続きです。
あとまた今回から書き方が変わっていますが、よろしくお願いいたします。
上条達が駒王学園に到着するのに時間は掛からなかった。
悪魔には翼がある。
街外れに居たとは言え、建物を突っ切れば時間なんてあってないものだ。
しかしながら、上条当麻は空を飛べない。
同じく、悪魔に成り立てのアーシアもだ。
上条は匙と木場に連れられ、アーシアは回復役なのもあり、朱乃に抱えられていた。
イリナはレイナーレとバイサーに頼み、上条宅まで運んでくれる事となった。
そのまま、護衛として彼女等にはイリナに付いていて貰う。
「あの、さ。もっと優しく運べなかったの?」
「仕方無いだろ!! さすがに男を抱き抱える趣味はないぞ!!」
「はは、ごめんね。さすがに抱えられる程の力は無いかな」
上条は運んでくれた事は有り難く思うが、内容があまりにもあんまりだった。
匙と木場が上条の腕を掴んで運んできたのだ。
その様子が完全に「拐われた宇宙人」の図と似過ぎていた。
小猫なんかは顔を反らして肩を震わせていた。
絶対に笑っていたと思う。
「はいはい。トウマをからかうのはこの辺りで。続きは終わってからよ」
「これ続くんでせう!?」
変な語尾になる程の驚きをリアスが何の気無しに告げる。
どうやら問題を解決してもあれは「上条当麻の黒歴史」として語り継ぐ運命にあるらしい。
「何というか、大分リラックスしてますね?」
「トウマのおかげで変に緊張せずに済んでいるの」
普段と変わらぬ様相にソーナが問うと、リアスはそのように返した。
一方、自分の事だが良く分からない上条は首を傾げるばかり。
「グレモリーさん、上条ちゃん」
「おっす、上やん。待ってたぜぇ~」
切羽詰まった様子の小萌先生。
彼女とは対称的に肩の力を抜いている土御門のお出迎えだ。
「なるほどね。情報通は土御門のところだったのね」
土御門の登場でリアスは納得がいったようだ。
正直、土御門は分かるのだが何故小萌まで居るのか?
「何で小萌先生まで?」
「それはですね~。彼女達のお目付け役的な」
上条の問いに小萌はそちらを指差した。
「遅いんだよトウマ」
「全く、何をやってたのよ?」
「インデックスに御坂までっ!? 何だってこんな所まで来てるんだよ!!」
見慣れた修道服のインデックスと常盤台の制服に身を包む御坂美琴まで姿を見せる。
「ここに結界を張る必要があるから来たんだよ」
「私はその護衛ってところよ」
外への被害を駒王学園に止める為の結界らしい。
その役目はソーナを始めとするシトリー眷属とインデックスだ。
御坂はその護衛役だ。
「おい、私を置いていくとは何事だ?」
「いてっ!? オティヌスまでっ!? いや、自分で待ってたのでは!?」
ミニマムサイズの神様がいつの間にやら上条の頭上へと登り、髪を引っ張っていた。
土御門とのやり取りの後に置いてかれたのが不服なようだ。
彼女にも土御門と同様に本来のものとは違う世界の記憶の部分を動画に撮って見せた。
更には本来のオティヌスから置き手紙の形で自身と上条の関係を簡単に説明したものを置いていてくれた。
それでも呑み込むのに時間を要する
その為に彼女は上条に「考える時間をくれ」と言ったばかりなのに理不尽な扱いだ。
「匙。あなたはリアス達と共に戦って。恐らく、あなたの能力が必要になるかもしれない」
「分かりました」
