無妄の丘
相変わらず恐怖で動けなくなりそうなほど怖いこの場所。そこには誰もおらず、ただ妖気が漂うばかり
いつもより冷気が強く漂う無妄の丘に、怪しげな二人の姿があった
舎弟「兄貴…もうかえりましょうよぉ…」
兄貴「バカいえ!ここに飛雪大聖がいると噂なんだ。絶対に倒すまで帰らんっ!」
二人の1人は意気揚々とその足を前に前に運び、どんどん前に進んでいく。一方の1人は無妄の丘の雰囲気に恐怖を覚えたのか、快く進んでいるようには見えない。むしろ帰りたがっている
木々の隙間を風が通り、葉っぱ達がざわめき始める…それと同時に、歌のようなものが聞こえ…
舎弟「ひぃぃっ…なにか歌も聞こえますよぉ…?」
兄貴「大丈夫だ!あれは単なる岩の隙間に風が吹かれてる音だろ?なんにも不気味じゃねぇ。そもそも―」
兄貴と呼ばれた男が自慢げに話している時も、舎弟と思わしき彼は怯えていた。なぜなら、木と木の隙間から白い影が見えたからだ
あれは間違いなく幽霊に違いない…そう決心した舎弟が兄貴に話をしようとすると、またもや見え始める。それも1人ではなく、2人…3人と増えているようにも感じる
兄貴分はまだ自分の話に夢中になっていて周りの状況を見えていない。その時、前を歩きながら話していた兄貴分は、冷たい氷のような壁に当たった
兄貴「痛ってえな…なんだ?」
舎弟「あ、兄貴!!!!」
兄貴「なんだようるさいな。ただの氷だろ?ただの…」
兄貴分が再び前に顔を向けた時。そこに居たのは、ただの氷ではなく、綺麗な女性の姿をした氷像であった
生気すら感じるその氷像は、ゆっくりとその手を動かし、兄貴分達に問いを投げた
「汝、海に染まる者か?それとも、水を冒す者か?」
兄貴「う、海に染まる者だ!!」
「そちらの者は?海に染まる者か?それとも、水を冒す者か?」
舎弟も同じく海に染まるものだと言うと、氷像は一気に冷気を吸い込み、匂いを確かめるように目を瞑る
すると氷像は、いきなり憤怒の表情を見せ、兄貴分達に怒号を飛ばした
「貴様らからは、我が主の匂いはせぬ!不浪人よ、今すぐこの場から去ね!そして二度と来るな!2度目はその命は無いと思え!」
兄貴・舎弟「「ひゃ、ひゃぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」」
2人の男はその勇気とは裏腹に、泣きながら叫びながら無妄の丘を駆け抜けて行ったという…
その一部始終を木の上から見ていたある青年は、その氷像に声をかける
?「…相変わらずの趣味だな」
??「心外だな…我はただ会うに相応しい人物かどうか確かめているだけだ」
?「どうだか―ふっ!!」
青年は木から飛び降りる。すると氷像は海に浮かぶ砕氷のように崩れ始め、その砕氷から1人の男性が現れる。白い吹雪に身を隠すかのような姿…その手に持つは歌の魔神を穿った永久凍土の刃。その心にあるのは、民を守ろうとする熱い情熱
そう、彼の名は―
?「六花」
六花「なんだ金ほ――魈」
呼びかけた夜叉の名を六花は言い直す
魈はどちらの呼び方でも良いと言ったが、六花には六花なりのポリシーというものがある。夜叉として力を振るう時は"夜叉の名を"。人として対応する時は"人の名"を言うようにしている
そのようにすれば、人からこの人が夜叉であるとバレずに済むからだ。夜叉であると知れば、神の目を持たない人々は夜叉に寄りすがり、自分では何もしなくなってしまうだろう…
それでは何も進化はしない。他人に寄りすがって生活するのと、自分で何かをして生活するのでは、成長の幅が変わってくる
夜叉である魈や六花、伐難はそれを経験している。
魈「どちらでもよいと言ったはずだ。我の呼び名など――」
六花「自分の名を冒涜するな。その名は己が主から授かった名だろう?なら、大事にしろ」
魈「…お前から言われると説得力があるな」
六花「こう見えて数千年もこの名を使っているからな。ところで魈、我に何か用があってきたんだろう?」
六花がそのように言うと魈は静かに口を開く
魈「…あの時の約束、忘れたわけではないだろう?」
六花「あの時―――」
微かな記憶を六花はたどる
厄災が起きるよりも前…つまりは五百年よりも前のことであった。仙衆夜叉がともに集っていた時、六花は応達の稽古をしているときであった。そのころには、魔神戦争の残滓の影響は薄れて、夜叉が行かずとも人だけでも対処できるような時代になっていた
響き合う剣劇の音。焔と凍。相反する二つの元素。故にどちらかに優劣などなかった。そのためそこにあったのは単純な戦闘能力のみ…のはずだ
応達「はぁぁっ!!!」
六花「ふっ!!」
