイヴェルはこの場を後にした。
「また……会えるでしょうか。上条さん」
去り際、上条が見えなくなったところで頬を赤くさせながらレイヴェルは呟いたのだった。
実は、ゴーラと上条の戦闘を眺めていた人物がいた。
スーツを着込んだ無精髭を生やした30代の男だ。
上条当麻をこの不思議な世界に誘った張本人だ。
「さて、慣れ始めた頃合いだ。そろそろ動くか」
ゴーラをけしかけたのはこの男だ。
上条当麻に降りかかる不幸は果たして如何なるものなのか……?
謎は、未だに謎のままだ。
如何でしたでしょうか?
さて、レイヴェルさんの登場です。
次回は再来週か、その次の週の水曜日の予定です。