終末世界でガチ上位者が一般人やってる話 作:MORGANSLEEP / 統括導光
六日間の諸国漫遊の旅……もといエスト・マグヌノプス捜しを兼ねた、ルバーティエ=エルグ・モモの知見を増やすための──つまり、"入力"。
ミケル・レンデバランが事を起こす前にホワイトダナップへ帰って来た僕らが目にしたのは──少しばかり面白くないものだった。
「……ああ、おかえりなさい、フリス」
「うん、ただいま。……それにしても、これは」
「はい。皆さん案外脆かったというべきか……唆されてしまうほどには、心が弱ってたみたいですねぇ」
ホワイトダナップの人口三十万人。
その
そして今日の正午、招待状を持った人間が全てあちらのホワイトダナップに向かうのだとか。
英雄の少ない時代だ、凡夫ばかりの時代だと思っていたけれど……溜息も出るよ、それは。
「そこまで弱いか、人間」
「フリスが沢山殺したのが悪いんじゃないですかぁ?」
「そんなのいつの時代だって同じだったよ。しかし、死者の蘇生……というか模倣か。ミケルもなんというか、時代を踏襲するような事ばかり思いつくね」
契約と呼ばれる取り決めによって「悪魔」と人間が取引をしていた「悪魔」の時代。力を与える代わりに行動を縛る──融合機奇械怪を独力で作り上げた人間。
昔からいたとはいえ、歴史の断絶を経た上でそこに辿り着いた悪辣さは、どこかモルガヌスに似てさえいる。
そして今回は死者の模倣。「ゾンビ」の時代のゾンビはゆったり歩いてくるようなものでも見た目がズタボロなそれでもなく、ただ死んでいるというだけの人間に近しき存在だった。スファニア・ドルミルを見ればわかることだけどね。
それを機奇械怪で代用し、これも同じことを辿っている。
「……いや、少し辿り過ぎている……?」
「フリス、私はモモさんを送ってきますよぅ」
「ああ、うん。でもモモももう転移は使えるから」
「真昼間から転移なんてできないでしょう?」
「……まぁ、いいけどね。うん、いってらっしゃい」
中断された思考を取り戻す。
僕は彼に、ミケルに、今までの全ての歴史、というものを教えてはいない。彼は純粋に「機械」の時代に生まれた天才であり、特異なサイキックも持っていない。
だけど。
だけど、もし。
「次の花火が、『精霊』の時代に即したものなら」
いずれ彼は、僕の作る時代の先を行く事になるかも──。
なんて。
「じゃあ、期待してみよう。このハードル、勝手に置くけど、越えられなかったら君を見限ることにするよ」
空歴2544年6月10日。
誰が呼んだか、"選択の正午"が始まろうとしていた。
その時間、またもホワイトダナップの端末はジャックされた。
映るのは機械天使。特異サイキック種エンジェル──キューピッドを名乗る者。
──"ホワイトダナップの諸君。"
──"選択の時だよ。まずは招待状を受け取った人達。この六日間、どのような技術を用いても開く事の出来なかったそれが、開けるようになっているはずだ。"
それを聞いて、ホワイトダナップの各所で誰かが、誰かたちが招待状を開く。
一見装飾の施された金属板のようにしか見えなかったソレを開封し。
──"ようこそ、新生ホワイトダナップへ。君達は既に権利を手に入れている。"
起こる。
各所で、あらゆるところで、それは起こる。
寸前まで受け取った事を隠していた者も、受け取った事を自慢げに話していた者も、一様に──青雷に包まれ、消える。
消えた。
悲鳴は、けれど端末に映し出された人々の姿を確認し、それが困惑、驚愕へと変わっていく。
転移だ。恐らくは招待状を座標とし、そこへ転移を働きかけた。
──"ここからが重要だ。──招待状を受け取らなかったホワイトダナップの諸君。"
ああ。
それを見たのは誰が最初だったのだろう。
東部区域の縁に、何か──機械の爪のようなものが立てられていた。二本。否、二本ずつ、だろう。
それに誰が気付き、誰が報告し、誰が──逃げられたか。
──"最後のチャンスだ。今、こちらに来ると言わないのであれば──僕は君達を偽物として、邪魔者として、排除する。"
轟音。砲声。
東部区域の縁を掴み、ガラガラと、ゴウゴウと音を立てて、真っ黒な線が立ち昇る。
