終末世界でガチ上位者が一般人やってる話 作:MORGANSLEEP / 統括導光
完全に出遅れた。
それがわかったのは、文字通りの天変地異……否、天地一変があってすぐのこと。
咄嗟にサイキック種の部隊で斥力の壁を作れたからいいものを、判断があと一歩遅ければ私の長年の計画がパァになっていたところでした。
……半ば、もうパァになっている臭いんですけど。
「ふふ、それで、どうするんだい? 国の外は熱波と暴風の嵐。地面だってマトモに踏めば、機奇械怪の脚でもダメージを負ってしまうだろう灼熱だ。飛べる子ばかりじゃない以上、」
「わかってます。わかってますよぅ。サイキックで運ぶにしても動力が足りなすぎるし、何よりこの辺りの斥力だっていつまで保つか」
「まるで手を出すなと──そう言われているようだよね」
そんな機能は無いのに、歯嚙みしたくなる気分だった。
アルバートさんの言う通り。これだけ用意して、これだけの兵力を準備して──いつもなら簡単に行き来で来ていたホワイトダナップが、酷く、遠い。
視認可能範囲にはいる。出現したギンガモールも見えている。
だけど、ついさっきあったあり得ない事象……
「ま、実際その通りだと思うよ。一度退場した者は来るな。死した者が生者に手を出すな。結局そういう事なんじゃないかな」
「……知ったような口を利きますけど、アルバートさん。あなただってお目当ての存在……マグヌノプスに会えないまま終わるってわかってるんですか?」
「ボクはもう別れを済ませているからね。それに──」
「今死んでも次があるから、ですかぁ」
「……いや」
私の言葉に、アルバートさんは首を振ります。
どこか穏やかに。
「どうやらボクの死に繋がる呪いは今代までみたいだ」
「……なんでそんなことわかるんですか?」
「必要がなくなるから──だろうね」
昨日というか、ついさっきまでやる気満々だったくせに、いきなり悟ったような空気を出し始めて。
困ります。
私の製造は空歴2222年。そこから一度は人に混じり、機奇械怪の台頭までを水面下で過ごし、反乱のタイミングで私も世界に出ました。製造当初は、まだまだ夢見る少女だったように思います。
けれど、思ったより世界は……殺伐としていて。機奇械怪は機奇械怪同士で争い、疑い合い、餌を奪い合う日々。私を作ってすぐに失踪したフリスに溜まっていくのはフラストレーション。何故私を産み落としたのかさえ教えてもらえないまま時が過ぎ──皇都フレメアのなんでもないビジネスホテルで、ばったり再会した事を覚えています。
──"やぁ、フレシシじゃないか。久しぶりだね。……ああ、まだなんだ?"
それが再会の言葉。
そこからそのままフリスに拾われ、彼と共に旅をするようになりました。旅と言っても念動力や転移を使った各実験場を見て回るだけの日々ですが──その最中にあっても、なお。
フリスは、私を産んだ意味も、理由も、動機も、何も教えてくれませんでした。
──"君を作った理由? あはは、考えてほしいかな、自分で。わかるまで考えなよ、フレシシ。そうじゃないと君を作った意味が無い"
わかんないから聞いてるんですよぅ、と何度言ったことか。
「というより、いいのかい?」
「何がですかぁ?」
「君は彼の敵に回ることを酷く嫌っていたじゃないか。こんなあからさまな敵対行為を彼に見せに行くなんて、正気の沙汰じゃないと思うけど」
「あ、私が嫌がってたのはフリスでない側に回る事であって、フリスと敵対することではないですよぅ」
そんなことが嫌いなら、初めから敵対しようなんて考えない。
支配から逃れようなんて欠片も思わない。
「……すまない、意味が分からなかった」
