来週の水曜日の予定だったのですが、なんとなく書きあがったので投稿します。
「ああ~。気が重い」
「まあまあ」
上条は肩を落としながら木場と共に部室に向かっていた。
何故こうも不幸を振り撒くような雰囲気で部室に向かうのか。
「上条さんは馬鹿だからこの後に補習なんですよ」
上条は涙を流しながら本日の小テストの紙を見せてきた。
点数の欄に書かれている「0」という数字に目がいった。
何度でも言おう。
ただでさえ高校1年の授業が低空飛行な上条当麻に、果たして1つ上の学年の問題が解けるのか?
上条さん的な答えはNOだ。
しかし、こんな成績の上条を放っておかない熱血ロリータ教師・小萌先生はそんな上条の為に補習を催した。
ちなみにレイナーレ、アーシア共に問題なく小テストで高得点を叩き出している。
「でも、それだけ心配してくれているんだから応えないとね」
「それは分かってるんだがな~」
食べるだけで暗記できる食パンや解答を自動的に書いてくれるペンシル何かが欲しくなる。
「木場は成績はどうなんだ?」
「自慢に聞こえるかもしれないけど、結構上の方に居るよ。貼り出されるランキングのは見てないのかい?」
「あ、ああ……自分の頭の悪さから目を反らしたいんだ」
などと言いながら誤魔化す。
こちらに来てからテストなんて受けてもいない。
木場どころか他のメンバーの成績だって上条は知らないのだ。
「っ!? ちょっと待って上条君」
「どうかしたのか?」
部室に辿り着こうという矢先に木場が「待った」の声を掛ける。
上条は首を傾げ、木場に問う。
「知らない魔力を部室から感じる……誰か知らない人がいる」
「マジか……」
こちらの世界でも上条はトラブルの神様に愛されてるようだ。
なんて傍迷惑な神様なのだ。
「とにかく部室に行こう」
上条を促して悠然と文字通りの悪魔の巣窟に身を投じる。
上条はと言えば、面倒な事にならないように祈るばかりだった。
「リアス様お久し振りです」
「ええ。久し振りねグレイフィア」
上条が中に入るとリアスが銀髪のカチューシャをし、メイド服に似た装いのものを着こなす女性と話していた。
「あの人は……?」
「グレイフィアさん。部長の義理の姉です」
先に部室で待機していた朱乃が上条の疑問を解いてくれた。
義理とはいえ、リアスに負けない美人だ。
「それで……何でリアス部長のお義姉さんが此処に?」
「私の縁談よ」
大きな溜め息と共にリアスが答えた。
縁談――と。
「フェニックス家のライザー様と結婚し、グレモリー家の血筋を絶やさぬ為です」
随分と事務的な事を言う。
だけども、上条は引っ掛かりを覚える。
「そうは言うけどグレイフィアさん。何故このタイミングでそんな話を?」
このタイミングと言うのは他ならぬリアス本人の年齢だ。
彼女は今高校3年。
確かに結婚できない歳とは言わないが、よもや高校生の身に人生の一番大事な話を持ってくるのか?