応達が放った火の玉を六花は剣で相殺する。応達は相殺されて困惑するかと思いきや、にこりと笑い六花の油断を誘っているかのようであった
六花は風の音を聞く。応達とは違う炎の音が背後から聞こえ、奇襲をかけようとしているのだなと思った六花は、背後に氷の壁を生成してその攻撃を防いだ
その様を見ていた他の夜叉は応達に対して驚きの声を上げた
浮舎「おお…あの応達が奇襲を仕掛けるとは…」
弥怒「成長とはすばらしいですね」
伐難「応達、すごい」
賞賛される応達は、六花の攻撃に驚いたように表情を変化させる。六花は蒸発で生成された霧から姿を現し、剣を剥ける
六花「お前の攻撃は終わりか?なら我の番…」
応達「はわわ…こ、降参です…」
しょぼんとする応達にみんなは声をかけに行く
六花は成長したなと感心していると、魈が自分も六花と対戦をしたいと願ってきた。それには他の夜叉たちも驚いたようで、本当にやるのかと諭すものの、魈は本気でやろうとしている
強さとしては、浮舎と弥怒よりも下くらいだが、それでも夜叉の中では強い
六花としては今すぐにでも戦いたいつもりではあったが、疲れや帝君との対談があったため、あえなく断念するしかなかった
魈「ではいつ戦ってくださいますか?我はあなたと戦いたい」
六花「そうは言ってもな……」
魈「我にとは戦えぬということですか?」
六花「そういうことでは――わかった。お前が1人で爆炎樹を倒せたらだ。倒せたら考えてやる」
言い終わると魈は目を輝かせ、わかったと言って走り出していく
まだ彼が若かった時のことだ
六花「…まさかまだあの時のことを覚えているのか…」
魈「忘れた―とは言わせぬぞ。この数百年間…我は待ちに待った。しかし、あの厄災の後、応達や伐難を失ったお前は我らのもとを去り、今まで姿を見せなかった」
六花「―我もそれは後悔している。死の間際それを後悔したほどだったからな……ああ、なるほど、お前は我と戦いたいのだな?」
そのように少しにやけながら言うと、魈はムッとした表情で答えた
魈「そうだ。今ここで千年もの契約を果たしてもらおう」
六花「成長したとは思ったが…変わらぬな」
魈「その口―開けないようにしてやるぞ?」
あからさまに敵意を丸出しにする魈。六花は今度こそ魈と戦うことを決意した。何千年も待たせたのだ。これ以上待たせる訳には行かないだろう
2人は共に武器を構える。剣と槍。リーチとしては槍が優勢に思えるが、六花の実力はそれを超えるか
昔よりは強くなっているであろうその構え方に、六花は少し既視感を覚えた
六花(あれは―かつての帝君の構え方―!魔人戦争時代の頃の槍の構え方にそっくりだな…まさか、帝君の手を借りたわけでは無かろうな)
魈「―金鵬!ここに参る!」
六花「雹蕾、ここに参る」
2人「「行くぞ!!!」」
2人が対決を始めようと走り出し、2人して先手必勝とスキルを発動した瞬間、その勢いは水の泡のように消えてしまった。否、2人の間合いに大きな水の泡が生成されたのだ
スキルの途中停止は原理的に難しい。それは六花であっても、魈であっても同じこと
2人はスキルを発動しながら、水の泡に迫っていく。ああもうどうにでもなれ―と思った2人は、勢いを増しながら突進する
先に水の泡に命中したのは六花であった。氷の攻撃は水の泡を凍結させ、次に魈の攻撃が来たものだから氷が拡散。たちまち冷気が辺りに放出されたのだ
「はいはい。そこまでそこまで」
魈「おい…なぜ邪魔した!我らは正々堂々と闘っていたんだぞ!」
正々堂々と闘っていた魈は怒りを露わにするが、六花はその様子とは真反対かのように、ものすごく冷静でどこか諦めているようであった
六花は感情を露わにする魈に歩み、すこし落ち着けと言う。そして、その攻撃してきた人に対し声をかける
六花「伐難。どうして我らの戦闘を妨害した?」
伐難「今戦ったら一日かかるでしょ?なら、私の物事を早く終わらせたいなって思った瞬間に戦い始めちゃったからさ…」
六花「…わかった。早々に終わらせよう」
魈も六花も諦めたかのように伐難の話を聞き始める
その内容は六花の活躍を祝して祭りを開こうとしているから、その聞き込みだという
二人は伐難の質問に回答すると、なぜか疲れてしまったため、戦うのはまた今度にしないかという魈の提案に六花は賛同する。気づけば時間は5時間ほど経っていた…これが戦闘後ではなくて良かったと、二人は心のそこからおもったそうだ
質問です
どのくらいの時間帯に出せば嬉しいでしょうか?
私としては予約投稿すればいいじゃんという感情なんですが、皆さんが希望する時間帯を教えてくださいな