体調も戻り、仕事も一段落しました。
年末ギリギリ(現時刻23時という)ですが。
帰宅した上条達を上条詩菜は出迎えてくれた。
「お帰りなさい当麻さん。お客様が来ていますよ」
「お客?」
母の第一声に上条は首を傾げる。
魔術師や超能力が健在とあり、もしかすると土御門辺りではないかと睨んでいる。
「リビングに来ているから急いで下さいね」
母は言うと、リビングの方へ一足先に戻っていった。
上条は何が何やらサッパリであったが、とりあえずは母の言うようにリビングに向かうべきだろう。
靴を脱ぎ、部屋へ向かうのではなくてリビングへ――
「待って」
「待って下さい」
その足を、リアスとアーシアに腕を掴まれる形で止められる。
「行っては駄目よ」
「駄目って……どうしてですか?」
「嫌な感じがします」
次いでアーシアが話を付け足す。
何の意味があるのか、上条には分からない。
2人がこれ程までに危険視をする。
そこは母親が向かったリビングな訳で――――
「なら、母さんが!!」
危険がそこに潜むと言うなら上条当麻は黙っていられない。
しかも上条の母親な上に、一般人の彼女を巻き込めよう筈がない。
上条の発言を聞き、ハッとした様子でリアスとアーシアも手を放す。
全員土足のままでリビングへ急いで駆ける。
「やっほー、久し振りだね当麻くん」
いつもリビングで食事を行う一室のテーブルの椅子を我が物顔で座る少女が居た。
栗毛のツインテールで、上条を呼んだ事から快活そうな事が窺える。
そんな彼女はフード付きの白いローブを身に纏っていた。
「誰、だ?」
上条は当然の疑問を投げた。
この少女の事は上条に記憶にないのだ。
そこで思い浮かぶのが記憶喪失の4文字だ。
上条当麻は夏休みの始まった7月20日より以前の記憶を失っている。
つまり、その頃に会った人物だと言うならばまさしく記憶にない人物となる。
まさかここへ来て記憶喪失以前の人物に出会ったとなると、上条もどのように対応して良いのか分からない。
「あらあら、当麻さんったら幼馴染みの顔も忘れてしまったのかしら?」
「幼馴染み……って、確かイリナだっけか?」
先日、上条の家で行われた過去のアルバム観賞会を思い出す。
その際に(こっちでの)御坂とは別の幼馴染みポジションの存在を明かしていた。
その時の事を咄嗟に名前とセットで思い出したのはファインプレーだろう。
「そうそう!! 当麻くんの幼馴染みの紫藤イリナだよ!!」
上条が自分の事を思い出してくれたのだと感じたイリナが笑顔で席を立って前に立つ。
「わ、悪いな。お前の事を忘れてたみたいでさ……」
イリナの喜びようを見ると、彼女の事を知らない件に詫びを入れたくなってしまう。
しかし、残念な事にこちらには彼女との関わりは全くない。
最初は上条の記憶喪失と関係があるのかと思ったが――それも違うだろう。
本当に幼馴染みで家族ぐるみの付き合いがあるならば、夏休みに学園都市の外へ出た際に両親が紫藤イリナを連れてくる筈だ。
上条詩菜が結構な世話焼きなのを承知しているし、父親の上条刀夜だって呼んでくるのが目に浮かぶ。
それに一番はリアスとアーシアの反応だった。
上条には分からないが、彼女等にはこのリビングから“何か”を感じ取ったのだ。
悪魔と呼ばれる存在が嫌悪感、もしくは脅威を感じるもの…………それはさっきまで話して貰っていた聖剣、ひいては聖なる力に連なるものだと推測は容易くて――
「ところでさ当麻くん」
それは意識の外にあった上条を現実へと引き戻す。
今しがたの上条との再会を喜ぶ雰囲気は一瞬にして霧散した。
代わるように、圧迫するかのような威圧感をイリナは放つ。
その対象は――隣に立つリアスとアーシアへ対してであった。
