終末世界でガチ上位者が一般人やってる話   作:MORGANSLEEP / 統括導光

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告白する系一般上位者と一般奇械士

「何のために戦うのか……ねぇ」

 

 破壊痕残るラグナ・マリア。

 その一角に、彼はいた。横臥チトセ。間宮原ヘクセンの専属メイド。

 

 身体中から大量の血を流し、両足は拉げ、左腕をも失くした彼は、誰が見ても死に体で。

 そこに上位者としての面影は存在しない。ただまるで、戦士か、英雄のような。

 

「本当に、全くその通りだ……。オレは、何のために戦ったんだか。八つ当たりで……だったらんなもん、途中でバックレちまえばいいのによ」

 

 彼の視界の隅で、大型機奇械怪を葬り去っていくはガルラルクリア=エルグ・アルバート。如何なる手段か、文字通り機奇械怪を消し飛ばしていくその姿は、まさに最強に相応しいのだろう。

 問題ないと言った。守ると言った。

 けれど──思ったより、横臥チトセの身体は、限界だった。

 

 同じく上位者であるジュナフィス、リンゴバーユが消滅した理由はコレか、と自嘲気味に笑うチトセ。

 上位者の身体を不壊にすることができること、それそのものがサイキックの一種に分類される。念動力、転移、透過、不壊……。

 《茨》を介したサイキックは、だからこそどれかが封じられたら、他も封じられると思って良い。

 長らくそれは、有り得なかった。上位者の名は伊達ではない。下の者に干渉されないから上位者というのだ。だが──ああ。

 

「フレイメアリス……ここへきて、何故そうも派手に動く。何が狙いだ……。とうとう、オレ達を殲滅する気になったか。それとも……機奇械怪の遅々たる進化に、痺れを切らしたか」

 

 この肉体がもう駄目だということはチトセにもわかっている。また大本に戻り、新たな個として生まれ、動く。それだけの気力はもうない。だから、リセットされるのだろう。上位者たる人格は無限ではないのだから。

 それでも──それでもと。

 

「おい……これが、最後の通信だ。オレはもう死ぬ。最後に教えろ」

 ──"LAST……"

「フレイメアリス。フリス。いいや、呼び方はどうでもいい。──総力を挙げて、アイツを封じるってのは、できるのか」

 ──"UNFORTUNATELY……"

「……そうかよ。じゃあ、『準備』とやらは、あと何年かかる」

 ──"STAY THE SAME……THREE CENTURIES……"

「増えてんじゃねェかよ、オイ」

 ──"BE TOO……ACTIVE……"

「想像以上ってか。ったく、最悪の場合を想定してたんじゃなかったのかよ。……いや、そんだけ……アイツの琴線に触れる奴が出て来たってことか」

 

 少しずつ。

 少しずつ、チトセの身体が消えていく。全身の端から、粒子のようになって。

 もう肉体を留めておく念動力が無いのだ。そうして楔としての役割を失った肉体は、概念体たる上位者を留めておくこともできない。

 

「……なぁ」

 ──"……"

「オレは、変質した。実験動物に要らねえ感情を抱いた。いらねぇ感傷を抱いた。結果がコレだ……意味なんざないんだ。理由なんかない。戦う理由なんか、なかった。もうここにはヘクセンお嬢様はいねぇんだから、肉体壊して戦う必要なんか、理由なんか、意味なんかなかったんだ。だってのにここまで必死になってよ。……お嬢様がいた場所を、まるで人間の英雄みてェに、必死になって守って……オレは壊れちまったみてェだよ」

 ──"REST……"

「あぁ、そうさせてもらう。……ラグナ・マリアの上位者は、何人残った?」

 ──"ZERO……"

「狙って殺されたか」

 ──"OR……MAYBE ALL OF……THEM……"

「ハ、笑えねェ話だことで」

 

 もう、彼には上半身しか残っていない。

 それも消えていく。視界の中で、アルバートが最後の一体を倒したのを見て。

 

 弱々しく──腕を上げた。

 

「すまねェな、ヘクセンお嬢様。オレ達は……そっちには行けねェんだ。だがもし、アンタが生まれ変わって……また、人を雇える立場にあったらさ。次も……頼むわ」

 

 手のひらで遮っていた陽光が彼を照らす。

 もう、手も、腕も、何もかも。

 

「じゃあな──オレの大切な、大事な……お嬢様」

 