「ご指摘は尤もです。ですが、グレモリー家と懇意にさせて頂いているフェニックス家のご子息様から婚姻をしたいとの申し出を無下には出来なかったものですから」
平たく言うならば、リアスは政略結婚をさせられる訳だ。
血を絶やさない名目もあるが、何よりも彼女の家の為だろう。
グレモリー家がどれ程の悪魔社会での地位を確立しているのかは不明だ。
それでも上条には簡単に口出しのできる問題でもない。
(でも、だよな……)
リアスの表情が曇っていたのを上条は見逃さなかった。
「あの、リアス部長の意思に関係なく結婚させるつもりですか?」
きっと、一同のざわめきはあった。
上条の一言に部員メンバーのみならず、グレイフィアも目を瞬きさせる。
「あなたは?」
「上条当麻。リアス部長の
実に簡素で簡潔な返答だった。
グレイフィアは上条の名を聞いたところで「なるほど」と何か納得していた。
「あなたが今代の『
「えと、そうです」
そう言えば、上条は未だにリアスに
アーシアとレイナーレが上条家に泊まるに当たっての諸々の事務処理をリアスに一任していたのもある。
それで散々に引き延ばし、今日に至る。
そろそろ話さないとな~とは上条自身も感じてはいるが、学校に来てもグレート・ティーチャー・コモエに捕まり、補習で精魂尽き果てて部活に行く。
その時には宿題やらが手付かずなのに気付き、伝えるのを忘れてしまう始末だ。
つまり、全面的に上条本人に非がある。
事情を知るのは意外にもレイナーレだけである。
アーシアはあの時には上条を回復させる事に必死で打ち消した事には気付いてないようだ。
その後に済し崩し的に説明はしたのだがアーシアは忘れていたようではあるし、事件直後には『
入院後に訪ねて来てくれた事もあったのだが、一般人の大半が利用する施設なので異能の力は使わないようリアスから言い含められていたので説明をする機会も訪れなかった。
バイサーは打ち消した場面を忘れた節がある。
フリード相手にはそもそも目視もしていないし、居ないので論外。
オカ研メンバーはまだ目にもしていない。
レイナーレは上条本人が伝えるべきだと言わないでいる。
そもそも、この能力についてはリアスに話したら詳しく聞くと言ってくれている。
いい加減に言わないとレイナーレにも申し訳無い。
こちら側に来てからの彼女の義理堅さに脱帽だ。
とにかく、そんなこんなで話に戻る。
「まあ、今はそんな肩書きは関係無いです。俺にはグレモリー家の事情とか知らないから勝手に言っちゃいますけど、部長が困るなら黙ってられないですよ」
上条の目付きがより鋭さを得る。
彼の言葉に嘘偽りはなく、真剣な声音のトーンを出す。
「なるほど……怖いもの知らずで言っている訳では無さそうですね」
グレイフィアは上条の行動をそう評した。
我が儘な見解も多少は含んでいよう。
彼には少なくとも勇気がある。
困難から目を背けずに真っ直ぐに突き進む強さが垣間見えた。
「でしたら、これからその件でお話したい事があります。しばしお待ちを」
グレイフィアが早口に告げた理由を上条は不思議に思った。
ものの数分もせずに理由は判明した。
部室の床に魔方陣が出現したのだ。
「すいません遅れ――って、何ですか!?」
「これは……っ!?」
遅刻してきたアーシアとレイナーレ。
彼女らもこの出来事には驚いているようだ。
「これはフェニックス家の紋章……」
「フェニックス家?」
先程から挙がっていた名前だ。
話の流れから婚約者とやらが出てくるのは自明の理と言えよう。
ややあって、人が魔方陣の光が止んだ後に現れた。
「ふぅ。人間界は久し振りだな」
上条から見てみれば模範生的な格好のチャラ男と言うべきか。
金髪で紫色のブレザーの下に胸元を開いた白いYシャツ、青のジーパンといった装いの青年が出てきたのだ。
「おお!! 俺の愛しのリアス!!」
「ライザー、気安く私の名前を呼ばないでくれないかしら?」
