色々と立て込んでいた事が一段落しましたので。
半年近く経過してようやっと続きです。
内容を忘れてるって? 大丈夫、作者もです(それはあかん)
あれから母親に滅法搾られた。
お説教が終わるまでイリナも御坂も待っていてくれた。
ただ、イリナの方は話は明日にするようで帰っていった。
そして、御坂の方は伝えておきたい事があるからと来た。
何故か上条の部屋で行われ、上条とリアス、アーシアが話を先に聞いておく事に。
内容はと言えば、目下の問題として挙げられている木場の件であった。
話を聞くにフリードと木場が衝突しあったようだ。
人払いの結界も使わずにおり、偶然に通り掛かった御坂が割って入って事なきを得た。
報告は止まらず、やはり木場の様子がおかしかった事にも結び付いた。
リアスも最近の木場の様子は気付いていたので、御坂の話を耳に入れても落ち着けていた。
木場の件はリアスに一任する事となり、そこについては話は終わる。
「丁度良いから聞きたい事がある」
これ以上、先送りにしたくない事柄が上条にはあった。
更に厄介事を抱え込むと想像に難くないのだが……聞かずにはいられなかった。
「お前と、インデックスの事についてだ」
ライザーの一件でしばらく見送っていた御坂とインデックスのことだ。
「お前らは超能力陣営と魔術師陣営とか言ってたよな? あれはどういう意味なんだ?」
「そのままの意味になるわ。私は超能力を持っている、そしてインデックスは魔術を扱える」
そうじゃない。上条が知りたいのは“そこ”ではない。
超能力、魔術などといったものは上条は既に知っている。
「悪魔、天使、堕天使とはまた違った別勢力ね。言わば人間側の勢力と言うべきかしら」
リアスがかいつまんで説明してくれる。
確かに超能力も魔術も人間が扱う力だ。
「じゃあ、教会の人も同じ……って、考えて良いのか? 悪魔専門だろうけど」
アーシアを始め、先程に上条家に足を踏み入れたイリナも教会の者である。
直接に戦ったと言えばフリードが真っ先に思い出される。
悪魔討つべし!!――といった具合の発言が目に余るが、言い換えれば悪魔専門になる。
エクソシストとも名乗っていたし、そう考えるのが自然だろう。
「そうよ。まあ、見た例があれだと信じたくないでしょうけど」
上条の知る戦闘を行う教会の者はフリード位なものだ。
ただ、アーシアという例も存在するので一概に決め付けるのは悪い。
「超能力、魔術は共にそれぞれで悪魔や堕天使と戦う為に人間が求めた力と言ったところよ」
人外に太刀打ちすべく、人間が作り上げたのが『超能力』と『魔術』なのだ。
それならばこの世界に両者が存在している事にも裏付けが取れる。
「なら、その超能力とか魔術はどうやって手に入れたんだ? 話を聞いてると生まれつきじゃないんだろ?」
超能力や魔術は作られた――と今さっき御坂美琴は溢した。
どちらも上条にとっては馴染み深い。
超能力は学園都市で開発され、魔術も人の手によって生み出された。
勿論、上条や姫神のような生まれつきの能力だって存在しているが……そこは例外であろう。
「そうよ。私達の能力は天然素材って訳じゃない。超能力や魔術をそれぞれ開発できる所がある……と言う訳よ」
「そんなの何処にあるって言うんだ?」
少し遠回しになったが、上条は今一番に知りたい事を言葉に変換した。
それらの出所を上条は一番に欲している。
「幾つかあるけれど、私が居たのは常盤台って所よ」
その名前は学園都市内で高レベルの超能力者の通うお嬢様学校と呼ばれていたものだ。
上条の世界と違わず、御坂はそこで超能力を手にした――もしくは超能力について学んでいたと言える。
「そんなの、何処に?」
「調べれば出てくるわ」
「調べればって……」
「だって、常盤台は表向きは普通の学園だもの」
あっさりと提示された回答に上条も開いた口が塞がらない。
「表向きは……って、じゃあ実態は超能力の開発を行ってるのか? しかも学校で?」
学園都市内での事であったから特段気にする必要もない。
しかし、今の『この世界』では意味合いが変わる。
