旅人side
奥蔵山
安全確認を終えた留雲と蛍は、この仙偶剣鬼をどうやって璃月港まで運ぶかを考える。重量としては余裕で大きな岩石を超えるかと思われる仙偶剣鬼をどのようにして運ぶか…
悩みどころであった。蛍が持っていくことは力的に無理だし、かといって留雲が運ぶのもなにか違う気がする
―はてどうしたものかと悩んている二人に、申鶴が声をかけた
申鶴「旅人、師匠、なにか悩んでいるのか?」
留雲「おお申鶴!丁度いいところに来てくれたな。いまこの仙偶剣鬼をどのようにして運ぶかと悩んでいたのだ。お主さえ良ければ、運んではくれまいか?」
申鶴「それは良いのですが…運んだ後、誰がこれを操作するのです?」
申鶴の問に留雲はあたふたする
「か、紙に書いておく」と焦ったような口ぶりで言ったが、紙に書いたところで仙人の技術を模倣できるわけではない。もし現場で壊れてしまったら誰が直すのであろうか。そういう可能性から考えるにその案は壊れてしまう危険性を考えて否決された
申鶴「やはり師匠直々に行くべきだと我は思う」
留雲「バカを言うでない―!妾が俗世に出向くなど…」
蛍「でもあっちで壊れたら直せないよ?それにあとで訓練用にも使うんなら一緒に行ったほうがが良いと思う」
留雲「うむ……」
留雲は悩み、天を高く仰いだ
俗世に染まることが苦手な留雲は俗世に行きたくない。だが、俗世に行くと今決断しなけれはならない今の状況に、留雲は惑う。行くべきか行かぬべきか――
行けば自分のプライドと引き換えに安全を得る。行かなければ仙偶剣鬼を失う可能性がある…留雲は迷いに迷い自暴自棄になってしまった
留雲「ええい!妾のプライドなどどうでもよい―!すこし待っていろ!」
そう言い残し、留雲は仙府へと一度帰っていった
―すこし経って、すぐに留雲が戻ってくる音が聞こえる。こつこつと仙府につながる洞窟から足音が聞こえる。ヒールのような高い足音。そして現れたのは、きれいな長い髪の凛々しい女性であった
一瞬誰かと蛍は思う。しかし、すぐにそれは誰なのかがわかった
「ふぅ…この姿になるのは実に500年ぶりだ」
パイモン「りゅ、留雲なのか?!」
驚くパイモンに留雲?は回答する
留雲「そうに決まっているだろう?妾の仙府から出てくるのは妾しかおらんだろう?」
申鶴「――師匠の人の姿…初めてみた…」
留雲「どうだ?おどろいたか?」
申鶴「…似合っている」
申鶴に褒められた留雲はすこし恥ずかしがる
あの申鶴が人を褒めるまで成長した――と感動も同時に感じる。山に捨てられた申鶴を助け、ここまで育て上げてきた留雲だからこそ感じ取ることができる感情だろう。甘雨も留雲に育てられた…わけではないが、甘雨から褒められてもそういう感情は浮かない
留雲「まさかお主から褒められるとは…」
パイモン「本当に似合っているぞ!申鶴は心からそう思っているんじゃないか?」
申鶴「ああ。仙獣姿の師匠も凛々しく綺麗だが、人の姿の師匠は美麗だ」
またも褒められた留雲は顔を紅潮させ、話を切り替える
留雲「こ、こほん!妾を褒めるのは嬉しいがそう、すごく嬉しいが…今は璃月港に行くべきだろう。璃月港や人にあったら妾のことを"玲瓏"と呼べ。」
蛍「わかった。玲瓏だね」
留雲「うむ。では出発するか」
留雲がそう言うと、申鶴はよいしょと重たい仙偶剣鬼を担ぎ、璃月港に向かって歩みを始めた
璃月港
玉塵雷鳴歓迎祭劇場会場
やっとのことで申鶴が仙偶剣鬼を持ってこの場に来ると、千岩軍が何事かと駆け寄ってくるも、蛍が事情を伝えると逆にそれを援護するような感じになった
申鶴「これはここで良いのか?」
千岩軍「はい。ひとまずここに置いておけば大丈夫だと思います」
申鶴「感謝する――よい…しょ…」
ドスンと重そうに置かれる仙偶剣鬼。起動していない仙偶剣鬼は先程の戦闘とは打って変わってマネキンのように生気を感じるさせることはない
しかしどこか蛍にはソワソワすることがあった。起動していないのに起動しているかのような不安感。気を抜いたら襲ってくるようなその不思議な気配…
…と警戒している蛍のそばに雲菫と劇団の役者がよってきた
雲菫「旅人さん。無事完成したんですね」
蛍「うん。紹介するよ。この人が今回仙偶剣鬼を作ってくれた"玲瓏"。なかなか癖のある人だけど―」
玲瓏「癖など無かろうに…そなたがこの劇を仕切るものか?」
雲菫「は、はい。雲菫と言います」
玲瓏「妾の…いや、我の名は玲瓏。これからよろしく頼む」
かしこまった留雲に雲菫は対応する
そして話は劇の話になり、早速戦闘の話になった
雲菫「――………で、このときにこの仙偶剣鬼?が飛雪大聖と降魔大聖役の涼さんと香さんに襲いに行きます」
玲瓏「ふむ…ならば今この場でその戦闘をできるか?」
雲菫「この場で…ですか?」
留雲の問いに雲菫はすこし困惑する。話を聞くと、戦闘を記録して同じような動きができる機能が備わっており、それを使用するということであった
本来は留雲や六花の訓練用機体のために考えた機構で劇をするためではない。だがさすがの留雲。その時の動きを精密に再現できる。つまりは苦手なもの、苦手な攻撃を何度も何度も繰り返し練習することのできる最高の機構を考えたものだ
そして戦闘は始まる。蛍はいざというときのために近くで剣を構えて待機する
しかしその心配はいらなかったようで、役者の二人は慣れた手付きでその攻撃を避けたり、攻撃を与えたりしている
雲菫「――今です!」
玲瓏「はっ!」
タイミングに合わせて留雲は仙偶剣鬼を倒れさせる
―その倒れた動きさえ完全に記録され、劇用の仙偶剣鬼が完成した
雲菫「ありがとうございます!」
玲瓏「どうってことはない。我にかかればこんなところだ」
涼「カラクリの強さも程よいくらいでしたし、玲瓏さんは本当は仙人なのでは?」
玲瓏「まさか。我のような俗世嫌いが璃月を守る仙人になるはずなかろう?」
うまく自分の正体を隠した留雲に対し、蛍は「留雲は俗世に染まらなくても、俗世に対する力はあるのかな?」と思ったそうな
実際何千年も生きてきたから、その人生経験なのかもしれない
―もうすぐ玉塵雷鳴歓迎祭。人々は当日に向けていつにもない楽しさを求めるため、今日も頑張るだろう
追記…海灯祭にて留雲借風真君のシルエットが出ました!あんな感じなんですね…結構想像通りというかなんというか…
それに合わせてこの小説も少し改変します。こまかーいところしか改変しないので、大まかにはねじ曲がらないはず!