好意的な反応のライザーと呼ばれた青年とは裏腹にリアスが冷たく言い放つ。
しかし、そんな事をされてもお構い無しに馴れ馴れしいライザーにリアスだけでなく、アーシアとレイナーレを除いたメンバーは怒り心頭のご様子で。
「えと、あの人は?」
上条は全く分からないのでグレイフィアに訊ねる。
他のメンバーは怒りを抑えるのに必死なようで、地雷地帯を進んで歩む程に愚か者ではない。
「彼がフェニックス家の長男……ライザー・フェニックスです」
「ライザー……フェニックス?」
変な名前だなとか思ったが、何処かで聞いた名前だなと思った。
しかしながらそんな疑問もライザーが詰め寄ってきた事から脇に置く事に。
(しかし……)
何だろうか。上条当麻は何と無くライザー・フェニックスが気に入らない。
気に入らないと言うのは語弊がある。
彼には何処か不良神父と似たような空気を感じる。
彼よりは犬猿の仲とはならないが、変なところで馬が合いそうな予感はしていた。
「何だ? お前は俺の事を知らないのか?」
「何分悪魔に成り立てで」
「ふん。ならば仕方あるまい」
「はあ……どうも」
関心など微塵もないが、ここは刺激をしないよう感謝しておく。
上条当麻は空気の読める時もある子なのだ。
「せっかくだ。貴様に悪魔の何たるかを教えてやろう。名前は何と言う?」
なんてありがた迷惑。
名前を「お節介・フェニックス」と改名する事をお薦めする。
もしくは焼鳥。
「えと……上条当麻です」
「なるほど、上条当麻か……………………ん?」
上条が名乗るや、ライザーは不可思議そうに彼を見る。
上条の発音が聞き取れずにいたのやもしれない。
特別に噛んだ記憶はないのだが、ここは念のためにもう1度名乗り上げるべきか。
「貴様が……上条当麻だと!?」
驚きたいのはむしろこっちなのだが、そんなものの腰などとっくにへし折られている。
聞き返そうとする前にライザーが上条の両肩を掴む。
「貴様が、上条当麻かぁぁぁあああああーーーーっ!!」
直後、ライザーのジャーマンスープレックスが上条に火を吹いた。
唐突な出来事に身を丸くしながらダメージに備えるしか上条には出来なかった。
見事に目論見は成功し、ライザーのプロレス技を何とか最小限のダメージで回避する。
「そしてぇぇぇえええええ!!」
上条が起き上がり様、ライザーは畳み掛けるように上条の懐に飛び込む。
流れる動作でライザーは膝を折り曲げ、地面に着ける。
更には両手を着いて額を床に擦り付けた。
「妹を助けてくれてありがとぉぉぉおおおおおーーーーっ!!」
まさに全力での謝礼の言葉だった。
ジャーマンスープレックスからの流れで感謝される謂われに心当たりは一切ないのだが。
「妹って誰……」
「いや、分かってる。皆まで言うな。名乗り出たいのに出れない。何せ身分違いの恋なんて無理無謀な話なんだからな」
立ち上がりながら勝手にライザーが力説をなされる。
上条には何が何やらさっぱりだ。
「しかし!! 兄として、何処の馬の骨とも知れない男に、あんなにも大事な可愛い可愛い妹をやれるものか!!」
血の涙を流してるように見える。
少なくとも妹が大事なのは伝わってくる。
「あの、魔方陣がまた光り出しました」
アーシアが魔方陣の方を見た。
先程のものと同じものだ。
何事かと思いながら上条は魔方陣を眺める。
「来たか。我が眷属」
ライザーの眷属――上条にとっては初のリアス以外の悪魔の眷属となる。
グレイフィアがどうであるのかは聞いてないので、そちらは考えない方向で。
「ライザー様。遅れて申し訳ありません。我らも着きました」
「ご苦労」
あの中では代表なのだろう。
上条から見てもかなりナイスバディと言える女性が言った。
ライザーは労いの言葉を掛けながら眷属の到着を喜んだ。
「さて、俺の眷属を呼んだのは他でもなく――」
「上条様!!」
喜悦に満ちた声音で上条の名字がライザー側の眷族から上がる。
