白雪に染る夜叉   作:ほがみ(Hogami)⛩

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アルハイゼン…次のキャラによってはナイハイゼンだな


13話 愚弄

暖かい炎の中、魈は現世に意識が戻った

魈を拘束していた業瘴は完全に消え失せ、簡単に動くようになる。それは生まれた時のように軽々しく、今までは重しを背負っていたかと思うほど

―誰のおかげかと思い、魈は辺りを見回す。すると目の前に、例の瀞によく似た少女が魈の目の前に手を突き出していた

 

魈「貴様――」

 

言葉を発そうとする魈はすぐさまにその言葉を消す

なぜなら、彼女からはもうあの時の気配を感じなくなっているから

 

伐難?「……金鵬…みんなを…地上に戻して―」

魈「お前は――」

 

魈の言葉は彼女に届くことなく、彼女は炎に飲まれ、その場から消えた

その声はまるで風前の灯火のようであり、自分にできる限りのことをしたという声であった

―あのときとは違う。魈と戦ったときとはまるで正反対。その傲慢さはなくなり、傲慢さの代わりであるかのように、皆を思う気持ちを感じ取れた

あの伐難は本当に襲ってきた伐難とは別物なのか。そうでも考えないと、心のなかに何かわだかまりがつっかえる。もし同じやつなのであれば、どうして助けてくれたのか。助けるように指示したのか

 

魈「もし同じなら―――我は許さない…」

 

倒して情けをかけるなど愚弄も良いところだ

魈はそう思うものの、その思いを断ち切り、彼女が言っていた"みんな”を地上に戻す努力を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――旅人side――

 

奥に進むにつれて禍々しさは強くなっていき、旅人の体調もあまり良くなくなってくる

業瘴は蛍の体にも影響があるみたいで、めまいに近い現象が起きたり、起きなかったりする。そのたびに瀞の近くに行って回復しているのだが、洞窟内には業瘴の影響を受けた魔物がいるため、蛍が倒さなくてはならない。業瘴を受けるのは仕方がないことであった

―蛍はその魔物達に妙な感覚を覚えながらも、その戦闘を続けていたのだった

 

パイモン「奥に進んでくと…なんだか嫌な気配が大きくなるな…」

瀞「もう少しの辛抱ですよ。奥に近づくにつれてその彼女の力の強くなっています…」

蛍「――ねぇ瀞、さっき彼女と対立したとき…何か思ったことあるんじゃない?」

 

蛍にその言葉を言われた瞬間、瀞は足を止めた

 

瀞「……気づいていましたか」

蛍「うん。なんだかいつもと違ってたから。なにか気になることでもあるの?」

瀞「…はい。濫についてです。先程、私達と対峙した者ですが、濫ではないことは自白していましたよね」

パイモン「確かにそうだったな…"濫という名の夜叉はもう存在しない”――それってつまり、この体は自分のだってことだよな…」

瀞「そう考えて良いと思います。そこで、私はその正体について考えました」

 

そう言って瀞は一拍置いて話を始めた

その話し方はどこか悲しそうであり、寂しそうな話し方であった

 

瀞「”我の業瘴で完全に消え去った”それはつまり、濫は業瘴に負けてしまった。ならその業瘴の主は誰?」

パイモン「ん?業瘴に主なんているのか?」

瀞「基本的にはいません。ですが、彼女は自らその業瘴を操ることができる――業瘴は人々には害物質であり、到底操ることなんてできない。業瘴を使うことができるのは、私達夜叉…ですが操るなんて高度な事…できる夜叉は今までに見たことが無いです」

蛍(夜叉よりももっと業瘴に長けている…瀞の力―それは業瘴を背負い、体力を回復する。なら瀞の別人格である濫は?それと同じ?)

 

蛍の中で思考がぐるぐると回り、点と点を繋げていく

本当の濫にはあったことが無いが、蛍が実際に感じた感覚と知識、そして記憶を並べて整理していってもまだその書体にたどり着くことができない

そう考えているとき、瀞は話を始めた

 

瀞「業瘴を操って私の体を支配した――つまりは私の身の中にあった業瘴であると考える事ができます。つまりは、過去に私と戦ったことのあるモノ…そして私よりも強いものというと…」

蛍「―!まさか歌の魔神?!」

「――御名答―――」

 

蛍の声が終わると共に、凛々しい女性の声が洞窟内に響き渡った

声の出どころを探して見ると、前方の少し盛り上がった地面の上に赤い髪の女性が立っていた

その姿はつい先日のあの事件の首謀者、そしてあのとき瀞を業瘴で縛り、使役していた悪しき魔神と等しかった

だがその声は過去とは違い、鮮明に、そして見下すような声になっていた

蛍は危機感を感じ、剣を抜いて歌の魔神に剣を向ける

 

ミュルクス「我の正体を判明できるとはな。そう、我の名は歌の魔神(ミュルクス)

蛍「あのとき倒したはず!」

ミュルクス「確かに我はあのとき討たれた。しかしな、我が使役した夜叉の中には、我の業瘴が残っていることを忘れたか?」

瀞「っ――」

 

瀞は少し悔しそうな顔をして、ミュルクスを睨みつける

 

瀞「……濫をどこにやったの」

ミュルクス「あの小娘のことか?我の体には合わなかったから捨てた。今の我は全盛期の体を有している。ならば夜叉の体など要らぬ」

瀞「―――!!」

 

静かながら瀞が激怒しているのが蛍に見て取れる

まだ彼女とは会って間もない蛍だが、そんな彼女でも瀞が怒ることが珍しいと思える。優しく、人のためなら何でもやろうとし、何でも最善を尽くそうとする彼女が怒るなんて想像出来なかっただろう

―だが、実の家族を…夜叉を愚弄されたからには怒らないわけには行かない

 

瀞「…歌の魔神」

ミュルクス「なんだ小娘、貴様ごときに我の名を――」

瀞「あなたはもう生かしておけない。そしてこの世界に居てはいけない」

ミュルクス「ふっ…小娘が―自分の立場を弁えろ!」

 

そう言ってミュルクスは自分の回りに瀞のような黒い人形を生成し始めた

そんな中、瀞は蛍の近くに行き、少しばかり会話をする

 

瀞「旅人さん。」

蛍「?」

瀞「あなたに私の力を半分あげます。そして一緒に歌の魔神を倒してくれませんか?私一人の力では到底敵いませんが、あなたと一緒なら―――勝てると私は思います!」

 

その姿は自身に満ち溢れていて、絶対に行けるといった決意が見て取れた

蛍も最初から断るなんて選択肢は無く、喜んでその誘いを受ける。

―瀞は自分の前に手を差し出すと、手のひらに水の珠のようなものを作り上げ、それを蛍へ渡す。その珠はするりと蛍の胸の中に入っていき、心の芯から温まるような力を感じた

その力は六花の札とは違う力であり、業瘴による制約が消え、体が楽になるかのような感覚であった

瀞は手に水の鉤爪を作り、ゆっくりと深呼吸した

 

瀞(濫ならきっと…こういうことを思うはず…大丈夫――私が、私達が濫の気持ちを最後までつなげるよ)

 

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