「何で、悪魔がここに来ているのかな?」
「私達が居たとして、何か問題があるのかしら?」
イリナの問いを、割り込む形で答えたのはリアスだった。
「あなたには聞いてないのだけれど?」
「トウマはオカルト研究部の一員で、部長の私が口を挟むのに何か問題があるのかしら?」
互いに言葉の刃を喉元へ突き付け合う。
一触即発になりかねない雰囲気が漂っていた。
それをしないのは一重に上条の母親がブレーキ役を買っている。
本人に自覚は無かろうが、一般人を巻き込む意思がないのはイリナもリアスも同様らしい。
しかし、この空気をどうしろと――――
「当麻、居る?」
リビングに顔を覗かせたのは御坂美琴だった。
インターホンが鳴った記憶は無いが、勝手に入ってきただろう事は分かった。
「御、坂?」
「ちょっと話したい事があったんだけど……タイミング悪かった?」
さすがに重苦しい空気を肌で感じたらしく、御坂は出直そうか考えていた。
彼女の登場で空気は少しは弛緩した。
「いや!! 全然!! これっぽっちも!! タイミングが悪いだなんて無いぞ!!」
「そう力強く言われても説得力ないわよ」
上条が暗に留まるように言うが、そんな空気ではない事を察している御坂は早く場を脱したがっている。
「と言うか、その人は?」
御坂はイリナを指差して言った。
「ああ、彼女は紫藤イリナ。幼馴染みだ」
「ちょっと待ちなさい」
上条の簡素な紹介の何が気に入らなかったのか。
御坂が待ったを掛ける。
「ずっと当麻の隣に住んでるけど、私はその人を“知らないわよ?”」
御坂の返答が一瞬分からず、しかし分かってもやはり混乱する。
御坂美琴は上条当麻とは以前からの幼馴染み。
けれど、紫藤イリナなる少女の事は知らない――と、はっきり口にした。
「私も知らない……誰かしら?」
イリナも御坂への反応は一緒である。
どういう事なのかと上条の思考も混乱の渦に呑まれる。
「あら美琴ちゃん。いらっしゃい」
イリナに気を取られて忘れていた詩菜がキッチンから出てくる。
「詩菜さん!! この人が当麻の幼馴染みって言ってるけど、本当なんですか!?」
「本当よ。もしかして美琴ちゃんはイリナちゃんと会うのは初めてだったかしら?」
詩菜の感じからも、御坂とイリナが初対面という事実が浮き彫りになる。
「仕方無いわね。イリナちゃんが居たのは美琴ちゃんが物心つく前の話だもの」
詩菜によって語られる過去の事実。
上条は勿論の事ながら知る由もないので語る事は何もない。
「あら? あらあら」
詩菜は上条を見るなりある一点に視線を集めた。
何かと上条は思い、足下を見て――納得した。
「当麻さんだけじゃなくて、アーシアちゃんとリアスさんもなのかしら?」
ゾクリ――第三次世界大戦を乗り越え、『魔神』オティヌスとの対決を乗り越えた上条当麻の手が……震える。
武者震いとか、格好の良いものではない。
恐怖で震えているのだ――――そんな、いくつもの修羅場を潜り抜けてきた上条当麻が。
しかも実の母親が息子へ対してである。
「お家に土足で上がっている訳を聞かせてくれませんか?」
般若のオーラを纏った母に…………叶う子供は居なかった。
ただただ、この嵐が過ぎ去る事を上条は祈る他に無かった――。
如何でしたでしょうか?
遂に自称幼馴染みイリナ。
幼馴染み、良い響きです。
幼馴染みキャラ好きなんですよ、はい。
作者にも幼馴染みの女子は居るが故に、理想を抱いてる感はありますね……って、何の話してるんだか
今回に関してはまさしく自称幼馴染みと呼んでしまう。
そして、御坂美琴という幼馴染みキャラも居る訳で。
上条詩菜の発言からファースト幼馴染みとセカンド幼馴染みみたいな話が出ていますが……
では、次回は2月位までには更新したい……