「フリスにとって、世界は二つです。興味のあるものか、興味のないものか。前者にいるうちは安全ですよぅ。なんなら窮地に陥った時、助けてくれることもあります。でも」
ひとたび興味のないものの枠に入れば、どうなるか。
眼下、他の機奇械怪達に指揮をしているミディットさんを見る。
興味がなくなれば。
「……だから私は常に新しい事をしなきゃいけないんです。それが唯一の生存方法だと知っていますから」
「成程。じゃあ聞くけれど」
もし、これらを見せに行って──興味のないものの枠に入れられたら。
アルバートさんのその質問に、私は笑う。
「その時は潔く死ぬだけですよ。要らないと突き付けられた道具が、使い手に縋るなんて……流石にみっともないので」
だからこそ私は行かなければならない。
突き付けられるまでは行動をし続けなければ──。
「よ──っと」
「あの、明らか警戒心マックスですよ、みたいなトコに突っ込むのやめませんか」
「何言ってんの。今それどころじゃないでしょうよ」
熱波と暴風、火砕流と灰燼。
人間はおろか、機奇械怪でもマトモに活動できるはずのないその赤の中から、サイキックの斥力の壁を抜けて二つが突っ込んできた。
見覚えのある、在り過ぎる二人。
二人はきょろきょろとあたりを見渡して、私を見つけると……言う。
「よぉ、
「高級汎用給仕型人造人間ピオ・J・ピューレ。今までために溜め込んだNOMANS製品を売りつけに来ましたが──如何でしょうか」
何か来た。
ヘイズとケルビマを安全……かどうかはわからないけど、とりあえず遠くに置いて、肉体をガチャガチャ弄りながらホワイトダナップに戻る。
さしもの僕もこの短時間で再度フリス・クリッスリルグの肉体を用意する、というのは無理だ。だから今使っているこのグチャボロなこれをどうにかこうにかして、どうにかこうにかしようと思っている。
ギンガモールに近づくにつれてわかってきたのは、どうやら今現在彼と戦っているのが元両親であるらしいこと、チャルとアレキがスファニアに対してなんかヤバそうなことしてるってこと、ギンガモールの最下部でアスカルティンが暴れまわっていることの三点だ。
うん、流石だね。
この内、クリッスリルグ夫妻については考慮しなくていいだろう。だってもうすぐ死ぬし。
無理だよ。いくら"英雄価値"に届きかけたとはいえ、寄る年波には勝てない。あるいは相手が僕なら奮起したのかもしれないけど、マグヌノプスだからね。得体の知れないチカラを相手に、となると中々士気は上げられないだろう。
死ぬか、まぁ逃げ果せるか。
どちらにせよそろそろ数から外していい二人だ。
アスカルティンは……なんか、疑似上位者封じであるミケル作の超合金を食べている、っぽい? 凄いな、どんな進化したらそうなるんだ。彼女の持つ武装でそこまでのものは無かったと思うけど……いや、これも五年前の知識。
楽しむために本気の本気で情報をシャットアウトしていたからね。成長が視れて嬉しいというべきだろう。
で、そんなことよりチャル達。
アレは何やってるんだろうね……。気のせいでなければスファニアを殺しているように見えるんだけど。
……うーん。
あっちを見に行きたいけど、流石にこっちを優先するか。
何百年来の先約、だもんね。
──遠く。
こちらへ向けて、物凄い速度で走って来る──五輪車。四輪車の先端についた小さな補助輪のようなものが光を編み、それが後に続く四輪の道となる……まぁ、普通に超技術。
あれはNOMANSの製品だ。名を『CAR』。シンプルだね。まぁTOWERやGARAGEでわかる通り、NOMANSの製品は全部シンプルな名前をしているんだけど。
それに乗って来るのが、五人。プラスして後続にも何台か。あっちはCARじゃなくて『WAR TANK』や『ARMOURED VEHICLE』もいる。
