??「…判断が遅すぎるぞ」
助けてくれたその人は、蛍に向かってそういった。蛍はこの人について考える
ー見た感じ、ただの人ではないことは確実だろう…あのような技を出せるのは魈のような仙人、または雷電将軍のような神だけだ。後者は多分ない。あるならば注目されているはずだ…となると…と彼の正体を探る
??「囲まれてもう少しでやられそうなのにただ立っているだけ。死にに来たのならまだしも、その様子じゃまだ死ぬことはしないんだろう?ならばなぜただ立っているだけだったのだ」
蛍「ご、ごめん…でも死にたかったわけじゃないんだよ?」
??「ふんっ…信じられるか」
彼は蛍の顔からふいっと顔をそむけた。その姿はどこか魈に似ているところがあった。人に興味を持たない仙人の特徴。昔の申鶴と似ている―いや、それ以上だろう。だが、その言葉からは、人を大事に思うような優しさが見て取れる
おそらく根は優しいのだろう。蛍はそう思った
申鶴「主たち大丈夫であったか?」
パイモン「あ申鶴!オイラ達は無事だ!」
申鶴「それは良かっ…あ、あなたは…」
申鶴は目の前の人を見て少し驚いたような顔をする
パイモン「知り合いか?」
申鶴「あぁ…先日、ここで我を助けてくれた命の恩人だ。名前は…六花と言った」
六花「…我の名を覚えていても得はないと言ったはずだ」
申鶴「命を助けてくれたものには感謝しなくてはならない。師匠はそう言っていた。それに師匠の友ならば、我の師匠でもある。覚えないと貴方に悪い」
六花は少し黙る
六花「…お前の師匠を我は知らない。故にお前は我を覚えなくて良い」
申鶴「我の師匠は、留雲借風真君だ。心当たりがあると思う」
六花「……あいつか」
六花はボソリとつぶやき、申鶴を見る。それは警戒の目ではなく、観察の目であった。一通り申鶴を観察した後、六花は少し微笑み、口を開いた
六花「確かに。その服装は留雲のものだな。彼女は我のことをなんと?」
申鶴「―変なやつだったと」
その瞬間、六花の頭に雷が落ちた…ように見えた
そして、辺りの温度が何度か下がる気配を感じ、無妄の丘の霧が1層深まる。パイモンと蛍は少し恐怖を感じる。あの「淑女」とはまた違うが、何か心の底から逃げ出したくなるそうな…そのような感情だったという
六花「ほう…あいつ我のことをそこまで言うとはな…次会った時には―まぁいい。お前たちなぜここに来た」
パイモン「お、オイラたちは妖魔の気配の調査をしてるんだ!最近、妖魔の気配が強くなっただろ?放置してたら璃月の危機になるからオイラたちがそれを解決しようとしてるんだ」
六花「…妖魔など仙人に任せればよいものを」
六花の言い方にはどこか含みがあるよう蛍は感じる
それは世界を旅してきた旅人だからこそ感じるものであった。仙人に任せればいいものを。それに含まれる意味合いはどんなものだろう
蛍「―今の璃月は神の璃月じゃなくて、人の璃月なんだよ」
六花「…ほう。この数千年であの方の意思も変わったのだな」
蛍(…あの方…?)
六花「で、お前はどのようにして調査するんだ?」
パイモン「妖魔が出没した場所に行って痕跡を探すんだ!そこから妖魔が強くなってる元凶を―」
六花「―お前たちは妖魔の気配を感じることができるのか?」
パイモンは六花に渾身の一撃をくらい、うぅ…と意気消沈している
そう。蛍には妖魔の気配というものがわからない。元素と妖魔の気配は根本は同じものだが緻密に言うと違うものだ。元素はこの世界にたくさんあり、それを行使する人がいるが、妖魔の気配は基本的には人に害を与える。それと、大気中にある妖魔の気配はとても微量だ。そのため人には行使できず、触れる機会もない
重雲や申鶴のような人々は特殊で、訓練しているため妖魔の気配が察することが出来る。人も訓練すれば妖魔を察することが出来るのだが、その訓練はとても過酷で常人には出来たものではない
六花「ふっ…できないのだな」
パイモン「し、しかたないだろ!オイラたちはあくまで普通の人間なんだ!」
六花「それでどうやって妖魔を調査する」
パイモン「うぅ……お前、意地悪って言われないか?」
六花は鼻で笑い誤魔化す
六花「生憎人とは関わらない性なもんでね。言われたことは無い。それで?妖魔をどうやって退治する?」
蛍「…ついてきてくれたら嬉しい」
無理な相談だろう。蛍はそう思った。ー恐らくこの人は仙人で鍾離先生と仲が良かった人なのだろう。そんな人に着いてきてくれーと頼んでもはいそうですかと来てくれるはずがないー
六花「いいだろう」
パイモン「いいのかよっ!!!」
パイモンのノリツッコミはさておき、六花は悩む素振りなどなしに即答した。
六花「我も妖魔の気配を危惧している。それに辿ればあいつが…」
パイモン「それは良かった!よろしくな!ええと…」
六花「改めて自己紹介しよう。我の名は六花。一時の間だけ名を覚えればいい」
