リヴィラの番人は推し活のための努力を怠らない 作:ヒヤリハット
初投稿なので初投稿です。
第三十階層についての独自設定があります。ご容赦ください。
☆☆☆
ダンジョン第三十階層。
第二十九階層よりひとつ下に位置するこの階層は、密林の様相を
壁による分断が存在せず、その気になれば階層の端から端までを一直線に進むことができる。視界を遮る木々さえなければ、中央から階層を囲む壁さえ視認できてしまうかもしれない。
最も、現状でさえ『階層中からモンスターが押し寄せてくる』という惨劇が頻発するこの階層から、視界を狭める木々が無くなってしまえば、第一級冒険者でさえ突破困難な鬼畜空間になってしまうだろうが。
モンスターとの
そこに、一匹のモンスターがいた。
一言で表すならば、それは『恐竜』だった。
体長五
獲物を鎧ごと噛み砕く恐るべき怪力と、空を飛ぶ有翼種すら容易く捉える俊敏を併せ持つモンスター―――『ブラッドサウルス』。
単純な
全身に鎧を纏い、黒色の兜を身に付けた男―――冒険者である。
『グルルルルウゥ……』
牙の隙間から唸り声を漏らし、ブラッドサウルスは『敵』の情報を把握する。
これといった特徴のない、よくいえば無骨な、悪くいえば凡庸な大剣を片手に握る、騎士のような風体の剣士。総身を隠す鎧は漆黒であり、肌の露出の一切を断っている。故に、本来ならば性別の類いを判別するのは困難であるが―――否、雄である。同性としての直感で、ブラッドサウルスはそう判断した。
同時に、強者であろうとも、直感する。
このブラッドサウルス―――『彼』は、いわゆる強化種と呼ばれる個体である。
通常、モンスターはモンスター同士で殺し合うことはない。彼らが殺意を向けるのは、人類、あるいは異端のモノのみである。
しかし、時折、その前提は崩される。再現性はなく、ほとんどが偶発的なもの。モンスターの死骸が放置され、核である魔石が回収されることなく迷宮に転がり、それをたまたまモンスターが見つけて、口にする。
そうして魔石を喰らったモンスターは、強くなる。肉体はより強靭に、ブレスの類いは凶悪に。毒は悪性を増し、翼はより力強く空を叩く。
『彼』は自らの同胞―――別個体のブラッドサウルスを喰らうことで、強化種となった。
『彼』は歓喜に震えた。魔石を喰らった瞬間脳裏を駆け巡る素晴らしい快感、果てしない全能感。生物としての位階が上昇したことを自覚し、生誕より味わったことのない高揚を甘受した。
そうして、偶然に殺めた初回とは違い、明確な意志をもって同胞を喰らい始めたのだ。
強化された己より逃げ惑う
―――もっと、強く。
彼は願う。
―――もっと、力を。
牙の隙間から、
―――あの人間を殺して、もっと!!
彼は吠えた。
眼前の人間に絶殺を宣告し、この第三十階層に生息する数多の
そして。
『―――ギャオオオオオッッ!!』
欠片ほどの油断も慢心もなく、己を殺意の権化と化して、ブラッドサウルスは跳躍した。
それを余人が目撃したなら、驚愕と共に戦慄しただろう。大道芸じみた大跳躍、それを可能とする強靭極まる五体。まともな冒険者なら、それを見ただけで戦闘を放棄するほどの離れ業。
紅色の巨体を宙へと踊らせ、地上に佇む冒険者に牙を剥く。
その大牙をもって鎧を砕き、肉を貫き、血を啜りて亡骸を
―――獲った!!
空より落ちる己を前に、避けようとも、迎撃しようとも、武器を構えようともしない冒険者に、彼は勝利を確信する。
彼の内より『敵』は消え失せ『獲物』が生まれ、そしてそれは既に斃されたモノとして処理された。
彼は全力だった。
油断も、慢心もせず、全力を尽くした。
その彼に間違いがあったとすれば、それは。
「―――五つ」
鎧を纏う冒険者にとって、彼は『敵未満』であり。
それに、最期まで気づけなかったことだろう。
ドンッ、と音を立てて、切断されたブラッドサウルスの頭部が地面に落下する。
そこにかつての勇猛を示すものはなく、やがて灰となり崩れ去ることで、彼の生きた痕跡すら消え失せた。
それを為した鎧の冒険者は、今しがたブラッドサウルスの亡骸より取り出した魔石を眺めていた。
「通常の魔石より色が濃い。アレも、強化種の類いか」
彼が第三十階層で交戦したモンスターは、これで五体目。
極めて稀に発生するはずの強化種と、五連戦である。一度もそれに遭遇することなく冒険者を引退した、という者も珍しくない強化種と、まさかの連戦。普段の彼ならば心底驚いて、己の不幸を嘆くところだが、今回は事前に情報を得ていたため、それほど取り乱さずに済んでいた。
「ここの噂は聞いてたけど、本当だったとは……」
二週間ほど前から、ダンジョンにとある噂が流れていた。
曰く、『第三十階層のモンスターが異常に強くなっている』。『
彼は、それなりに迷宮内の情報を把握している。迷宮の全てを知っている訳ではないが、人並み以上に広い情報網を持っている。
だからこそ、この噂も耳にはしていたが、よくある噂のひとつとして捉えていた。
そんなとき、ひとつの依頼を持ちかけられたのだ。
「……」
―――『第三十階層の食料庫へ向かい、強化種の大量発生の原因を回収してほしい』。
そのような依頼を受け、彼はこの階層に足を運んだ。
いわゆる、
