多分、どうしてこうなるのかわからないと思うので、あとがきにて解説をさせて頂きます。
では、続きをどうぞ。
上条はリアスに連行されてオカルト研究部の部室まで来ていた。
部室とは名ばかりで、一戸建ての小屋みたいなものだ。
ここには食べ物やシャワーなどといったものも備えられており、その気になれば住めそうな感じがする。
「ようこそ。オカルト研究部へ」
リアスが案内した場所には部員が勢揃いしていた。
リアスを含めて総勢4人。
それがオカルト研究部のメンバーだ。
「お帰りなさい部長。そちらの方は?」
リアスが部室に戻った事に真っ先に反応した声が。
長い黒髪を黄色いリボンでポニーテールにしたリアスに劣らないナイスバディの言葉が似合う女生徒だ。
「紹介するわ。彼は上条当麻君」
「ども。上条当麻です」
リアスが上条とオカルト研究部メンバーの間を取り持って紹介する。
「あらあら、では私も自己紹介をしませんと。私は姫島朱乃と言います。3年で、ここの副部長の役割を担っております」
大和撫子を彷彿とさせる姿に上条も「おおーっ!!」と驚嘆した。
「塔城小猫、1年生です。よろしくお願いします」
無表情ながら自己紹介を行ったのは白い髪の上条よりも頭一つ以上背の低い少女だった。
小さな背は可愛らしく、上条は微笑ましくなる。
「最後に、僕は木場祐斗だ」
金髪、顔立ちも整っていてイケメンの文字が似合う少年の自己紹介。
「そして……私達全員は悪魔なのよ」
証拠とばかりに全員の背中から漫画に見たような形状の黒い翼が飛び出た。
「これで信じて貰えたかしら?」
「はい。信じるなって言う方が無理ですよ」
これまでの経験則も手伝って、何ら不思議はない。
こちとら天使やら神様やら相手に大舘回りをしてきたのだ。今更その程度で驚く事はない。
「案外あっさり受け入れるのね」
リアスはさも面白いものを見るように上条を見ていた。
まあ、普通なら裸足で逃げ出してしまいそうな状況なのに腰を据えているのだから。
「それで……あの、俺はどうして此処に?」
「君に渡した紙があるでしょ?」
言われて思い出したのは帰り際に渡された魔方陣の描かれた紙だ。
上条の『
「あの紙には私達悪魔が召喚される仕掛けがあったのよ」
「そ、そうなんですか……」
上条は運動もしていないのに汗が出ている事に気づいた。それが冷や汗というものに気付く事はなかった。
「その紙の反応が消えたのが気になって、勝手だけど自宅を調べさせて貰ったわ」
まずい――上条は条件反射にこの手のパターンの次の出来事を予想できた。
大体、彼とは切っても切り離せない縁にある右手の珍妙なる能力のせいだ。
(こ、これは……)
全部洗いざらい吐いて良いものかは判断しかねる。
リアス・グレモリーが「悪魔」なる存在なのは分かった。だが、信用に足る足らないとは話が変わってくる。
(って、考えるだけ意味ないか)
上条は自ら疑う気持ちをゴミ箱へ捨てた。
考えてもみれば、自分を消すつもりならあの夕麻のように有無を言わさずに殺す筈だ。それをしなかったと言うなら――心配など無意味である。
(あとは
彼の右手は“生きた存在には通用しない筈だ。”
以前に土御門が異能で打ち消せる例外で「人間の生命力、竜脈なんかも
まあ、まだ悪魔との触れ合いは行ってないので何とも言えたものじゃない。
「さて、上条君には聞きたい事が結構あるのだけれど……先にこちらの事情を話した方が良いかしら?」
「良いけど……お馬鹿な上条さんにも分かるように分かりやすくお願いしやす」
深々と頭を下げて上条は懇願した。悲しいかな、上条には勉学の才能はない。右耳から聞き入れた事が途中で鼻の穴から出ていってしまう悲しい構造になっている。
「私たち悪魔は堕天使と太古の昔から争っているわ。冥界……言うなれば『地獄』の覇権を巡ってね。地獄は悪魔と堕天使の領土で二分化しているの。悪魔は人間と契約して代価をもらい、力を蓄える。堕天使は人間を操りながら悪魔を滅ぼそうとする。ここに神の命を受けて悪魔と堕天使とを倒しに来る天使も含めると三すくみ。それを大昔から繰り広げているのよ」
「ふむふむ……要は悪魔と堕天使は地獄を巡って争ってて、そこに割り込んでくるのが天使様だと?」
「随分とざっくりしてるけど……まあ、その解釈で間違いはないわ」
かなりかいつまんだ回答でこそあったが、誤りは無さそうである事は内心でホッとしていた。
「ところで……俺が狙われたのが『セイなんちゃら』ってやつのせいだとかレイナーレって奴に言われたんだけど」
「『
「はあ……そんなものが俺の中にねー」
こっそり上条は自分の右手に視線をやる。
そこに宿る『
くどいようだが、彼の右手は異能の力ならば善悪問わずに消し飛ばす。“そんな力が宿っているのに”別の力が宿っていると言われて素直に頷けたものじゃない。
「う~ん。俺の中に御大層な力があるとは思えないんだけど……」
「なら、試してみるのが手っ取り早いわ」
リアスは笑いながらそう言った。はて、それはどういう意味なのかを問う前に木場が答えを出してくれた。
「『
「あれか? イメージするのは『最強の自分』的なやつ?」
「そう。それだね」
なるほど――木場の言うことは実に的を射ているな、と上条は納得した。
「つまり、強そうなイメージをしてみろって事か」
「そういう事だね」
「まずはやってみるのが一番だよ」
木場に促され、上条は立ち上がって言われた通りにしてみる。
(だけど、そう都合よく思い付くもんでもねえ)
彼にとって『最強』の括りになるのは果たしてどんなものか?