瞬く間に政府塔のてっぺんをも超える高さになったそれは、ぎょろりとした目で人々を睨み──大きな唸り声を上げながら、天へ向かって炎を吐いた。
創作でしかない。ファンタジーでしかない。
そんな機奇械怪はどのライブラリーにも載っていない──どの種かも検討のつかないそいつは。
「ドラゴン……?」
長い体躯。長い髭。
恐ろしき顔をした、けれどどこか神々しい機奇械怪。
竜がホワイトダナップを掴んで見下ろしていた。
──"選択の時だ。どちらに付くのが利口なのかは、明白だとおもうけどね"
パニックが起きる──。
「ドラゴン、ねぇ。……うん、芸術としてはかなり良い。僕じゃ無理なアート性だ。そうだね、ああいう方向に機奇械怪達が進化してくれてたら、評価こそしないけど、面白かったのになぁ、とは思うよ」
ハンター種は鶏、プラント種はサボテン、プレデター種は虎、オーダー種は犀、サイキック種は象。
これが原初の五機の姿だ。ここから全ての機奇械怪は派生し、交わり、様々な形を得て来た。
爬虫類系がいなかったのは確かに僕のミスなのかもしれない。それがいれば、ドラゴンも夢ではなかったかも。でもワーム……ランプリーいるしなぁ。爬虫類ではないにせよ、それらしい形まで辿り着いた奴はいるわけで。
結局空想は空想……せめて「魔獣」の時代ならね、なーんて。
さて、そんなドラゴンの出現に街は大騒ぎだ。
声高らかに「受け入れる!」と叫ぶ者、頭を抱えて塞ぎ込む者、悲鳴を上げる者。
凡夫凡夫凡夫。
その中で、必死な顔で懸命に避難誘導を行っている奇械士達。さらに、今しがたドラゴンへ向かって行った奇械士四人。
「あー、スファニアはやっぱいないんだ。ヘイズめ、貸してくれたっていいのに。なんか愛着湧いてるのかな? 愛にまで発展するならいいけど、彼の場合大体勘違いだからなぁ」
ケニッヒ・クリッスリルグとチャル、アレキ、アスカルティン。
まぁ確かにホワイトダナップの最高戦力だろう。アリア・クリッスリルグは迎撃か。いつも通りだね。
いつも通り静観するのもまぁいいんだけど、今回ばかりは楽しそうな事が重なっているから、少しばかり隙を作るのもアリだと思っている。
だからこうして、モモと旅をしたままの青年風な肉体を保っているわけだけど。
少し前の戦い。マグヌノプスとの闘いは、本当にほんの一瞬だったけど……武人系の戦いが楽しい、ということに気付けた。
生憎ながらモモとの旅でそれを使う機会には恵まれなかったけど、というかだからこそこう……フラストレーションに近いものがある。
試してみたい。ロンラウから受け取ったこの武人系の入力。
今まで念動力とかで大雑把にやってきた僕だけど、機奇械怪なんてものを作ったことからわかるように細かい作業も好きだ。計画立てて云々が苦手というか、面白くないからやらないってだけで、一瞬と一瞬の隙間を縫うような細かい事は大好き。
それが武人系の入力にあるように思う。単純なパワー馬鹿に興味は無いんだけど、ケニッヒ・クリッスリルグに感じていた巧みさはこれだったんだなぁ、って。
「ということで、やってきました、と」
パチッ☆と赤雷響かせて、やってきました新生ホワイトダナップ。
機奇械怪で溢れかえる魅惑の園。どこを見ても機奇械怪機奇械怪機奇械怪。機奇械怪だらけの機奇械怪パラダイス。
ま、そういうことである。
ここに人間なんかいない。融合機奇械怪でさえいない。
転移したようにみえたのは、予め用意してあった"招待状"を受け取った者を模した機奇械怪。初めからいたのも同じ。
じゃあ本来の人間はどこに、そしてなんのために招待したのか。
答えは簡単だ。彼が元々やっていたことを思い出せば、ね。
「──どんな気分なんだろう。自分だけは助かると、死した者に再び会えると、機奇械怪との共存なんてものを選んだ人類。君達は今、この巨大な水槽に入れられて、何を思っているんだろう」
懐かしい。
昔、フレシシが入れられていたものと構造は同じだ。その中にぎゅうぎゅうに人間が詰まっていることと、それが何基も何基も並んでいる事以外は。
新生ホワイトダナップの地下は、全てこれだった。甘言は素材集めの道具だったって話ね。