普通の学園の皮を被った異常な場所が存在する――それだけで身震いしてしまう。
「ええ。勿論勉強もしているし、何より超能力を知る者が入学してくるんだもの」
必然、秘密は厳守される訳だ。
「じゃあ、お前のとこの親御さんも超能力の事を知ってて?」
「魔術の事もね」
あまりの出来事に眩暈を起こしそうになる。
上条程の頭のスペックでも何とか付いていけるのは、やはり元々の世界の予備知識があるからだ。
超能力、魔術――いずれの存在も証明はされていた。
しかしながら、何処で行われているのかまでは把握しきれていない。
「信じられないかもしれないけどね」
「いや、信じるよ」
美琴は自分で話していて、信じられない言葉ばかりを続けていた。
だが、上条からすれば現状こそが異常の塊なのだ。
予備知識もあったからだろうか、受け入れるのはすんなりといった。
「そうなると魔術の事も聞いておきたいな」
インデックスが主に所属する団体なのでイギリス清教には何度か力を貸している。
名前からして本拠地はイギリスにあるのだろう。
詳細なんかは上条も知らないが、外国にはあるだろうとフワッとした情報だけしか持ってなかったりする。
「それも良いけれどねトウマ。今は他にも大事な事があるわ」
美琴との会話の衝撃も止まぬ中、リアスは告げた。
「紫藤イリナ――彼女だけではなく、他にもキリスト教会から来ている者が居るわ。
その人物達とは明日、正式に対談すると思うから」
もたらされた新たな情報に…………上条も、そしてアーシアさえも言葉を失うのだった。
翌日の放課後、上条達は部室へ来ていた。
そこでイリナ含め、もう1人とでこの街に赴いた理由が説明されると言う。
信徒にとっては邪悪な存在でしかない悪魔の下へ赴いてくるのだ。
内容は相当に切羽詰まったものだと覚悟しておいた方が良いとリアスからは言われている。
また、イリナともう1人は既にソーナと会っているそうだ。
もう1人の方がイリナに気を遣って故郷を見てくるよう勧めたそうだ。
その間にソーナとリアスとの会談の打ち合わせを行っていたそうだ。
そして今、部室の片隅で向かい合う形でソファーに腰掛けるのは悪魔側のリアスと朱乃、そしてキリスト教会側のイリナともう1人だ。
空気が張り詰めたものになっている。
当然だ。悪魔の本能的に聖なるものは天敵なのだから。
だが、どういう訳か今の上条にはピンと来ない。
右手にある『
「…………」
この空気の中で一際に目立つのが木場であった。
イリナ達を怨恨の眼差しで見ている。
抑え込んでいるのだろうが、それでも内に秘めた怒りは少しでも刺激を加えればいつ爆発してもおかしくない。
彼にとっては恨みの対象である教会の信徒だ。
そうなる気持ちは分からない訳がないのだ。
しかし、いつまでも黙っていてはせっかくの対談も無駄になる。
重苦しい空気を薙ぎ払い、最初に口火を切ったのは――紫藤イリナだった。
「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」
これを聞いて、キリスト教にも派閥がある事を授業で習ったと思い出す。
しかしながら、エクスカリバーがカトリックやプロテスタント、正教会から盗まれる理由が分からない。
イリナの口振りから察するに、聖剣エクスカリバーは複数あると言っているようなものだ。
「聖剣エクスカリバーそのものは現存してないわ」
そんな上条の心の中の疑問を察してか、答えたのはリアスだった。
「ごめんなさいね。悪魔に成り立ての子がいるから、エクスカリバーの説明込みで話を進めても良いかしら?」
「悪魔に成り立て……? ええ、大丈夫よ」
リアスの言葉に戸惑いながらイリナは上条を見ながら頷いた。
「当麻くん、エクスカリバーは大昔の戦争で折れたの」
「え?」
イリナが早速エクスカリバーの概要を説明したが……一瞬でキャパシティがオーバーする内容が飛び込んできた。
かなり短く、聞き取れたにも関わらず上条には難解な日本語だ。
「そして、今はと言えば――」
もう1人――髪に緑色のメッシュを入れた女性が傍らに置いていた、布に巻かれた長い物体を解き放つ。
