終末世界でガチ上位者が一般人やってる話   作:MORGANSLEEP / 統括導光

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NEW 「チャルとフリス」
力を与える系一般上位者


 テレビでは毎日のように機奇械怪(メクサシネス)の脅威・被害についての報道が為されている。地上の国々の滅亡、廃墟となった国へ盗掘に行った人間の死体処理、そして半ば英雄のように語られる奇械士(メクステック)達の偉業。

 高空を航行する人工島ホワイトダナップ。機奇械怪達の攻撃範囲外を飛ぶこの島は、けれど完全に安全ということはない。飛行能力を持つ機奇械怪の脅威や、最近になって現れた機奇械怪を使役する集団の登場により、かつて名乗っていた"絶対安全圏"の名は地に落ちた。

 

「最近物騒ですねぇ」

「まーね」

 

 機奇械怪(メクサシネス)

 放棄・破棄された機械達が自己発展を繰り返すことで生まれた機械の化け物。形や性能は幾枝にも分岐し、ある例外を除くすべてが人類の脅威となっている。

 何故機械が人類と敵対するのか。

 それは酷く単純だ。

 

 機奇械怪の動力が生物である──ただそれだけ。

 

 だから地上にはもう人間以外の生物は残っていないし、なんらかの間違いで地上に生まれてしまおうものなら一日の内に機奇械怪たちの餌になる。餌と言っても捕食されるわけではなく、彼らの身体のどこかにあるシリンダーに保蔵されるんだけど。ま、その後動力源として搾り取られるので、捕食といって間違いではないか。

 とかく、そんな機奇械怪達がこの島の居住区にまで入り込んできているのだ。物騒、の一言で片づけられるものではない。滅亡の危機、が正しいだろう。

 

奇械士(メクステック)の皆さんには、もう少し頑張ってもらいませんと」

「だねぇ」

 

 とはいえ人間側もただやられているだけ、ということはない。

 奇械士と呼ばれる機奇械怪の構造に詳しい戦士達により、人類の脅威となる機奇械怪達は日夜排除されている。奇械士は志願制であるものの、それなりに人気の高い職業でもある。死と隣り合わせだというのに人気なのは、こうやってテレビが脚色と演出を混ぜ込んで、あたかもヒーローショーのように喧伝するからだろう。

 勿論彼らが死なないための訓練は為されるし、実際にこれらヒーローが如き戦闘が為されているのも事実だが、こういう報道においては残酷無残な死は『一日の死亡数』としてしか出されない。だから実感は湧かないだろう。己が目指したものは、死の大口で歯科医をするようなものだと。変な例えだな。

 

「はい、お弁当」

「いつもありがとう、フレシシ」

「それが仕事ですから」

 

 奇械士の仕事は迎撃のほかにもう一つある。

 それは、地上で組みあがる大型機奇械怪の討伐。

 というのも、機奇械怪は動力不足になると、融合を開始するのだ。地上にいる生物は限られていて、なんとか生き延びている国も文字通り虫の息。となると、食べ物が足りない。動力源となる生物が機奇械怪の数に対して圧倒的に足りない。

 そうやって動力不足に陥った機奇械怪は自ら他の機奇械怪の餌になりに行く。他の機奇械怪を見つけられずにその場でスクラップになるものもいないことはないけれど、基本は他の機械に食われ──合体、融合し、巨大になる。機能の一つになる。

 そうして大型になった機奇械怪は必ず人間の脅威になる。さっきホワイトダナップが機奇械怪の攻撃範囲外を飛んでいると述べたけれど、それは基本種想定の場合だけ。たとえば超長距離砲撃を有す機奇械怪が出てきてしまったのなら、たちまちこの"絶対安全圏"は崩れ去る。

 

「行ってきます」

「いってらっしゃい、フリス」

 

 だから、テレビが、あるいは政府が奇械士(メクステック)を英雄に仕立て上げるのは致し方のないことなのだ。いなくなられては困るから。志願兵がいなくなったら、徴兵に切り替えないといけなくなるから。

 温情という奴。

 

 さて、そんなところで、そろそろ僕の話をしよう。

 フリス・クリッスリルグ。

 このホワイトダナップ居住区画で一般学生をやっている、一般上位者である。

 