「無様だ、とは思わないよ。衆愚は切っても切れない人間の性だ。それも習性だと見た方が早い。それに、チャンスを掴まんとすることは悪い事ではないからね。どちらにせよホワイトダナップの住民はもうギリギリだったと、そう決定づける出来事だった、というだけだ」
暗い、けれど黄緑色の仄かな光が照らす地下を行く。
湿った廊下……というか施設の床は、陰鬱な雰囲気を加速させるに十二分と言えるだろう。
転移光。
「む……む? フリス……か?」
「違う、といったら?」
「いや、その問答で十分だ。面倒だから無駄な隠蔽をするのはやめろ」
「あはは、面白いかと思ったんだけどね」
目の前に転移してきた存在。
それはケルビマだった。
「──無様だな」
「まぁまぁ。彼らは弱かったんじゃないよ、ケルビマ。恵まれなかっただけさ。運が無かったことまでもを弱いと称するのならそうだけどね」
「くだらん。甘言を弄されそれに乗り、今になって後悔する。それのどこに強さがある」
「なら、"招待状"なんて得体の知れないものに怯えて受け取らず、布団にくるまって全てが終わるのを待っていることは強さかい?」
「無論、弱さだ。……む、だとすると、甘言を持ち掛けられた時点でソイツは弱い、ということになる……か?」
「あはは、ならないよ。彼らはただ愚かだっただけだ。弱かったわけじゃない」
ははあ。
ケルビマ、何かあったね、コレ。完全にモルガヌスの支配から逃れている。普通に一個の命になれている。
成長コンテンツだ。本当に見ていて面白い。記憶を預けた甲斐があったというものだよ。彼とエクセンクリンくらいじゃないかな、僕がここまで……懇意にしたのは。あ、ヘイズも一応そうか。
今まで十万の上位者がいて、たった三人だ。ああ、ロンラウとかの最初の十人は除くよ。一緒にいた期間が長いだけだし。
NOMANS? あはは、もう無理でしょ。
「む」
「お」
また、転移光。
中から現れるは──。
「やぁやぁやぁやぁ元気かいフリス。聞いてくれよ、良い事があったんだ」
「やぁエクセンクリン。君がそこまで上機嫌で、しかも僕に対してそこまで友好的なのは珍しいね。モモのことならお礼は要るよ」
「今までの事を帳消しにする──ことはないが、非常に喜ばしい。非常に良い働きをしてくれたと思っているよ!」
「だろう? たまには僕も良い事をするのさ」
「……話が見えん。エクセンクリン、何があった?」
エクセンクリン。
いやぁ、びっくりだね。ミケルのショウに、ホワイトダナップに配置された上位者三人が集う、なんて。
「モモがね、生き返ったんだ」
「……フリス。いつもは逆だが、説明しろ」
「彼の娘が死んだことは知っているだろう? 君の腕を吹っ飛ばした娘」
「ああ」
「ルバーティエ=エルグ・モモ。彼女の身体は、というか機奇械怪になった彼女は、実は成ったわけではなく、ルバーティエ=エルグ・モモ、という女性を模しただけの機奇械怪だった。そして彼女の魂であるオールドフェイスはエクセンクリンに渡してあった」
「それが! 無くなったんだ! それはつまり」
「……成程、そういう仕組みならば蘇るのか」
僕は死者の蘇生、なんて神の如き御業は使えない。できるのは死者を模した機奇械怪を、自分をそいつだと思い込んでいる機奇械怪を作る事だけだ。
だけどその機奇械怪が魂を取り戻さないとは言っていない。僕がどうこうできるわけじゃないけど、機奇械怪本人の努力か、あるいは創造性によっては、此度のモモのようにそれも可能である、ということ。
肉体を捨てて、魂だけを分離し、機械の身体にそれを憑依させる。
モルガヌスも同じようなことをしている。マグヌノプスも一応そうだね。
だから、モモ本人の努力次第ではあったんだ。彼女が自らの魂を取り戻す──エクセンクリンが後生大事にと持っていたそれを再分解し、自らのものとできるかどうかは。
もっともそれを蘇りと呼ぶかどうかは……あはは、個人の感性に依るかな。
で、それができた理由が僕にある、と。
エクセンクリンは勘違いしているわけだね。うん、僕が何かしたわけじゃないけど、恩は売っておくに越したことはない。彼は報われ僕は褒められ、Win-Winじゃないか。
