続きです。
ええ、サブタイ通りみたいなものです。
「え、偉い目にあった……」
依頼主からの帰り道。上条は自転車を押して帰っていた。
依頼主の名前はミルたん。可愛い名前が霞んでしまう筋肉モリモリで強面の男……否、
彼の願いは「魔法少女にして欲しい」などという上条さんにもどうしたら良いのか分からない――上条じゃなくても不可能な願いだった。なので丁重に断ったところ、魔法少女もののアニメを見るはめとなった。
一件目からかなりハード過ぎる展開に上条は身も心も疲れはてた。
その後、リアスからの指示でそのまま二件目にGOした訳だが、そこでは少年マンガトークになってしまっていた。
「で……契約は1つも無し」
上条は大きく落胆していた。
結局、2人の客の所まで行って契約は出来なかった。
上条らしいと言えばらしいスタートでもある。
「さ、最初なんてこんなものさ!!」
この失敗を次に繋げる努力をすれば良いだけの話。
しかし、リアス部長に何と報告すべきか上条は思案していて……スマフォが鳴った。電話の相手はリアスだった。
「リアス部長? どうかしましたか?」
『実ははぐれ悪魔の討伐の依頼が来たの』
「はぐれ悪魔ですか?」
またも知らぬ用語が飛び出してきたもので、上条は鸚鵡返しに訊ねるしかできない。
説明不足に気が付いたらしいリアスが補足説明してくれた。
『簡単に言えば、主の眷属から外れた……要は会社をリストラか、自主退社した悪魔の事よ』
「唐突に分かりやすくなりましたけど、社会不適合者にしか聞こえないですよ」
『それは置いておいて。はぐれ悪魔のバイサーというのだけれど、暴れ回ってるから討伐して欲しいと依頼を受けたの』
「討伐……ですか」
『ええ』
実に当たり前のように電話越しで頷くリアスの様相が上条には目に浮かんだ。
「あの、場所は何処ですか?」
『場所は――』
リアスから場所を聞くなり、自転車に跨がって全力で漕ぎ出した。
「こ、ここか」
リアスから教えて貰った場所に到着した。まず人は近寄らない廃墟。ここにはぐれ悪魔バイサーは潜んでいるらしい。
「リアス部長は『はぐれ悪魔の討伐』って言ってた」
比喩表現でも何でもなく、“本当に殺すつもりなのだ。”
「させらんねえよな」
上条当麻には人死を放ってなんておけない。
いや、まあ悪魔なんだけれども……それでも殺すなんてもっての他だ。
それに、1つ年上なだけの少女にそんな真似をさせたくなんてない。到着は遅くなるとリアスから伝え聞いている。彼女が来る前までに上条がバイサーとやらを説得するしか道は残されていない。
「お邪魔しま~す」
恐る恐るに廃墟へ足を踏み入れる。
「誰か……来たの?」
ケンタウロス――突如として現れた存在に上条はそのような感想を抱いた。
下は獣のような下半身に蛇にも似た4本の尻尾が動き、上半身はグラマラスな女性である。
「あんたがバイサーか?」
「そうよ。私を知ってるって事は……討伐に来たのかしら?」
一瞬、明らかに空気が変わる。
上条も幾度となく経験を積んできたこの感触――間違いなく殺気だ。
「落ち着けって。俺は話をしに来たんだ」
「それは私に実のある内容なの?」
こういった駆引きは苦手な上条は黙るという選択を取りながらバイサーに話し掛ける。
「大人しくこの街を出て欲しい。そして二度と人を襲う真似をしないでくれ」
「………………は?」
バイサーは思わず面喰らう。
真っ先に「止めろ」とストレートに言ってくるはぐれ悪魔の討伐者なんて初めてだ。
何かの罠かとも思ったが、少年から魔力の「ま」の字すら感知できない。大方、名を上げたい悪魔の下っ端が先走ったのだろう。
実力では勝てないと踏んでいるからこその交渉だ。
(だけど、私には通じない)
にやけるバイサーにしかし、勘違いを1つ提示したい。
彼女は上条当麻という少年の事を知らなさすぎる。
「嫌だ……と言ったら?」
「悪いが、あんたを止めさせて貰う」
上条当麻は自身の信念を貫く為に決して虚言は吐かない。
「うちの
そして何よりも……上条当麻は“誰かの為”というだけでも戦える少年なのだ。
「行くぞ!!」
上条は身を低くしながら、矢のごとく飛び出した。
蛇のような尾をバイサーが操って上条に襲い掛かる。
「くっ!!」
左右から上条の上半身を挟み込むように飛んでくる尾を上条は身を屈めて回避する。頭上で尾が衝突しあうのを見計らって再び駆ける。
「甘い!!」
しかし、残る2本の尾が上条に真正面から迫り来る。
「やべっ!!」
咄嗟に上条は左腕を伸びてくる尾の軌道に乗せた。その時、無意識に『
赤い龍を模した籠手を盾に尾を弾いた。
「おっ、いてえ!?」
勢いに押されて地面に尻餅をついた。
「神器持ちか……厄介な」
バイザーは上条が『
(助かった……だけど)
上条は左腕に意識を向けた。
残念な事に使い方を知らない。リアスが言うには身体能力の強化に特化しているらしいが、どう使えば良いのだ?
