仕事に追われて、3巻の内容を見返すのに時間が掛かってしまいました。
あと、木場の能力に関して間違った記述があったとのことで確認作業をしていたら2ヶ月近くも放置していました。
続きです。
普段通り、放課後に部室に顔を出そうと上条は1人で向かっていた。
掃除当番だった事もあり、少しばかり予定より遅くなった。
不幸にも外は生憎のどしゃ降りで、幸運にも準備していた折り畳みの傘をさしているにも関わらずに横殴りに降る雨粒が制服を濡らす。
何処に投書を出せば雨を止ませてくれるのかと妙な事を考えていた最中――見知った顔が前方からやって来る。
「木場」
「上条君」
駒王学園きってのイケメン男子に声を掛ける。
実際、こういった立場になければ上条は木場に唾でも残して立ち去っていた事だろう。
そんな大人げない事は上条当麻は行わない。
なんと人格者なのだろうか(自画自賛)。
しかし、そんな彼にも気になる事はあった。
内容は悪魔関連の事になる事が予想された。
上条は周囲を見回し、誰も居ない事を確認する。
このどしゃ降りだ。音のおかげで近付かなければ会話の内容は遠巻きからでは分かるまい。
近づけば木場が気配を感じ取る筈なので、話を切り出した。
「なあ、木場……最近のお前の様子が……おかしく思えるんだが、気のせいか?」
「……そういう事に気付けるんだ。上条君の観察力って馬鹿にできないね」
上条の指摘に木場は否定の言葉は並べなかった。
推測は正しい――直接的な言い回しをしていた。
「もっと言うなら俺の家のアルバムで聖剣の写真を見付けてからだ。違うか?」
上条は更に踏み込んでいく。
木場は「へえ」と上条の言葉に対し、感嘆する。
「鋭いんだね上条君は」
この短時間でズバズバと言い当てられ、木場は上条の洞察力に舌を巻く。
「僕は基本的な事を最近になって思い出したんだ」
「基本的な事? 眷属になった理由とか?」
「似たようなものかな。僕が悪魔に転生したのは部長の為じゃない」
とんでもないカミングアウト。
これまで聞いた事のない刃のような鋭さを兼ね備えた声音である。
続き、木場は目的を明かす。
「僕は聖剣が憎い。復讐の為に生きている。聖剣エクスカリバーを破壊する為に――」
「そうだったのか……」
木場と聖剣――エクスカリバー――との間に何があったのかは分からない。
そこまで付き合いが長い訳でも、深い訳でもない。
だから、無理に知ろうだなんてしない。
「聞かないのかい?」
「何をだ?」
「…………僕が聖剣を憎む理由」
木場からすれば上条が問い掛けない事の方がずっと不思議でならないのだろう。
「気になるかならないかで言ったら前者だよ。でもさ、無理に聞くのは何か違うと思うんだ」
上条は告げる。
それは偽らざる本音だ。
木場祐斗がどんな人生を歩んできたのかは知らない。
彼の復讐心を聞く限り、きっと根深いものなのだ。
「多分だけど、お前の復讐心は俺がどうこう言ったところで消せるものだなんて思ってない」
復讐に対して上条は言葉をどう投げて良いのか分からない。
それで彼の心が晴れるなら良い。
けれど、そんな軽い気持ちで抱ける感情ではない。
しかし、成し遂げようとしたら悲劇しか生まない事を上条当麻はオティヌスから見せられた世界で“体験させられている。”
他人からの復讐によって殺された世界。
だが、それを実行した者でさえ“平常では居られない。”
「だから、さ――」
上条は告げる。
彼がどうしたいのかを――
「お前が復讐を遂げたいと思った時は俺を呼んでくれ。
一緒に行って、お前が引き返せないところまで行こうとしたら――俺が殴ってでも連れ戻してやるから」
せめて、隣で彼が道を踏み外さないように見張ってる。
誰かを殺そうとするなら止める――上条当麻には共に立ってやる事しかできない。
「そんな事を言われたのは初めてだ」
上条の真意が通じているかは分からない。
でも、自分の為に親身になっている事は伝わったようだ。
「気持ちは受け取っておくよ。でもこれは僕の問題だから……」
ふと、そこで言葉を区切る。
次に木場は意を決したようにこちらを見た。
「いや、ここまで親身になってくれたんだ。話すよ」
何をだ?――なんて野暮ったい割り込みはしない。
自然と、彼は続きを教えてくれる。
「僕が聖剣を憎む理由――さ」
多分、自分の事を主であるリアス・グレモリー以外に話したのは初めての事だと思う。
木場佑斗は傘をさすのも無意味な程に強くなっていくどしゃ降りのなかを歩いていた。
本当は昔の事を思い出し、ここ最近は上の空であった。
上条が部室に来る前に実はリアスにその事を指摘され、嫌気が出てきたので部活を休むという名目で出て行ったところだったのだ。
そんな時に上条とバッタリ出会すとは思わなかった。
(本当、不思議だな)