「それに、何より、妻を守らんとしていた私に対し、モモがこう言ったんだ。『お父さん……その、お父さんが上位者だとか、なんだとかはわからないけど……もし、今この島に降りかかっている災禍を祓える力があるというのなら、お願いできないだろうか』って! 久しぶりに頼られて嬉しいよ私は!」
ちょっと騒がしすぎてウザいな、とか思ってないよ。
「しかし……過剰戦力だな。俺一人でも問題ないが」
「私は同行するよ。娘に頼られて応えない父がいるものか」
「あはは、僕は戦ってみたいから行くよ。そうだケルビマ、今度時間があったら手合わせしよう。君は武人系の極致にいる。そういうのと戦ってみるのも面白そうだ。あとヘイズもいいかも」
「……戦闘に明け暮れて、本来の目的を忘れそうな勢いだな」
大丈夫大丈夫。
そういう言動を意識してやってるだけだから。それに、本来の目的を君達に教えたつもりはないし。
「で、件の男はどこにいるのかな。一度は私の娘を殺した男だ。前々から恨みはあったよ、ちゃんと」
「……俺は、よくわかっていないままだが。アレキが叩き落すと言っていたコレの前に、機奇械怪が来てしまったからな。代わりを務めるのも悪くはないだろう」
「血気盛んだなぁ君達。あと、ミケルがどこにいるかはわからないよ。この島ちゃんとホワイトダナップのレプリカだからかなり広い。僕の感知でも覆えない程にね」
じゃあ、手分けするか、とはならないのが上位者である。
「ちなみにこの人間どうする? 助ける気ある?」
「異なことを言うな、フリス。心にもないことを」
「私も特に思い入れはないよ。フリス、君が助けたいのであれば助けると良い。興味は無いさ」
「あはは、面白い事言うねエクセンクリン。あるわけないじゃん、そんな気持ち」
こればかりは共通認識である。
人間なんて、増えたり減ったりするものだ。放っておけば増える。絶滅しても植えなおせる。全然普通にこっちから絶滅させた事もあるくらい。
だから、上位者の中で人間……とりわけ人類というものに対して強い意思のある者はいない。個人個人に対しては、エクセンクリンを見ればその限りではない、というのがわかるだろう。
だからこの水槽に詰められた人間を見て。
特に"英雄価値"でもない人間を見て。
何の感情も──あ、ケルビマは無様だな、って思ったんだっけ。じゃ今のナシね。
「ま、馬鹿と煙は高い所に上るっていうし」
「言うのかい?」
「ああ、言うな」
「とりあえず政府塔、行ってみる?」
さて──ハードルぶちあがったけど。
ミケルは期待値超えてくれるんだろうか。
「……
男がいた。
呟く言葉は明瞭なのに、その声色からは死臭しかしない。
あるいは恨みか、意地か──強がりか。
「ふむ。協力者としての意見を述べるのならば、話す体力さえ温存しておいた方が良いのではないか?」
「……問題ない」
「そうか。君がそう言うのならそれでいいが──神の降誕までに死なないでくれたまえよ?」
「ああ……」
そんな彼に、心配そうな……色は全くない、どちらかというといなくなられると面倒、みたいな表情で声をかけるはミケル・レンデバラン。
協力者。彼がその言葉を使うのがどれほど珍しいかをわかる者はここにいない。
根本的に人間に対して愛情しかないミケル。
彼の根幹にある愛は、つまり、神の供物としての愛情だ。ミケルにとって人間とは神に捧げるべき最上の贄であり──それ以外の感情は無い。
たとえ友と接していた誰かだろうと、家族として接していた妹にであろうと。
愛情。溢れんばかりの愛情。神の供物として最上位の評価。だからこそ人間と機奇械怪を神の降誕に用いる。機奇械怪だけにしないのはそれがため。
そんなミケルが、協力者と仰ぎ見る存在。
彼こそが。
「そろそろ始めるとしようか──全ての始まりを」
「ああ……」
ホワイトダナップに光が満ち始める──。
「おお?」
フリスが不思議な声を出した。
それは喜色。どこか嬉しそうに、輝き始めたホワイトダナップを見る。
「これは……」
「おいおいこれは」
新生ホワイトダナップの地下。
