マキマと友達になろう!   作:鹿手袋こはぜ

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退院

 退院を出迎えてくれたのは部下二人とそれに新しく加わることになるレゼを含めた三人であった。

 姫野はあと数日すれば退院とのことなので、「お先に」と挨拶をして病室を出た。今後どうするのかは聞いていなかったが、デビルハンターを続けていくのは難しいと彼女自身言っていたし、おそらく実家に帰るのではないだろうかと思われる。アキくんとの関係性を密かに押していた身としては残念でならないが、生きているのならこの先なにが起こってもおかしくはないだろうから彼女の幸せを願って別れを告げた。

 

「どぉも。外はええなあ」

「元気そうでよかったです。もう退院してもうて良かったんですか?」

「ええんよ。いうて大した怪我やないし。内蔵も無事、骨も折れとらん。心配いらんよ」

 

 失われた筋肉の治療には長い期間がかかるようで、リハビリなど定期的に通う必要があるらしかった。まあ片腕でも仕事に支障はないのだし、せっかくもらったしばらくの療養期間で、ある程度この身体に慣れねばならないだろうなと、左腕を元気よく振り回しながら三人の姿を順に見た。

 

 天童黒瀬の二人は既にレゼとの対面を済ませていたらしい。ぎこちなさはあるものの、三人で選んだのだと言う退院祝いの花束を渡してくれた。笑顔でそれを受け取ると、反して暗い表情をしたレゼがこう言った。

 

「ごめんなさい……私のせいで、そんな怪我を」

 

 申し訳なさそうに言うので、私はあえて元気付けるような明るい声色で返した。

 

「ええんよええんよ。うちが欲かいて突っ込んでったんが悪いんやし。それにレゼちゃん大したもんやで。うちに傷つけるやなんて、なあ?」

「ええはい。そのままぶっ殺してくれはったら、こん人も反省して大人しゅうなったんですけど」

「誰が死ぬかいな! ……ま、誰も気にしとらんから。むしろそんなに強いレゼちゃんが味方になってくれるなんて、百人力や思わへん?」

 

「ま、今日はぱあっと遊ぼうや」

 

 

 

 ⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎

 

 

 

 テーマパークに行ったり、服を買いに行ったり、晩御飯をお店で食べたり。そうして一日中遊び回った疲れからか、レゼちゃんは車の後部座席でぐっすり眠ってしまっていた。

 今、車は公安近くのマンションに向かっていた。しばらく東京で暮らすことになるからと、公安が所持している部屋を借りて住むことにしたのだ。

 もちろん黒瀬天童も同じマンションで、レゼちゃんは監視する者が必要とのことなので私と同じ部屋に住むことになっている。

 

 一応はこれで東京にも帰る家ができたわけで、しばらくの間はそこを拠点にして活動することになるのだろうと思われた。

 

「今日は思っきし遊びましたねえ」

 

 車を運転する天童が言った。

 すっかりレゼは眠ってしまっていて、黒瀬も荷物持ちやらなんやらさせられていてややうとうとしていたので、私は彼らを起こすことがないよう抑えた声で返した。

 

「せやな。この頃は任務続きで、一緒におることはあっても遊べとらんかったから、年甲斐もなくはしゃいでもたわ」

 

 東京なんて公安に行って報告書を提出するか、飲みに行くかくらいの記憶しかなかったので、久方ぶりの観光に楽しんでしまった。

 特にレゼが心からはしゃいでいるのが嬉しかったからというのも理由としてはあるのかもしれない。

 

「レゼも楽しんどったようですし、良かったです」

「……ふうん、呼び捨てなんや」

「不満でもありますか? 仲悪いより仲ええ方がヨツナさんもやりやすいでしょ」

「いやな、それはそうなんやけどな」

 

 煙草を吸おうかと懐に手をやったが、隣で子供が眠っているのだし吸わないでおこうとやめにした。

 

「それはそうなんやけど、反発あるもんや思っとったからな」

「拍子抜けしたと?」

「そうゆうこと」

「はあ〜……」

 

 呆れたように天童はため息をついた。

 

「私らかて大人ですよ。私も黒瀬も、折り合いくらいつけれます……確かに疑う気持ちが一つもないとまでは言いませんけど」

 

 最後に付けられた「疑う気持ちが一つもないとまでは言わない」という一言は、後部座席に座るレゼをバックミラーで確認してから言っていた。あまり聞かれたくはない一言なのかも知れなかった。

 ただそうして知られたくないと思う程度には、彼女はレゼとの関係性を重要視しているとも捉えられた。

 

「疑いはしますけど、それを表に出すほど子供やないんで。小さい子が困っとるんなら、それ助けたいゆうヨツナさんの気持ちは長年連れ添ってきた私らにはよう分かります。せやけど、言っときたいんは、無理しよったらあきませんよってことです」

「無理? しとらんよ」

「でしょうね。やって、それがヨツナさんにとっては普通なんやから。……せやけどうちらから見たら十分無理しとります。怪我しとるうちは大人しゅう休みよったらええんですわ」

 

 特に今回の戦いにおいて。

 渋々私を死地へ送り出した彼らの心境を、私はあの場で慮ってやることはできなかった。私を心配する人たちよりも、私の信念を優先してしまった。

 そのことに悔いはないが、しかし周囲の人に──天童や黒瀬に迷惑をかけてしまったことに間違いはない。

 

「特に、私らほったらかして、一人で無理せんといてください。……その、なんです。うちらかて子供やないんです。戦場でも足引っ張りませんよってことです。困ったら頼ってください、一人でなんでもやろうとせんといてください。……一緒におるんですから」

「そうか。そらありがたいわ」

「……ああ、なんや気恥ずかしい。もうじき着くんで、黒瀬のやつ起こしてください」

 

 とは言っても、後部座席の私からじゃ手が届かなかったので、天童が無理矢理叩いて起こした。

 

 それから、そうだそうだと思い出したように天童が言った。

 

「しばらくこっち住むいう話ですから、いろいろ物持って来よう思って京都の方一回戻ろう思うんですけど、ヨツナさんも来はります? レゼも、京都観光させたらええですわ」

「うーん、せやな。それもええかもな」

 

 たこ焼き器やホットプレートは車に積んであるのだが、他にも色々と車に積めていない武器やらなんやらが家にあるので、それを取りに帰るのもいいかも知れないと思った。

 それに、私たちの仕事は多くの場合車で全国を巡っている。

 レゼにもそういった体験をさせてやりたい、大阪の美味いものを食べさせてやりたいという気持ちが強かった。

 

「ほな行くか、京都大阪ぁ」




 次に京都・大阪の話を挟んで本編に戻ります!
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