終末世界でガチ上位者が一般人やってる話 作:MORGANSLEEP / 統括導光
「~♪」
昔の歌を歌う。歌詞なんか覚えてないから、鼻歌で。
静かな場所で、風に吹かれて。
復興中のホワイトダナップは悲嘆に満ちている。急ピッチで進められている工事は、けれど希望に満ちたものでなく、明日は暗闇なのだ、という顔がずらりと並んでいる。
仕方のない事だろう。ホワイトダナップの人口は文字通り半減……否、それ以上が消え、繋がりを失い、縋るものを失い。
「~♪」
あるいは支配者を打ち倒したアクルマキアン、膿を排したラグナ・マリアよりも、ホワイトダナップは失意の果てにあると言えた。
そんなホワイトダナップを見て鼻歌を歌う僕の横に、一つの影が降りたつ。
「
「まぁね」
凡夫は悲嘆の海に溺れているけれど、そうではない者たち……"英雄価値"はしっかり動き始めている。
そしてそれは、上位者たちも同じ。
「
「ご機嫌ナナメかい? 君の支配を受け付けない上位者が、三人も確立してしまったことに」
「
「へぇ」
臆病で悪辣で収集癖の強い彼が、未知に期待をしている、なんて。
珍しい事もあるものだ。
「
生気のない瞳で、半開きの口で。
確かアクルマキアンに配置されていたはずの上位者が、操られるようにしゃべる。
「
「……そうかもしれない。五年後、このホワイトダナップで、全ての決着がつく可能性がある。マグヌノプスも"英雄価値"も上位者も、そして僕も君も。全てを巻き込んで──全てが無くなるかもしれない」
「
「『機械と人間』の時代。僕はこの時代にそういう名をつけた。いつだって時代の名前は人類を脅かすモノである──それは知っているだろう」
「
「そう。そしてそれは──あるいは、僕がこの星に見限りをつける事態ともなるだろう」
だから、盛大にやろうと思っている。
神と人と。
チャルはあの時、僕の中にあった、僕の一番大切なモノを見たはずだ。アスカルティンはもう、己が食べるべきものが何かわかっているはずだ。モモはもう、あるべき世界の姿を理解しているはずだ。
世界は変わる。確実に。
ならば僕は、無計画ではなく、ちゃんとした下準備を進めるべきだと踏んだ。
「モルガヌス。僕は君の位置を知っている。僕は君がやろうとしている事も知っている。君が僕を排そうと構築しているものを知っている」
「……」
「止めはしない。僕は君を認めているからね。だけど」
何のためらいもなく、その全身を《茨》で突き刺して。
「僕の実験を邪魔するのなら、容赦はしない。そろそろ思い出すと良いよ」
「
消えていく上位者の身体に目もくれず──この風吹く丘を駆け上がって来る少女に目を向ける。
少女に。
ああ。ううん。
決別のつもりだった。五年後まで合わないつもりだったのに……なんだかなぁ。
「フリス」
「……何しに来たんだい、チャル」
「お話を、しに来たの」
さて。
じゃあ。
お話を、少しだけしようか。
「フリス。今度こそ、久しぶりだね、っていうし……ずっと一緒にいたよね、っていうよ」
「うん。もうわかっているんだろう。フリス・クリッスリルグも、フリス・カンビアッソも、そして僕も、完全なる同一人物で──それらは僕の一部でしかない、ということに」
「わかってる。私が好きだって思ったフリスは、本当にもう死んだんだって、知ってる」
銃は突き付けられていない。
ただ、あの時のデートを思い出させる位置……つまり、隣り合って。
あの時とは全く違う様相となったホワイトダナップを眺める。
「じゃあ、何をしに来たのかな。何を話しに来たのかな、チャル」
「ちゃんと言おうと思って」
「何を?」
チャルは──突然僕に顔を近づけて。
僕の顔を、自分の方に向けさせて。
「嫌い」
──そう、言い放つ。
笑顔で……目を潤ませて。
「ずっとずっと、引き摺って来た。ずっとずっと、口ではわかったような言葉を吐いて、アレキにも大丈夫だよ、なんて言って、ヘーキなふりをして、ずっとずっと自分を騙して──あなたを忘れられずにいた」