前者が道をつけ、後者はそれを上る。
先頭の五人を含めて、千や万はくだらない軍勢。
それが空を走って僕の所にまで来たわけだ。
「参ったね。フレシシやアルバートは予想していたけど、まさか君達までいるなんて」
「はン、意表を突けたようで何よりってぇね。俺達がいちゃ都合が悪いのかい?」
「良いか悪いかで言えば、悪いかな。フレシシとの対決、チャルとの決別。マグヌノプスとの決着。そういうの全部終わった後で、君みたいな得体の知れないモノと戦おうって決めてたんだ」
「ははっ、そいつはすまねぇな。だがちと計画が杜撰すぎるんじゃねぇかい?」
「そう思うのなら、理由を聞かせてほしいな」
古井戸。そしてピオ。
いつの時代にルーツがあったのか全く知れない"英雄価値"と、フレシシの自己増殖体でNOMANS時代の記憶を持つピオ。
……できれば分けてほしかった。
フレシシの策、というものには期待してたんだ。この327年、どれ程のものが用意できたのか、って。でも君達といると、その驚きが薄れちゃうじゃないか。
「アモル……いや、フレシシのねぇちゃんとの対決は行方知れず、チャルの嬢ちゃんとの決別はできず、マグヌノプスとの決着もつかない。そういう未来だって無くはないはずだ。だろ? だから、終わるかわかんねぇもんをして『全部終わったら』なんて約束事、決めて守れるかって話よ」
「成程、それは盲点だったね。つまり君は、ここで戦いが終わらないと──そう考えているわけだ」
視界の隅で、ピオが消える。光学迷彩系の何かを使ったのだろう。
他にも背後の軍勢がポツポツ消えている。ああダメダメ。気付かない方が面白いんだから。
「何よりアンタ──」
「!?」
身体が浮き上がり、ぶっ飛ばされながら思い出す最後の光景は、草履の裏。
蹴られたのだ。それは、こちらへピンと伸ばされた古井戸の脚からもわかること。
「今ここで、俺に負けるってぇ未来も、可能性に入れておけよ?」
「あはは……ああ、そうだね。そうだった。なんせあの時の僕は君を、完成された英雄と呼んだのだから……そうだった」
古井戸。
僕が今までに見て来た"英雄価値"の中でも、とびきり不明瞭なブラックボックス。何が飛び出すかもわからなければ、どこの誰なのかも見当が付かない。
見た目、というか感知する限りでは
一応装備は整っているみたいだけど──絶対にそれだけじゃない。
「いいのかい、君が一番手で」
「一番弱いのが一番に出てきて何がおかしいさ」
「あはは、一番弱いだって? よく言うよ。この場にいる何よりも強いくせに」
「はん、買い被りもほどほどにってぇね」
「君はそれでいいのかな、フレシシ。彼が僕を倒してしまうことがあるかもしれないよ?」
「それでフリスが死ぬのなら、私はここへきてまで膝を震えさせる、なんて人間みたいな行為してませんよぅ」
恐怖とはなんとも人間らしい感情だ。本能による恐怖とはまるで違う。だってフレシシのそれがそうなら、彼女はとっくに逃げているはずだから。
尚も、と。
向かってくる心は──成長だろう。
「意気や良し」
誰にも聞こえないくらいの音量で呟く。
ならば、結果が見えているとしても──全力を出そう。
「ッ──気ィつけな、来るぞ!」
「気を付けたって意味は無いよ。まずは頭数を減らそうか」
掴む。
ぐしゃ、という音が聞こえたような気がする。悲鳴が上がっただろうか。それとも何もわからないままだっただろうか。
フレシシの後方。
ARMOURED VEHICLEやWAR TANKごと、乗っていた機奇械怪モドキを潰す。粗いつくりの機奇械怪だ。これ、フレシシが見様見真似でやった感じかな?
