FAIRY TAIL 〜『大地』の滅竜魔導士 〜 作:紅蓮大地
「・・・・どうだ、ウェンディ?なんとかなりそうか?」
「・・・・わかんない。傷を治そうとしても、何かが邪魔をして治癒の魔法が効かないの」
現在、いきなり倒れてしまったナツを治すべく、ウェンディが治癒の魔法をかけているが、どういうわけか全く効いていない。たしかに傷はあるが、どれも軽傷だ。それでも、その傷を治すための治癒の魔法を“何か”が邪魔をして傷を治さないでいる。・・・どうすれば、と考えていた時、マカロフが目を覚ました。
「ウェンディ・・・・ナツの・・・・マフラーを・・・・元に、戻せる・・・・かね?」
「マスター、あんま無理すんな。・・・・ウェンディ、できるか?」
「やってみます!!」
そうして、ウェンディがナツのマフラーを治していく。
「・・・・このマフラー・・・・いやに邪気を放ってるけど・・・・誰にやられた?」
「あい・・・・よく分かんない黒髪の不気味な奴にやられたんだ・・・・」
「・・・・もしかして、その男が・・・・」
「・・・・あぁ、多分
「!!!」
「お、起きた。」
「お、おー。すまん、なんでか倒れちまって。」
「気にすんな、治したのは俺じゃなくウェンディだしな」
ナツのマフラーを元に戻して、少したち、ナツが飛び起きる。どうやら、体調は元に戻ったらしい。ウェンディに礼を言って、マカロフの無事を確認した時、何かの匂いを感じとり立ち上がった。
「この匂い!!!・・・・なんでアイツがここに?」
「誰のことだ?」
「ウェンディ、グラン・・アンタ達も同じ匂いを?」
「分かんない・・私はみんなの匂い散満してて場所の特定ができない」
「俺はウェンディよりも鼻が効かないから、さらに分かんない」
「ナツ?誰の匂いを感じたの?」
「ガルナ島で会ったアイツだ!!!」
ハッピーがナツに聞くと、ガルナ島というところで会ったらしい。
「近ェぞ!!!」
と言って、恐らく匂いのした方へ走って向かっていった。それを追ってハッピーも行ってしまった。
「・・・・行っちまったな」
「ナツさん・・・・誰の匂いを感じたんだろう?」
「さぁな・・・・とりあえず、ここで待ってるか」
「うん!!・・・・グラン・・その・・・・馬鹿って言ってごめんね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウン、キニシテネェヨ。」
「思いっきり気にしてんじゃない」
「うわーーーっ!!!本当にごめんねぇぇ、グランッ!!」
実はここにきてからもずぅーーーーと気にしていたグランは、また気持ちが沈み、泣きながら謝るウェンディ。
なんともカオスだな。
「・・・・何というか、ある意味すごいな。この二人は」
「昔からこんな感じよ。少なくとも、私が生まれてから基本こんな感じ。誰に対しても、基本強気でめんどくさがりで割と自分勝手なグランもウェンディの言う事はすぐ聞くのよ。ウェンディがダメって言えば、それまでの怒りが嘘みたいに消えるし、ウェンディに怒られたらそれこそここ一週間の時とおんなじように落ち込んじゃうのよ。」
「こう言ってはあれだが、まるで忠犬だな。」
「ま、グランの場合、忠竜って言った方が正しいかもね」
目に見えて落ち込んでいる者とそれに泣きながら謝る者の横で冷静に話し合う猫達・・・・うーん、カオス。
「ウェンディー!!」
「ナツさん!!ルーシィさんも!!」
ナツと共にルーシィも一緒に戻ってきた。
「マスターの具合は・・・・ってグランどうしたの?」
「まだなんとも言えないわ・・・・グランは気にしないでちょうだい」
ナツ達が戻ってきて今も絶賛落ち込み中のグラン。どんだけウェンディが好きなんだ、コイツ。
と、いきなり目の前に評議員のメストが現れた。
「貴様は・・」