だから。
「嫌いだよ、フリス。なんでもないかのように人をいっぱい殺して、国を消して、子供みたいに、いらなくなったら捨てて。私を大切だって思ってくれていたあの心が嘘だとは思わない。けど、私はもう、あなたが嫌いです」
何度も言う。
チャルは、自分に言い聞かせるように、何度も何度も同じ言葉を紡ぐ。
「嫌い。嫌い。嫌い。フリス、私はあなたのことが嫌いです。私はフリス・クリッスリルグが、フリス・カンビアッソが、そしてフリスが嫌い。──だから」
「うん」
「……だから。だから、さ」
紺碧を揺蕩う銀の瞳。
マグヌノプスの影はしかし、彼女の価値を損なわせない。
「お願いが、あるの」
「うん。言ってみて、チャル」
声を震わせて、喉を枯らして。
理性が、本能が、僕を嫌っているとあの時チャルは言っていた。そうだろう。マグヌノプスの系譜であれば、僕が嫌いで嫌いで仕方がないはずなのだ。
それを押して。
エストもチャルも、それを押し退けて──僕を見る。
「──私を嫌ってください。そうじゃないと、そうして、くれないと──私の魂は、あなたを諦める事ができないから」
──……。
ごめんね。
「それは、できない。僕は君を嫌えない。君がたとえ僕を殺そうと、僕の計画を台無しにしようと、君の事を嫌いになる事は無いよ、チャル」
「……お願い。私は、あなたが嫌い。フリスが嫌い。色んな事を知っているクラスメイトのあなたが、ダムシュでみんなに酷い事をしたあなたが、ホワイトダナップを、この島をめちゃくちゃにしたあなたが、大嫌い。心の底から、嫌い。嫌いなの」
「うん」
「心から嫌い。頭のてっぺんから足先まで嫌い。嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い」
だから、オネガイシマス。
お願いします。お願いします、と。
「お願いだから、私を嫌ってください。このままじゃ私は──あなたを……フリスを、殺せない」
「僕は君を評価している。君の父親も評価している。君が素晴らしいものだと、君が美しいものだと、君が類を見ない英雄であると、そう評価している」
なら、これが最大限の譲歩だ。
「評価しているだけだよ、チャル。エストに向けるもの。アスカルティンに向けるもの。そして君に向けるもの。それらは等価だ。──君を好いているわけじゃない。評価していることは、大切に想うことは、好きだと思う事じゃない」
「──……うん。ありがとう」
「これで、さよならできるかな、チャル」
チャルは、にっこり笑う。
笑って。
「できないよ、フリス」
「あはは、だと思ったよ」
「できないよ。無理だよ、フリス。私、フリスが好きだよ。嫌いなはずなのに、嫌わなきゃいけなはずなのに、私、まだ、まだ、ずっとずっとフリスが好き。どうしてかわかんない。そんな酷い事言われてるのに、私、フリスが好きなんだ。なんでかな。わかんないよ。わかんない。わかんないよ、フリス」
捲し立てるように言う。涙を流して言う。
ようやく顔を話したチャルは、そのまま立ち上がって。
「さよならは、できない。あなたを嫌いにはなれない。私に
オルクス。
そうだ。彼女が気付いた通り、その双銃はユウゴとリンリーの魂を加工したもの。同じように、スファニアのカイルスはマリクの魂を用いている。
気付いて尚手放していないのは。
「ずっと前から好きでした。あなたが死んでからも、ずっとずっと好きでした。あなたが悪者だってわかってからも、ずっとずっと好きでした。あなたの所業がわかっても、それでもまだ、大好きです」
「うん」
「──だから、決めました」
「あはは、何をか、聞いてもいいかな」
銀の混じらぬ瞳で、チャルは言う。
強くて、挑戦的な笑みで。
「私があなたを変える。──強くなって、今のあなたを、私の知ってるフリスになるように変える。殺してでも、変える」
「……うん。楽しみにしてる」