 

+ * +

 

 

「おはよー」

「おはよーさん」

 

 ここまで世界が窮地に瀕していても学校というものはある。というか、それはホワイトダナップがある程度裕福だから言える話ではある。

 地上の国……空へ逃げる事を拒否した国の子供たちは、志願制なんていう甘いものではなく、一定年齢からの強制徴用と地獄のような奇械士の訓練の後、国防に回されていることだろう。

 それはヒーローなどではなく、奴隷のように。

 

「なぁ、知ってるか? 最年少奇械士(メクステック)の噂」

「あ、知ってる知ってる! ウチらと同学年なんでしょ?」

「すげーよなー。同い年の奴があの機奇械怪を……くぅ、憧れるぜ!」

 

 例によって学校でも奇械士の人気は高い。目指している者も少なくはないし、噂されている通り最年少の奇械士が出たとのことで、今日にでも志願しにいく生徒が出るんじゃないか、というくらいだ。

 僕ら……僕、ユウゴ、リンリー、チャルというまぁ所謂仲良し四人組の中でもその話は持ち切りで。

 

「奇械士になりたいなら成績上げないとだねぇユウゴ」

「ぐっ……るせーよフリス! これから頑張んだっつーの!」

 

 奇械士は戦士だが、専門家でもある。既出機奇械怪の構造に精通している必要があることと、特異種……こちらのライブラリに保存されていない新種の機奇械怪に対する臨機応変な戦略の構築が求められ、そうなるには当然数多の物事を覚えなければならない。

 機械関係の知識は勿論、材質への理解や環境の知識、過去の討伐記録。

 加えての戦闘センス。

 

 雑兵は死ぬ。英雄だけが残る。

 

「つーか、そういうフリスはどうなんだよ!」

「何が?」

「だから、奇械士! なりたくねーのかよ!」

「あぁ、うん。特には」

「あれ? でもフリス君の家って」

「いやぁ、両親の仕事がそうだからって、僕には関係ないよ」

 

 クリッスリルグ。

 まぁ、そこそこ名の知れた奇械士夫婦の名だ。僕の両親となっている二人であり、学生時代から奇械士をしているという事もあって経験豊富。

 僕はその二人の養子。地上にいた時に拾われたわけだな。

 

「そっかぁ。……それもそーだよね」

「うん。というか、そろそろ席に着きなよユウゴ。HR始まるよ」

「まだ大丈夫だって!」

 

 僕は一般上位者だけど、だからといって世界に君臨するとか人間を恐怖で支配する、とかいうことはない。支配するまでもなく世界が困窮に瀕しているのだから、眺めている方が面白い。

 この島もあといつまで保つか。この平和がいつまで続くか。

 時間の経過ばかりはこの手にもわからないことだ。全てを手中に収めたいと思う程の欲はないし、僕は僕の目的が果たせればそれでいい。

 ならその合間に学業を挟むのも悪くはない。

 

「フリス、フリス」

「なにかな、チャル」

「今日さ、フリスの家──」

 

 突如。

 

 世界が真白に染まる。轟音と暴風。悲鳴と断末魔。

 白が退かば、収まれば。

 

 そこに──天使がいた。

 

「な……何、が」

「チャル、僕の後ろに」

「う、うん」

 

 僕の座る席。そこから先が、ごっそりと消えている。そういうこともある。これも悪くはない。

 今の今までそこにいたユウゴやリンリーの姿はなく、残っているのは僕と同列にいた生徒と僕の席の後ろに丁度来ていたチャルだけ。同列の生徒も膝から先を失くしていたり、半身を失くしていたりと様々。あれは死んだねぇ。

 

 教室の……というか校舎を抉るようにしてその中央に現れた天使は、ただそこで黙したまま動かない。機械だ。機械の天使。だから機奇械怪。

 学校側は奇械士の組織への緊急要請を行っている頃だろうか。まぁ、奇械士側で感知して飛んできているだろうから、緊急要請が繋がる頃には出撃済みだろうけど。

 

