リアルの方が忙しかったもので。
続きです。
「どうなっているの!?」
上条とライザーの対戦の最中に突如として出現した正体不明の存在によってカメラの術式が破壊された。
それだけならいざ知らず、転移の魔方陣さえ壊された。
この事に大きく動揺を見せたのはリアスだ。
「落ち着いてリアス・グレモリー」
落ち着きのないリアスにさえ聞こえる凛とした声はレイナーレのものだった。
上条が乱入すると同時に忍び込んだのだろう。
「あいつからこうなる事は予め聞いていたわ」
「トウマはこの事態を予測していたの!?」
なら、尚更話さなかった理由を知りたくなる。
それに応えるかのようにレイナーレは告げる。
「詳細は教えてくれなかった。だけど、今回の一件はあいつに関わりのある存在が絡んでる可能性が高いって。
しかも、もし勝てるとしたら自分しか居ないとも言っていた」
「トウマにしか勝てない……」
リアス達にとって上条当麻の代名詞は『
しかし、もう1つ。上条当麻本人にとっての代名詞の『
もしも前者ではなく、後者の意味合いになるのならば確かに上条当麻にしかなし得ない事柄だ。
(けど、私は……待っている事しかできないの!!)
眷属が主の為に戦うのを指を加えて見ているしかない自分が情けない。
「大丈夫よリアス・グレモリー。あなたはあいつの助けになっているのだから」
「トウマの助けに……?」
「『
レイナーレに指摘され、リアスはハッとなる。
「でも、何故その事を?」
「それだけで勝てるのか聞いたら『
トウマがそんな事を――リアス奪還の際にそんなやり取りも交わされていたのか。
ここまでの展開を予測して、上条当麻は動いていた。
これから……どうなるのかは、上条の行動によるのだろう。
「だから、今は無事を祈るしかない」
「ええ、そうね」
上条当麻との約束を思い出す。
彼はリアスに強さを見せ付け、そして進むべき道に『幸福』があるのだと示してくれた。
その時の彼の言葉に嘘偽りはないのだろう。
「勝ちなさいトウマ」
自分の眷属の勝利を信じ、出迎える為に転移の魔方陣の復活に全力を注ぐ。
ガープ――そう名乗った正体不明の存在を真正面から見据えながら上条は身構える。
ライザーは気絶を未だにしている。
実質、ここには上条当麻とガープ、それと上条の中に潜むドライグだ。
「何で俺の名前を知ってる?」
「そこの男の記憶で見た」
ガープはライザーを指差して言った。
「あいつを乗っ取っていたって訳だな?」
「そうそう。ちょっと依頼されてね~」
「依頼、だと?」
上条はガープを睨む。
そんな事に気付かず、ガープは調子よく喋る。
「最近、赤龍帝が目覚めたと聞いてね。そいつを探し回っていたんだ。色んな奴の意識を奪い取ってね。そんな時におまえを見付ける事ができた訳だ」
「意識を奪い取る……まさか、はぐれ悪魔が暴れ回っていたのはお前の仕業だっていうのか!?」
「その通~り」
上条の弁を肯定する。
一連の事件の犯人が目の前に居るのだ。
あのゴーラとか言うはぐれ悪魔を通じ、上条当麻のが今代の赤龍帝なのも知ったようだ。
「あの男のレーティングゲーム参加者の中に『
思っているよりも軽い口調だ。
目的を果たせた事で嬉しさが出ているのやもしれない。
「ライザーを今まで操ってたってのかよ?」
「演技が上手かっただろ? 彼の記憶を頼りに使えば可能なんだ」
「てめえ……」
ライザーの事は全然知らない。
でも、彼も助けたいのだと上条当麻は思って来たのだ。
怒りが露になる。
「さて、もう一仕事を終えたら帰ろうかな」
「一仕事だと?」
「そう。上条当麻。『
瞬間、ガープの雰囲気が一変した。
一瞬にして上条と開けていた距離を詰めに掛かる。
直感的に上条は籠手を付けた左腕を頭部を守るように上げる。
直後に腕に衝撃が起こる。
同時、身体も真横に吹き飛ばされる。
「ごっ、ぐっ!?」
地面に倒れ込む形になる。
左腕も痺れたような感覚がする。
「へえ。よく防いだね。勘が良いのか」
ガープは右足の上段蹴りを放っていた。
威力から察するに、下手すれば今の一撃だけで沈んでいた。
しかも恐ろしく速い。
(どう、する!?)
