仕事が忙しなくなっていたのがあり、疲れていたせいで全然書けませんでした。
では、続きです。
出会いは突然、不幸は当然
「はあ……はあ!!」
上条当麻は全速力で駆けていた。
そろそろ衣替えの季節が迫るのだが、未だに冬服用の学ランを使用している。
上着のボタンを全部開いて赤いシャツが見えている。
いつもは手に持つ鞄をリュックのように背負っていた。
駒王学園指定の鞄はショルダー、リュック、手持ちの3種類で構成されている。
何故、彼がこんなにも全速力で走っているのか。
その答えは本人の口から聞くのが望ましかろう。
「ち、畜生!! 目覚まし時計が壊れるだなんて聞いてないぞ!!」
更に言うなら遅刻寸前なのだ。
ダッシュすれば間に合うと、速攻で着替えて家を飛び出した。
今は同居しているアーシアは日直、リアスも用事があるとかで先に向かった。
朝が早かった事で上条を起こさない気遣いが不幸の進路を取ってしまった。
嘆いていても時は戻らない。
何とかリカバリーする為に、遅刻を免れる為に上条は走る。
いや、実はもう1つの理由があるのだが――
「み、見えた!!」
時間はギリギリ。
だが、このままのペースなら間に合う。
「良い学校だな」
直後、空気が張り詰める。
上条も思わずに足を止めてしまう程に。
学園から少し離れた場所で、黒いコートに銀髪の少年――雰囲気だけで言えば青年にも見える男が立っていた。
「あんたは?」
上条も警戒が強まる。
得たいの知れぬ存在――しかし、彼の目は真っ直ぐに上条に向けられていた。
「初めましてだな。俺の名はヴァーリ。そっちは?」
「…………上条当麻」
ヴァーリは「上条当麻ね」と名前を刷り込むように繰り返した。
上条はと言えば左手に妙な違和感を覚えていた。
熱いのだ。
不思議と、まるで惹かれ合うかのような錯覚に陥る。
「何か用か?」
「決まっているだろう今代の
上条当麻の中に宿る『
『
それを宿す者を『赤龍帝』と呼ぶのだと後に知った。
『久しいなドライグ』
『アルビオンか。本当に久し振りだな』
周囲に誰も居ない事を確認し、ヴァーリと上条の手から淡い光が点滅し合う。
同時、ドライグとアルビオン(と言うらしい)両者が対話を始める。
「知り合いか?」
『何だ、まだ話していなかったのか?』
上条の反応からアルビオンはドライグには伝えていない事があると察したようだ。
『ああ、まだ目覚めたばかりだからな』
「ほう、そうだったのか」
ドライグの言葉にか過剰に反応したのはヴァーリだ。
「なら、きちんと名乗らないとな。オレの名はヴァーリ・ルシファー。その『
「な……っ!?」
ヴァーリの発言に上条は驚愕に目を見開く。
自分と対極の存在。
いつだったか、能力者として対極に位置する
故に、その内に『
「名前から察するにお前の親戚か何かか?」
『親戚ではない。ライバル――みたいなものだ。会えば戦いばかりを繰り返す』
「そうなのか」
そういえばドライグとの対話が成立してから忙しない日々を送っていた。
それが故に彼の事は何一つとして知らないのだ。
ヴァーリ――恐らく性格にはアルビオンだろう。
仲が悪いのとはまた違う。
喧嘩仲間に近い関係性と感じる。
「まさかとは思うけど……俺もあいつと戦う運命にあっちゃったりする感じ?」
「そういう事だ」
同時、ヴァーリから殺気が放たれる。
咄嗟に身構えてしまう。
上条当麻の経験則が警戒心を訴えた。
「ただの人間である君にこのオレが倒せるかな?」
ヴァーリの明らかに上条を見下した発言。
だが、上条はそんな事では怯まない。