 彼自身も──ひだまりの中に、溶けて消えて行った。

 

 

 

 ──"MEMORY……DELETE……"

 

 

 

+ * +

 

 

 

「……チトセも、また、良い成長をしたね。消しちゃうの勿体ないと思わないのかな?」

「はい?」

「いや、いや。こっちの話ですよ」

 

 ラグナ・マリア内にいた上位者の処理は完了した。生身を失い、概念体となった事で次の上位者に記憶を受け渡す性質のある上位者は、当然とばかりに最も近くにいて死んでいない上位者、つまり僕を選ぶ。

 受け取った記憶はどれもあまり価値のないものばかりだったけど、唯一チトセのだけは感情に溢れた、彩り鮮やかなもの。最後の記憶だけが不自然に消去されていたのは、大本との会話ログだろうね。

 

 これだけの被害を与え、絶対の守りであるレーザー照射装置を壊したんだ。

 立て直すのには時間がかかる。そこに上位者がいたら、上手く行ってしまうからね。上位者は要らない。

 もし立て直しが上手く行ったら──つまり、この国の排除されていた奇械士たちが、機奇械怪の脅威からも、内側の腐敗からも民を守り通し、見事国としてのラグナ・マリアを再建できたのなら、今度こそラグナ・マリアは僕が視察しに行くべき価値のある国になるだろう。

 だってその時は、英雄に溢れているだろうからね。

 

「アスカルティン」

「はい。行ってきます」

 

 前方に見えたのは、避難民を集まって来た機奇械怪から守るチャルとアレキの姿。他、ラグナ・マリアの奇械士達も奮戦している。

 そこへ流星の如く突っ込むアスカルティン。一騎当千。強さも動きも人間離れしているアスカルティンのその姿は──まさに英雄。

 彼女の評価できるところは、戦闘中でさえ自己改造を怠らないことだ。攻撃が通らないと感じたらすぐに対策を練る。自分の中にスタックしてある素材で通る……通すための武装を作り出し、本当に通す。限界値を越える攻撃に対しては装甲の改造を、自身の動力に不足があればさらなる効率化を。

 野良の機奇械怪でもやらない、フレシシやガロウズもやらない、戦場にいる機奇械怪で、且つ人間の思考を有しているが故の貪欲なまでの生存欲求。

 

 けれどそれは理性の話。人間としての、十九歳の彼女の生存欲求は──タガを外すことで、まだ一歳か二歳か、それに満たないくらいの機奇械怪のものへと変質する。

 

「アハ──!」

 

 こっちの機奇械怪は正直ただの機奇械怪感が否めない。食欲に突き動かされ、自身の破損を気にしない。ただし戦闘中に自己改造を行うという点は理性と同じであり、さらには自戒できる、という他の機奇械怪にはない特徴を持つ。

 

 あと表には出さないけど、会話出来てるっぽいんだよね。アスカルティンと中の機奇械怪が。

 

 正直それはあり得ないことなんだけど、出来ているんだから受け入れるしかないというか。

 製作者の僕から言わせてもらうと、機奇械怪の扱う言語っていうのは《茨》による直接の意思疎通、つまりテレパシーみたいなものなんだ。だから元からそうであるという風に作られたフレシシやガロウズ、ピオ以外は、まず人間の言葉を学ぶところから始めなければならない。

 それをするには当然賢いAIになる必要があるし、学ぶという行為を受け入れる事も必要だ。機奇械怪にとって餌でしかない、融合時は単なる寄生先でしかないモノの言語を学ぶ。学ばんとする姿勢。

 学習スピードはそこまで驚くべきものではないけれど、学習しよう、と思えることが僕にとってはあまりにもありえないこと。

 

 だって今地上に蔓延っているほぼすべての機奇械怪が出来てないんだぜ?

 いや、出来てはいる。何百年もかけてね。

 大先輩たちがそんだけかけて、けれど遅々と進んでいるところを、一足で追い抜いて追い越して。

 

 何があったらそうなるんだろうね。

 ああ、独り言とか鳴き声として言葉を発する、とは違うよ。

 宿主と会話をする。それが凄いという話であって、言葉を発すること自体はその辺の融合機奇械怪にもできると思う。

 

「よっと……ふぅ、無事みたいですね、フリスさん」

「アルバートさん。もしかして、もう?」

「はい。ラグナ・マリアを囲んでいた四十二の大型機奇械怪、その全てを倒してきました。湖中にいたものも含めて」

「……流石というか、なんというか」

 

 君さ、それ全部未来に飛ばしたの?