依頼主である『黒いの』―――全身を黒色のローブで覆った人物―――は、格好こそ
「……ほうっておけば、大きな被害が出る」
彼は、強い。
強化種のブラッドサウルスを瞬殺してのける、魔人ひしめく迷宮都市でも上位に位置する冒険者である。
だからこそ、異常に侵されるこの階層で行動し、無傷でいられている。
だが、彼以外の冒険者は。さらにいえば、彼に劣る冒険者は。強化種の『群れ』を相手に、無事でいられるだろうか。
重症で済めば幸運だろう。四肢の欠損、パーティの全滅、十分にあり得る。
それを見過ごせるほど、彼は残酷ではない。
よりいっそうの気合いを込めて、視線を奥へと向ける。
迷宮に点在する、モンスターの休憩所。
体内の魔石によって存在を保っているモンスター共だが、食料と水を欲する辺り、最低限、生物という体裁であるらしい。
迷宮を
それ故、モンスターにとっては楽園に等しいが、冒険者にとっては地獄。なんの準備もなしに踏み入れば、食料庫内のモンスター全員に攻撃される憂き目に遭うだろう。
第三十階層の
そこに、この『異常』の原因がある―――『黒いの』は、彼にそう口にしていた。
そして、数分が経ち、彼もそう確信する。
「……なにこれ?」
冒険者として少なくない経験を積む彼は、その異変に驚嘆した。
食料庫へと繋がる通路が、緑色の壁に塞がれていたのである。
より正確に表現すれば、『緑色の肉塊』だろうか。
見る者に生理的な悪寒を走らせるそれは、食料庫へ行く唯一の手段を完璧に封鎖していた。
中心に『門』のようなモノが見受けられるが、開く気配はない。
彼は緑色の肉塊に軽く触れ、携行する大剣を振るう。
壁の強度はそれほど高くはないようで、あっさりと表面を斬り裂くことができた。
しかし、それもしばらくすれば無くなってしまった。
傷を再生する―――この壁は正しく
はたしてこの壁の正体は
「おそらく……強化種の大量発生は、
食料庫が複数存在する階層で同じ異常が起きたなら、強化種の大量発生は起きなかっただろう。原則、モンスターはモンスター同士で争うことはない。
食料庫が一ヶ所しか存在しない
ならば、排さなければならない。
自分には力があり、この異常は一刻も早く解決すべきである。
それはそれとして、どうやって門を開こうか。
「……」
二度、三度、斬撃を見舞う。
やはり、傷はつくのだ。
それがどうしたという話なのだが。
剣で道を切り拓くとは云うが、剣という武器は通常、掘削には向いていないのだ。ましてそれなりの強度を持ち再生する壁に人型の穴を開けるなど。
スコップでも持ってくれば良かったかな、などと益体もない呟きを零して、男は沈黙する。
おそらく必要なのは、火属性の魔法か、単純な貫通力。持ち合わせていれば懊悩などしていないのでつまりそういう事だ。
撤退するか? ───いやそれはないだろう。
根気よく剣で削る。───無理。剣が折れる。
火打石の類で……。───現実的でない。
炎の魔剣は? ───あれば苦労していない!
どうにかして門の向こうへ行かねばならぬ。それを一念にうんうん唸って小一時間程、憐れに思った神仏より天啓が舞い降りる。
門があるということは、その先に通路があるということだ。
何を今更という話だが、この男に限っては、素晴らしい気づきだったのだ。
今の今までまさぐっていたバックパックから取り出したのは、一着の『蓑』であった。ひどく大雑把に言えば外套の類である。特に、鳥の羽をふんだんにあしらわれたそれは、『鳥蓑』と呼ばれる品であった。
男は鎧の上から鳥蓑を纏い、ふと辺りを見回した。依頼の条件───『余人に正体を悟らせぬこと』───を今更思い出したのだ。この外套は男のトレードマークのようなもので、見知らぬ鎧男がこれを使っていたなら、とても怪しまれるだろうと思われた。
着る前に気づくべきでは? そう聞いたなら、彼は沈黙した後に肯定するだろう。この男はそれなりに愚かだが、反省する知性は備えているのだ。
ともかく。
男は一歩、醜悪なる門へと足を踏み出し、
「……『
その身を消失させたのだ。
プロフィール
真名:?
所属:イリス・ファミリア 種族:
職業:冒険者 武器:剣、槍、斧、その他
到達階層:?
States
Lv.5
力:H 151 耐久:H 136
敏捷:G 200 器用:G 255
魔力:D 540
歪曲:G 耐欲求:F 剣士: H 機先:I
魔法
【?】
スキル
【
・
・発展アビリティ『奇運』獲得。位階は
・一時的に理性蒸発。
備考
・歪曲
稀少とされる発展アビリティのひとつ。
歪められた運命は発現者に対する信仰に特殊な補正を与え、また生来の素質から外れた成長を可能とする。
かつて、英雄となる運命があった。
それは手折られて久しく、今はただの男がいる。
・耐欲求
耐異常、耐魔防といったアビリティの系譜。
三大欲求に代表される、己の内より生じる『欲』への耐性を高め、ある程度のコントロールを可能とする。
これはあくまで欲求を抑えるものであり、例えば睡眠欲を抑えた場合、眠くはならないが眠った方がいいことに変わりはない。
・機先
相手より先に行動する事に有利な補正を得る、【勇者】の持つ発展アビリティ『先制』の類似能力。
あちらと違い、こちらは『自分のターンが終わるまで』効果が持続する。