白雪に染る夜叉   作:ほがみ(Hogami)⛩

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14話 浄化の炎

気味の悪い歌が洞窟内に響き渡ると同時に鉄と鉄がぶつかり合う高音の音も響き渡る

ミュルクスは依然歌を歌い続けて業瘴で作ったであろう人形は、攻撃を喰らえば溶け…そしてまた再生する。終わりのないように感じるその様は、瀞であっても厳しいものであった

―いつまで続くのだろうか。体力は瀞の力で減ることは少ないが精神的な部分が厳しい。倒しても倒しても尽きることはない

 

ミュルクス「無駄だ。この世界は我の業瘴で出来ている。貴様らの力では到底敵わない。諦めろ」

瀞「諦める…もんですか!濫を愚弄した罪…許されることではありません!」

ミュルクス「ほう――だがこの状況で何ができる?夜叉の力も貴様にはもう少ししか残っていないだろう?」

 

そう言われた瀞は歯を噛み締める。なぜならそれは事実とも言えることであるから

瀞の夜叉としての力はもう薄れて来ている。蛍をサポートするのもやっとなくらいに

 

蛍「っ…キリがない…このままじゃ体力勝負で負けちゃう…」

 

無造作とも言えるその人形に、どうしようにもない絶望を感じ始めてくる

人は魔神には勝てない。夜叉も力を失い、勝つ術は無くなっている。これからどうすれば良いのだろう

その時、洞窟の天井が崩壊し、そこから突風が吹き荒れて一人の青年が槍を地面に向けて落下してきた

 

―その様はまさに英雄そのもの。困窮したときに現れる救世主。彼の名は――

 

パイモン「魈!!!」

魈「…"みんな"というのにはお前たちも含まれるな?だが――」

 

地面に重く刺さった和璞鳶を軽々と地面から引き抜き、その矛先を玉座の方への敵意を乗せて怒りをぶつける

まるで反逆者の英雄が暴君の王に立ち向かうようなその様は、数々の困難を乗り越えてきた蛍であっても、ビリっとした感覚を肌で感じ取れる程であった

 

魈「―貴様は我ら夜叉を愚弄した。その罪、許されるものでは無いぞ」

ミュルクス「ふっ――たわけ。一度その身を我に囚われてもなお、その刃を我に向けようとするか。貴様らに我は倒せぬ」

 

黒い人形は魈に向かって一斉に攻撃を仕掛ける

 

魈「どうだかな――ふっ!」

 

一振り――それでその人形と魈の決着はついた

風に纏うように青い炎が燃え、それが人形を跡形もなく塵のように消し去ってしまったのだ

ミュルクスは今までにないような表情を見せ、バカなと一喝。自分の従者がやられるとは思ってもおらず、たかを括っていたミュルクスは焦るように人形を無造作に作りだす

 

―しかしどれも魈は一振りでその人形すべてを消し去り、その場には”業瘴に問わられることのない”全盛期の金鵬と同等の魈が立っていた

 

ミュルクス「なぜ我の従者を消しされる!貴様にはその力は無いはずだ――!」

魈「生憎だな。たかが夜叉と侮っていたが故にこのようなことが起きたのだ。そう、貴様が捨てた”あの夜叉”のせいでな」

ミュルクス「っ―――!!!」

魈「あいつにはお前の業瘴を払う力があった。我はその力を少し得ただけだ」

 

瀞の体内で長らくミュルクスの業瘴と戦っていた濫には、もうミュルクスの業瘴に対抗できる力が備わっていた。それはまるで、人の体内で活躍する抗体のように

その力の端を魈が目覚めたときに少し得ただけ。その力を魈は自身の元素で拡散し、それを増幅させて今に至っている

しかし、その力はミュルクスの業瘴を受けていない魈の体にも作用し、自身を縛っていた枷となる業瘴もかなり減ったのは、”濫という少女”が託した最初で最後の灯火が、瀞や魈の意思によって燃料を入れられたかの如く燃え盛り、すべての業瘴を滅する存在となったのだ

 

魈「伐難、旅人。今、その業瘴を解いてやる」

 

風と共に燃えた炎は二人に纏い燃え盛るも、熱さではなく心地よさがその体を纏い、随分と体が楽になった

瀞に至っては、精神体ではなくなり、実態を持てるようになったのだ

 

瀞「ありがとう金鵬」

魈「礼を言うのはこっちだ。お前がいなければ我はあの時死んでいた。その時の借りを返したまでだ」

瀞「?」

 

蛍は立ち上がり、魈に駆け寄る

―体の芯から力が溢れてくるのを蛍は感じる。二人――否。三人の夜叉の力を得た蛍は今、この場で一番強い者と言えるだろう

魈はかつての夜叉たちの顔が、蛍の顔と重なる。応達、弥怒、浮舎、銅雀。かの者たちと戦ったものは、今、目の前にいる魔神の残滓が引き起こした問題だった

その一つも今日で終わり。この魔神は未来永劫、この世界から消え去るのだから

 

魈「覚悟しろ、歌の魔神。我ら(夜叉)が貴様を潰す」

ミュルクス「っ――貴様らに…我が死すはずが無いだろう――!!!」

 

怒号と共に黒い人形は一斉に襲いかかる

その黒い人形も今までとは比にならない程に強くなっていたが、三人の力はそれより劣ること無く対等――いや、それよりも上回っている

魈が先陣を駆けぬけ、蛍がそれに続く。瀞は後衛で回復に徹するというバランスの取れた作戦でミュルクスに挑む

 

蛍「はぁっ!!」

 

蛍の攻撃がミュルクス本体に当たるとともに、ミュルクスは怯む。業瘴のシールドを貼っていたがそれも難なく突破。成す術がなくなったミュルクスは、持っていた業瘴すべてを自身にまとわせ、巨大な獣となる

洞窟の天井に着くほどの巨体は、力を得る前であれば恐怖に思えたが、今は悪あがきにしか感じない

 

ミュルクス「死ぬが良い!!!」

 

巨大な右足で踏み潰そうとしたミュルクスを魈は靖妖儺舞を使って防ぎ、その右足を伝って蛍は洞窟の天井に届くほど大きなジャンプをして、全身の力を込めた一撃をミュルクスに与えた

その瞬間――青い炎が爆発するかのようにその洞窟に一気に燃え盛り、禍々しい気配を一瞬にして消し去った

ミュルクスは青い炎によって浄化され、苦しむ声が洞窟内に響き渡る

―これでようやくこの事件が終わる。歌の魔神は塵と化し、この世界から消え去った

 

伐難「…終わったの?」

パイモン「そうみたいだな…」

 

安堵しているふたりに次に襲いかかったのは、洞窟の崩壊であった

 

グラグラと揺れる地面に、ゴトゴトと震える石。この洞窟―世界を構成する業瘴の主である歌の魔神を失った洞窟は崩壊現象が始まる。もし逃げ切れなかった場合、その体は永遠にこの業瘴に囚われ、生きて変えることはできないだろう。早くも脱出しなくては――!

 

魈「早く逃げるぞ!」

 

魈の声は崩壊を始める洞窟よりもはっきりとみんなに聞こえた




もう終盤に差し掛かってますね
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