 どこに飛ばしたとかわかってるのかな、この人。

 

「幾らかの残骸は残っているから、フリスさん。新種の調査には使えると思います」

「それは、ありがとうございます」

 

 違った。ちゃんと考えて使っているっぽい。倒せる奴はちゃんと倒しているんだね。いやホント、アルバートは評価の上下が激しくなるなぁ。

 

「さて、じゃあボクもあっちに助太刀……と思ったけど、必要なさそうだ」

「はい。アスカルティン、強いですね。……それに、チャルさんも」

 

 本当に。

 ……ちょっと驚いている。チャルってあんなに身体能力高かったっけ、って。

 いや、そんなことはないはずだ。少なくとも一週間前までは僕と同じくらいの身体能力しかなかった。それをああもぴょんぴょんと……。

 何か成長の兆しがあったのか、それとも。

 

「ところで、フリスさん」

「はい」

「ボクは懸念事項があるんです。もしこのまま、あの機奇械怪を倒した後もここに留まったら、どうなるか」

「英雄扱いで引き止められるでしょうね」

「逃げる、というのはどうかと思ってます」

「良い案ですね。ですが、荷物はどうしましょうか」

「ここへ来る前に全員分のを取ってきました」

 

 有能か?

 ガルラルクリア=エルグ・アルバート。戦闘面のサイキックは正直"ハズレ"だなって思ってるけど、上位者を見抜く慧眼といい判断力といい、ちゃんと英雄していて、しかも気遣いができるとか。

 ……フリス・カンビアッソに恋心(勘違い)を抱いているようだし、このままくっつけるのもアリかな? その場合チャルとの修羅場になりそうな予感がするけど、チャルが好きなのは、というかまだ引き摺っているのはあくまでクリッスリルグのフリスだし。

 関係性をギクシャクさせた方が人間が輝くって僕知ってるんだ。

 

 アレキは既に巻き込んでいるからいいとして……じゃあ後は、どうやってアスカルティンを巻き込むか、だね。

 

 僕としてももう、この国に用はない。

 滅ぶか立ち直るか、それは人間の自由だ。

 精々頑張って新たな英雄を生み出してくれると嬉しくはあるかな。

 

 それじゃ。

 

 

 

 

 

 

 空歴2544年02月20日。

 ラグナ・マリアを四十二もの大型機奇械怪が襲ったあの事件から、三日が過ぎた今日。

 

「カンビアッソさん!」

「はい」

「これ、見てください。もしかしてですけど……」

「ほう……確かにこれは」

 

 僕らは、ラグナ・マリアから南に大きく進んだ場所……元々法国家と呼ばれていた廃国、ネイトに来ていた。

 

 機械の時代だって言ってるのに黒魔術なんてものに傾倒していた馬鹿な国。

 滅んだからいいものの、まだ残ってたら僕直々に滅ぼしていたかもしれない。まぁその前に他の上位者が内側から壊していただろうけどさ。

 それで、なんでこの国に来ているのか、というと。

 

「……うーん、止みそうにないね」

「突然の雨ですもんね……」

「あ、フリスさん。コレとかどうですか」

「これは、ゴミですね」

「ゴミですか」

 

 そう、突然の豪雨に見舞われたから、だ。

 普段は雨雲をチャルやアルバートが見つけて、それを避けるコース取りで行くんだけど、今回はラグナ・マリアから離れる道を選んだ結果、こうして雨雲の下をくぐる羽目になった。それはまだよかったんだけど、雨量が凄いのなんの。土砂降りも土砂降りで、これは流石にどこか屋内に入らないと風邪を引く、ということで、けれど周囲は荒野。

 それなら少し歩くけどネイトに行くのはどうかな、と言い出したのがアルバートで、彼女はなんと僕らの時間を止めて無理矢理全速力で運ぶ、という荒業を行使。アレキとアスカルティンは自力でついていったみたいだけど、僕とチャルは固まったまま小脇に抱えられていたらしい。

 

 アルバートの時間干渉はハズレだ。珍しさが無い。

 けど、別に弱いとは言ってないというか、普通にかなり強い。僕でさえ肉体がある時に止められたら止まってしまうのだからね。概念体には作用しない……というか作用できる能力なんて限られて来るから届かないんだけど、それでも肉体に宿っている時に脳を止められたら思考が出来なくなるのは当然で。