両手を叩き、戦闘への意気込みを見せる。
先程の連携攻撃を見ていたからだろう。
上条としても匙の加入は有難い。
彼の一癖も二癖もある『
「ありがとうソーナ。あとは私達が何とかするわ」
「勇ましいけれど、あなたのお兄様に連絡をした方が良いわ」
何とかする――――口で言うのは簡単だ。
だが、それで何とか出来る程に軽い状況でもないのは確か。
コカビエルの事を知らない上条にだって、これだけの人員が動いている事が奴への警戒の表れなのは見て取れる。
「既にサーゼクス様には打診しました」
「朱乃!!」
割り込むように朱乃が告げる。
恐らく彼女の独断だろう。
非難の声をリアスはあげる。
「リアス、あなたがサーゼクス様にご迷惑をおかけしたくないのは分かるわ。けれど、幹部が来たのだから話は別よ。個人で解決できるレベルを超えているんだもの」
あえて「部長」とは呼ばずに「リアス」と名前で呼ぶ朱乃の必死さが伝わる。
この駒王学園はリアスにとっての領土であり根城、更にはフェニックス家との御家騒動もあったばかりで迷惑を掛けたくなかったのだろう。
だが、朱乃は魔王の力を借りるべきと判断した。
それはリアスにも分かっていよう。
「大丈夫ですよグレモリーさん。何か言われても先生もきちんと説明しますので」
胸を叩き、小萌が後押ししてくれる。
他の面々も先日のリアスの状況を知っていたし、何より緊急事態なのは把握している。
皆でリアスの心配と同時に背中を押してくれているのが分かる。
小さく頷き、了承を得る。
「サーゼクス様達の加勢は約1時間掛かります」
1時間――――コカビエル相手にそれだけの時間を稼がなければならない。
それは長く、辛いものだろう。
「1時間ね」
朱乃からタイムリミットを聞き、凛とした声で上条達へ檄を飛ばす。
「私の下僕悪魔たち、それと匙君。私達はオフェンスよ。結界内へ飛び込んでコカビエルの注意をひくわ。でもこれは死戦よ。それでも死ぬ事は許さない!!」
一拍置き、これは全員へ向けた言葉で大きく“宣言する。”
「生きて帰って、皆であの学園に通うわよ!!」
「「「「はい!!」」」」
リアスの口上は見事に全員の士気を高めた。
上条は改めて右拳を握る。
コカビエルの幻想をぶち殺す為に――――。
「来たか」
コカビエルは到着を待ち兼ねたと言わんばかりの反応だ。
校庭の中央に4本の聖剣が光を発しながら浮いている。
それらを中心に怪しい魔方陣が校庭全体に描かれている。
魔方陣の中央にはバルパー・ガリレイの姿がある。
それを守るかのようにコカビエルは立っていた。
「これは……」
「4本の聖剣を1つにするのだよ」
バルパーは楽しそうに口にした。
純粋に実験を楽しんでいる。
しかし、それは害悪の可能性が十二分に高い。
「あとどれ程で完成する?」
「5分もいらんよ」
「そうか。では、頼むぞ」
コカビエルはバルパーから視線を移す。
リアス、そして上条当麻へと。
「サーゼクスかセラフォルーが来るのかな?」
「生憎と、社長出勤よ。それまでは、私達が相手を――――」
「なるほど」
リアスの言葉は遮られた。
コカビエルが割り込んできたからではなく、直後に爆音が発せられたからだ。
「マジかよ…………」
横で匙が驚いた様子でいる。
彼の視線を追えば、体育館のあった場所に巨大な光の柱が斜めに突き刺さっていた。
あれが堕天使の力なのか?