(例えば――)
自分の力を高めるイメージを明確にする。
『Boost!!』
『
それに合わせて上条の身体に力がみなぎる。
「これか!!」
力一杯、上条は駆け出した。今までにない速度で上条はバイサーに突っ込んでいく。
「ちょこまかと!!」
先程よりも速度を増した上条に驚きながら尾の1本が上条を押し潰そうと振るわれた。
「この、野郎!!」
『Boost!!』
更なる強化を施し、押し潰しに掛かる尾に籠手を出現させた左のストレートをお見舞いする。
利き腕ではないので踏ん張るのは難しいが、強化された身体能力のおかげで力任せに振るっても問題はない。
上条の左ストレートの勢いに負けた尾はバイザーに跳ね返ってきた。
「こうなったら」
バイサーの乳首から液体が噴射された。出し方のギャグセンス高さに目を奪われそうになるが、紙一重でかわした。
地面に当たった液体はコンクリートの床を溶かす。
「マジか……」
戦慄しながらも上条は突っ込む。出した場所、それに状況からこの液体が異能の力だと察した。
「溶けて消えろ!!」
上条に再び襲い来る溶解液に迷わずに右手を叩き込んだ。
バキィィィッ!! と液体が消失したのは直後だった。
「なっ!?」
さしものバイザーも今の光景には驚愕をせざるを得ない。
ただ右手を叩き込んだだけで、こちらの攻撃をいとも容易く消したのだから。
「このまま一気に――」
上がった身体能力に物を言わせてバイサーへの接近を試みようとした……が、先程までの全身に力が行き渡っている感触がしない。
(ま、さか!?)
効果が切れたのかと思ったが別の可能性に行き着いた。
上条の『
この世界に放り込まれてから本来なら右手のせいで起こり得そうにない出来事ばかりが起きていた。左腕の『
使える代わりに上条の『
(ええい、今は考察なんて後回しだ。こいつを止めるんだ!!)
次なるバイサーの一手は上条の背後に迫っていた。
彼の背中を1本の尾が叩く。
「がっ、はあっぐ!!」
痛みを奥歯を噛んで堪え、力の流れに身を委ねながら前転する。
その間に上条は右手を握り込み、ダッシュした。
『Boost!!』
上条が走り様に『
つまり、上条の考察は間違ってない事になる。
(右手はギリギリまで温存。その後、一気に畳み掛ける!!)
背中の痛みは『
さっきの攻撃のヒットからバイサーからの攻撃は激しさを増していく。
溶解液を織り混ぜながら、尻尾が踊る。
その度に上条はしゃがみ、身を逸らし、左腕で払う。冷静さを取り戻し、今も『
はっきり言ってしまおう。『
だからこそ、上条当麻がバイサーの懐に飛び込むのは容易だった。
「いつの間に……っ!? こんなガキに!?」
「悪いな」
『Boost!!』
上条は右拳を強く握る。
左腕でバイサーの肩を掴み、右腕を弓のように引いた。そして、『
「こう見えても俺……場数はかなり踏んでるんだ!!」
異能を全てを打ち消すその右手が……バイサーの頬に吸い込まれていき、彼女の身体は宙を舞った。
はい。これが作者の考えた上条さんと神器です。
本編で上条さんが予想したように神器で強化された力は幻想殺しを一度でも使用(この場合は敵の攻撃を打ち消した際)にリセットされる仕様になっております。
また、上条さんも疑問に思ったように神器の力を扱えている事については追々回収していきますんで。
ちなみにヒントはもう出してあります。分かるかな~?
あとミルたんファンの皆さん登場を端折ってしまって申し訳ないです。
面倒……展開をスムーズに進める為のものです。
あと原作なんかで「はぐれ悪魔討伐」なんてありますが、実際上条さんは看過できないと思うんです。
依頼で相手が悪魔であっても上条さんにとって「何かの死」というものは決して受け入れられる筈がなくて、ましてや身内がそんな事をするなら全力で止めに掛かると思ってます。
それに作者自身、討伐や消滅と言ってリアス部長には命を手に掛けて欲しくないという思いもあったのでこのような形になっていましました。
さて、次回なんですが来週の木曜日の予定です。