既に
1日に1度が限界だ。
急ごしらえなのは仕方無い。
となると、残されている武器は限られてくる。
「じゃあ、次行くよ~」
まるで戦いを楽しんでいるかのようだ。
上条に次の攻撃を宣言して来るとは、普通はやらない。
(け、ど!!)
宣言後、上条の眼前にガープは立っていた。
音もなく、一瞬にして詰められた距離。
『Boost!! Boost!! Boost!!』
事前に準備をしていたのもある。
3度の強化を数秒足らずで行う。
その行為事態は正解だった。
上条の腹部にガープの拳で突かれる。
「ぐっ!? ああっ!!」
身体を強化されていたので耐える事は出来た。
何とか半身を右に向ける事で受け流す事に成功した。
「らあっ!!」
上条の右拳がガープに振るわれる――筈だった。
「っ!?」
しかし、上条の攻撃に“大きく間合いを取った。”
『相棒』
「ああ」
ドライグがその事に敏感に反応し、上条は頷いた。
今のは“いくら何でも大袈裟過ぎた。”
よくよく考えればガープは上条とははぐれ悪魔で何度も対戦してきた。
その際、上条の右手が能力を打ち消すのを見てきた。
更には上条の右手がガープの洗脳を解いてもいる。
それにしたって、ただ殴られるだけなのに警戒するような行動が意味するものは――。
(あいつには『
上条の勘が正しいならほぼ間違いなく右手で触れば相手は大ダメージを負うか、“消え去る。”
ただ触るだけで良いなら上条にも勝機はある。
『だが、相棒。どうやってあいつに触れる?』
「そんなの決まってる」
ここ一番で運に頼るような真似はしない。
自身の不運さは折り紙付きだ。
こういう時、上条は決まって秘策を生み出す。
今回はわりと分かりやすい。
上条の右手は盾にも剣にもなる。
何度も握っては開く事を繰り返す。
(問題は……)
それでは『
ガープを捕まえるのは必須条件だ。
勘ではなく、確実に動きを見極める必要がある。
『
だが、必殺である右を使おうとした瞬間に効力は消える。
「戦いの最中に考え事なんて……余裕だね~」
気付けば、自分で作った間合いを短くしたガープが出現していた。
あまりにも唐突すぎる。
いくら考え事をしていたからと、それで敵の動き全てを見逃していた訳ではない。
ほぼノーモーションでガープはこちらの懐に飛び込んできた。
腕の動きやガープの傾向から鳩尾の辺りを守る事を選択。
咄嗟に籠手をそちらへ手繰り寄せ、見事に予想は正解した。
ガープの前蹴りが放たれるものの、しっかりガードする。
だが、それだけでは済まなかった。
「なっ!? う、おっ!?」
上条の身体がボールのように背後に勢いを付けて転がっていく。
何回転をしたのか覚えてられぬ程に視界は回った。
「づっ!?」
『大丈夫か!? 相棒!!』
「何とか、な!!」
強化の暇なく受けた痛みはかなり大きい。
身体に渇を入れて立ち上がる。
『何だあいつは。まるで瞬間移動してるみたいだぞ!!』
「瞬間移動……」
学園都市で出会った2人の
彼女らもこのように突然に現れ――
(そうか!!)
同時、上条当麻は1人の魔術師を記憶の棚から引っ張り出す。
トール――雷神の名前を冠した魔術師だ。
彼は敵の死角に移動する、言わば勝利する為の瞬間移動を行っていた。
もしも、ガープの移動手段がそれに類似したものだとしたら?