現れたのは1本の長剣だった。
これが何なのかと首を傾げて――――
「これが、今のエクスカリバーの姿さ」
エクスカリバー――創作上でも扱われる最強クラスの武器だと明かされる。
悪魔にとっての天敵が今目の前にある。
(だってのに……)
リアスも、朱乃も、小猫も、アーシアも、木場も――――誰もが表情を変えている。
全員がこの聖剣への恐怖、戦慄、畏怖を露にしている。
その中で1人、上条当麻は現物を目の当たりにしても何ら感慨が沸かない。
あるのは右手で触れたら壊してしまいそうだから触れないでおく――そういった戒めだけだ。
上条の考えなどお構い無しにイリナは話を続ける。
「大昔の戦争で四散したエクスカリバー。折れた刃の破片を拾い集め、錬金術によって新たな姿となったのさ。その時、7本作られた」
その内の1本が“これ”と言うわけだ。
つまり、このエクスカリバーは後々に作られた新作という話な訳だ。
「私の持っているエクスカリバーは『
自分の得物を紹介したメッシュの女性は再び布でエクスカリバーを覆う。
その布には何やら奇怪な文字のようなものが記されている。
魔術の一種なのか、呪術のような印象を受ける。
これで普段は封印を施していると見て良いのだろう。
続けて、イリナの方も長い紐のようなものを懐から取り出す。
その紐に意志でもあるのか、ウネウネと動き出す。
最終的には紐が形を変え、1本の日本刀おなる。
「私の方は『
自慢気に言うイリナ。
その話を聞く限りは……
「エクスカリバーにはそれぞれ特殊な能力がある?」
「正解」
エクスカリバーが7本に分かれ、妙な能力を目の前で見せてくれた。
『
「悪魔にわざわざエクスカリバーの能力を喋る必要もないだろう?」
「あらゼノヴィア。悪魔だからといっても信頼関係を築かなければ、この場ではしょうがないでしょう? それに私の剣は能力を知られたからと言って、悪魔の皆さんに後れを取ることなんてないわ」
イリナは自信満々に告げる。
それだけの実力を有していると、上条は理解した。
伝説と呼ばれた聖剣エクスカリバーが目の前に2本ある事に感動と同時に何だか複数ある事に複雑な気分となる。
その時、上条は近くでプレッシャーが放たれている事に気付く。
発信源を探るまでもない――木場だ。
エクスカリバーに恨みを持つ彼が鬼の形相で彼女等と聖剣を睨み付けるのは必然だとさえ思えた。
心中を察して余りあるが、ここで感情のままに割り込めば話し合いの席はパーになる。
真摯な態度で敵組織と話し合うリアスの想いを台無しにしてしまう。
「…………それで、奪われたエクスカリバーがどうしてこんな極東の国にある地方都市に関係あるのかしら?」
リアスは胆が据わっている。
変わらずの態度で話を進める。
それに対して、先程にゼノヴィアと呼ばれた髪に緑色のメッシュを入れている目付きの悪い女性が答える。
「カトリック教会の本部に残っているのは私のを含めて2本だった。プロテスタントのもとに2本。正教会にも2本。残る1本は神、悪魔、堕天使の三つ巴の戦争の折りに行方不明。そのうち、各陣営にあるエクスカリバーが1本ずつ奪われた」
奪った連中は日本に逃げ込み、この地へ持ち運んだ。
そう言葉が締め括られる。
リアスは額に手を当てて、息を吐いていた。
きっと、身の回りで起きる様々なトラブルに頭を抱えているのだろう。
上条には他人事には思えず、内心で合掌する。
「それで? エクスカリバーを奪ったのは?」
「奪ったのは『
「堕天使の組織に聖剣を奪われたの? 失態どころではないわね」
ゼノヴィアの返答にリアスは目を見開く。
しかし、これは納得の行く点でもあるとリアスは告げる。
上の悪魔にとって聖剣への興味は薄いものらしい。
そうなると、消去法で堕天使が奪ったとしか考えられないとリアスはぼやく。
「奪った主な連中は把握している。グリゴリの幹部――コカビエルだ」
「古の戦いから生き残る堕天使の幹部ね。聖書にも記された者の名前が出されるとはね」
リアスも相手の名前に苦笑する。
