白雪に染る夜叉   作:ほがみ(Hogami)⛩

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13話 玉塵雷鳴歓迎祭・二日目 上

玉塵雷鳴歓迎祭が2日目になり、ますます勢いは増してゆく。なぜなら、今日が六花と魈の劇があるからだ。璃月中の人々が楽しみにしているこの劇。それは璃月の人だけではなかった

 

六花「今日が我らの劇の日だな」

魈「……あぁ」

 

魈と六花は和裕茶館近くの橋のような建物から劇の特設会場を見て会話を交わす。魈を鍾離と六花で説得させてここまで来たが、あまり乗り気では無いようだ

―いや、接し方がわからないのかもしれない。何しろ魈は人とは交わらない。しかも俗世に行くことなど今まで無かったから尚更だろう

 

甘雨「六花さん、魈さん」

六花「―甘雨か、久しいな。元気にしていたか?」

甘雨「はい。六花さんもあの時からお変わりないようで安心しました」

六花「まさか甘雨から心配される時が来るとは…もうあの時とは違うのだな」

 

甘雨はあの時?と首をかしげ、その「あの時」を思い出す

しかしそれは甘雨にとってのトラウマであり、甘雨自身の口からは決して話すことの無い内容であった

―そう。それは甘雨の幼少時代の頃の話で、その頃の甘雨は団子と見分けがつかない程にまるまると太っており、1度山を転がったらそのまま麓まで落ちていくのではないかと思われる程であった

落ちていったあとは六花にたすけられていたのだが…

 

思い出した甘雨は顔を真っ赤に紅潮させ、六花のことポコポコと叩く

 

六花「ははっ、すまないすまない」

「おやおや…懐かしい声が聞こえるねぇ」

 

それは他の人に向けられたものではなく、六花たちに向けられたものであった

それと同時に六花はその声について聞き覚えがある。何千年前に共に闘った戦友で、前回の魔神オセルとの戦いも人々の手を助けた。長い階段を登ってきたその声の正体は、千貫の槍とか呼ばれてたピンであった

その隣には伐難がいて、どこかで一緒に出会ったみたいだ

 

六花「久しいなピン」

ピン「そうじゃなぁ。ざっと二千年はあっていない。少しくらい会いに来ても良かったじゃないか?」

六花「そう入ってもな、我にも事情があったんだ。魔神の残滓の処理をしていたら知らぬうちに百年、千年と過ぎていったからな」

 

時の流れは早いものだと改めて感じる。すこし前まで魔神戦争の時代だと思えば、あっという間に甘雨は成長し、魔神の時代は過ぎ去って、今は人の璃月となっている

それほど人の千年と仙人の千年は違っているのだろう。人にとっての一日は仙人にとっての一瞬。しかしその一瞬にはその身に余るほどの感情が詰め込まれており、その生命が尽きるまでその感情は消える事はない。いかに短い人生であってもそれは変わることがなく、逆にもっと華々しいものになる

 

伐難「…こうやってみんなで集まるのは久しぶりですね」

ピン「そうじゃなぁ…できれば全仙人で集まって食事でもしたいもんじゃな」

六花「理水や削月はともかく、留雲は難しいだろうな。なにしろ俗世に興味ないみたいだし、奥蔵山からどこかに行くことなどめったに無い。今日みたいな日も奥蔵山にこもってカラクリを作っているだろうな」

 

そう言って六花は劇場の方を見る。今も何かしらの劇をやっていて、すこし盛り上がっている

六花は何かが気になってその劇場を注目する。なにやらその劇場から仙力のようなものが感じ取れるのだ。邪悪なものではなく、神聖な仙力。それは夜叉や仙人が使うものであり、人が出すことは不可能である

六花はよく観察し、その仙力の正体を探る

すると、一人の凛々しい女性がその仙力を発しているのがわかる。そしてその人は六花が見たことのある…いや、知人の人であった

 

六花「まさかな…ピン、甘雨、あれを見てくれ」

 

ピンばあやと甘雨は六花の言うとおりに劇場の方を見る。するとやはり仙力を感じ取ったようで、すぐさま例の女性に目がいく

甘雨はその女性を見た途端、信じられないとばかりいうような表情をみせ、「ありえないです…でも…」などと独り言を呟いていた。その甘雨の独り言にトドメを刺したのはピンだった

 

ピン「ほお…あれは留雲じゃな」

甘雨「や、やっぱり?!な、なぜ留雲真君は俗世に…まさか山が飽きてしまったのでしょうか…?」

伐難「いやいや、留雲は旅人の手伝いで仕方なくあそこにいるんだよ。劇で使用するカラクリが彼女特製で人には直せないから留雲直々に行かなきゃならない状況になってね」

六花「留雲も優しくなったものだな」

 

六花が鼻で笑うと、伐難は六花と魈に対し

 