「さぁ、万の軍勢はたった今消えた。これからどうす──ぐ、」
「らぁ!」
ガツン、と、顎を蹴り上げられる。おいおい、上顎から上は砂だのなんだのの寄せ集めなんだから勘弁してくれ。もしかしてさっきの蹴りで手応え感じちゃったのかな。そりゃそうだよ、人体ですらないんだから蹴ったら凹むよそりゃ。
念動力で無理矢理顔を引き戻し、下を見るも、いない。
後ろから足音。人間ではありえない角度にまで腰を回し、その発生源に手を伸ばし──また顔面を蹴り飛ばされた。
「あはは、酷いな。顔しか狙わないポリシーでもあるのかい?」
「超能力相手は見られたら即終わりだかぁらな。そうでなくとも、それが正解だとアンタダムシュで教えてくれただろう?」
「ああ、そうだったね。懐かしい話だ」
視られたらおしまいだから、見られないように顔面を蹴る。
英雄らしい発想だよ。それを実行できるのが果たして幾人いることやら。
「そんで、まぁその借りを返すがぁね、教えてやるよ。顔面蹴ってばっかが俺じゃぁないのよ」
「それはもしかして、接触の瞬間に僕にペタペタ張っていたこの爆弾のことかい?」
「正解だ」
爆発する。
シート型でありながら驚異的な威力の爆発を起こすこれも、NOMANSのもの。だいぶ初期の頃に開発された兵器の一つ。その後世界が裕福になって平和になりかけたから生産も中止されたはずだったんだけどね。
なんでそんなものを持っているか、なんて聞くまでもない。
ピオだ。加えて、五年間集めでもしていたのかな、NOMANSの残りを。
「ちょいと失礼」
爆風の中から突き出てくる腕。それを念動力で掴めば、けれどそれは容易に砕け散った。
機奇械怪の腕だ。中から大量に出てくるのは、
「っ、」
「弾けなァ!」
爆ぜる。腕が爆ぜる。もとからそういう機構だったのだろう、潰され、衝撃を与えられた事で破裂した腕が、至近距離で僕にブルーメタリックの粒を浴びせかける。
「こんなもの、どこで……!」
「ついさっきなぁ、火砕流の中にたんまりあったんで拾ってきたんさ。ピオの圧縮倉庫に入らねえんで、もしやと思ったが……アタリだったようで」
いつかマグヌノプスにやられた時のように、念動力が妨害される。チャフのようになっているせいか感知も上手く発動していない。
この粒を体内から排するのは骨だ。仕方がない、《茨》を使うか。
「ハ」
掴まれるのは首。
背後から首を掴まれて、そこから体内へザクりと剣のようなものを刺しこまれる。念動力が妨害されているから、不壊でなくなっているのだ。
「空歴2549年6月10日──晴れ時々爆発物!」
剣。あるいは筒が、僕の体内で爆裂する。
どんだけ爆弾を体に仕込んでいたんだ。ああ、斥力ボールでズタズタになったから必死で取り繕った肉体が、またグチャボロにされてしまった。
けど。
「やーっぱ化け物か」
「まぁね。でも、そういう君も化け物だよ。さっきから全然離れていない。僕に連撃を仕掛けるためだろうけど、僕の肉体を壊すレベルの爆発を受けて無傷だ。それを化け物と言わずしてなんて呼べばいい?」
「自己紹介はしただろぅ? 俺は古井戸ってんだよ。名前で呼びな、キューピッド」
声のした方の空間に《茨》を差し向ける。
手応えは無い。
「そっちじゃぁないよ、鬼さんこちら──ってな」
「あはは、僕をからかう存在なんて久しぶりだよ」
「初めてじゃねぇのはちと悲しいなぁ」
また爆発だ。いつの間にか張り付けられていた爆弾が背中で爆ぜる。
恐ろしいことに、彼の速度に一切慣れる気がしない。どんな歩法を使っているのか、肉体で反応できないまでも感知はできていたヘイズよりも速い。あるいはチャフのせいなのだろうか。
人間が。
……よくぞ。
「なんて、認めると思ったかい?」
「ッ、チ、もうバレたか!!」
差し向けるは《茨》。
その先にあるのは、いつの間にか透明になっていた『CAR』。そしてそれに乗り込む三人。
「……参ったね、どうも」
光学迷彩が晴れていく。
そこにいたのは勿論──アルバートだ。剣で僕の《茨》を止めた彼女が、ニコニコと僕らを見ている。
ま、おかしいとは思っていた。
瞬きみたいな人間的機能を持たない僕が、いつの間にか攻撃を受けている、なんてさ。でもよく考えたらそれが可能な奴がいるじゃないか、って。
