白雪に染る夜叉   作:ほがみ(Hogami)⛩

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14話 玉塵雷鳴歓迎祭・二日目 中

雲菫『それは――ある一時のことでした』

 

雲菫が語りを始めると同時に、モンドのきれいな風のようなきれいな笛の音色が流れ始めた。その音楽を演奏しているのは辛炎であり、いつもの辛炎とは違う雰囲気を出していた

その演奏は劇の情景を映し出していると言っても過言ではない。そして雲菫の美しい声がその物語を飾り、目の前に見えるかのようであった

 

雲菫『魔神が蔓延るかつての璃月には岩王帝君が率いる夜叉がいて、璃月は岩王帝君と夜叉によって安寧を謳歌していました。その夜叉の中の二人、飛雪大聖と降魔大聖はこの戦いが終わった時、どちらが強いか決闘しようとその胸に刻み込みました』

 

雲菫は言い終わると、場面が変わったかのように役者の二人が出てきて、きれいな舞を踊り始めた

 

雲菫『二人の夜叉は魔神と戦い、均衡する戦いを強いられました。草は激炎に栄え、水は刄氷に変わる。人々は神によりすがることしか出来ず、不安な日々が人々の心を支配した。激戦の末、魔神には勝利したものの飛雪大聖は魔神の攻撃によって行方知れずとなり、他の夜叉も行方が知れなくなった。一人になってしまった降魔大聖は未だ彼は生きていると信じ続け、約束を果たすために妖魔の退治を行い続けました』

 

降魔大聖役の役者は、舞を突然やめ、疲れたように地面に膝を付けた

その姿はまるで魈そのものであり、ものすごく精巧に作られていると六花は思う。実際にはそのような話は無いものの、まるでその話があるかのようで本人ですらあったのではないかと思ってしまう

 

雲菫『そして時は幾千年過ぎ去り、璃月は魔神の驚異からは解き放たれ、安寧の日々を過ごしていたその時、行方知れずであった飛雪大聖は再び魈の前に現れ、約束を果たすために』

 

飛雪大聖役の役者は霧から合わられるかのように壇に再び上がる

 

雲菫『降魔大聖はこう言いました――あなたは本物の彼のものかと。現れた飛雪大聖は―いかにも、と返し、その剣を降魔大聖に向け、約束を果たそうぞ―と約束を忘れず今までいたという決意を降魔大聖にぶつける。約束を忘れかけていた降魔大聖も約束を思い出し、武器を手にとって思いをぶつけはじめました』

 

話を聞いていた六花はどこかで聞いたことのあるような話だな…と思っていると、魈は伐難に向かって「お前も関わってるな」とヤジ(?)を飛ばした

よくよく考えてみれば、六花と魈が戦う理由など常人の思いつくことではない。それもピンポイントな部分に刺さる理由だ

六花のことはもう長い間知られていなかったためその理由がわかるはずもなく、わかるのだとしたら…六花をよく知る人物で、よく三眼護顕仙人と共にいた人…絞られるのはただ1人しか居ない。そう、伐難である

 

―えへへバレた?とわざとらしく言うも、魈は動じない。知られたとしても何も無いからだ

 

雲菫の歌声は次の歌に入る

 

雲菫『2人の夜叉は戦いを始めると、木々はざわめき、動物たちは戦々恐々とする。その戦っている姿はまるで自らのナワバリを争う獣のようでもあり、仙人らしい優雅さもありました』

 

2人の役者はその声に合わせるように舞を始める

辛炎の演奏する笛の音は、風に透き通るかのような繊細で玲瓏。その場面にあっているちょうど良いバランスの音色であった。例えて言うのであれば…静かな滝の音であろう。壮大であるが、その土地にあっていてその場面を狂わせることはしない。辛炎の曲は珍しくそういう曲調であった

 

心海「あっ…枕玉先生がこのような言い回しをしているのは珍しいですね…」

 

心海は1人、その劇の内容を理解し、そのうえで沈玉の特徴と相違点を感じ取っていた

 

――剣の綺麗な音色が鳴り響く。舞にも似た美しい剣劇には、影も驚かされる。その舞には隙というものがなく、長年訓練されてきたもののように見える。名の立つ冒険者でもあのようなきれいな動きは出来ない。きっと名のある武術の生まれなのだろうと思っておくことにした