堕天使の幹部と聞いて、話が大きくなりつつある。
「先日からこの町に神父――エクソシストを秘密裏に潜り込ませたが、ことごとく始末されている」
ゼノヴィアが告げた衝撃の内容に動揺が隠せずにいる。
エクソシストの実力は未知数だが、フリードの例を考えると戦闘力は高いと考えても良いかもしれない。
そうなると、この手の話をして彼女等が求めるのは協力だと――――
「そこで私達の依頼――否、注文は私達と堕天使のエクスカリバー争奪戦にこの町の悪魔が介入してこないことだ」
つまり、今回の事件に関わるなと言いに来た訳だ。
ゼノヴィアの物言いにリアスの眉が吊り上がる。
「それは牽制かしら? もしかして、私達がその堕天使と関わりを持つかもしれないと思っているの? 手を組んで聖剣をどうにかすると」
「本部は可能性があると考えているのでね」
その一言にリアスの瞳に冷ややかなものが宿る。
当然だ。自分の領土内に土足で入り込んだ敵が自分のやることに関わるなと言ってきて、更には他の組織と手を組むのを許さないと言ってくるばかりだ。
「上は悪魔と堕天使を信用していない。聖剣を神側から取り払うことができれば、悪魔も万々歳だろう? 堕天使どもと同様に利益がある」
結託してもおかしくない。
だからこそ、先に牽制球を放つ。
「堕天使コカビエルと手を組めば、我々はあなた達を完全に消滅させる。例え、魔王の妹でもだ――――と、私達の上司より」
ゼノヴィアもリアスの睨みに一歩も引かない。
そこにはリアスは何の疑問も抱かなかった。
ただ一点――向こうがリアスを魔王の妹だと認識していることだ。
「あなた達も相当上に通じているようね。ならば言わせてもらうわ」
一拍置き、リアスは確かな強い意志を持って言葉を叩き付ける。
「私は堕天使などと手を組まない。グレモリーの名に賭けて、魔王の顔に泥を塗る真似はしないわ!!」
堂々たる宣言。
それを受けたゼノヴィアは「フッ」と笑う。
「それが聞けただけで十分さ。この町にコカビエルがエクスカリバーを3本持って潜んでいる事を伝えておかなければ何か起こった時に、私や教会本部が様々なものに恨まれる」
それでも協力は仰がない。
悪魔――特に魔王の妹が神側と一時的にでも手を組めば三竦みの様子に与える影響は計り知れない。
そう付け足されて結局のところ、これは“仕方のないことだと悟る。
対立関係にあるのに仲良しこよしで事件を解決しては、敵対関係に亀裂が生じる。
上条には悪魔の事は何も分からない。
それでも、普通では有り得ない何かが起きる事だけは肌で感じた。
「正教会からの派遣は?」
「奴等は今回この話を保留した。仮にイリナと私が奪還に失敗した場合を想定して、最後の1本を死守するつもりなのだろうさ」
「2人だけで堕天使の幹部からエクスカリバーを奪還しようなんて無謀も良いところよ。死ぬつもり?」
ゼノヴィアの言では、自ら死地に飛び込むと前宣言してるようなものだ。
そんな宣伝広告に呆れるのも無理はない。
「そうよ」
「私もイリナと同意見だが……死にたくはないな」
それに対し、イリナとゼノヴィアは確固たる決意をその目に宿して返す。
「死ぬ覚悟で日本へ来たの? 相変わらず、あなたたちの信仰は常軌を逸しているの」
「我々の信仰をバカにしないでちょうだい、リアス・グレモリー。ね、ゼノヴィア」
「まあね。それに教会は堕天使に利用される位なら、エクスカリバーが全て消滅しても構わないと決定した。私たちの役目は最低でもエクスカリバーを堕天使の手から無くすことだ。その為なら私達は死んでも良いのさ。エクスカリバーに対抗できるのは……エクスカリバーだけだよ」
イリナとゼノヴィアの意志は硬い。
きっと、これ等は純然たる事実なのだ。
神様の為になら死ねる――その覚悟が彼女等にはあるのだ。
「ふざけんなよ」
それを、真っ向から否定する声が上がる。
イリナとゼノヴィアのものではもちろんない。
リアスでも、朱乃でも、小猫でも、木場でも、アーシアでもない。
上条当麻だ。
「何を以て『ふざけるな』と言うのかな?」
会談を壊すまいと上条は我慢していた。