自分よりも格上――いや、絶対に勝てない相手とも相対してきた。
その最たる『魔神』の殺気に比べればヴァーリの殺気など恐れるに値しない。
上条当麻は己の右拳を強く握り締め――全速力でヴァーリめがけて駆ける。
「はっ!! 『
そんな上条の行動を嘲笑い、ヴァーリは力の差を見せつけるべく、上条の攻撃をいなした後に叩きのめそうとしたが――
その瞬間、上条はヴァーリを見向きもせずに真横を通り抜けた。
「ま、待て!! 何処へ行く!?」
「うっせ!! こちとら遅刻しそうなの、しそうなんです、ほぼ確定なんです!! 三段活用!! てめえの相手なんざしてられるかボケ!!」
上条は振り向き様に意味不明な三段活用と共に言葉を吐き捨てる。
彼にとっては、ドライグとアルビオンの関係性などよりも学校の方が優先なのだ。
「あと、それとだな。お前も早く走った方が良いぞ!!」
上条の発言に首を傾げる。
しかし、直後にこちらへ駆けてくる小さな黒い影があった。
近付いてくるにつれて、正体は判明した。
それは犬だ。
体型はドーベルマンであるが、顔はチワワのような保護欲をそそるものがあった。
大型な身体に相反する子犬さながらの可愛さがあった。
しかし、その犬の瞳は怒りで血走っていた。
ヴァーリも血も涙もない冷血な人格ではない。
ふっ――と、小さく笑みを漏らす。
「どういう事だ!! 上条当麻ぁぁぁあああああっ!!」
「うおっ!!」
前を全速力で駆ける上条に一気に追い付いて見せた。
並走してダッシュする姿はさながら短距離選手に見える。
「いやな、走ってたら尻尾を踏んじまって追い掛けられてるんだよ!!」
「何故そんな事になったんだ!!」
「道で寝てたんだ!!」
「そんな訳があるか!!」
「あったんだから仕方ないだろ!!」
大の男2人が叫びながら駆ける。
「お前、口調からめっちゃ強そうに出てきたじゃん!! 何とかしてくれ!!」
「無理無理無理!! 身体はドーベルマンだけど、顔はチワワみたいに愛らしいとか罪悪感しか沸かないから!!」
出会った時とは全く違うヴァーリの口調。
「そんなの……のわぁっ!?」
「どう、ぐへぇぁっ!?」
後ろを気にしていた弊害か、両者共に前方不注意だった。
上条は閉めきられた門に激突、ヴァーリはその横の壁に顔面から衝突した。
「グォォォッ!!」
その隙に追い付いた子犬がヴァーリの尻噛み付いた。
「オレは関係無いだろぉぉぉおおおおおっ!!」
「あああああっ!! 結局遅刻かよ!! 不幸だぁぁぁあああああっ!!」
二天龍と呼ばれる両者の出会いは突然だった。
その内容は実にカオスだ。
片や閉めきられた校門の前でうちひしがれ、片や子犬にケツを噛まれるという様子だ。
この件を後に『赤龍帝』と『白龍皇』とは違った新たな二つ名が付けられる事になるのを、彼等はまだ知らない。
如何でしたでしょうか?
本来であればヴァーリの登場は今回のシリーズの最後で、こうして対話するのも4巻の頭なのですが……二天龍の事を何も知らない上条、上条の不幸具合を何も知らないで巻き込まれるヴァーリの図をやりたかったのです。
やりたかった小ネタがいくつかあり、そうすると4巻の冒頭がヴァーリとの邂逅のみならず、アザゼルとの出会いのネタで埋め尽くされますので。
つまり、早い話がレイヴェルやヴァーリ同様にアザゼルとの出会いもインパクト強めでとんでもない事にしたいんですよ、はい。
そしてシスコン同様に早速のキャラ崩壊。
ヴァーリの口調? 忘れましたわそんなの。確認し直さないと……
さて、今後にどうなるのやら。果たして彼らの二つ名はどうなるのか?
来月の末の予定です。