「それじゃ。──私、強くなるから。今度こそじゃあね、フリス」
言って。
チャルが去っていく。一度たりとも振り返ることなく、この静かな丘を駆け下りていく。
……さて、じゃあ。
ストーカーさんともお話をしようか。
「ほら、チャルは完全に去ったよ、ストーカーさん」
「誰が」
「君以外にいるのかい? まったく、チャルにも気付かれていたよ。気配消すの下手なんじゃない?」
「……元々あの子には隠し事なんてできないから」
チャルがここに来た当初から隠れて此方を窺っていた少女──アレキが出てくる。
僕の感知範囲は勿論、チャルの目にもしっかり映っていたことだろう。
「それで、何用かな」
「宣戦布告」
「へぇ。前、僕に文字通り手も足も出せずに負けた君が?」
「次は殺す」
ふむ。
じゃあ、少し食指を動かして──念動力を叩きつけてみる。
瞬間、僕の腕が飛んでいた。
……念動力で掴みなおして、くっつける。
「テルミヌスがあれば問題ない、って?」
「今、テルミヌスは使ってない」
言われて気付く。
確かに振りぬかれたアレキの刀はテルミヌスでなく、彼女が昔使っていた溶断用の剣。
「──兄に、念動力の対処法を習った。まだ完璧とは言えないけれど……このただの刃が、素っ首叩き斬る日も近い」
「いいね、悪くないよ、アレキ」
念動力の対処法。
なんだろうか、それは。純粋な武人系のケルビマだからこそ思いつく対処法になるのかな。
どちらにせよなんにせよ、今原理を聞くのは勿体ない。
「でも足りない。君には特別が足りない」
「ええ、わかってる」
「そうかい。正直言って、五年後の決戦。ただ念動力が切り裂けるというだけでは戦力外通告も良い所だ。それはわかっているね?」
「ええ」
ならいい。
それなら問題は無い。どこをどう対処するのか、どこがどう変わるのか。
楽しみにしておこう。
「アレキ・リチュオリア。チャルは僕の事、まだ好きらしいよ」
「……そう。でも、私はチャルのこと、好きだから」
「諦めないんだ?」
「諦めさせなかったのは、あなたでしょう」
ああ、そうだ。
あの時アレキの心を引き留めたのは、他ならない僕自身だ。
「期待している。今は何の価値もない君が、僕を驚かせることを」
「次は首を斬る。いいえ、全身を細切れにして、中身も斬る」
「あはは、それは良い宣言だ。楽しみにしているよ」
潮時だ。
今度は僕が去る。赤雷を走らせて、転移で去る。
「フリス」
「何かな」
「……もし、あなたがチャルに変えられたら」
それはあり得ないIFだけど。
「──最後はまた、一緒に学校へ」
「あはは、いいかもね、それも」
僕はその場から、完全に消えた。
「~♪」
鼻歌を歌いながらそこを行く。
真白の家々が並ぶ坂道。時折ある黒い家を目印に、幾重にも重なる十字路を的確に曲がって進んでいく。
そうして辿り着くのは、他の家々と変わらない一軒家。
玄関を開け、鼻歌を歌ったままに上がって行けば。
「~♪」
「……上機嫌ね」
「あ、起きてたんですかぁ?」
「ちょっと前から、ね」
一人の女性が私を迎えてくれた。
「おはようございます、
「おはよう、フレシシ」
榊原ミディットさん。
フリスの手を借りずに、私が完全復元した女性ですよぅ。
「五年後?」
「はい。五年後、ホワイトダナップの上空に『星の意思』が現れるとかで、奇械士の皆さんは今猛特訓中ですねぇ」
「……その話を持ってくると言う事は」
「お察しの通りです。──上手く行けば、全勢力対フリス個人、という構図を作り上げる事が出来ます。『星の意思』、あるいは『神』。奇械士、機奇械怪、上位者。このメガリアという星に住まう全ての存在が、フリス一人を敵に回す、という展開があり得るんです」
「そこを狙わない手はない、ってことか」
「はい」
さて、それは紛う方なき密談と言えるでしょう。
話し相手のミディットさん。彼女と今詰めようとしているのは──『アイメリア・フリス討滅作戦』について。