上条の不幸は狙ったものではなかったであろう。
でも、木場はそれで少し冷静になれた。
このどしゃ降りは熱くなった彼を冷静にさせる為に神様が降らせてくれているのではないかと錯覚させられる。
何よりも、まさか自分から“あの話”をするとは思わなかった。
聖剣計画――数年前までキリスト教内で行われていた聖剣エクスカリバーが扱える者を育てる計画。
木場祐斗はその計画のたった1人の生き残りである。
この計画で集められたのは剣に関する才能と『
内容は非人道の一言に尽きる。
来る日も来る日も非人道的な実験に被験者となった自分達は、自由を奪われ、人間として扱われず、生をひたすらに無視され、踏みにじられた。
生きていたかった。神に愛されていると信じて、聖剣を持つ資格が来るのを待った。
だと言うのに降されたのは「処分」という結末であった。
悲惨、無情、無慈悲――聖剣に対応できなかった事がまるで「罪」と神が神判を下したのかと思った。
その結果が聖剣計画の被験者の死だと言うなら自分達は何の為に実験を受けてきたのか分からない。
今でもあの時の事は忘れられない。
毒ガスを撒き散らされ、倒れ、命を奪われていく同志達の姿を。
木場は何とか逃げおおせたが毒の蝕みで絶体絶命であった。
そこをイタリアの視察に来ていたリアスに救われたのだ。
彼は知る由のない事だが、リアスは聖剣打倒以外でその才能を活かしてもらいたくて眷属悪魔にしたのだと言う。
木場祐斗が歩んだ
決して割り込む事もなく、ただ木場祐斗の中のものを遠慮なく吐き出させるように――。
全てを聞き終えた上条が右の拳を強く握り込んでいた事に真っ先に気が付いた。
怒ってくれているのだ。
同時、彼は何か覚悟を決めたような顔付きにもなっていた。
それは以前にアーシアを救けに行った時やリアスの結婚式の場に乱入した時と同種のものだ。
上条当麻という存在を知らなければ、彼が木場祐斗の事を大切な仲間として寄り添ってくれていたから――信用できなかったであろう。
(でも)
それでも木場祐斗の復讐心が消滅する事はない。
仲間ができ、生活も得て、名前も与えられ――生き甲斐もリアス・グレモリーにもらった。
これ以上の幸せを願ってはいけない。
自分は想いを果たすまで、同志達の分まで生きていていいなどと――
びちゃ。
雨音ではない。
人の……足音だ。
正体は眼前にあった。
神父だ。
悪魔にとって、“木場祐斗にとって”も憎悪の対象となろう。
エクソシストならば牽制してもかまわないとさえ思えた――が、
神父は腹部から血を滲ませ、口から血反吐を吐き出すと、その場に倒れ伏す。
誰かにやられたのか? 木場が思考を巡らせようとした瞬間であった。
「っ!?」
咄嗟に察知した異常な気配。
木場は瞬時に持っていた傘を放り投げ、魔剣を創り出した。
寸前に察知したもの――それは殺気だ。
ギィィィイインッ!!
雨の中で銀光が走り、火花を散らす。
殺気の方向へ身体を向けた瞬間に長剣を振るわれ、襲い掛かってきた。
こちらも神父だ。
そして、以前にも顔を合わせた事のある嫌悪感のある人物である。
「やっほ。おひさだね」
向こうもこちらの事は覚えていたらしい。
白髪のイカレた少年神父――フリード・セルゼン。
アーシアとの一件でレイナーレと手を組んでおり、一戦交えた。
「まだこの町に潜伏していたようだね? 今日は何の用かな? 悪いけど、今の僕は至極機嫌が悪くてね」
怒気を含んだ口調で告げる。
だが、フリードは嘲笑う。
いや、むしろ「なら、好都合」とでも言いたげであった。
「俺っちの方はキミとの再会劇に涙涙でございますよ!!」
ふざけた口調。
木場は知らずに苛立つ。
彼は左手にもう1本の魔剣を創造しようとして――フリードの持つ長剣が聖なるオーラを放った事に目を見張った。
木場祐斗は忘れない。
あのオーラこそ、その輝きこそ――
「神父狩りも飽きてきたところでさ、ちょうどいいや。バッチグーですよ。おまえさんの魔剣とおれさまのエクスカリバー、どっちが上か試させてくれないかね?
ヒャハハハハ!! お礼は――殺して返すからさ!!」
木場祐斗の憎悪の対象――エクスカリバーであったのだから。
如何でしたでしょうか?
今回、木場自身が過去の事を話す形としました。
リアスが話すという展開もありだとは思いましたが、木場が上条に気を許し始めている事を示したかった。
さて、木場が聖剣計画の事を話しています。
それに対する上条の答えはここでは明確化はさせておりません。
彼が抱いたのは怒りか、それとも……?
そして多少の駆け足は申し訳ありません。
想像以上に時間が取れなくなってきたのはあまりにも計算外でした。
1ヶ月以内を目標に毎回書いておりますが……もしかするともっと時間がかかるかもしれません。