だとしたらはっきり言って、レイナーレのものとは比べ物にならない力だ。
『ビビってるのか?』
ドライグが話し掛けてくる。
「まあ、さすがにな」
『その割には落ち着いてるじゃないか』
「確かに凄い力だ。だけどさ――――」
『元の世界』でも上条当麻は様々な能力者、魔術師と相対してきた。
中には今のような力を有する存在とも戦ってきた。
何なら、肩に乗る現在は妖精さんと化した魔術を極めた元『魔神』のオティヌスにも放たれた。
けれど、上条当麻が下を向く理由には成り得ない。
こんな逆境なんて“何度迎えた事か。”
それに、だ。
所詮あれは異能の力だ。
銃や戦車など、現代兵器を引っ張り出されるよりも都合が良い。
平常から遠い力なら、上条当麻の『
「“あれなら、何とかなる”」
「突然独り言を呟いたかと思えば、最終的には妙な事を言う」
上条当麻の反応にコカビエルは興味を示す。
そして上条はと言えば「独り言」に反応していた。
「え? 独り言?」
「そうだぞ。先程から何をブツブツと呟いているのかと思ったぞ」
オティヌスからの指摘でようやく理解する。
ドライグの話し声は脳内へ直接語り掛けたものだったのだと。
「あああああっ!! こんなの痛々しいだけじゃんかよ!! ドライグてめぇぇぇぇぇぇぇーーーーっ!!」
『俺のせいかこれえっ!?』
上条の雄叫びにドライグは困り果てる。
その様子を見てクスクスと笑い合う一同。
「なあ、いつもこんな感じなのか?」
「彼が居ると空気が弛緩するんだよね」
匙の問いに木場がそう答える。
どうやら一同の見解も一緒らしい。
「おい、魔方陣を見てみろ」
オティヌスに言われ、上条は魔方陣へ目をやる。
校庭に広がっていたものがバルパーの元へと集まっていく。
その収束は暗に聖剣の統合までのタイムリミットを意図しているかのようだった。
「ほう。目敏い奴も居るな。だが、邪魔はさせんよ」
パチンッ!! 指を弾く。
闇夜の奥から ズシンッ! と地を揺らしながら近付いてくる存在が。
10メートルはあろう巨大な黒い犬が現れる。
何とその犬は首が3つ、頭も同様に3つもある。
「ケルベロス…………地獄の番犬を連れてくるなんて」
「何だか凄いワードが出てきた」
地獄の番犬をしていると言うフレーズはケルベロスという存在の定番と言えば定番だ。
本来は地獄――――冥界へ続く門の周辺に生息しているとの補足がされた。
「俺のペットさ。さあ、この俺と戦う資格があるならこいつを倒して見せろ」
そんなものを連れてきた…………その理由は上条達を襲わせる為だ。
デカい図体にどう立ち向かうべきか、リアス達が思案するよりも我先にと飛び出す影があった。
上条当麻だ。
「トウマ!!」
リアスの叫びを無視し、上条はケルベロスへ向かって駆けていく。
「良いか? 人間。ヤツは私と同様に“実体という結果を手に入れた超常だ”」
肩に乗る『理解者』が駆ける上条にアドバイスを送る。
先程も述べたようにオティヌスは元『魔神』で、現在は力を失う代わりに掌サイズの妖精として安定している。
だからこその前置き。
「灰に触れても燃え尽きた紙が元には戻らないように、貴様の右手で触れれば即倒せる相手ではない」
上条が何度か触れてきた『
いくら超常の存在でも何でもかんでもは打ち消せない。
それは土御門がいつか指摘していたように生命力を打ち消せないのと同義。
本来なら「超常」の存在も「実体」を手にする事で、例外の枠組みへと仲間入りを果たせる。
そんな存在に頼みの綱の右手が機能しないのか?
否、オティヌスはそこから更に予測を立てる。
「私の見立てでは、ヤツは実体があるだろうが確実に『
今さっき言っていたようにケルベロスは本来なら“地獄に居るべき存在との事だ。”
それをコカビエルが人間界へと連れてきた。
ケルベロスの名は物語の関係でも良く聞く“有名な幻想種の名前だ。”
つまり、幻想を殺す力を持った『
左腕にある『
そして、生命体と言う訳なので『
それでも、ダメージを最低限与えられる保障は出来る。
何せ、“地獄と言う幻想的な場所から連れてこられたのだから。”
「ドライグ!! プロモーションだ!!」
『分かってる!!』
『Boost!! BISHOP!!』
恐らく初使用のプロモーション。
その先は
その効果は「魔力の向上」だ。
実際問題、上条には魔力の「ま」の字も無い。
しかし、『
それは単純明快、ドライグが魔力を持つからだ。
以前に『
それと魔力そのものを持たない上条ではいつまで経ってもドライグ自身が目覚めない事を危惧して、本能的に求めた事が理由だ。
恐らく上条当麻から悪魔の気配を感じない理由に繋がっていよう。
そこは今は置いておく。
魔力の向上により、ドライグに何が出来るのか?
『魔力を放とうとしてる来るぞ!! 相棒!!』
「分かった!!」
魔力の感知だ。
敵の攻撃の大半は魔力で行われている。
ドライグの魔力を向上させ、感知へ全振りする。
(けど、今は関係あるか!!)
