白雪に染る夜叉   作:ほがみ(Hogami)⛩

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10話 痕跡

瀞「はぁはぁ…急いで!!!」

 

蛍の前で急いで走る瀞は、蛍に急ぐように促す

早くしなければ魈に危険が及び、最悪の場合、魈が行方不明となり、手がかりが何も失くなってしまうから。それだけは避けたいと蛍は思う。魈と濫が衝突する前に行かなくては―――

 

途中、ヒルチャールやアビスの魔術師、宝盗団などに襲われもしたが時間がないため好きを見て逃走し、宝盗団になすりつける…そんな行為を何度か繰り返していると、段々と辺りが暗くなってきた。いままであまり気にしていなかったが、もう月が出始めている。辺りは涼しげな風が吹き始めて、少し肌寒く感じる

―と、その風に乗るかのように、碧水の原のほうから金属と金属がぶつかる音が聞こえてきた。それも人と人の戦うのような音ではなく、もっと早い周期でぶつかりあう音

 

パイモン「この音は――!!!」

瀞「音はあっちから聞こえます!行きましょう!」

 

我が先にと走り出す瀞の後を追う蛍たち

その現場に向かっているとき、度々強い風が蛍たちに吹き付けられる。その風は自然に発生したのものではなく、魈のものであると走りながら蛍は思った。もう濫と魈は衝突している可能性が高く、早く助太刀に行けなければ―――

 

現場と思われる碧水の原についたとき、もうそれは終わっていた

気持ちの良いほど優しく吹く風に、何もなかったかのように鳴る虫の音。まるでそれは激しく戦った後などそこにはなかったと言い放っているようなその風景に瀞は少し嫌な感情を覚えた

 

パイモン「たしかにここだよな…でも…」

蛍「見当たらない…魈はどこに…」

瀞「―――辺りを調査してみましょう。できるだけ手がかりを…残しておかないと」

 

そう言って瀞は辺りを調査し始めた

それに続いてパイモンと蛍も近くを調査し始める

 

パイモン「―うーん…特に目立ったものはないな…」

蛍「これはどう?"折れた草"」

パイモン「いやどう見てもただの草だろ…―おっ!こんなのはどうだ!"モラの形をした石"!!」

 

自信満々に差し出すパイモンに呆れたように蛍はため息をつく

次に怪しそうな場所は…近くにある荷車。どこかの商人が放置したかのようなその荷車になにか手がかりがあるかもしれない

 

―ガサゴソとその荷車を漁る蛍だったが、特に目立ったものはなく、商品表やその商品のみだった

だがその中に奇妙なものが入っていることを蛍は見逃さなかった。それは書き殴られたような紙であり、くしゃくしゃになってその荷物の中に入っていた

 

蛍「…これは?」

パイモン「なんかの紙みたいだな。開けてみようぜ」

 

二人はその紙を開ける

――あのヒルチャールは俺の荷物を狙っていたんじゃない!あの魔物たちはすべてアビスの魔物が操っていた!だが――の――炎は――スのもの―――――助けてくれた人も―――まれてしまった――いち早くこの――(あとは汚れていたり焦げたような跡があって解読ができなさそうだ)

 

パイモン「これはアビスに襲われた人の手紙なのか?なんだが焦ってるみたいだけど…」

蛍「アビスの魔物が操っていた…でも”だが”って続いてるから、アビスじゃない。つまりは――」

瀞「旅人さん、少しこっちに」

 

考えているとき二人は瀞に呼ばれ、考えを中断する。おそらく濫関係のことであるから、突き詰めていけば必ずその紙のことも解決できるだろうと思ったからだ

そうして蛍が瀞の元へと向かうと、そこには消えかかっている黒い炎がゆらゆらとその身を揺らしていた

―普通の炎ではないこの炎。これは確実に以前見たあの炎と同じモノであり、異質なものであった

 

瀞「この気配を覚えれますか?」

蛍「気配?元素じゃだめなの?」

瀞「はい。これは元素とは違い、業瘴なんです。なので元素視覚や元素反応にはなんにも反応を示しません」

蛍「そうなんだ…やってみる」

 

蛍は目をつむりその炎の気配を感じようとするが、蛍にはなんにも感じることが出来なかった

すこし嫌な気配がする程度だが、その気配は気の所為とも言える気配で、あまり役に立ちそうにない。それを瀞につげると、瀞は「それじゃ、すこし目をつむって」といって蛍に目をつむらせた

―「すこし我慢してね」といった途端、蛍の頭に温かい水に包まれているかのような感覚に包まれる

 

瀞「目を開けてもいいですよ」

 