私の創造主で、私が最も敵に回したくない存在たるフリスを、どうやったら殺せるのか、という術をまとめた計画書になります。
「そちらはどうですかぁ? 今同胞は」
「この国の半分を超えたよ。順調にコトが進めば、このジグという国の全国民が私達と同じになる日も遠くはないと思う」
「流石の手腕ですよぅ」
参考にしたのは二つ。
一つはミケル・レンデバランの作った『刺したら機奇械怪に変えるくん.mex』。ふざけた名前のナイフでしたが、構造は美しいの一言。とても人間が作り出したものとは思えない残虐性を持つ機構と、あまりにもスリム且つ無駄のない構造は、私やガロウズが見ても舌を巻くほど。
もう一つはラグナ・マリアの吸血鬼。正確にはその事件の被害者たち。
敵を噛んだら機奇械怪に変える──融合させる、なんて仕組みは搭載されていなかったものの、その思考ルーチンは非常に有用なものでした。
以上二つを用い、このジグという国でパンデミックを起こしたのです。
パンデミックといっても、秘密裡に一人一人変わっていったものですから、気付いた者はいないでしょう。
この鎖国中の国は、いつのまにか機奇械怪の国になっていて。
いつのまにか、私の意のままに操れる兵隊になっていた、と。そういうわけです。
いやぁ、苦労しましたよ。
私は元がサイキック種なので、オーダー種の信号の出し方はフリスから習う他ありません。そこへガロウズという姉妹機が台頭してきます。ガロウズはまさにオーダー種をベースとした機奇械怪で、彼からたくさんの信号を学ぶことが出来ました。
機奇械怪同士で知識を教えあう。
あの時フリスに諭されてから、私はそれを積極的に行っている。モモさんやアスカルティンさんへ物事を教えるのも同じ理由。本質的に争い合う必要の無い私達機奇械怪は、だからこそ助け合って高め合っていく事が出来ると理解したのです。
「……ここが見つかる心配は、ないの?」
「見つかってますよぅ、とっくに。ただ、フリスは未知を解き明かすことを嫌うので、突撃してくることはないですねぇ。ここで作られる兵団の詳細も知らないまま、楽しみに五年間を過ごしてくれるはずですよぅ」
「そう。……キューピッド、か」
「復讐心は、まだありますか?」
「勿論ね。──次こそ私の手でやっつける」
何を失ってでも、というか。
もう何も失うものがないがゆえになりふり構わず、強い憎悪を抱くがゆえに諦めず、尽きることの無い怒りを持ち続けられる者。
私はそれをずっと探していました。
フリスが無計画にも半機奇械怪へと変えた女性、榊原ミディット。
メーデーと名を変えた彼女は、しかし最愛の人を守ることも出来ずにフリスに負け──殺されかけた。
これほど都合の良い存在はいません。
「では、ミディットさん。そろそろ一度、手合わせをしませんか?」
「手合わせ? いいけど、あなたはサイキック種だよね? 戦えるの?」
「あ、勿論私は無理ですよぅ。ただ、最近とても強い旅人さんが来たので、その方にお相手頂こうかと」
「……よくわからないけれど、わかった」
ミディットさんが自らの腕から杭打機を取り出します。
仕込み武器。機奇械怪ですからね、らくらくです。
では──案内しましょう。
久しぶりのご対面となるでしょうからねぇ。
「やぁ、ミディット。あるいはメーデー。ふふ、メーデーである時はボクと会話することはなかったから、やっぱりボクにとってはミディットが一番しっくりくるね」
「……アルバートさん、でしたか」
ここはジグの総合体育館。
主に奇械士が使用する場所で、今回は貸し切りとさせていただきました。
その中心に佇んでいたのが、ガルラルクリア=エルグ・アルバート。
元ホワイトダナップの最強。ある意味でフリスを完全に封殺できるサイキックを持つ他、身体能力や剣技も卓越したものがあります。
当然と言えば当然。フリス曰くアルバートさんは「精霊」の時代の人間。空歴1002年生まれ。