伐難「もしあれが暴走した時は六花と魈が助けに入ってね?」

魈「なぜだ?なぜ我々が助けなければ――」

伐難「留雲が作ったカラクリが人から倒されると思う?それに、あなた達を題材にした劇であなた達が直接出てきたらそれはそれで良い演出なんじゃないかな?」

六花「一理あるな。留雲のカラクリは我と戦うことを目的にしているものも多い。人用に調整していたとしても無意識に我用になっている可能性すらあり得る」

 

留雲は六花に勝つため。六花は留雲のカラクリで実力を上げるために二人は争っている

それはライバルと行っても過言ではない。暇であれば留雲はカラクリを作り、六花はそれに挑戦する。その繰り返しであった

その意識が残っている可能性があるのではないかと六花は推察したわけで、その六花用のカラクリを人が体験してしまえば…その身はズタボロになるだろう

 

六花「…まぁ本当に暴走があればの話だ。いざとなれば我らが守り、そういう演出であると錯覚させる」

 

その六花の話に魈は賛同しているようには…見えなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

劇場特設会場は昼間よりも人が多く、早く劇が始まらないかとソワソワしている人々が大半だろう

 

一斗「なにか面白そうなことをやってるじゃねぇか」

忍「親分、勝手な行動は謹んで。ここは璃月。ちゃんと契約しないと稲妻よりひどい罰則があるから」

一斗「わあってる!俺様とて祭りの雰囲気を潰すような人間じゃねぇ。祭りの雰囲気を楽しまなきゃ損だろ忍!」

 

不安そうな顔を浮かべる忍とガハハハと高らかな笑いを轟かせる

と、その声に反応した稲妻の神子はその声に近づいていく。しかしそれに気づいた忍は「面倒事になりそうだ」と思い、その場をそさくさと離れる。しかし離れたことにより、神子は「その正体はやはり…」とニヤリと笑う

だがそれ以上の追跡はしない。追跡してしまえば、影が神子はどこにいったのかと不安になり、手の中にある食べ物すべて食べつくしてしまうからだ

神子は影の元へ潔く戻る。

 

影「ちょっと神子、いきなりどこに行ってたんですか!心配したんですよ!」

神子「心配させぬつもりだったが…まさかこれほど寂しがりだったとは…全く誰に似たのやら…」

影「私から離れないでくださいっ。まったく…ほらっ腕を組みますよ」

 

そう言って神子の腕を奪い、自分の腕と組ませる

神子はその様子を見て「可愛いやつだな」とボソリと呟くと、影は少し顔を紅潮させていた。どうやら勢いでやってるのか恥ずかしいようで…影の内心は「勢いでやっちゃいましたけど…これ絶対神子が馬鹿にできる素材提供しましたよね…はぁ…」と後には引けないため、さらに力を込めると、馬鹿にしようと思っていた神子が紅潮を始めた

 

その後、劇が始まる時が近づいて来ても離すタイミングを取れずに、2人はずっと腕を組み続けていた

 

影「―始まるようですよ///」

神子「そ、そうじゃのう///」

 

てぇてぇな2人の近くで、珊瑚宮の巫女は今か今かと始まる劇を待っていた。しかしその心の中には、少しばかりの不安もある

―珊瑚島は大丈夫だろうか。前はここまで離れなかったが、璃月までとなるといささか不安が生じて仕方がない

 

心海「ゴローに任せてはいますが…やっぱり心配です。あ、そういえばゴローが行きしな渡してくれたものがありましたね。確か…心配な時に開けて欲しいと言っていましたが…」

 

心海は懐から箱を取り出し、言いつけ通り箱を開ける

すると箱には1枚の紙が入っており、そこには珊瑚島は任せてくれと言った珊瑚島の兵隊とその大将のゴローからの心配せずとも守りきりますと言った心海を安心させる言葉がずらりと並んでいた

 

心海「率いるはずの私が逆に心配させてますね…よしっ!今日は楽しんで、ゴロー達にお土産を買いましょう!」

 

心の不安を払拭した心海は、劇が早く始まらないものかと心して待ち始めた

そして…劇が始まる。劇場の最上部の壇にたった雲菫は、華々しい笑顔で今から劇を開演することを告げる

 

 

雲菫「皆さん、おまたせしました。今より、”聖魔夜叉双記”を開演します。この物語は、先日の璃月で起こった物語をもとに、稲妻で大人気中の『沈秋拾剣録』の作者"沈玉"さんが執筆したものです。あらすじを説明しますと、璃月を護る夜叉の飛雪大聖と降魔大聖が昔交わした約束を果たすために決闘しますが、その最中に…といった感じででう。演奏は辛炎さん、役者は涼さんと香さんです。では始めたいと思います」

 

雲菫はそう言って深呼吸し、劇を始める準備に入った

 

 

 

 

 

 

雲菫『それは―ある一時のことでした』

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