やっぱり、ここは架空の存在なんかがイメージしやすい。
例えば龍。かつて1人の少女を救う為に己を犠牲にした錬金術師……彼が想像して創造した右手から現れた“龍”。
「上条先輩。その左腕……」
異変は上条が集中している間に現れていた。
上条の左腕。そこには龍をモチーフにした左手の先から左腕全体を覆う巨大な赤い籠手があった。左手の甲となる部分には何やら水晶が付いていた。そして、籠手全体の様相から“龍”がモチーフのようだ。
「こいつが……」
上条が恐る恐る右手で触れてみる。今後に無意識に触る事だって有り得るのだ。これで壊れてしまうなら今の内で良い。ところが、予想に反して“壊れなかった。”
(右手で壊しきれない? それとも……)
そこまで考えたところで止めた。この左腕にある赤い籠手は上条の右手の範囲外にある力らしい。
「これは『
「何すかそれ?」
「使用者の身体能力を上げる『
「身体能力を……か」
上条はリアスの言った内容をなぞらえながら、内心では「使えるな」とガッツポーズしていた。
なんせ上条の身体能力は普通の高校生と何ら変わらない。それが少しでも飛躍するなら己の右手も活かしやすくなる。
とは言え、それも上条の『
「あと話しておくべきは“これかしらね”」
言いながら、リアスはチェスの駒を1つ取り出した。それはテレビや本の知識で見た事があるので、万年赤点の上条にもすぐに分かった。
しかし、それが意味するところを上条が正しく理解できていない。
「それは?」
「『
上条の問い掛けにリアスは駒を見せながら答えてくれた。
まあ、上条には何が何やらさっぱり分からない単語なので更に謎は尽きなくなる。
「えっと、それには何か意味があるのでせうか?」
「これを使う……と言うよりは埋め込むのかしら? これを体内に入れて儀式をすると、その人は私達と同じように悪魔になるわ」
間違った古文の文法を語尾に持ってきた上条に突っ込まずに、逆にツッコミを入れられそうな答えを投球してきた。
「あ、悪魔ッスか?」
「ええ、悪魔よ」
聞き間違いかと思い、再度尋ねてみればリアスに頷かれた。
「それで、君にも悪魔になって貰おうかと思ってるわ」
リアスの唐突なる注文は上条の口を半開きにさせるのに十分だった。
「今より身体能力は上がるし、様々な言語も分かるようになる。回復力や翼も生えて空を飛べるわ」
「何か露骨なPRが始まった!?」
どうしても上条を陣営に引き込みたいらしい。
しかしながら、彼には最大の障害が立ち塞がる。
もはや再三に渡り上条が問題点として意識している『
仮に体内に入ったとして、その駒の対象が「上条当麻」である以上、己の右手に備わった力は勝手に打ち消してしまう可能性が否定できない。
(それに壊しちゃってもあれだしな)
自分をそうやって納得させながら上条は首を何度も縦に振ってからリアスに断りの話をしようと一歩踏み出した。
しかし、上条は自身がバラエティー顔負けの不幸さをばら蒔く爆弾だと言う事を忘れている。
彼は気付かなかったようで、いつの間にか靴紐がほどけていた。紐を踏んでしまい、彼は前のめりに倒れていく。
「えっ!? きゃあっ!?」
それに巻き込まれたのは上条の真正面で説明を続けていたリアスだ。
上条が覆い被さる形でリアスと共に固い床に倒れ込む。彼の右手はリアスの豊満なるお胸様にダイレクトアタックをしていた。
「あっ……んっ!?」
艶やかな吐息を目の前でこんな美人に起こされて上条は一瞬で我に返る。
(あ、あれ!? これはもしや巷で噂のラッキースケベ!?)