「試してみるか……」
先程まではやらなかった行動を取る。
ガープが切り込んでくるよりも先に、こちらから打って出る。
『Boost!! Boost!!』
2度の強化を施しながら真っ直ぐ、正面から突撃する。
「馬鹿正直だなあ」
上条の行動に呆れながらもガープは一瞬にして上条の眼前に現れる。
しかし、今度はこちらも予測はしていた。
「うおおおおおおっ!!」
『
「おっ!!」
ガープの動きに対応した事に多少の驚きがあった。
しかし、難なく上条の左ストレートは掴まえられる。
だけれど、左は上条にとって利き腕ではない。
強化された身体能力に物を言わせた攻撃でしかないのだ。
つまり、必殺の右が彼には残されている。
掴まえてくれたのは正直に言えばラッキーだ。
もし避けてしまうなら更に強化して距離を詰めるつもりだった。
だから、これは僥倖である。
「うおおおおおおっ!!」
再度、上条の咆哮が鳴る。
今度はガープにとって恐らく一撃必殺。
一発逆転を狙える上条当麻の
「っ!?」
油断が生んだ隙――だけども、咄嗟に捕まえた腕を放して身体を左へ反転させて後ろに跳ぶ。
その際、上条の脇に蹴りを入れた。
「ぐわっ!?」
右拳はガープの頬を掠めるだけに終わる。
そして上条自身、苦痛に顔を歪める。
吹き飛ばされる事は無かったが、思わず膝ま付いてしまう。
『相棒。平気か!?』
「あ……ああ、何とか」
反撃に転じた代償は大きかった。
けど、その代償に見合うだけの価値は手に入れた。
「やっぱし、お前は俺の真正面に移動する能力があるな?」
「おおっ!! 凄い!!」
ガープの反応から正解を引き出せたらしい。
「けど、見破ったところで――」
突如、ガープの姿がボヤける。
次に現れた瞬間には上条の前に立っていた。
咄嗟に左腕を上になるようにして十字を腕で作る。
次の瞬間、ドンッ!! という効果音がしそうな程の衝撃が上条に襲い掛かった。
「追い付けなきゃ、意味がない」
上条は衝撃の余波に体勢を崩される。
続けて、ガープが中段蹴りを決めてきた。
肺から酸素が出る暇すら与えてくれなかった。
されるがまま、上条の身体は無様に地面に何度も叩き付けられながら蹴られた方向へ転がっていく。
「ぐっ、はぁっ!?」
呼吸ができた頃には全身に鞭打った痛みが駆け巡る。
『おい、相棒。前』
「ま、まえ……?」
痛みに堪えながらドライグの言うようにする。
そこにはライザーが倒れていた。
それを見た瞬間に、上条の中で何かが弾けた。
地面を叩き、上条は打ちのめされた身体を立ち上がらせる。
「はあ、はあ……」
『Boost!! Boost!! Boost!!』
3回。上条当麻は強化を行う。
「約束したんだ……」
ポツリポツリと、上条当麻は呟く。
内ポケットに手をやり、そこからレイヴェルとアーシアに託された想いを抜き出す。
「必ず。レイヴェルの兄貴を助けるってよ!!」
それを、ライザーへ向けて放り投げる。
それはフェニックスの涙。
浴びればたちまち治癒をしてくれる万能の回復アイテム。
上条には効果はない。
だから使うとしたら“今気絶しているライザーを置いて他にあるまい。”
瓶が割れ、フェニックスの涙がライザーに。
「お、俺は……」
意識を取り戻すのに数秒と要らなかった。
上条当麻と目が合い、次にガープを見付ける。
「何があったかは知らんが、どうやら俺様の敵が目の前に居るみたいだな」
怒り心頭――それを体現するかのように、ライザーはガープを刺し殺すように睨み付ける。
「ああ、そして俺の敵でもある」
ガープにはまだまだ聞き出したい事がある。
上条当麻、ライザー・フェニックス――両者にとっての共通する敵という訳だ。
「ふん、退く気は無いようだな」
「当たり前だ」
「だとしたら、どうするのかは1つ……」
ライザーも上条も、共通の敵を倒したい。
その願望が真正面から激突し合っている。
「「早い者勝ちだ!!」」
どうやら、手と手を取り合う選択肢は無さそうだ。
如何でしたでしょうか?
なんとなく展開的に読めていた人も多かったのでは?
さて、勝負もいよいよ大詰め。
戦闘校舎のフェニックス編もクライマックスです!!
次回も1ヶ月程を目処にみてくれると助かります。