 僕は机に座ったまま。チャルは僕の背後で頭を抱えたまま。機械天使は黙したまま。

 怪我を負った生徒の大半は死に、あるいは抉られた空間へ落ち、なんとか助かった子達は逃走済み。膠着状態という奴だ。まぁ別に睨み合っているわけじゃなく、誰も行動を起こさないってだけなんだけど。

 

「フ……フリス? どう、なったの?」

「まだ脅威は去っていないよ、チャル。だからそこで静かにしているといい」

 

 ふと、視界の隅がキラリと光る。

 瞬間機械天使が大きな衝撃を受け、外へと吹き飛ばされていく。

 追撃は……ない。

 代わりに、僕とチャルのいるところにソレが降り立った。

 

 人。少女。

 刀を持った少女。

 

「──安心して。助けに来た」

 

 これが、まぁ、最年少奇械士と持て囃される少女、アレキとの出会い。

 チャルの環境と運命を大きく変える出会いの一ページである。

 

 

 

 

「怪我はない?」

「は……はい! 大丈夫です!」

 

 アレキと、そして遅れて到着した奇械士達の手により機械天使は倒された。飛行能力を持つ機奇械怪であり、その形状からエンジェルと呼ばれているそれは、本来こんな場所に突然現れるものじゃない。

 とかく、学校の被害は甚大。死傷者多数、校舎は半壊。

 すぐさま休校となったことは勿論、警察各所が来て大騒ぎ。

 

 それに飲み込まれないよう場所を移動した僕とチャルとアレキは、ようやくの一息をついていた。

 

「……ごめんね。私が事前に気付けていれば」

「い、いえ! そんなことは……」

 

 蚊帳の外、という言葉が一番正しいか。

 クラスメイトの大半を、そしてユウゴとリンリーという仲のいい二人を失ったチャルのメンタルケアなのだろう、アレキは彼女を抱きしめてなだめる。

 

「君、チャルちゃんの彼氏?」

「かか、彼氏!? い、いえ、違います!」

「違うかな。普通にクラスメイトだよ。仲が良い事は認めるけどね」

「じゃあ、チャルちゃんを家に送り届けてあげて。私はまだ事後処理があるから……」

「勿論。ただ──」

 

 どちらの方が早かったか。

 僕が指を差すのと、彼女が刀を抜くの。

 

 赤熱した刀は彼女の背後に迫っていた犬のような機奇械怪を叩き斬り、弾き飛ばす。

 

「まだ脅威は去っていないみたいだから」

「……みたいね!」

 

 さて、苛烈な戦いをしていくアレキを余所に、チャルに向き直る。

 

「チャル」

「フリス……」

「好きになっちゃった? アレキのこと」

「ふぇっ!?」

 

 頬を紅潮させるチャルに、やっぱりか、と呟く。

 いやまぁ初めは僕に好意を寄せていたチャルだけど、その好意の矛先がアレキに向いていることなど一目瞭然。その自覚は今は無いんだろう。僕の事が好きだった、という意識が邪魔をしているから。

 学校といえば色恋沙汰。だから僕に向けられる彼女の好意も悪くないものとして扱っていたけれど、まさかそれが違う所に向くとは。面白いものだ。やっぱり時間は面白い。

 

「戦いたい?」

「え……どういう」

「アレキの隣で、戦いたい?」

 

 ならば一般上位者として、こっちにシフトするのはアリだな、と思った。

 即ち──。

 

「戦う力が欲しい?」

 

 力が欲しいか?

 の奴ね。

 

「……フリス、何を言ってるの?」

「今、チャルには二つの選択肢がある。一つはこのまま帰る。こっちは安全だ。僕が送って行ってあげるよ。そうすれば、こんな非日常とはおさらば。アレキとの接点も無くなって、学校が再開するまでの間、短いお休みを家で過ごすだけでいい」

 

 背後で戦闘音が響く。

 彼女の持つ赤い刀。あれは機奇械怪の血管たるケーブルや機械繊維を溶断するための武装だろう。果たして僕の背後で、その刀はどう踊っているだろうか。チャルの視界で、アレキの傷ついていくサマはどう映るだろうか。

 シンプルにドッグスという名の機奇械怪。然して苦戦を要される敵ではないけれど、僕達の方に絶対に行かせない、という縛りを設けてのものなら面倒も生まれる。ぴょんぴょん飛び跳ねる機械だからね、そのターゲットコントロールは中々に骨が折れるものだろう。