自分の身に起きた出来事に少年漫画の恋愛物でお馴染みの展開が発生した事に驚いていた。
普段から「不幸だ不幸だ」と叫びまくる上条当麻に、遂に神様が「ふっ、そろそろ飴が欲しい頃だろ?」と言いながらご褒美を授けてくれたのだと本気で思えてきた。
「上条先輩?」
メラッ!! 背後から凄まじいまでの殺気が炎となって上条の背中を焦がした。
恐る恐る振り返ると、全身から怒気を振り撒く小猫、「困りましたね」と微笑む朱乃、上条の身に起こる事を同情しているらしい苦笑いする木場の3名がいらっしゃった。
(あっ、これはヤバイやつですねー)
一瞬にして悟りを開く。
神様は非情だった。「引っ掛かったな馬鹿めが」と上条を指差して笑っていた。
死んだかな?――上条はこれから降り掛かる鉄拳が天へ召そうとする一撃だと思っていた。
「ちょっと大変よ!! 上条君!!」
突如として切羽詰まった声を上げるリアスの方を反射的に向いた。
まさか、これ以上にトンデモ展開が潜んでいるのかと慌てていたのだ。
そして、案の定……それは的中した。
「はっ!? えっ!?」
上条は目を白黒とさせながら現状の把握に務めようとした。
何と、左手に装着したままである『
それは数秒と掛からずに取り込まれていった。
まさかの事態に全員が無言になる。時間がこの辺り一体だけ止まったかのようだった。
特に変化を上条自身は感じない……だけども、確実に事態は望まざる方向へと進みたいらしい。
「あの、皆さん」
畏まった上条の態度に全員が注目した。
ゆっくりと、リアスから離れて上条は「すいません」と先に謝った。
「ちょっとこれからうるさいとは思うんですが我慢して下さい」
分かっていた。此処へ来る前から予想していた出来事が的中した。
それを前払いでしたものの、足りなかったらしい。
だから、ここで改めて叫ばせて貰おう。
「不幸だぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああーーーーっ!!」
本日2度目の絶叫が部室に響く。
この叫びは後に駒王学園の七不思議になったとか……ならなかったとか。
はてさて、如何でしたでしょうか?
本編において、とあるファンやD×Dファンの人にも疑問が出たと思うので自分なりの解釈を踏まえて説明させて貰います。
まず説明すべきは上条さんの左腕に現れた「異能」のカテゴリーに入る筈の神器が無事に出現した点です。
上条さんの左腕には正真正銘の神器が備わっております。
無論、これについては作者の中でもある程度のオリジナル設定も含まれておりますが、本文にも書いたようにとある14巻の土御門の言葉をヒントにしております。
幻想殺しは確かに異能の力を消す事ができます。ですが、いくつかの例外も存在しているとの事です。
その最たる例が「生命力」です。人間には目に見えない「生命力」が備わっていると言ってもおかしくはありません。しかも、それは大きく見てみれば異能の力で、本来ならば幻想殺しが触れた時点で人間そのものが死んでしまうという仮説を彼は立てていました。
それにアレイスター等の話や幻想殺しをコピーした恋査の身に起こった暴走、腕を切り落とされた際に生じている光等を考えてみて、明らかに「打ち消す」のとは全く違う作用の力が働いていました。
現にアレイスターだか誰だかは忘れましたが、幻想殺しが異能を打ち消す作用はあくまで副産物的なものであり、本当の力は別物みたいな話があったような無かったような……
ハイスクールD×Dを知っている人は分かっているとは思うのですが、今回はそれらの既にある「設定」を利用して上条の中にある神器は問題なく呼び起こせはします。
使えるのか否なのかは今後の展開をお楽しみに。
正直、ここまで言ってしまうとハイスクールD×Dを知らない人でも上条の神器がどういうものなのか分かってしまうと思うのですが、念のために黙っておきます。バレバレだとは思いますが。
さて、長くなってしまいましたが次回更新予定は来週の月曜日です。
遅くなりそうなら、この話の前書きに予定日を過ぎた後に書いておきます。