つまり、1542年もの研鑽を積んだ末にいるわけで。
「ふふ、敬語は要らないよ。ボクはもう奇械士をやめているし、それは君も同じ。この場においては対等だ」
「わかりま……わかった。一応言っておくけど、昔手合わせした時の私とは全然違うから、油断とかしないでね」
「しないさ。ただ、そっちこそ慢心しないことだ」
空気が変わる。確実に重くなる。
フリスはアルバートさんをして、「新鮮味がないから"英雄価値"とは呼べない」なんてことを言っていたように思う。
確かに機奇械怪にとっては、これは、アルバートさんの存在とは既知だ。既存の英雄に並ぶ身体能力、上位者が扱い得るサイキック、過去の積み重ねによる剣技の極致。
知っているから、新しくない。
でも、習得出来ているわけじゃない。
だから。
「動力炉と頭部。それ以外なら壊してもいい。そうだったね」
「はい。対し、ミディットさんは、全力でいいですよ。じゃないとアルバートさんに傷一つ付けられないとおもうのでぇ」
二人の姿が消えたのは同時だった。
開始の合図など必要ない。次の瞬間杭打機は空に弾杭を射出していて、ミディットさんの左腕がぽーんと宙に浮いていた。
「──ッ!」
「よく見るんだ、ミディット。自分の攻撃を当てるのは二の次だ。何をされたのか、何をすれば躱せるのか。相手が格上なら、慢心の全てを捨てるといい。観察して、考察して、推察して──隙を見つけるんだ」
金属音。
今度はミディットさんのお腹がザクりと斬れます。
対し、アルバートさんは無傷。サイキックの気配は感じないので、時止めなるものは使っていない。単純な身体能力のみでミディットさんを圧倒している。
……正直な話をすれば、私は人間が嫌いです。
自分たちより劣っていると考えている。チャルさんもアレキさんもアルバートさんも……どれだけ特異な力を持っていても、人間だ。
たった60年そこらで死ぬ人間だ。餌として見ることはできても、評価の対象と見る事は出来ない。
はず、だったんですけどねぇ。
「……そこまで。勝負ありです」
「うん。まぁ、予想通りの結果だったよ」
「ッ……」
四肢を斬り飛ばされ、動けなくなったミディットさん。
ま、これで鼻っ柱は折ってくれましたかね。フリスが特別強いから負けたのではなく、ミディットさんが弱いのだと。
そしてこれは、これより生まれる兵士の指針にもなる。
人間から機奇械怪になった者は皆、慢心というか全能感に襲われやすい。
その矯正をしてくれるのがアルバートさんになる。依頼しました。その辺ほっつき歩いてたので。
「それじゃあ直しますから、家に戻りましょうねぇ」
「……」
「あ、アルバートさん。報酬の家は北東方面にありますので、あ、これ鍵ですよぅ」
「うん、ありがとう」
アルバートさんへの依頼としての対価は、ジグに住処を作る事。
根無し草のアルバートさんが、けれど世界を旅するための拠点が欲しいとのことで、ジグに家を一つ。その代わり、帰ってくる時に私の機奇械怪兵団へ稽古をつけてもらおう、という契約。
人間は餌でしかない。
はずでした。けど、もうそんな常識は捨てました。
人間嫌いは変わってません。同類を壊す人間を好きになれるはずがないので。ただの餌を好きになれるはずがないので。
ただ。
「ちなみにフレシシさん、君はやらないのかな?」
「やりません。私じゃ勝てませんから」
私も、慢心はやめることにしました。
人間は私達を越えていく存在。人間は私達に食べられる存在。
どちらにもなり得る存在ならば、認める事もするべきなのだと思う。
そうじゃないと。
そうじゃないと、フリスには勝てない。あの上位者を倒すことはできない。
私は彼の敵に回りたくない。彼を敵に回したくないけれど。
けれど、アレから逃れられるのなら。
「ボクはマグヌノプスの味方だからね。マグヌノプスの味方をする君達に手を課すことは吝かではない」
「はい。よろしくお願いしますよぅ」
……私は、悪魔にでも人間にでも、頭を下げますよ。