 現状唯一僕を封印できる可能性のある存在だよね、アルバート。

 ……でも、そもそもの話。

 サイキックは、人間には宿らないんだ。両親が"毒"や"種"に侵されていて、それが子に受け継がれて目覚める、という事は無きにしも非ずなんだけど、基本的に"毒"や"種"を受けた人間は子を成せなくなるし、すぐに死ぬ。

 それを潜り抜けたというのならまぁ認めなくもない……んだけど、空歴2000年代にそんな人間いたかなぁ、と記憶を掘り起し中。そもそも僕が"種"、"毒"、"罅"を蒔き始めたのが空歴2044年のことで、アルバートは空歴2044年の人間だ、と言っている。まずここで矛盾が生じるんだ。アルバートがサイキックを手にするためには、"種"等を持った両親がいないといけない。仮に彼女両親が空歴2044年に"毒"に感染していたと仮定して、けどそんなすぐに子供って生まれるかなぁ。

 アルバートがお腹にいる時に感染したのだとすると、それはそれでおかしい。だって僕が"毒"を蒔いたの、当時戦争中だったある二つの国の最前線だし。兵士しかいないそんな場所に妊婦がいるとは考え難い。

 ……考え難いだけ、なのかなぁ。その時誰か一人いて、それが生き延びて……アルバートを生んで。でもアルバートは自分を2044年の人間と言っているし、時間に関するサイキックを発現している以上、2044年に物心ついていないといけないわけで。

 生まれたばかりの赤ちゃんがサイキックを理解して、プラスそれが無くても機奇械怪と戦えるくらいの剣術を覚えて、物心もついている。

 うーん。む、無理がないかなぁ。僕の常識というか先入観が邪魔しているだけなのかなぁ。

 

「カンビアッソさん、これはいけそうじゃないですか?」

「おお、それは行けますね。……よし、これで、あと必要なのは……集音装置の類があればいいです。なければ僕が作ります」

「わかりました! 探してきます!」

 

 僕はそこまで頭が良くない。もしかしたらもっと頭の良い上位者辺りに相談すれば、パっと答えが出たりするかもしれない。

 けどラグナ・マリアでド派手にやっちゃったからなー。もし各国の上位者が大本と連絡を取っていたら、協力は得られないだろうなぁ。うーん、やっぱ無計画って活きない事の方が多くない?

 

「しかし、本当に器用ですね、フリスさん。こんな作業場らしい作業場もないところで……」

「まぁ、慣れですよ。昔は今ほど設備も整っていませんでしたし、工具の類も無かったので……あはは、時にはこんな屋内じゃなく、砂埃吹く砂漠で、とか、すぐ近くで噴火活動の起きている火山で、とかもありましたよ」

「……フリスさんの並外れた胆力の理由がわかりますね」

 

 アルバートのサイキックの件は保留にするかぁ。チャルのこともわかってないしね。

 

 で、今何やっているのかというと。

 

「よし、形になって来た」

「おお……流石は科学開発班」

 

 所謂テレビ電話と呼ばれる物作り……である。

 ネイトに来て、比較的無事そうな建物を僕が速攻で改修、周囲にいた機奇械怪を奇械士四人が爆速で片付けて拠点化。

 その後、その建物から地下へと続く階段を見つけ、深く深くまで続いていたそこに散らばっていた部品類を見て、僕が「これなら通信機の類が作れそうですね」なんて零したのが運の尽き。

 ホワイトダナップを出てから二週間が経っているからか、主にチャルとアレキの二人が躍起になって足りない部品とかありますか? って動き始めた。

 

 実はその行為ケルビマが取り締まっている盗掘だったりするんだよね、なんて言葉は飲み込んで、じゃあこれとこれとこれと、これこれこういうものがあったら最高です、と言えば、アスカルティンまで面白がって探索に参加する始末。

 流石にアルバートは行かなかったけれど、今はネイト地下の大捜索にみんな夢中になっている。どうせ雨止みそうにないし、僕もミケルに感化されてものづくりがしたい時分だったし、いいかなって。

 

 そうやっている時間の中で、丁度チャルとアレキとアスカルティンが全員遠くに行ったらしい時があった。

 

 おずおず、と。

 アルバートは──話を切り出す。

 