「どこに行ってたんだ、コノヤロウ!!」
「この人が、評議員のメスト」
「本当の名はドランバルトだ」
本名はドランバルトというらしい。別にどうでもいい。
そのドランバルトの話によれば、グラン達を助けたいらしい。彼の魔法が有れば妖精の尻尾のメンバーだけでも逃がせるらしい。・・・・だが
「お断りしますってヤツだ」
「・・・・・・・同意」
「な?」
「なんで私たちが評議員の助けを借りなきゃならないの?」
「ギルドの問題は自分達で片付けるさ。ここの連中は」
「そうじゃない!!聞いてなかったのか!?今のこの状況を本部に知られたら島への攻撃があり得るんだぞ!!!」
「またエーテリオンを落とすつもり!?」
「こりないわね、アンタらも・・・・」
「・・・・その前に潰すだけだ」
「あ、復活した」
「マカロフもやられた!!悪魔の心臓にはまだ恐ろしい奴が残ってる!!勝てる訳ねぇだろ!!!!」
「オイオイ・・・・だから島ごとぶっ飛ばそうってか?」
「どんだけ脳筋思考なんだよ、評議員は」
お前にだけは言われたくないと思うぞ。評議員も。
「この島は私たちのギルドの聖地。初代マスターのお墓もあります。そこに攻撃するなんて・・・・」
「信じらんない!!そんな事したらみんな・・・・ただじゃおかないわよ!!」
「オイラたちはそうやってギルドを守ってきたんだ!」
ルーシィもハッピーも、決して屈する意思を見せない。
「
青筋を立て怒鳴り散らすドランバルト・・・・だが、それでもナツたちは引く意思を見せない。
「いいか、よく憶えとけ。
ナツの睨みを効かされ、ひどく怯えた表情に変わるドランバルト。ちょうどそのタイミングで、空色が荒れていた。
「・・・・ひどく降ってきたなぁ〜」
「ドランバルトさん・・・・大丈夫かなぁ」
「ほっとけばいいのよ、あーゆーのは」
あの後、シャルルとリリーが様子を見に行きその途中でギルドのキャンプがあることに気付き、ひとまずそこに行く事に決めた。
ドランバルトにはとりあえず評議員を止める・・・・もしくは時間稼ぎをしてもらう事にした。
「ん?誰かいるぞ」
と、先頭を進んでいたナツが目の前にいる誰かに気づく。
だが、おかしい事にその男の周りだけ
「!!!」
「な・・・・」
「なに?この魔力・・・・」
「なんでアイツの近くだけ雨が激しいの!?」
「・・・・あー、なんか嫌な予感する」
「肌がビリビリする・・・・」
その男から感じる強力な魔力に全員が嫌な汗を流す。・・・・グランはいつも通りだが。
「誰だ、てめえは!!?」
ナツがそいつに怒鳴る。だがそいつはナツの声を無視してただ一言呟いた。
「飛べるかなァ?・・・・・・・・いや、まだ飛べねぇなァ
ドッ ゴガッ
と強力な重力場がつくられ、グラン達を押し潰した。
「ぐはあ!!?」
「きゃああ!!?」
「ウェンディ!!・・・・あぁ、キッツ」
「あああ!!?」
「う・・動けない・・・・!!!」
「重力!!?」
もの凄い重力に押し潰され身動きが取れないナツ達と、なんとか踏ん張り付いているグラン。
「オレはよぅ、妖精の尻尾にもゼレフにもあまり興味はねえのよ・・・・だけど一つだけ
「・・・・初代の墓ァ?んなの知ってどうすんだよ」
グランが睨みながらその男に聞く。その男は淡々と告げた。
「
「・・・・そんなのあったのか」
「なんだよそれ・・・・」
ズンッ
「ぐおあああああっ!!?」
「・・・・重たい」
「グラン!!ナツさん!!」
「ナツ!・・・・グランはなんで平気そうなのよ?」
「つ・・・・潰れる・・・・」
「・・・・饅頭みてぇだな、ナツ」
「う・・・・ウルセェっ!!」
地面に潰されて動けないナツとまだ立っていられているグラン。本当にアホ程頑丈な奴だ。
「その輝きは敵の存在を許さない無慈悲な光。オレはその魔法が欲しい。メイビスの墓に封じられてるらしいな。その場所を教えてくれんかね」
