エピソード 六花「凍った時」
無妄の丘には幽霊が出る――その噂はいつ頃から聞こえていたのだろう
十年、百年、もしかすると千年前から囁かれていたのかもしれない
事実か。それとも虚実か。それを知るには無妄の丘に行く必要がある
だが、大抵の人はそこの雰囲気に怯え、その正体を見ることは不可能であった
そんな中…2人の子供が偶然そこに迷い込んでしまった
子供たちは恐怖と戦いながらこの丘を越えて自らの住処へと帰ろうとする。ざわざわと草木が騒がしく会話をし、風の音は木の隙間を通り抜けるとともに不気味な声をあげる
莉「ねぇ…燎ちゃん…大丈夫なの…?ここ…お父さん達が言ってた怖いとこだよ…」
燎「大丈夫…きっと仙人様が助けてくれるから…進み続けよう…」
燎と名を得た少年は莉と名のある少女を心配させぬと声をかける。だが、少女はわかっていた。少年もまた恐怖しているということを
それに伝説ではこの丘は死の丘とも呼ばれており、踏み入れたものは誰1人として生きてこなかったと
なぜなら、昔ここには魔物がたくさんいたが、とある時を境に全て消えてしまったから。
ガサッ-その音に莉は怖くなり、ぎゅっと目を瞑る
莉「怖い…怖いよ…」
燎「大丈夫、僕がいるから。」
怖がる莉の手を優しく燎は握る
―その時。草木の隙間から何者かが2人を襲いかかってきた
バッと燎が振り向くと、そこには一匹のリスがいた。燎がほっとしていると、更に草木の音が数多く鳴り響く。ガサガサと不安を煽るかのようにその音は続き、二人は恐怖に怯える
だが、少年はその恐怖に恐れず、少女を護るという勇敢な気持ちを持ってその草木から出てくるナニカに備える
バッと出てきたナニカに大きく手を広げ、少女を護る体制に入った
もうだめだと思い、目をつむったその瞬間、氷点下のほどの冷気が無妄の丘を包み込む。水は凍り、草木には白き霜が化粧をしたかのようにつき始める。少年たちは恐怖というよりも、何故か安心感をその冷気から感じ取ることが出来、少し不気味に思った
ザッザッ…と少年達に近づく足音。莉は怖くなり、更にギュッと燎の手を強く掴んだ
「―無事か?」
優しくかけられた声に燎はそっと目を開ける
そこには仙人のように白く、氷のように凛々しい青年が立っていた
燎「あなたは…」
「我の名など良い。お前たち、ここに迷い込んだのだろう?」
莉「どうして分かるんですか…?」
「君たちからは塩の香りがするからな。大方港の子で、ここにはお使いかなにかで来たところ…ここに迷ったのであろう?」
青年の考察はほぼ等しかった
二人は璃月港に住む子供で、軽策荘にいるばあやに会いに来たところだったが、途中魔物に襲われ、頑張って逃げて来たらここまで来てしまったというわけだ
ここは軽策荘に近いが、道を間違うのもわからなくはない。ましてや魔物の襲われているときなど、冷静に判断出来ないのだ
「ここは危険だ。我がお前たちの行きたい場所に連れて行ってやろう」
莉「いいの?」
「あぁお前たちを助けることは我の使命でもある。それに子供を見捨てるようなものでは、契約に反するからな」
そう言って青年は二人を安全に移動するため、傀儡を生成して抱きかかえる
氷の傀儡は冷たくなく、人肌のように温かい。それは実の母に抱かれているかのような心地よさで、二人は眠くなってしまう
「眠たいのなら寝ると良い。よくここまで二人で来たものだ。疲れただろう」
燎「軽策荘の…ばあやに……」
燎と莉の記憶はそこで終わった
次に目が覚めたときは、助けてくれた青年が声をかけたときだった。そこは二人の目的地であり、目の前には二人のばあやが心配そうな声で二人の名を呼んだ
二人は、涙を流しながらばあやに駆け寄ると、大きく手を広げたばあやに抱きつき、安堵の声をあげた
二人はどうやってここに来たのかと。どのような経緯があってここに来たのかと問うと、二人は声を揃えてこういった「この人が助けてくれたよ」と。後ろを指差し、後ろを振り向くと、そこには季節外れの白雪が舞っていた
莉「あれ…でも…助けてくれたもん!」
婆「それはきっと仙人様じゃなぁ…感謝するのじゃ、仙人様はいつでも助けてくれる」
二人「「ありがとう仙人さま…」」
婆(まさか二人も仙人様に会うとはなぁ…私の孫を救っていただき感謝します。飛雪大聖様…)
感謝をされた青年は木の上からその様子を眺める
決して人とは交わらない。それが青年、もとい飛雪大聖の決意。人と交われば人は必ず仙人に頼る。そして仙人ほど生を得ることは出来ない。それ故失うものは人の比ではない。だがしかし…彼女…あのばあやは以前、飛雪大聖が助けた者であった
―あんなに老けてしまったかのかと少し感情が落ち込んだ。だから人と関わるのは嫌なのだと改めて実感する
「…出逢えば失う。我の大切なものはもうほとんど残っていない」
初めに出会った大切な人
次に出会ったたくさんの
そして助けるべき大切な民
その殆どを時間と共に失い、今やもうなにも残っていない
風が音を運び、光が暖かさを作ろうとも、彼の止まった心の時間を進める事は出来ない
――無妄の丘から妖魔の気配がする。あの辺り一帯は一通り妖魔を滅したはずだが…と飛雪大聖は思い、その場から立ち去った
その妖魔の気配の地点に行くと、嫌な感じなれた感覚をその場に感じた
普段の妖魔とは違い、縛られるような感覚。それは昔、それも2、300年前に感じたものとそっくりであった
だがそれはありえない。なぜならその元凶は断ったはずだから
非常に似た存在なのかまたは……
あたりを見ると、妖魔に取り憑かれた魔物がおり、追いかけられているのは、二人の方士。倒そうともしているがその力は歴然。妖魔によって強化された魔物の強さは並大抵ではなく、人間に対応できるものではない
―だがその二人は、飛雪大聖が驚くような術を使った。だからというわけではないが、彼もいつもは違い、氷の傀儡を生成して助けてやることにした
そして…
「…まったく…最近の方士は弱い…」
二人の方士に向かってそう言い放った
そういえば名前変わりました
青空の愛犬家から、YouTubeでも使ってるほがみにしました