パイモン「一時だけって…まぁいいや!オイラはパイモン!こっちは蛍っていうんだ!」
六花は少し微笑み、よろしくといった
その直後、六花は申鶴に近づき少し世間話をしていた。その内容は、留雲借風真君に関係するものだった。あいつはどうしているだの師匠としてどう思っているだのそんな話だったようだ。中には甘雨の話もあったそうで、甘雨が話されるのを危惧している話もあった
六花「留雲によろしくと言ってくれ」
申鶴「あぁ。わかった。では、我はここで失礼しよう。旅人、パイモン。またな」
パイモン「おう!またな!」
そう言って申鶴は無妄の丘を下っていった
残された三人は妖魔の元凶を探すためにどうすればよいか考えることにした。最初に出た案は妖魔の気配を辿り、その元凶に達するものだった。だが、その案はー妖魔は点々としていて、元凶に達するには時間がかかりすぎる―という立花の言葉で却下された
最終的に、妖魔を倒したときに共通することを探し、それを調査する。という案が可決された
もし裏で操っている人物がいれば、それを叩けばこの妖魔の気配がおさまるし、そうでなくても、魔神が復活する可能性がある。妖魔は破れた魔神の残滓であるため、妖魔が活性化するということは、魔神の復活の可能性があるということだ
パイモン「それじゃあさっきはなにかおかしなことがあったか?」
蛍「うーん…遺跡守衛がおかしかったこと…アビスの魔術師が透明化してたこと…アビスの魔術師が遺跡守衛を召喚(?)してたこと…」
パイモン「じゃあアビスの魔術師が原因なのか?」
六花「いや、そうではないだろう。あの言語を話していた…おそらくは裏の存在があるだろう」
そう言って立花はアビスの魔術師がいたところに行き、少し観察する。そこには黒い塵のようなものがサラサラと落ちていた
蛍「六花、それは?」
六花「魔神の残滓の結晶だ。すなわち妖魔の力の源だな」
パイモン「どうしてそんなものが…」
六花「…他のところも行くぞ」
パイモン「お、おい!待ってくれ!」
颯爽と立ち去ろうとする六花を二人は必死に追っていく
―どうしてそんなに急いでいるのか。早く手を打たなくては行けない事情でもあるのかととその時蛍は思った。どうにか理由を聞いてみようと蛍やパイモンが試しても、はぐらかせるばかりでなにも進展がない。その顔から察しようと思っても、彼の顔は常に無表情…彼の心を読むことは無理なのだろう
瓊璣野―帰離原
六花「…ここにも結晶がたくさん落ちているな」
帰離原に来た六花はそう呟く。それもそのはずだろう。ここは先程、魈がたくさん妖魔を倒していたところなのだ。魔神の残滓の結晶が多いのもその影響だ
すると六花は何かを感じ取るように目をつむる。そして深く深呼吸し、肩をゆっくりと落とす。それはまるで、自然と同化するかのようだった
パイモン「り、六花…」
六花「しっ―――――来るぞっ!」
六花が叫ぶと同時に、風が心地よく通り抜ける。その瞬間、ポシュっ…ポシュっ…とヒルチャールが出現した。このヒルチャールの出現の仕方はどこかおかしい。通常、ヒルチャールはこのようには出現しない。このように出現するのはーアビス教団関係だ
パイモン「あ!ヒルチャールが出てきた!」
アビス「なにをしているのだきさまら」
パイモン「?!あの声も聞こえた!」
六花「やはりそうか…やるぞ旅人。我がやつの居場所を暴く。それまでヒルチャールを討伐しつけていてくれ」
そう言って六花は剣を手に取り、ヒルチャールの群れに走っていく。蛍もそれに続いていくようにヒルチャールの群れに突進していく
ヒルチャールの声と剣の音が帰離原に響き渡る。戦いの最中、六花はそのヒルチャールたちに違和感を覚えた
―弱すぎる。異常なほどに弱い。これでは無妄の丘で戦っていたときに比べて非常に弱いーそう思いつつ六花は術師の場所を探る
六花(すべてのヒルチャールについている妖気を辿って…いた。あそこか)
六花「”晴天雹凍"!!!」
心臓を突くような元素スキルを使ってアビスの魔術師をあぶり出す
剣はアビスの魔術師のシールドを一瞬にして破壊し、そのまま身へと突き刺さる。立花はその突き刺した状態のアビスの魔術師をじっくりと観察した
――いつもの魔術師とは少し違う。正気を失っているのか、はたまた妖魔に支配されているか…少し辿って見るか――――っ!
魔術師に取り付いているであろう妖魔を辿ろうとした時、六花の頭の中に大量の記憶が流れて来る。これを彼は昔に経験している。これは業瘴の一種なのだろうと推定した。かつて魈以外の三眼五顕仙人、及び夜叉はこの業瘴に飲まれ、自我を失って亡くなっている。あの魈でさえもその業瘴に包まれたのだ。
今、その業瘴が六花を包もうとしている
六花(くっ…これは…っ?!)
―災厄の時代。すなわちあの魔神戦争時代の記憶だった