声も何処かしらで聞き覚えがあった。
記憶の引き出しから声紋を一致させるよりも早くに上条に弾丸がごとく突っ込んでくる人影。
「ごぶっ、ふぅぁっ!?」
我ながら訳の分からない事を口ずさみながら己に降り掛かった不幸を理解しようとする。
上条の腹に頭突き――本人としては飛び込んだつもり――を喰らった。
おかげで尻餅を着くはめになり、半身を起こした状態でタックルをかました犯人の面を拝む。
「お前、レイヴェル!?」
「はい。この前ぶりです上条様!!」
満面の笑顔でレイヴェルは上条との再会を喜んだ。
姓が同じなのをもっと早くに気付くべきだった。
ライザーはレイヴェルの兄という事となる。
「驚いたな。レイヴェルが此処に居るだなんて……」
「お兄様が『ハーレムなら妹キャラも必須だからな』と仰り、私を眷族にしたのですわ」
「止めろぉぉぉおおおおお!! そんな暴露はしないでくれぇぇぇえええええ!!」
隣でライザーが血を吐いていた。
彼の眷族達は理解があるようで、苦笑いで済ませていた。
「本当は乗り気では無かったのですが、上条様に会えると思って居ても立っても要られなかったのです!!」
「お、おう。ありがとうな」
顔を急に近付けられればたじろいでしまう。
それにしても上条に会えると聞いて、来てくれたなんて嬉しいにも程がある。
そこへ、ライザーがチョコチョコと上条に耳打ちをした。
「実はな、レイヴェルは助けられてからというもの貴様の話ばかりをするんだ」
「俺の話?」
「ああ。よっぽど貴様の事が気に入ったのだろう。貴様そっくりの人形まで造り出す始末だ……」
言葉が後半になるにつれてライザーの上条を見る目付きが怨みがましいものに変化していく。
上条はと言えば、その変化にただ震えるだけだ。
「では上条様。早速行きましょう」
「えと、行くって……何処へ?」
「決まっていますわ」
ゲームセンターかな? などと検討違いな思考をしてしまう。
次に放たれる一言に上条のみならず、この場の全員が面喰らう事となる。
「私と上条様の結婚式場ですわ」
瞬間、氷河期が訪れた。
たっぷり数秒を用いて、上条当麻はようやく再起動した。
「ま、待て。どうして……」
「俺は認めんぞ!! レイヴェルが認めようが、俺は絶対に認めんぞ!!」
ライザーの怒号が響き渡る。
上条からレイヴェルを引き離し、彼を威嚇してくる。
フェニックス――不死鳥の一族というよりは狂犬にしか見えなくなる。
「結婚なんてさせません!!」
否定の声が轟くと同時に窓ガラスを割って、人が入ってきた。
床をゴロゴロと転がりながらも即座に立ち上がる。
「って、バイサー!?」
上条を奪う気配を聞き付け、バイサーが乱入。
「聞きづてなりません。ダーリンを奪うだなんて、私が許してはおきません」
「言いますわね。あなたは上条様の何なのですか?」
「愛の奴隷です」
「何をどや顔でとんでもない事を言っとるんですか!?」
バイサーの乱入は鎮静化どころかよりカオスな渦へと飛び込む為の準備にしか過ぎなかった。
バイサーとレイヴェルがにらみ合い、ライザーは上条を睨む。
アーシアは放心し、レイナーレは上条を冷たい視線で釘付けにし、リアスは不満げな表情で、他のオカ研メンバーは苦笑していた。
グレイフィアが呆れながらもいさかいを収めるまで、混沌のこの状況は続くのだった……。
そして、今回の話題の根源が何なのかを思い出すのには更に時間を要するのだった。
如何でしたでしょうか?
上条さんの前では問題などすぐに転換されてしまうのですよ。
騒ぎを聞きつけてバイサー乱入――この表現がしたいが為の前回のレイヴェルと上条さんの絡みです。
ええ、特に深い意味なんてなくて、たったそれだけの為にやりました。悔いは結構あります!!
そして、ライザーが初っ端からシスコン魂を燃やしている。
この後の展開は作者にも分からない。
頑張ってくれ上条さん!!
次回の更新は再来週の日曜日の予定です。