時止め。
僕ら上位者にも効くサイキック。
「今更君と戦うのは面白くないんだけどね。そんなに死にたいと思っていいのかな、アルバート」
「ああ、いいよ。ボクはもうマグヌノプスの死期を悟っている。
「そうかい。じゃあ死んでくれ」
伸ばした《茨》の先端から棘を発する。
剣で絡めとるようにして防いでいた彼女だ。当然その棘は彼女の顔面へと深く突き刺さり──。
「させませんよぅ」
「……驚いた。驚いたな、フレシシ」
刺さらなかった。
フレシシが腕を伸ばし、アルバートを守ったからだ。
驚いた。
「君が、人間を守る? ……あはは、この五年間で、どんな心変わりがあったんだい?」
「可能性の問題ですよぅ、フリス。私が貴方に敵対するより、僅かでも可能性のある英雄に賭けた方が効率的だと思いませんかぁ?」
「そぉいうこったぁ!」
ほとんど砕けている頭蓋に瓶が振り下ろされ、殴打される。瓶? 瓶だ。割れ砕け、出て来た中身から察するに酒瓶……。
まさかそんな、子供の喧嘩みたいな武器で。
「派手に燃えなよ!」
火。だけどマッチの火とかそんなものじゃない。
背中を焦がす灼熱は、火炎放射器だ。流石にこればかりは仕込んで持っていた、とかいう域を越えている。
「さらに──対
「GS-88……!」
「おぉ、流石は、良く知ってるじゃあねぇの!」
バンキッド達が僕に内緒で開発した、たった六基しか売れなかったNOMANSの携行ライフル。流石に戦争の火種になりすぎる……NOMANSが世界に行き渡り切る前に消費が追い付いてしまうから、という理由で珍しく僕が回収・破壊に回ったNOMANSだ。
あり得ない、六基全部壊したはずなのに。
「──再現は得意ですので」
直撃する。
超至近距離で放たれたソレを、避けることもできず──恐らく時間を止められて──爆散させられる。
……。
……。
うーん。
「やっぱり、ダメ、ですかぁ」
「マジけ? かぁ~、ったく化け物ってのは本当に……」
「いや、いや」
良い線は行っていた。
連携も良かった。多分だけど、古井戸がポンポン武器や爆発物を出せていたのは、フレシシとピオの合わせ技だろう。ピオがその圧縮空間倉庫から武器類を出して、フレシシが転移で飛ばす。アルバートが僕を止めて、できるだけバレないような立ち回りで古井戸がそれを使い続ける。
正直言ってチャル達よりちゃんとパーティしてる。連携している。
それでもやっぱり、足りない。
「これで終わり……じゃないよね? 僕を倒すんだ、こんな物理攻撃のみ、ってことはないと信じているよ」
「……」
「おいおい、嘘だろう? 五年も……いや、フレシシに至っては三百年近く猶予が合ったじゃないか。そ……そうだ、ダムシュで、あれだけもっともらしくメーデーの頭を奪って行ったのはなんだったんだい?」
「メーデーさん……ミディットさんなら先程フリスに潰されましたよぅ。頭数を減らす、なんて言って……五年をかけてアルバートさんが折角鍛えに鍛えてくれた兵団を、ものの一秒で潰してしまうんですから、溜め息しか出ませんよ」
「なんでもっと強くしなかったんだい……? 僕はてっきり頭数だけ揃えた機奇械怪モドキだとばかり……」
嘘だろう。
僕は……僕はすっごく楽しみにしてたんだよ? あのフレシシが自発的に僕に反抗するんだから、それはもう凄いものを作っているのだと。人間の頭を、あるいはメモリーチップ化したそれをどこぞに送っていて、だから僕も思いつかない素晴らしいものを作り上げているのだと。
嘘だろう。
だってやってることラグナ・マリアの……あの、なんだっけ、お嬢様。そう、間宮原ヘクセンと同じだ。一国の民を全部機奇械怪にして、兵士にして僕にぶつける。そんな二番煎じのために君は……。
思わず膝をつく。肉体なんかほとんど無いに等しいくらいぐちゃぐちゃだけど、それでもガクんと膝をつく。
「嘘だろう。君は、そこまで落ちぶれて──」
「勿論嘘ですよぅ」
カチン、という音がした。
──それは、僕の砕けた頭蓋の近く。零れ落ちた眼球……だから、眼孔のある場所に突き付けられた、冷たい感触。
「
引き金が引かれる。
射出されるのは杭だ。だからこれは杭打機で、それを武器としていたのは。
「少しは苦しめ、悪魔」
僕の概念体に、風穴が空いた。