上条が目を覚ましたのは幾ばくの時刻を経たのか。
だが、目を開けた時には驚きに支配された。
自分とは違う部屋のベッドで目を覚ませばそうなる。
「は? ここは何処だ?」
さすがの上条も状況が把握できない。
さすがに突飛過ぎる。
「あら当麻さん。起きたのですね」
そう言って部屋を訪れたのは上条の実母、上条詩菜(かみじょうしいな)である。
「か、母さん!?」
「どうしたんです? そんな幽霊を見るような目をして」
「い、いや……」
彼女は学園都市外にいるはずだ。
勝手に来る事は難しい。
どういう事なのかと上条が混乱の渦に呑み込まれていた。
「朝御飯の準備ができてますから降りてください。刀夜さんはもう出ました」
上条は何が何やら分からないが、とりあえずは朝御飯を食べる事にする。
何事もなく朝食を済ませた上条は部屋に立て掛けてある学ランに着替えた。
母親に「学校に行きなさい」と急かされて家は出たものの……
「言って学校の場所が分からないんだよな……」
かなりの大問題だ。
解決するには問題もある。
「何やってんのよ」
そんな彼に声を掛ける少女の声が。
これは天の助け!! と上条が元気を取り戻した……が、
「み、御坂!?」
「な、何よ……名字で呼ぶなんてよそよそしい」
そこには学園都市第三位の御坂美琴(みさかみこと)が居たのだ。
制服は学園都市の頃と変わらぬ常盤台の制服……だが、胸のワッペンが常盤台のものではない。
別の中学だろうか。
「どうしたのミコト?」
次いで本来は上条宅に居候の身である銀髪のシスター・インデックスまで現れた。
彼女はいつもの修道服ではなく、御坂と同じ常盤台に似た制服に身を包んでいらした。
「インデックスまで!?」
「どうしたのトウマ?」
上条の反応にインデックスも首を傾げる。
「変なのよ。さっき私の事も御坂なんて他人行儀だしね。ちゃんと美琴って呼びなさいよ」
美琴って呼びなさいよ――学園都市第三位の口からとんでも発言が発射された。
いつものレールガンを喰らうよりも強烈な一撃を見舞われた。
「あ、あの〜御坂さんや……」
「美琴で良いって言ってるでしょ当麻。っで? 何?」
どうやら下の名前で呼び合うほどの間柄のようだ。
そこに驚きつつも、上条は訊ねた。
「お前とインデックスってそんなに仲が良かったか?」
ひょっとしたら上条が知らないだけで美琴とインデックスが和解するだけの時間があったのかもしれない。
そう思いながら訊ねたところ、むしろ彼女達に訝しげな視線が送られた。
「何言ってんのよ。私の家に1年前からホームステイしてるんじゃない」
「何ですと!?」
上条は不思議なものを見るのと全く同じ目付きでインデックスを観察した。
「何をトウマはそんなに驚いてるのかな? 1年前と違って私は電子レンジだって使いこなせるようになったんだからね!!」
胸を張り、誇らしげに自慢するインデックスは実に微笑ましい。
御坂の家にホームステイしている事から関わりを持っている事はよく分かった。
いや、そうではなくて!!
「ちなみに……俺とお前との関係は?」
「何を言ってるのよ。幼馴染みじゃない。そりゃあ中学3年と高校2年の差はあるけど……」
おやまあ、幼馴染みという何と甘美な響き。
この世に生を受けて「幼馴染み」なんて言葉を使った記憶は一度たりともない。
記憶喪失でもあるので、居るのかすら不明だが。
「とにかく学校に行きましょう。遅れるわよ」
「そうだね」
姉妹のように仲睦まじい彼女達の様子を上条は微笑ましく見守っていた。
「何してるの? 置いてくわよ」
「え? 同じ学校だっけか?」
「何を言ってんのよ。道が同じだから一緒に行こうって言い出したのはそっちでしょ」
ジト目を上条に突き刺す美琴。
本当に上条の預かり知らぬ所で様々な事が進んでいる。
ともかく、他にやる事もないので学校で情報の収集としよう。
学校に来る際に上条は周囲を見渡していた。
学園都市内かどうかを確かめる意味合いが強い。
だけども残念な事に学園都市ではない。
空を移動する飛行船はないし、お掃除ロボットだってない。
何事もなく学校に到着し、インデックスと美琴と別れる。
無事に学校には着けたが、今度は教室が分からない事態に陥る。
はたしてどうしたものか……上条が頭を抱えていると――
「かっ、みやぁぁぁ〜ん!!」