価千金の情報をドライグはもたらしてくれた。
上条当麻はケルベロスが口を一斉に自身へ向けたのを見た。
『Boost!!』
瞬間、『
一度分だけで十分だ。
上条は足からスライディングして、お留守になっているケルベロスの真下へと滑り込む。
直後、ケルベロスの3つの頭から炎が吐き出された。
既に上条は通り過ぎ、地面を焼き焦がすのみで終わる。
ケルベロスの真下を潜る上条はそのまま真後ろまで滑る。
即座に立ち上がり、上条はケルベロスに向き合う。
一方のケルベロスも回り込んだ上条の方へ振り向こうと身体を反転させていた。
『Boost!! ROOK!!』
その前に上条当麻はケルベロスめがけて跳んでいた。
右拳を後ろへ引くと、一気に解き放つ。
パンッ!!
拳を叩き込むだけにしては奇っ怪な音がした。
風船が割れたかのような破裂音だ。
『
『ギャオオオオオオオッ!?』
ケルベロスの咆哮――――と言うよりも悲鳴に近かった。
3つの頭とも口元から涎を垂らしながら、地面へと倒れ伏す。
『
『ボーッとするな相棒!! 次が来るぞ!!』
ドライグが警告を鳴らす。
上条も条件反射でコカビエルの方を向いた。
光の槍が上条めがけて投擲されていた。
咄嗟に右手を突き出し、バシィィィィィッ!! という音と共に消し去った。
「ほう。どうやらその右手に秘密があるみたいだな?」
先程のケルベロスへの一撃、そして今の光の槍を防いでみせた事がコカビエルの興味を引いた。
コカビエルの視点からしても上条の取った反応は既に条件反射とも呼ぶべきものであった。
ただ考え無しに右手を突き出していたとは考えにくい。
先程、ケルベロスの真下へスライディングしてみせた動きから察知した。
「少なくとも貴様はこの場に縛り付けておく必要がありそうだな。ある意味で魔王等よりも厄介だ」
『
『
「これはまた妙な少年が居ったものだ。じゃが…………」
「まずいぞ!!」
ケルベロスに注意を取られていたのは失敗だった。
真っ先に気が付いたのはオティヌスだ。
4本の
「完成、してしまったの?」
「それだけではない」
リアスの予測は正しくあるが、コカビエルの方から補足があった。
「エクスカリバーが1つになれば、この術式も完成する。そうすれば、この町は崩壊する」
「その時間は、ざっと見る限りは完成後20分ってところかにゃー?」
コカビエルが得意気に話すのに割り込む声が。
その特徴的な語尾を付けるのは土御門元春だ。
彼の登場に慌てたのはこの場を取り仕切るリアスだ。
「土御門っ!? こっちへ来たの?」
「まあ、ねー。どのみち、向こうで俺にはやれる事は無いから――――それに助っ人も連れてきてあるからそれで勘弁して」
「待たせたな」
土御門は自身は戦力にならないと告げる。
その代わり、戦力になる者をこの場に呼び寄せた。
ゼノヴィアだ。
「それと、土産だ」
ケルベロスはもう1匹居たようで、そいつを連れてきたらしい。
胴体を斬られ、身体が黒い煙を上げていた。
ゼノヴィアの細身の身体の何処にそんな力があるのか知りたいものだ。
「聖剣は魔物には無類のダメージを与えられるからな」
悪魔にもダメージが与えられるように、ケルベロスといった一部にも通るようだ。
「それより土御門とやら。良くこの術式を見抜いたな」
「なーに。ちょっと、そういう術式に詳しい歩く図書館が居るだけぜよ」
それがインデックスの事なのだろう事はすぐに分かった。
それでも術式をどのようにして把握したのか――――彼のスパイとしての腕前を改めて認識させられる。
「その術式が収束していくってのは知らなかったけどさ。誰かの入れ知恵かな?」
「ほほ。ちょいと、な」
術式が展開されたままならば上条当麻が触れるだけで終わらせる事が出来た。
土御門はこの現象は偶然ではないと睨む。
ライザーの時のガープのような裏の存在を示唆しているとも言える。
「さて、この術式はこの俺を倒すしかない――――筈だったのだがな」
コカビエルは上条当麻を、彼の右手に視線を落とす。