 

「もう一つは、彼女の助けになるために戦う、だ」

「む……無理だよ。私、運動得意じゃないし……」

「大丈夫だよ、チャル」

 

 渡すのは、二丁の拳銃。

 

「これは……」

「機奇械怪と戦える武器」

「なんでそんなもの……」

「別にアレキも僕らが逃げればあんな機奇械怪一匹簡単に倒せるだろうし、受け取る、受け取らないはチャルの自由。これを受け取って奇械士になるか、受け取らずに一般人に戻るか」

「……」

「決めて、チャル」

 

 彼女の選択は。

 

 

+ * +

 

 

 機奇械怪を相手する時、必要なのは如何にして早く弱点を突くか、という所にある。

 彼らの弱点。それはまず、動力炉。体のどこかにあるシリンダーを切り離してしまえば、彼らは動けなくなる。だけど大抵の場合シリンダーは体の奥深くにあるので、それを見切るのは難しい。

 とはいえドッグスのシリンダーは腹の下。基本種ゆえにライブラリに行動詳細や構造詳細は記載されているし、奇械士ともなればそれくらいは覚えているだろう。

 だからこれを避けて、一刀のもとに切り伏せればいい……のだけど、先程からそれを警戒するような動きを見せ、大きな跳躍をしない。動きが妙なのだ。まるで、どこかからか指示を受けているかのような動き。

 

「アレキさん!」

「チャルちゃん!? そんな、まだ逃げてなかったの!?」

 

 チャルは武器を取った。

 そしてアレキに合流し、その拳銃を撃ち進める。

 

 あれはよく当たる拳銃にしたから、彼女の射撃センスがどれほど壊滅的でも問題は無いだろう。

 

 このまま彼女らの雄姿を見るのも吝かではない……んだけど、そろそろ両親が心配して戻ってくる時間だろうから退散。

 過保護な両親の愛され息子でいること、も悪くない事だからね。

 

 ……ま、物語のようにチャルがアレキと肩を並べ背を預けられるようになるか、それともこの先で簡単に死んじゃうかはわからない。彼女次第だ。どちらに転んでも悪くはない。

 

 

 

 

「ただいまー」

「フリス!」

 

 抱き締められる。

 母親だ。その後ろには父親と、メイドであるフレシシもいる。

 

「おかえりなさい、フリス」

「ただいま」

「ただいま、って……心配したんだぞ、フリス。連絡の一つも寄越さないんだ、母さんは今にも捜索要請を出す勢いで」

「あはは、ごめんね。エンジェルの襲撃でカバンごと携帯持っていかれちゃってさ。その後も色々あったから、連絡手段がなかったんだ」

 

 奇械士(メクステック)の二人は、けれどあまり居住区域での仕事には就かない。

 島外作業員……人工島ホワイトダナップに向かい来る機奇械怪や、地上での大型機奇械怪の討伐に駆り出されることの方が多く、今回のような緊急事態にあっても出撃ができない。だからこうして家で待つしかなかったわけで。

 僕にとって機奇械怪が何ら脅威ではない、ということを両親は知らない。だからこそのこの過保護っぷり。勿論この二人が特別愛情深いのもある。子を成せない身体の母親アリアにとって、地上で拾い大切に育ててきた僕という存在はかけがえのないものだ。父親ケニッヒにしても同じ。

 だから今回のことは肝を冷やしたに違いない。こうして抱き締められているのは彼らのメンタルケアに必要なことなのだ。

 

「……そうだ、父さん」

「なんだ?」

「今日、アレキって子に会ったよ。というかその子が助けてくれたんだけど」

「ああ……そうか。じゃあ今度お礼を言っておかなきゃな」

「知り合い?」

「いや、まだだ。顔を会わせる予定はあるが、といった所だな」

「そっか」

 

 じゃあその機会にチャルも、ということになるのかな。

 

「アリア、そろそろフリスを放してやれ。怪我もなく無事だったんだからいいだろ?」

「嫌! 今日はフリスと寝るから、このままベッドまで連れてくから」

「あのなぁ……」

 