本当なら決壊してもおかしくないのは木場の方であるのに、だ。
その理由はたった1つ――――
「死んでも良いなんて言うな」
神様の為に死ぬ――信徒には心に響きそうなフレーズだ。
しかし、神様に愛されていない上条当麻には土台共感に到れぬ文言である。
死ぬ覚悟なんて、死ぬ前提みたいな風に言って欲しくなどない。
ただ、それだけ強大な敵がコカビエルだと言うのは上条にも分かる。
イリナとゼノヴィアが上に通じているというリアスの発言から実力面においても相当なものだと推測できる。
それでも、コカビエルには“生きて帰れるかも怪しいと来た。”
「軽々しく言ってるだなんて思ってない。けど、だからって自分の生きる道を諦める事はないんじゃないのか?」
「そうしたいんだがね。エクスカリバーの破壊を目的としても一苦労だ。何か切り札があれば良いのだけれどね」
ゼノヴィアが思わせ振りな口調で返す。
彼女には何らかの秘策があると言外に告げている。
それでも秘策は秘策――むやみやたらに披露できるものじゃない。
「切り札なら、ある」
上条の発言にゼノヴィアとイリナは疑いの眼差しを送る。
だが、リアスだけは違った。
「トウマ!! それは――――」
「説明しておかないと後で俺が泣きを見るからさ」
リアスの叱咤に近い叫びへ上条は落ち着いた声音で返した。
彼の言い分はリアスにはよく分かっていた。
上条当麻には聖剣に触れない確かな理由があるのだから。
それを証明するかのように彼は右手を突き出す。
「俺の右手には『
こちらの世界に足を踏み入れてから何度か説明した謳い文句を今一度告げる。
この
オカルト研究部の面々も初耳の情報に驚いていた。
しかし、先日のライザーとの一戦で黒い炎を打ち消したシーンに得心の行く答えを貰った。
「この右手で触ればエクスカリバーを破壊できなくても、最低でも機能を失わせる位の事はできる」
上条当麻の代名詞の能力――彼にのみ与えられた唯一無二の能力。
その能力さえ使えば、如何なる伝説の聖剣も塵芥にできる自信がある。
あの『魔神』の猛威を奮っていたオティヌスの魔術さえも上条当麻は打ち消してきたのだから。
「信じられないな」
バッサリと、上条の発言を切り捨てたのは他ならぬゼノヴィアだった。
イリナも同じ意見のようで、上条への疑いを持っている。
「そのような能力のある『
「嘘を吐くならもっとマシなものを用意しないとね」
2人は完全に妄言だと思い込んでいるらしい。
それはそうだ。
今でこそインデックスを始めとした面子には周知の事実だが、初めて見た者の反応は胡散臭いものを見る目であった。
記憶を失った上条当麻には知る術がないが、インデックスへ『
「では、そろそろおいとまさせてもらおう」
「そうね」
目的は達せられた。
彼女等は2人だけで聖剣奪還に挑むつもりだ。
そんな無謀な挑戦をさせてはいけない。
上条の話に耳を傾けたのならば、話を聞く位はしてくれる筈だ。
どうにか引き留めようとして――――――
「ここへ来て、もしやと思ったが…………『魔女』アーシア・アルジェントか?」
それよりも先にゼノヴィアが足を止める。
彼女はあろうことかアーシアに問い掛けていた。
「あなたが一時期内部で噂の『魔女』になった元『聖女』さん?」
イリナも食い気味にゼノヴィアの話に乗っかる。
アーシアは困惑し、言葉に迷っていた。
「『悪魔』? 『聖女』? 待て待て、一体何の話をしてるんだ」
突然出現した新ワードの数々に上条は待ったを掛ける。
上条の言葉から信じられないものでも見るかのように、ゼノヴィアとイリナは答えた。
「彼女は癒す能力を持っていた。どんな状態をも癒せる能力を使ってきた結果に彼女は『聖女』と崇められるようになったわ」
「しかし、悪魔や堕天使をも癒す能力を有していたが為に『悪魔』と称され、追放されたのがアーシア・アルジェントだ」
それがまさか悪魔になっていたとは驚いた――とまで言われる。
2人の言い分を聞くに、悪魔や堕天使などという相容れぬ存在を癒したが故にアーシアは教会を追放された訳だ。
(それって…………っ!?)
