大反響だった玉塵雷鳴歓迎祭は終了し、留雲は自分の仙府にて仙偶剣鬼の調査を始める
あのような暴走は仕組んではいなかったし、暴走するとすら思っていなかった。暴走させる意味も無いし、暴走する事を考えていれば緊急停止の装置を作っているだろう
―どうして暴走したのか。原因はなにか。劇がクライマックスになる時、仙遇剣鬼は倒されたその時に覚醒したように見えた。つまりはその"行為”がトリガーになっているのだと仮定する
なにがその行為に反応しているか。留雲自体はそんなことを作った覚えもないし、作ろうとも思わない
ならば留雲が作ったものではない別の機構…それが原因だ。つまりは――
留雲「…旅人が持ってきてくれた魔偶の芯か…やはりこれが…」
作る前から留雲は危険は感じていたが、まさかこれほどとは思っていなかった。魔神に匹敵するのも、旅人が魔神の亡骸の近くで採取したからだと思っていた…だが、これに隠された力は本物の魔神に匹敵するだろう
留雲はどうしようかと考える。これを廃棄するのは些か勿体ない気もする。こんな面白い機構を危険だからという理由だけで捨てるのは…
―少し気になった留雲はその機構に記録された記憶を垣間見る。するとそこには――壮絶な稲妻の事情が記録されていた
―――時は今から数十年前。稲妻には5つの有名な刀鍛冶がいた
刀と心を一体化させる「一心」
忍耐力と意思が強い「天目」
経を唱えるが如し刀にも力を与えつ「経律」
百人の力を合わせる「百目」
そして稲妻の神のような武術を備える「千手」
その刀鍛冶は互いに競い合い、互いに成長していった。その刀鍛冶は神にも認められ、雷電将軍に献上することのできるほど稲妻中で力を持つようになった
その5つの流派をまとめて―「雷電五箇伝」人々はそう呼んだ
しかし千手の流派の人々はこれからのことについてすこし悩んでいた。自らの流派の目標である雷電将軍の剣術を完全に使うことができないからだ。なぜなら初代宗主から続く秘伝の書を紛失してしまったのと、現宗主が病でとこにふしたから。初代宗主は秘伝の書を使うことにより剣術を使うことのできたそうだが、今の弟子は使うことができない
だからこそ不安に思っているのだ。自分の代で流派が途切れてしまうのではないかという不安…それは雷電将軍が大切にしてきているものを自分が壊してしまう―そういうことだ
千手の弟子たちは考えた。このまま鍛錬を積むかそれとも別の方法を探すか…
先代の宗主たちは自分の力でその流派を支えてきたが、今この状況の弟子たちは困惑する
そこに一人の流浪人が「一晩泊まらせてはくれまいか」と訪ねて来たのだ。断る理由もなかった弟子たちは快く引き受け、その流浪人は聞けば正直なことを話すことはできないが訳合ってこうなっていると言った。その後会話が続き、よくよく聞いてみるとかなりの博識であることがわかる
そこで、弟子たちは自分たちの悩みを聞いてみた
「どうすればこの流派を守れるか。稲妻の神の武術をどうやって習得すればよいか」と。すると流浪人は「ではカラクリ剣士を作り、それに技を覚えさせればいい」そのように言った
その手があったかと関心した弟子たちは流浪人に感謝をして、その晩を終えた
次の日からそのカラクリ剣士を作ることは始まった。稲妻城城下町で一番有名なカラクリを作る職人にそれを依頼し、自らの修行をおろそかにし始めた
そして―春が来て――雪が降り――春が来て――雪が降って早二年ほど。ついにカラクリは完成した。これを起動するのは明日にしようと誰かがそういった。楽しみは取っておいたほうがいいのだろうと思った弟子たちもその晩は寝ることにした
―その晩のことであった。カラクリ作れとを教えた流浪人がやってきて、まだ”心のない”カラクリ剣士に心を与えたのだ。心がないのは辛いことだと知っているかのように、そのカラクリに心を与え、明日早くに弟子たちを奇襲した
―そうはじめからこれが狙いだったのだ。雷電五箇伝を滅亡させるという目標でこの流浪人は動いていた。現宗主が床にふせ、秘伝の書もなくした千手は他の流派よりも容易く壊せる…それが目標であった
「お前は何者か」
弟子の一人がそう叫ぶと、流浪人は言った
「我はこの国を壊す者。国崩なり」
その言葉を聞いたかどうかはわからないがその日、千手はこの世界から完全に消え去ったのだ
目覚めたカラクリ剣士は各地を彷徨った。我を作ってくれた国崩はどこかと。しかしそのときにはもう国崩は遠くの国に行っていて、カラクリ剣士は会うことができなかった
彷徨ったがためにカラクリ剣士は恐れられ、人々はカラクリ剣士に立ち向かうために武術を会得した人々が立ち向かった。しかし、千手の真髄「雷電将軍の武術」を会得したカラクリ剣士に勝てるわけも無く、人々は敗北の数を増やしていったのだ
だがある時、そのカラクリ剣士に立ち向かわんとする勇敢な少年が現れた。その名は無名であり、誰にも知られることのない名前であった
その少年はいとも簡単にカラクリ剣士の攻撃を避け、その心に傷を与えた
傷を負ったカラクリ剣士はもう戦う気力や、国崩にあうという目標を忘れ、ひたすらに剣を振ったのだという
留雲「なるほど…その悔しさがトリガーになったのか…お前も悲しい過去を背負っているのだな」
事情を知った留雲は仙力を使い、魔偶の芯を封印する。そしてその心だけを抽出し、綺麗に成仏させた
―妾にできることはこれぐらいしかない。と珍しく慈しむ感情を出して留雲はカラクリを再構成し始めた
留雲が目指すは六花との対決で勝利すること。六花に勝つことが重要なのである
どれだけ時間が経っても、どれほどの年月が経ってもそれだけは達成しなくてはならない自分に課した契約。あいにく時間はたくさんとある。二人には余るほどの時間がこれからも待っているのだ
今日もきょうとて六花に勝つためのカラクリを作成しているのだろう…