人間がぎゅうぎゅうに詰め込まれた水槽が、ぐつぐつと音を立て始める。神の髄液と呼ばれた粘性のある動力液が、人間の肉を骨を皮をと溶かし始め──悲鳴と断末魔が上がる。さらにまた、その人間達を押しやる形で機奇械怪塊が水槽へ転移し。
──それが、成る。
光。光。
美しさ、荘厳ささえ感じる光。
それの覚めた頃。
水槽の中にあれだけ詰め込まれていた人間も、仄かな黄緑色の光を発していた動力液も、グシャグシャの機奇械怪の塊も消えていて。
新生ホワイトダナップの真上に何か──炎の塊のようなものが出来ていた。
「……『精霊』! まさか本当にそうなのかい、ミケル」
それは上位者が、というかフリスが。
折角「悪魔」の時代に辿り着きかけていた進化を、それよりももっと直接的な「ゾンビ」の時代がかなぐり捨てた事に落胆し、ならばソレそのものを人類を脅かすモノにすればいいんじゃない? という発想で編み出されたもの。
これが、「精霊」。肉体を持たない、ほぼほぼソレだけのもの。
「実際に見るのは初めてだな」
「私もだ。私の製造は『魔獣』の時代。『精霊』の時代の『精霊』など、古代の遺物にもほどがある」
「えー、どうしよう。ちゃんとハードル越えられるじゃないか君。少し惜しくなってきた……けど、これで『機械』の時代まで行ってまたループするようなら嫌だし、被害も大きいし……」
その「精霊」が。
今まさに政府塔へ登らんとしていた三人を向く。
当然だ、機奇械怪に魂はない。だから「精霊」に機奇械怪は見えない。
見えるのは、それをジャラジャラと沢山持っている三人だけ。
「……敵意を向けてきているが、どうする?」
「フリス。あれは時代にそぐわないものだけど……」
「あ、うん。殺して良いよ。今でも作れるし」
黄緑色の炎の塊が降る。降り注ぐ。
三人に向かい、「精霊」が──。
向かって消えた。
まぁ、エクセンクリンの念動力と、ケルビマの一刀で。至極簡単に。
「弱いな……精霊とはこの程度なのか」
「表情のようなものはあるんだね。知的生命体ではあるのかな?」
「もう終わった、みたいな顔してるトコ悪いけど、まだ来るよ。流石にあれだけ贄がいたんだ、一匹じゃない。それじゃ、任せるよ二人。僕ちょっと確認したいことができたからさ」
返事も待たずに、フリスが二人を置いて歩き出す。
それに制止の声をかける二人ではない。いや、エクセンクリンは何か言いたげだったけど、それよりも止める方が面倒だ、と感じたのが大きいのだろう。
あんなに嬉しそうで。
あんなに──落胆したフリスに声をかける、などと。
流石にね、やりすぎ。
彼の言う神が「精霊」でした! なんてのは出来過ぎなんだ。
これは誰かが教えている。確実だ。
で、そういうことしそうなのに心当たりは二つ。
片方はアルバート。でもアレは善性存在だから、ミケルには絶対手を貸さないだろう。
なら、あと一つは。
「はぁ。本当に嫌になる。何も知らない、無知のそれが進化するから、輝くから凄い、って思うのにさ。なんでこうチラつくかな。なんでこう邪魔をするかな」
政府塔を上っていく。
配置された機奇械怪が普通に僕を襲ってくるけれど、即席槍でバキボキ壊していく。折角の戦いの場なのに、こうも心躍らないなんて悲しいよ僕は。
段々面倒になって来て、念動力で対処するようになって。
あー、武人系の入力って殲滅力が足りないんだなぁとか思ったり。
どんどん下降していく気分に溜息を吐きながら。
その階へ辿り着く。
「──入るよ、ミケル」
「む……まさか辿り着く者がいるとはな。奇械士か?」
「ん? あー。うん。まぁ、そんな感じ」
あ、そっか。
僕今青年ボディだから、声も違うんだよね。
どうせだからと、扉を蹴り開ける。
「乱暴だな。流石は奇械士、野蛮だ」
「どう思ってくれてもいいさ。で──あ、やっぱりいたね、君」
ミケルはどうでもいいけど。
その隣で、壁にもたれ掛って……息も絶え絶えになっている男性。
彼が、俯いていた彼が、面を上げる。
「まったく、メガリア全土を探し回った僕の身にもなってほしかったな」
「……アイメリア……か……」
「うん。そうだよ、僕だ」
男の名は。
「エスト・マグヌノプス。僕が殺さずとも死にそうだね?」
そこに、いた。