アーシアと初めて出会った時の事が脳裏にプレイバックされる。
彼女は敵対する存在――恐らくは悪魔か堕天使――を『
その話の裏方が今になって明かされた。
「あ、あの私は……」
「大丈夫よ。ここで見たことは上には伝えないから安心して。『聖女』アーシアの周囲にいた方々に現状を話したら、ショックを受けてしまうでしょうから」
アーシアが何か言うよりも先にイリナが柔らかな口調で告げた。
それを受け、複雑きわまりない表情をアーシアは浮かべてしまう。
「しかし、悪魔か。『聖女』と呼ばれていた者も堕ちるところまで堕ちたものだ。まだ我らの神を信じているか?」
「ゼノヴィア、悪魔になった彼女が主を信仰している筈はないでしょう?」
「いや、信仰の香りがする。抽象的だが、そういうのには敏感でね。背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら信仰心を忘れない者がいる」
それと同様のものがゼノヴィアにはアーシアから伝わってきている。
「そうなの? アーシアさんは悪魔になったその身でも主を信じているのかしら?」
「捨てきれないだけです。ずっと、信じてきたのですから……」
悲しみを帯びた表情でアーシアはさらけ出す。
「そうか、それならば…………」
ゼノヴィアが布に包まれていたものを突き出す。
「今すぐ私達に斬られると良い。今なら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べて――――」
「いい加減にしろよ」
ゼノヴィアの言葉に横槍を思いっきり突き刺し、乱入したのは――――上条当麻だった。
「お前はアーシアを『魔女』と言ったな?」
「そうだよ。少なくとも今の彼女は『魔女』と呼ばれるだけの存在だと思うが?」
「そうなんだとしたら……お前は、“お前らはアーシアの事を何も分かっていない”」
間髪入れずに上条当麻はゼノヴィアの意見を真っ向から斬った。
「彼女が『聖女』や『魔女』と呼ばれている事も知らなかったキミが言うと説得力がないな」
「そうさ。俺はアーシアの過去なんて知らない」
上条がアーシアの『
そこには泣きそうな表情が混ざっていた。
「けどな、今のアーシアを見てると彼女は『悪魔』とか呼ばれるような女の子じゃない」
『聖女』として彼女が行った事柄は“当たり前の事象として捉えられていた。”
たった1度、『聖女』の責務を放棄するかのように悪魔を癒した結果が『悪魔』という名に変えてしまった。
「ならば『聖女』だとでも言うのかな?」
「それも違う」
ゼノヴィアの問いを上条は真っ向から否定した。
『悪魔』でもなければ、『聖女』でもない。
ならば、アーシア・アルジェントは何とされる?
「『聖女』ではない事には賛同しよう。
彼女の信仰が足りなかったか、偽りかは分からないが……神は愛してくれていたのにも関わらず、こうして悪魔の眷属となったアーシア・アルジェントに『聖女』の資格なんて最初からなかったのだろうからね」
「そんな大層な御託はどうだっていい」
ゼノヴィアの信仰に酔った意見など、上条当麻には然したる興味がない。
そもそも、上条当麻には信仰の気持ちが分からない。
彼程、神に嫌われ、不幸に愛された人物など居はしないだろう。
だから、率直な想いを上条当麻は告げてやる。
「アーシアには『聖女』だの『悪魔』だののレッテルなんて必要ない。必要なのは『心優しい女の子』って肩書きだけだ!!」
上条とゼノヴィアの視線が激突する。
「アーシアは大事な友達だし、仲間だ。斬ろうって言うなら俺は全員を敵に回してでも戦う」
ハッタリでも何でもない。
上条当麻は本気で告げている。
挑戦的な物言いにゼノヴィアの表情も変化する。
「それは私達――いや、我らの教会全てへの挑戦か? 随分と大口を叩く。グレモリー、教育不足じゃないか?」
「トウマ、お止め――――」
上条を落ち着かせる前に木場が上条よりも前に立つ。
「ちょうど良い。僕が相手になろう」
特大の殺気を発しながら、木場は剣を携えていた。
「誰だ、キミは?」
「キミ達の先輩だよ」
ゼノヴィアの質疑に木場は不敵な笑いと共に返した。
「失敗だったそうだけどね」
瞬間、部室内に無数の魔剣が出現していた。
如何でしたでしょうか?
魔術と超能力に関しても新たな事実が。
本来なら『魔女』だの『聖女』だのは1度目のフリードとの戦いの後に入る筈でしたが、それを何処に持って来るのかと思われていた方々にはお待たせしてしまいましたか。
そして、イッセーとはまた違った上条さんの返し。
『聖女』だの『悪魔』だのとは違う、『心優しい女の子』こそがアーシア・アルジェントなのだと上条当麻は断言してくれました。
会話も多少変わってたりしてますが、そこは二次創作なので多目に……
ではでは、また次回に。夏までには更新したいな