蛍が目を開けると、目の前にいたはずの瀞は消えており、代わりに黒い炎から禍々しいほどの嫌な気配を感じることができるようになっていた

何をしたのかと蛍が瀞に聞くと、「私が旅人さんに憑依したんです。今の私にはこのくらいのことしか出来ませんし…」と衝撃的な事を話してくれた

するとパイモンは不思議そうな表情を浮かべ、蛍に問いかけた

 

パイモン「旅人、なに独り言いってるんだ?」

蛍「え?」

パイモン「お前が目をつむった瞬間に瀞が消えて、お前が独り言言い始めたんだぞ」

蛍「いやでも確かに………」

 

そこで蛍は考えた。

瀞は今、蛍に憑依している状態なのだ。つまり蛍は今、特別な状態であり、パイモンはなにも変わらない状態であるのだ。おそらく瀞の声を聞けるのは蛍のみで、パイモンには聞こえないのだろう

 

蛍「大丈夫。瀞は私の中に入って、私のなかの瀞と会話しているだけだから」

パイモン「そうなのか…オイラに瀞の声が聞こえないのは少しさみしいな…」

 

落ち込むパイモンだったが、瀞が言うにそれを解決する方法はないのだそうだ

あくまで憑依できるのは現状一人であり、しかもパイモンは蛍よりも力が弱い(たぶん)であるため、いきなり瀞が憑依した場合、どうなるかわからないのだ

 

まぁそんなことは置いておき、瀞は蛍にその気配をたどるように指示した

 

瀞『おそらくその方向に濫はいます…そして行方不明の人たちも…』

蛍「うん。わかった」

パイモン「瀞はなんて言ってたんだ?」

 

蛍は瀞に言われたことをパイモンに話す。そして目の前の炎に繋がっている気配の流れをたどり、あるき始めた

気配は木の根のように1点を辿れば2つの分岐点が生まれ、そして根本に向かっているであろう先には木の根が太くなるようにもっと強い気配になっていっている

―分岐点の場所もただそこで分岐したという感じではなく、その場所は行方不明になった人たちが襲われた現場であることも判明した。考察として蛍が考えたのは……この気配の道は地脈のようなものでただ力が流れているだけではなさそうということ。そしてやはり…

 

蛍「うっ―――」

 

いきなり蛍の頭が痛む

それは外部的な要因ではなく、内部的な要因。使ったことのない瀞の力を使ったからか。あるいは長時間業瘴に触れているからか

―魈や六花、瀞もこんな痛みを耐えていたのかと、蛍はそう思う。しかし、次第にその痛みは引いていき、瀞の優しい声が聞こえてくる。「私が代わりに受けてあげるから、早く根本へ!」と

蛍はいつまでも瀞に頼っているわけにも行かないと、その根本へ行く速度をあげた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこはつい最近行ったばかりの場所であり、あの魔神と壮絶な戦いを強いられた場所であった

パイモンの目には何も映らないが、蛍の目には、遺跡が立つ岩山に巻き付く黒い植物。それはまるで木のようであった…そしてそれは璃月各地に広がっていた業瘴の地脈が全てそこに集結していた

―なんの因果か。瀞は心からそうおもう。なぜならそこは、六花がその胸を穿ったあの魔神が眠る場所で、瀞の身にまとわりついていた業瘴を与えたヤツが最期を迎えた場所であった

 

瀞『青虚浦…どうして…』

 

もうここには来たくないと思っていた。できることなら、あの悲劇を永遠に記憶のそこに沈めて置きたかった

あの人――かつてともに過ごした夜叉の一人の最期を自分の手で作ってしまったあの記憶を――

瀞は気持ちを落ち着かせた。今は感傷に浸る場合ではなく、一刻も早く濫を止めなければならない

 

瀞(っ…普段より業瘴の痛みが酷く感じる――精神体だから?でも昔はどうだったっけ…)

 

かつての瀞

 

その名を得る前の瀞

 

その隣にはいつも誰かがいた

 

今はなぜか曖昧で、思い出すことができそうにない

 

だけど、その記憶で唯一思い出せることがある

 

 

「あなたの苦しいことは、私が代わりに引き受けるわ。だってあなたは…」

 

 

その言葉は瀞の記憶の奥底にあった記憶を呼び覚ました

 

魔神戦争のときに出会ったと思っていた

 

帝君に名をもらってから仲良くなったと思っていた

 

だが実際はいつもそばにいてくれたのだ

 

いつもいてくれて知らぬうちに助けてくれていたのだ

 

苦しむはずの業瘴をその身に閉じ込めていて…

 

 

「私のただ一人の家族(いもうと)だもの」

 

 

 

その決意だけで彼女は瀞を助けていたのだ

 




黒の瀞は崩壊でいう黒ゼーレみたいなイメージです
ツンだけど優しいみたいな感じ
そういえば、崩壊の方で黒ゼーレ来てたの知らなくて絶望しました。水晶ねぇんだよ…なんで推し来てるんだよ…教えてくれてもいいじゃん…
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