「上条当麻…………貴様はどうやらイレギュラーが過ぎるようだな」
たった1度しか異能の力を打ち消すところを見せていない。
なのに見抜いてしまっている。
「『
コカビエルの洞察力には舌を巻く。
しかしながら『
もっと突っ込んだ話をすると、その効果範囲等が挙げられる。
何処までを処理できるのかを分からない以上は、上条当麻をエクスカリバーの所へ近付かせないのがベターだ。
だから、コカビエルは上条当麻の前に躍り出る。
サーゼクスが到着するより前に術式は完成する。
だが、その障害が現れた。
今代の赤龍帝の少年、しかも奇っ怪な右手を近付けさせまいとして。
「フリード、せっかくだからそのエクスカリバーを使ってみろ」
「ヘイヘイ」
人使いが荒いなとボヤきながらフリードが姿を見せた。
バルパーの真後ろに居たようだ。
「チョー素敵仕様になったエクスなカリバーちゃんを使えるなんて光栄の極みだね~。ちょっくら、悪魔でもチョッパーしますかね」
イカれた笑みを見せ、フリードは4本のエクスカリバーが統合された新たなエクスカリバーを握る。
バルパーから聖剣を操る因子とやらを貰ったと言っていたから使えるのだろう。
「随分と変わった趣味を持ってる。青髪ピアスにも勝るとも劣らぬ変態だな」
「いや、お前の趣味嗜好も随分と変わってるだろ!!」
「上やんにだけは言われたくないにゃー!!」
フリードの悪趣味とも呼べるものを土御門はあろうことか青髪ピアスの女性の趣味嗜好と同列に並べた。
そこに上条がメスを入れると、土御門から特大のブーメランが飛んできた。
何故味方同士でしょうもない争いを始めるのやら。
「リアス・グレモリーの
「良いのかい?」
「最悪、私は核となっている『かけら』を回収出来れば問題ない」
ゼノヴィアにとって、教会にとって、重要なのは聖剣の核の部分だろう。
フリードが使用している事で、あれは聖剣ではないと論じる。
聖剣とは言えど武器には違いない。
使用者によって用途が、場合が変わるのはご愛敬だ。
そして、ゼノヴィアはこう断じた。
「あれは聖剣ではない――――異形の剣だ」
最早、聖剣としては見ていない。
だから、破壊は構わないとの事だ。
その2人の様子をバルパーは笑って見ていた。
恐らく、そう簡単に壊せる代物ではないと言う余裕から来ているのだろう。
「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』であなたに殺され、悪魔に転生して生き永らえた身だ」
「ほう。あの計画の、か。これは数奇なものだ。縁を感じるよ」
木場がバルパーへ向けて言い放つ。
憎悪の感情を消し去れやしない。
だが、バルパー相手に真正面から向かい、感情的にならずに済んでいる。
それを受けたバルパーは小バカにしたような、嫌な笑みで返してきた。
「私はな、聖剣が好きなのだよ」
突如としてバルパーは語り出す。
それは少年のように純粋な内容そのものだ。
エクスカリバーの伝記に心踊らせていた。
「けれど、自分には聖剣使いの適性が無いと知った」
憧れていたものに届かないと知ったバルパーの気持ちはさぞ絶望に支配されていたのだろう。
聖剣使いに憧れを抱くのも同時であった。
想いを彼は諦めなかった。
それが故に“最低の手段に出たのだ。”
「聖剣使いを人工的に創り出す研究を始めた。そして、キミ達のおかげで完成したと言って良い」
「何? 完成だって? 失敗作だと断じて処分していただろう?」
「そんな事はない。聖剣を使うには因子が必要だからな」
怪訝な様子になる。
無理もない。
木場達の研究は失敗し、用済みだからと被験者を処分したとばかりだと思っていたからだ。
それをバルパー自らが否定した。
話を聞く限りは「因子」とやらが鍵を握っているようだ。
「チッ!! そういう事か。忌々しいな」
オティヌスは話の流れから気付いた。
舌打ちと嫌悪感を丸出しにした表情を添えていた。
「どういう、事だ?」
「恐らく、被験者となった人間の因子のみを抽出し、集めたんだろう」