「・・・・どこに初代の墓があるかしらねぇし、知ってても教えねぇよ。・・・・あー、重たい」
「・・・・お前は少し飛べそうだな」
「飛ぶきはねぇし、飛ばされる気もねぇはボケ」
双方睨み合う二人・・・・だがその男────ブルーノート・スティンガーは倒れているマカロフに気づく。
「お?そこでヨレてんのマカロフ?なーんだ、そいつに聞けばいいのか」
「じっちゃんに手を出してみろ!!!ただじゃおかねぇぞ!!」
「・・・・てかこれ以上仲間に手ェ出したら、二度と飛べねぇようにすんぞ」
潰されながらもブルーノートを睨みつけるナツとグラン。そんな二人を無視してマカロフに向けて歩みを進めるブルーノート。
「おまえかァ!!!!!」
と、そんな時この場に第三者────カナが現れた。
「これ以上仲間をキズつけんじゃないよ!!!」
カナはブルーノートに攻撃を仕掛けたが、軽くいなされる。だが、本命は別にあった。
キュイイィィィンっ!!
「
カナの右腕が光出す。その輝きが、ブルーノートにむけられる。
「まさか・・・・!!」
ズドンッ!!
「うあっ!」
だが重力をかけられ、それは不発に終わった。
「くっ!!?」
「てめぇの持ってるその魔法は・・・・」
「妖精の輝き!!?」
「え!?」
「マジか・・・・」
「・・・・ルーシィ、置いてっちゃってごめんね。弁解の余地もないよ・・・・本当に、ごめん・・・・」
どうやら、試験の途中でルーシィを置いていってしまったらしい。その事を謝るカナ。そしてブルーノートを睨みながら立ち上がる。
「だけど、今は私を信じて。あいつにこの魔法が当たりさえすれば、確実に倒せる!!」
「すごい!!お墓で手に入れたの!!?」
「墓に行ったって事は・・・・オイ・・まさか試験は・・・・」
「・・・・試験内容が墓探し?・・・・え?じゃぁ、試験の合格者は・・・・」
「今は、その話おいとかない?あいつを倒す為に協力して、ナツ、グラン」
「ムゥ」
「・・・・別にいいが、何すりゃいい?」
「私が“魔力”をためる間、あいつをひきつけて!!」
「むぅ〜〜〜!!」
「・・・・分かった・・・・だが、そんな長くはできんぞ」
まだ少々納得できてないナツと、承諾したグラン。そう意気込んだ直後。
「フン」
ズン
とブルーノートが重力を放ち、ナツたちは吹き飛ばされてしまう。
「オレの重力下で動ける者などいねぇなさ。・・・・まさか探してた魔法が向こうからノコノコやってくるとはなァ」
そう言いながら、倒れているカナに向けて重力を強める。
「くぅぅ・・・・!!?」
「その魔法はオレが頂く」
「この魔法はギルドの者しか使えない・・・・おまえらには使えないんだ!!!」
「“魔”の根源をたどれば、それはたったひとつの魔法から始まったとされている・・・・いかなる魔法も元はたった一つの魔法だった」
そう言って、ブルーノートはカナを浮かせる。
「うっっ」
「魔道の深淵に近づく者は、いかなる魔法も使いこなす事ができる・・・・逆に聞くが小娘・・・・てめぇこそ妖精の輝きを使えるのかね」
「うう・・・・ぐ・・・・っ」
「太陽と月と星の光を集め濃縮させる超高難度魔法・・・・テメェごときに使える訳ねぇだろうが」
「だったら、テメェごときも無理だわちょんまげぇ!!」
「なに!?・・・・グッ‼︎?」
カナに気を取られていたブルーノートに近づき、思いっきりぶん殴るグラン。その衝撃で、重力の拘束から解かれるカナ。
「ゼェ・・・・ゼェ・・・・あー!重たい!!」
「・・・・オレの重力下でそこまで動けるとは・・・・お前は他のクズとは違って飛べそうだなァ」
「・・・・ゼェ・・・・ウルセェはクソッ・・・・後、そこにいると燃えちまうぞ?」
「なに?」
「火竜の・・・・咆哮!!!」
ドゴォ!!