剣は空を切り、音色は空を紡ぐ。数分経ってもその息は上がることがなく、未だきれいなままだ

 

雲菫『二人は何年と戦うも決着はつかず、その周りには魔物や動物はいなくなった。それは二人の仙力に怯えたためか、他の要因があるのか二人は不思議に思いました。もし仙力に怯えたであれば責を取らなくてはならない。そう思った二人の夜叉は一度決闘をやめ、魔物や動物がいなくなった原因を探すことにしました』

 

またもや場面は変化し、今度は流れるような優雅な音楽に変わる

その様子に荒瀧一斗はすこし不満(?)をもったようだ。「俺様ならここで決着をつける!引き分けなんざ許さねぇ!」と言いたげな表情だったが、以前より"大人に"なったのか、口には出さなかった。その様子を見た忍はすこしでも大人になってくれたのがすこし嬉しいような感情を抱いたそうだ

 

雲菫『…二人の心を驚かすかのような報が近くを旅していた者から聞いたそうです。なんでも千年前に倒したはずの魔神が復活し、再び璃月を窮地に陥れようとしているそうな。二人は急いでその現場に向かいました。すると、そこには噂通りかつて倒したはずの魔神が二人を待つかのように座って待っていた』

 

留雲作の仙遇剣鬼が舞台の下から現れ、観客はすごいものだなと驚く

しかし、綾華や神子、そして影はその仙遇剣鬼に見覚えがある。綾華は昔の見聞で。神子は影から聞いた話で。そして影は――自分の中にある記憶内に

物語はまだまだ途中。終わることを知らないだろう

 

雲菫『二人の夜叉は決意しました。再びこの魔神を排除しようと。今度は二人の力を合わせて――と、魔神はその決意を見て剣を抜き、千年の雪辱を果たすと空に誓い、千年を超えた長い決闘が始まった』

 

仙遇剣鬼は腰から剣を抜き、二人の役者に剣を振るう。二人はいとも容易くその攻撃をよけ、剣と剣をぶつけ合わせたり、その身に攻撃したりする

その姿は緊張というのもが少なく、心から簡単に避けているという雰囲気が出ている。実際、練習はしたのだろうが、それでも普通の人は緊張するだろう。なぜなら避けれず、自らの身の危険がある可能性があるから。神の目を持っている人であったとしても、不安になるだろう。しかし、かの者らは違う。見た感じ神の目を持っていないが、不安のない動き。それは実践経験が神の目の所有者を超えたということが言える

 

辛炎の激しく彼女らしい音楽が劇場に響き渡り、壮大な場面であることが証明される

争っていたはずの二人の夜叉は力を合わせて敵を倒す。どちらが強いなんてことはなく、ふたりとも同じ夜叉であり、それぞれ違う力を持った夜叉なのだ

 

二人の役者は同時に仙遇剣鬼に攻撃を与える。すると、仙遇剣鬼は力なく倒れ、驚異が去ったように見える

 

雲菫『―二人の夜叉が放った攻撃は魔神にあたり、魔神は散りました…………??』

 

雲菫は違和感を感じる。何者かが怒り狂うような憎悪的感情。何なのだろうかと不安になるも、劇を続けようとした瞬間…起動停止したはずの仙遇剣鬼が突如起動し、胸元から黒い霧のようなモノを撒き散らし始めた

その黒い霧のようなモノからは、雲菫が感じ取った憎悪的感情や惜別の念。それだけでなく数多の感情が入り混じっていた

ギギギ…と体が軋む音を鳴らす仙遇剣鬼。留雲もとい玲瓏は緊急停止のコードを打ち込もうとするが、黒い霧によってその道を阻まれる

バギッと口を模した外装が破壊され、その口から苦しそうな息が漏れる

 

???「あ"あ”あ”あ”…」

 

役者の二人はさっと剣を構える。しかしその手にはすこしばかりの恐怖があった

なぜなら仙遇剣鬼から発せられるその憎悪に怯えてしまうからだ。いかに戦闘経験豊富であっても、この仙遇剣鬼の気迫には負けるだろう

仙遇剣鬼はその口から――否、その心から声を上げた

 

仙遇剣鬼「死せよ…我の名は――千の手を持つ国斬鬼崩なり!!!!

 

国斬鬼崩と名乗った仙遇剣鬼は剣を握り締め、役者の二人に襲いかかった

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