 母アリアはまだ若いこともあって、僕の存在に依存しがちというか、心の拠り所にしがちだ。だから、今日は多分離されないだろう。どうせ明日は休校だろうし問題は無い。

 が、父ケニッヒがアリアを引き剥がすのがわかった。僕が困っていると思ったんだろうね。

 

「ほら落ち着けって」

「うぇーんフリスー! ケニッヒがいじめるー!」

「あはは。まぁ、僕は大丈夫だから」

「それよかフレシシ、フリスに飯出してやってくれ。フリス、腹減ってるだろ?」

「あ、うん」

「俺と母さんは上で報告書なんかを書かなきゃならんからさ。ほれアリア、いくぞ」

「やだやだ! 奇械士やめるー!」

「やめないやめない」

 

 若い、というか。

 幼いよね、あれだと。

 

 とまぁそんな感じで自室に戻った二人。

 残されたのはメイドのフレシシと僕。

 

「お疲れ様でした、フリス」

「ありがとう。けどこれも必要なことだからね」

「しかし、学校にエンジェルですか。悪意の贈り物(プレゼント)の類でしょうか?」

「まぁ早々野良で発生する機奇械怪じゃないのは事実だねぇ。しかも突然の現出だ。どこかからか送り込まれたとみるのが妥当だけど……あんまり強い個体じゃなかったしなぁ」

「つまり、偶発的な……なんらかの目的から逸れて来た個体でしょうか」

「だと思うけどねぇ」

 

 汚れた皿を受け取る。

 僕に飲食は必要ない。けれど食べられないわけじゃない。

 だからフレシシがお昼に渡してきたお弁当にはしっかり中身が入っていたし、食べられるものだった。けれど今回は別に食べたフリでいい。だから、故意に汚した皿をテーブルにおいて、それで終わり。

 このやり取りからわかるように、フレシシは僕の理解者だ。

 正確には僕の創造物。彼女も機奇械怪の一種である。

 

「しかし、機奇械怪も多様になったもんだよ。最初は五種しかいなかったのに」

「自己増殖こそが機奇械怪の真骨頂ですから」

「そう作ったのは僕だけど、正直なんだかなぁとは思ってるよ。まだ動力源の代替を見つけられないのか、って」

「そうですねぇ。増えることにばかり躍起になって、有機生命の要らない構造体を目指す、という目的は既に忘れ去られて久しいです。どうしますか? 必要とあれば私から地上の機械に働きかけを行いますが」

「それじゃあ意味が無い。生物じゃない機奇械怪が自ら己の変容を成してこそ、だよ」

「気の長い話ですね」

「だから面白いんだ」

 

 クリッスリルグの二人に拾われる前のフリスがどうして地上で生き延びていられたのか。

 そんなのは簡単だ。

 答えは僕が機奇械怪をこの世に産み落としたからで、二人に見つかった理由は特異な進化を遂げた機奇械怪を観察するために高台にいたから。その特異種は二人に倒されちゃったけど。

 僕は機奇械怪に手を加えない。最初に作り上げた五種の機奇械怪以降、増えた機奇械怪に僕から何かをしたことはない。

 僕からの入力無く、僕の考えつかなかった方向の進化をしてもらう。

 それが僕の願いというか目的だ。

 

「一般機奇械怪からの意見を言わせていただきますと、人間側の強化も十分な入力ですよ?」

「まぁそれはいいんだよ。間接的だし。僕が機奇械怪を改造した、というわけではないんだから」

「そうですか。……チャルさん、ご無事だといいんですけれど」

「居住区域に現れる機奇械怪くらいなら余裕で倒せる性能はしているよ。調子に乗って島外に出たらどうなるかは知らないけど」

 

 だからチャルの行方は逐次追っていきたい所存ではある。

 最年少奇械士たる少女と、戦場で突然戦う力に目覚めた同年代の少女。その友情青春ストーリーを、まぁ、隣か、一歩引いたトコらへんで。

 一般上位者として、人類の行く末をゆったりと眺めさせてもらおう。

 

「精々頑張って、機奇械怪達の進化の促進剤となってね、チャル」

 

 その命尽きるまで。

 

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