「!!!」
「って危なっ!?」
グランが殴り飛ばしたブルーノートに向け、ナツは地中からブレスを喰らわせる。危うくグランにも当たりそうだったが。
「テメェ!!もうちょいしっかり狙ってやれよ!!!燃えやしねぇが、危ねぇだろうが!!」
「んだとぉっ!!だったらもうちょっと吹き飛ばせばよかったじゃねぇか!!」
グランとナツが言い争ってる中、ブルーノートは無傷のまま炎の中から出てきて、ナツ達に向けて重力を放つ。
「邪魔だ、クズがァ!!!」
ズドォッ!
「うああ!」
「きゃああ!!」
「あうう!!」
「ウェンディ!!・・・・・・・・とナツとルーシィ!!」
「あたし等はオマケか!!?」
ナツと一緒に近くにいたウェンディとルーシィも吹き飛んでしまい、それを心配(特にウェンディを)するグランとそんな状況でも元気にツッコミを入れるルーシィ。
「ナイス!グラン!!!ナツ!!!」
「!」
だが、今の一連のお陰でカナに魔力が溜まった。
「行けーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」
「・・・・ぶちかませっ!!!」
カッ
カナを一つの光の柱が包み込み、光出す。そしてその輝きは更に強くなる。
「集え!!!妖精に導かれし光の川よ・・・・照らせ!!、邪なる牙を滅する為に!!」
「バカな・・・・ッ!!?」
そして右手をブルーノートに突き出して・・・・その魔法を放つ。
キイィィィン
ブルーノートを取り囲むように放たれる妖精の輝き。
「ぐおああああっ!!?」
「すごい光!!!」
「これがギルドの三大魔法の一つ」
「消えろォオオオオオオ!!!」
更に魔力を込めるカナ。これで勝てる・・・・そう思っていた。・・・・だが
「オォオォオォ・・・・
落ちろォ!!!」
ドンっ!!!
誰も予想していなかった。誰も思っていなかった・・・・まさか、妖精の輝きが・・・・
ズドオオオォン!!!
「うおおああ!!」
「ウッソだろ!?」
「ああああああっ!!」
あまりの衝撃に、グランも立っていられずに吹き飛ばされてしまう。妖精の輝きを放ったカナは腕から血を流し倒れ込んでしまう。
「この程度が妖精の輝きだと?笑わせんな。いくら強力な魔法でも、術者がゴミだとこんなもんか?ん?」
苛立ちながらも、少しずつカナに近づいていくブルーノート。カナは自らの力不足に絶望し、逃げる気力もない。
だが、そんなカナを守るようにグランがブルーノートの前に立ちはだかる。
「・・・・仲間は殺らせんぞ・・・・ゼェ・・・・」
「・・・・お前は本当に惜しかった。もう少しでオレは飛べたかもしれない。どうだ?そいつから妖精の輝きを取り出したら、特別にお前と他のクズどもを助けてやろう。悪くない条件だろ?」
「・・・・それはつまり、仲間犠牲にして自分等の命助けようってこったろ?・・・・お断りだ。仲間犠牲にするくらいなら、死を選ぶ」
「・・・・そうか、残念だ。結局オレは今日も飛べなかった。・・・・お前等は地獄に落ちろ」
ブルーノートはグランとカナを纏めて殺そうとする。最後の抵抗でグランはブルーノートに殴りかかろうとする・・・・だが、それよりも速くブルーノートを吹き飛ばした人物がいた。
突き出された拳がブルーノートを吹き飛ばし、カナとグランを助ける。その人物は、この場の誰も予想していなかった人物。