「随分と頭の回る人形じゃの」
オティヌスの推測は「正解」であったようだ。
バルパーは興味深そうにオティヌスを見る。
土御門もオティヌスの発言を受けて納得のいく顔を見せた。
「なるほどな。因子を数値化でもして適性を調べてたってところか」
「そうさ。被験者の少年少女には因子があったのだがな。エクスカリバーを扱える数値にまでは満たなかった」
土御門も推測を口にすると、バルパーからの補足が入る。
上条にも嫌という程に『聖剣計画』とか言う名前の研究が“如何にイカれた内容なのかがうっすらながら分かってきた。”
「つまり、聖剣使いが祝福を受ける時に体に入れられるのは――――」
「そうだ、聖剣使いの少女よ。持っている者達から聖なる因子を抜き取り、結晶を作ったのだ」
こんな風にな――――そう言いながらバルパーは懐から光輝く球体を取り出した。
その輝きは眩く、聖なるオーラである事を印象付ける。
「聖剣使いの研究は飛躍的に向上した。なのに教会は私だけを異端として排除したのだ。研究資料を奪ってな。だが、私の研究は貴殿を見るに誰かに引き継がれているようだ。私をあれだけ断罪した結果がこれのようだなミカエルめ。まあ、あの天使の事だから殺すまではしてないだろうが」
ミカエルとやらの事は分からない。
殺すまではしていない――――けれど、もしかするとそれと同じ位の苦痛はあるのかもしれない。
「つまるところ、バルパー・ガリレイの完全なる逆恨みって事でOKかな?」
「逆恨みなどと、私を断罪した愚かな天使どもと信徒どもに私の研究を見せ付けてやる。この素晴らしい研究を排除した無能共に知らしめる為にな!!」
バルパーのこれまでの発言から土御門はそう一言で断じた。
本人は違うと返す目的も、最終的には天使達への復讐心が見て取れる。
「同志達を殺し、聖剣適性の因子を抜いたのか?」
「そうだ。この時の球体がそれだ。まあ、3つ程フリード達に使ったが」
「他の奴等は因子の力に耐えられなくて死んじまったけどな!! うーん、そう考えると俺さまはスペシャルだねえ」
ケタケタと狂った笑みを見せるバルパーとフリード。
問い質すまでは抑えていた怒りと殺意が木場の中で荒れ狂っている。
「バルパー・ガリレイ…………自分の研究、自分の欲望の為に、どれだけの命をもてあそんだんだ……」
木場の手が怒りで震える。
声音もこれまでとは違い、低いもののドスが利いている。
「ふん。それだけ言うならばこの因子の結晶は貴様にくれてやる。環境さえ整えば量産できる段階まで研究は進んでいるからな」
バルパーは持っていた因子の結晶を木場へと放り投げる。
ころころと転がり、木場の足元に行き着く。
木場はそれを屈み込んで手に取る。
哀しそうに、愛しそうに、懐かしそうに、結晶を撫でる。
バルパーは興味を失ったのか、木場の方を見ようともしない。
両手を広げ、高らかに口を開く。
「さて、まずはこの街を破壊しよう。あとは――――」
「うるせえよ」
バルパー・ガリレイの宣言を遮り、上条当麻が割り込んだ。
真正面に居るコカビエルを無視し、上条当麻はバルパー・ガリレイへ視線を集中させる。
「結局は、お前は自分のエゴの為に研究を進めるんだろ?」
「そうだよ」
「その為に犠牲を払うと分かってても、か?」
「必要な犠牲だよ」
「良く分かったよ。お前とは平行線だって事が」
決して相入れる事は無い。
彼の研究は、信念は、既に腐っている。
バルパー・ガリレイは自分の研究こそを「正義」だと捉えている。
「お前にとって、研究の内容が仮に「正義」だったとしても“誰も受け付けやしない”」
恐らく、この場の誰にも理解なんてされない「正義」の形だろう。
「天才の行いは、凡人には理解できない。私の研究が「正義」だと理解できないのも無理ない話だ。赤龍帝」
「人の命を平気で踏みにじるのが「正義」だとするなら、俺は絶対にお前とは“分かり合える訳がないな。” バルパー・ガリレイ」
これ程に分かりやすい「悪」の形はあるまい。
だが、それが“100%と言い切れるかは話は異なる。”