背中に痛みが走る。
紅葉が出来るのではないかと思える程の痛みを生み出した犯人を確認する。
そこにはクラスメイトの土御門元春がいた。
金髪にグラサンという風貌はいつもと変わらないものの、学園だけあって学ランは着ていた。
「土御門か」
「なんだぜぃ!? そのあからさまにガッカリした反応は!!」
上条のあまりにも落胆したご様子に土御門も不服に思えたようだ。
「ふふ、分かったで。上やんは女の子に埋もれてる妄想をしてたんや。間違いない!! ボクならそうするんやからな!!」
エセ関西弁を使いながら土御門の後ろに控えていたのはこちらも上条とクラスメイトだった青髪ピアスだ。
この2人がいつものように上条に絡んでくるという事は少なくとも上条との面識は持っているらしい。
「なあ、お前ら……学園都市って分かるか?」
美琴とインデックスとの登校の最中に問いはしていた。
両名共に同じ回答をハモらせてきた。
「「学園都市って何だ?」」
上条の知りたくもない事を言われる始末だった。
時は過ぎて放課後。
担任の教師が小萌先生なのは救いだったのか、そこは分からない。
ただまあ、見知らぬ大人に担任をされては上条も抱えたい頭を抱えられない。
それでもこの異常事態に上条自身が付いていけないが。
(『
上条が頭を抱える一番の要因は夏休みに学園都市外で起きた入れ替わりの事件よりも厄介な事だ。
あの時は土御門や神裂といった仲間が知恵を貸してくれた。
そして異常事態もしっかりと把握できていた。
だが、今回は上条当麻ただ一人しか世界の異常を察知できていない。
これは由々しき事態だ。
「はあ……不幸だ」
上条は目に見えて分かる程の不幸オーラをその身から放出していた。
そういえばクラスメイトには吹寄や姫神も居た。
他にも見覚えのある生徒、同じくらいの顔を知らない生徒が多数居る。
どうにも“ちぐはぐ”に見える『この世界』は一体何なのだ?
「あら? 随分と辛気臭い顔をしちゃってるわね」
ふと、真正面から凛とした声音が届く。
制服はこの学園――名前を駒王学園と言う――のものである。
綺麗な真紅の長い髪を靡かせたグラビアモデル顔負けのプロポーションに顔立ち。
そんな女性が不幸にまみれた少年に声を掛けてくれた。
「何か悩み事かしら?」
「いやぁ〜、色々とありすぎて困っている事を自覚できないと言うか……」
人には簡単においそれと教えられない内容なだけに、上条は歯切れの悪い返しをしてしまう。
「えーと、ところでお宅はどちら様でせう?」
何とか話題転換を試みようと上条は決死の質問を行った。
初対面なのだし、上条は何とかなると思っていた――
「え?」
素でそんな反応を真正面の紅色の髪の女生徒にされるまで。
ひょっとして何か間違えたのかとも思ったが、彼女は「そうね」と小さく微笑んだ。
「リアス・グレモリー。3年よ」
「俺は上条当麻。2年だ」
外人さんかな?――名前からそう考えた上条。
リアスは上条をじろじろと見ていた……というよりは“観察しているように見える。”
(俺が珍しいのか?)
別段に特筆するような外見でもなかろう。
上条が訝しんでいる内にリアスは「はい」と紙を1枚渡してきた。
「これは?」
「私はオカルト研究会の部長なの。何か困った事があったらいつでも連絡してね」
そう言って上条は彼女に左手を掴まれ、握らされていた。
「それじゃあ」
手を振りながら去っていくリアスを呆然と眺めていた。
「何だったんだ?」
不信に思いながら上条は渡された紙を見てみようと、右手で掴み直した。
異能の力なら何でも打ち消せる摩訶不思議な右手で。
パリィィィンッ!!
上条にとって聞き慣れた音が響く。
ガラスが割れたような音。
「は? え?」
上条の右手に宿る『
「な、何を壊したんだ?」
恐る恐る紙を見てみると『あなたの願いを叶えます』という文章と魔方陣が書かれていた。
この魔方陣がミソなのだと分かるのに数秒も要さなかった。
「何だってんだ?」
上条は巨大な溜め息を吐いた。
出てきたのはリアスだけでした。
禁書のキャラもこんな風に出していきます。
松田と元浜も居なくなっていた。
やっぱり上条の男友達と言えば土御門と青髪ピアスでしょ!!
では次回。余裕があれば来週の日曜日にでも。
遅くなりそうな場合はここの前書きに付け足しておきます。