「……フリスさん」

「はい」

「もし、もしもなのだけど……えと、その……だね、ですね」

「前々から思っていましたけど、僕にだけ敬語に、とかいいですよ。年功序列なんて古い概念、ホワイトダナップに相応しくないですし」

「え、あ、うん。そう……だね。わかった。ああでも、今話したいのはそういうことじゃなくて」

「寝ている僕の額にキスした事ですか?」

「うん……。……。……? ……──? ……!?」

「入院中、僕の病室に来て、告白をして、僕の額にキスをしていったことですか、と。そう聞いています」

 

 作業をしながら聞く。

 目を見る事もなく、淡々と。うーん、側頭部にカメラとか埋め込んでおくべきだったかな。反応録画してフレシシに「照れるってこうやってやるんだよ」って教えてあげたかった。

 

「え、ええ、えええええと、あの、そもそも」

「あなたが女性であることですか? わかっていますよ」

「えぅ、あ、ぁう」

「なんなら初めて会った時からわかっていましたよ。骨格も服に仕込んだ骨組みで誤魔化しているみたいですけど、科学開発班を舐めすぎですね」

「あ、じゃ、それ、う、あの」

「返事ですか? そうですね」

 

 さて──正念場かな。

 無計画大好きフリスくんとしては、ここでYESを返すのがもっとも面白そう。アルバートのことをもっと知る機会になるし、どうせホワイトダナップに帰る前に死ぬ予定のフリス・カンビアッソだ、そこの悲劇は良いカタルシスを生みそう……だけど。

 付き合うとか、結婚する、ということは、行動が制限される、ということでもある。

 ……ふむ。

 

 でもこれで付き合っておいて、チャルに見抜かれた時どんなヤバい展開になるのか楽しみじゃない?

 

「いいですよ」

「……ほ、本当かい?」

「はい。別に付き合っている女性もいませんし。ただ、ガルラルクリアとしてはどうなんですか?」

「あ……あー。あー。あーあー……」

「では、当主があなたに代わるまでは、秘密のお付き合い、という事にしましょうか」

「そう……だね。そうするしか、ないかな」

 

 アルバートは男子として育てられている。女性であることも当然のように秘密で、だから婚姻は恐らく身内の男性と、表向きも息のかかった女性との結婚、になっていたんだろう。

 まさか一緒に旅をした監視役の男とデキて帰って来る、など。ガルラルクリア家現当主が誰なのか全く興味ないけど、その人はもう血管破裂して死んじゃうくらい怒るんじゃないかな。

 

 うん。いいね。

 この後の展開とか代償とか全く考えてないけど、人間関係は複雑にすればするほど面白いって人間史と寄り添ってきて学んでるから!

 

 それに、チャルを取り巻く青春ラブコメアクションストーリーに、アルバートを混ぜ込むつもりはなかったからね。あるいはフリス・カンビアッソを生き残らせて、適当な上位者人格入れて、チャル達から引き剥がすのはアリかも。サイキックもロクな入力になってないから、家庭に縛りつけるとかして。

 

「フリスさん、見つけてきました」

「カンビアッソさん、これとかどうですか?」

「すみません、集音装置は見つけられなかったのですが、先程のものより大きなカメラを見つけました」

 

 続々と帰って来る少女達。

 アルバートがウインクをして、口元に指を持ってきて「シーッ」というような動作をする。やめときなって。あ、ホラ、チャルがなんか見抜いたよ今。アルバートの大切なものが変わったからじゃないかなー今の。

 

「ありがとうございます、皆さん。では作業に入るので、無いとは思いますが、外の警戒などをお願いできますか?」

「はい。じゃあアルバートさん、私と一緒に外行きましょう」

「え、うん。いいけど……他の二人は?」

「ちょっと気になるものがあったので……。アレキ、さっきの所覚えてる?」

「ええ。アスカルティン、案内する。あなたに見てもらいたいものなの」

「私? ……わかりました。行きます」

 

 う、うわぁ。

 何その都合良い部隊分け。

 き、聞きたい。チャルとアルバートの会話を聞きたい。ああでも、流石に"創り変え"たらバレるよね。普通に機械工作しないとダメだよね。機奇械怪にしちゃうのが一番手っ取り早いんだけど……うう、仕方がない、断腸の思いで我慢しよう。

 あとこれが終わったらその気になるもの、って方も見てみたいかなー。

 

 ……そうだ、オルクスとテルミヌスに……ちょちょっと、ね?

 

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