これはこの場の全員が「悪」だと断じているからバルパーの行いは「悪」だと断じれる。
道徳的、倫理的観点からも「悪」だと上条は断言する。
「俺はお前の研究は絶対に認めない。例えそれが世界の為になる「正義」の行いだったとしても、だ」
決して、バルパー・ガリレイを肯定するつもりはない。
奴のエゴを上条当麻は決して認めない。
「“俺もあらゆるものを否定した事があるから人の事は言えた義理じゃない”」
上条の発言を受けて肩に乗るオティヌスは視線を反らした。
彼女に見せられた無限地獄――――その最後に見せられた「上条当麻以外が幸福な世界」だ。
上条はその世界を否定し、世界を元に戻した。(それを行ったのはオティヌスだが)
全てを否定した事のある上条がバルパーの発言を否定するのは矛盾がある。
だが、その矛盾を抱えていたとして、それでも――――
「バルパー・ガリレイの腐った研究を認める訳にはいかない」
上条当麻でなくともバルパー・ガリレイの行いが非道なのは火を見るよりも明らかだ。
バルパー・ガリレイの「正義」は間違っているのだから“否定しなくてはならない。”
本人がこちらの言葉を拒んだとしても。
「ふん。俺達の「正義」を否定しているが、どうするつもりだ?」
「そんなの、決まってる」
コカビエルの問い掛けに上条当麻は迷わず答えた。
バルパー・ガリレイ、フリード、そしてコカビエル。
3人がそれぞれの「正義」を抱いていたとして、その内容はとてもではないが上条当麻には無視できないものだ。
認めない、認めてはならない。
他人を犠牲に得られるものなど、あって良い筈がない。
上里翔流の時のように犠牲を払うような真似を、上条当麻は許さない。
後に死ぬ気で彼を助け出したのが、上条当麻が犠牲を許さない事を決定付ける行動でもある。
「お前らが間違った「正義」を掲げて、そのまま誰かを傷付けようとするのなら――――」
上条当麻は右拳を強く握り込む。
真っ直ぐに前を見て、上条当麻は宣言する。
ここへ踏み込む直前に抱いた決意をぶちまける。
「その幻想を、ぶち殺す!!」
「はっ、良く言う。やってみろ。上条当麻」
上条当麻の宣言にコカビエルは不適な笑みをこぼす。
「正義」と「正義」がふつかり合う。
片や守ろうとする真っ直ぐな「正義」で、片や破壊衝動に歪む「正義」だ。
それでも共通項があった。
互いの「正義」には誰にも折れる事の不可能な固い信念で出来ている事である。
如何でしたでしょうか?
いやー、上条さん、お強い。
ケルベロス戦のオティヌスの説明は新約22巻のどっかの存在さんを参考にしました。
肉体を持つなら消滅は無理でも、元々は地獄から連れてきたのならば異能の力で生きている可能性が高く、無理に肉体改造しているとも思えないのでこんな感じの表現をしました。
間違ってたらすいません。
上里の名前とかバリバリ出しといて伏せた言い方をしてしまう。
ソシャゲやってないんで分からないんですが、もしかしてソシャゲとかで出てます?
初使用のプロモーション「僧侶」です。
作中でもあるようにドライグが対象となっている感じですね。
あれ? つまりは上条さんは悪魔に――
とと、これはまた本編で。
勘の良い人は気付いてるかな?
あなたのような勘の良い人は大好きだよ。
コカビエル、バルパーとの問答もキッパリと否定していく上条さん。
上里が能力で何処かへ飛ばされるも助け出した上条さんを考えれば、犠牲が出るやり方を認めないのは確か。
否定するのは当然でしょう。
本編で付いてきた匙ですが、何も出来ずに今回は終了。
結界を張るのに魔術師も居るので人手は足りてるから駆り出しました。
そしていつの間にかケルベロスを倒して訪れたゼノヴィアの強者感。
土御門の来訪。
色々とありますが、今後にどうなっていくか。
ではまた次回に。
ちなみに上条さんは上里翔流を助け出しています。
原作読者なら分かるかもしれませんが、時間軸的にプロローグの部分と矛盾が生じていてますねー。
何故ですかねー?