南極でゴジラを見張ってたらテロリストが来た件 作:よよよーよ・だーだだ
『怪獣黙示録』を乗り越えた平和な時代。
静寂と穏やかさが街を包み込んでいた。人々は日々の喧騒に耳を傾け、安心感に包まれていた。
しかし、ある日、突如として大地が激しく揺れた。人々の平穏な日常は、この突発的な出来事によって打ち砕かれたのだ。
――ドオオンッッッ!!!!
天を突くほどの巨大な足跡が建物を踏み潰し、街路を断ち切った。高いビルの壁が崩れ、古い樹木が折れ、石畳の道路は亀裂が走った。驚きと恐怖に包まれた人々は、その場で立ち往生してしまった。
足先の幅だけでも数キロメートル、それはまさに言葉通り天を衝き、雲をも突き抜けて見えなくなるほどの超巨体。かつて史上最大のゴジラと呼ばれたゴジラ=アースをも超える、新たな超巨大ゴジラの出現である。
現れた超巨大なゴジラは、怪獣博士たちによって〈シン・ゴジラ=ギガ・アース〉と命名された。科学者たちの計測および推定によれば、シン・ゴジラ=ギガ・アースの背丈はなんとおよそ50,000メートル、成層圏にまで達しているのだという。
ともかく、シン・ゴジラ=ギガ・アースによる一方的な蹂躙を許しておけるはずはない。地球防衛軍はシン・ゴジラ=ギガ・アースに対し、必死の抵抗を試みた。
悠々と進撃を続けるシン・ゴジラ=ギガ・アース、その進行方向に地球防衛軍は戦車隊を整列させ、二十四連装砲台を並べ、メーサー戦車の大軍勢で待ち構えた。並みのゴジラなら焼き殺せるほどの大火力でシン・ゴジラ=ギガ・アースの進撃を阻止、ひいては撃滅をも目論んだ。
――ドオンッ! ドオンッ! ビビビーッ!!
……けれど結果は無為に終わった。地球防衛軍の総攻撃も、シン・ゴジラ=ギガ・アースにはまったく効く気配もなく、ただ踏み潰されるだけであった。
身長が数十キロメートルにも及ぶ史上最大の超巨大怪獣、シン・ゴジラ=ギガ・アース。今度現われた新たなゴジラは、あまりに巨大すぎたのである。
巻き起こった大混乱の中で生き残り、その非力さを思い知らされた人々は、やがてシン・ゴジラ=ギガ・アースの行動の理由を知りたくなった。
当然だ、それさえわかれば、あるいはシン・ゴジラ=ギガ・アースの次なる襲来を予測、ひいては身を守ることが出来るかもしれない。一部の人々は、怪獣が怒っているのか、何かを探しているのか、さまざまな理論を立てた。ある怪獣博士は、怪獣が自身の故郷を求めて彷徨っているのかもしれないと考えた。別の宗教学者は、神話のような予言に基づいて、この出来事が何か特別な意味を持つのではないかと信じた。
しかし、どの理論も証拠が不足していた。なにしろシン・ゴジラ=ギガ・アースは巨大すぎて、地上からでは顔を見ることすら出来ない。無人偵察機を打ち上げても、放射熱線の自動狙撃で撃ち落とされてしまうばかりだ。かくして人々は何も出来ないまま、不安と恐怖に満ちたまなざしで、空にそびえる超巨大怪獣を見上げていた。
そんな絶望の状況の最中、一人の英雄が立ち上がった。
「おれが行こう!」
そう言った彼の名前は〈サカキ=ハルオ〉、地球防衛軍の隊員であり階級は大尉。かつて史上最大のゴジラと呼ばれたゴジラ=アースをも葬り去り、恐るべき『怪獣黙示録』の時代に終止符を打った英雄である。
サカキ大尉は、悲嘆にくれる人々へ向かって言った。
「ゴジラから一方的に踏み潰されるだけだなんて悔しいだろう! ここでひとつ人類の叡智でもって、奴のご尊顔を拝んでやろうじゃないか!」
そう言ってサカキ大尉は、地球防衛軍が開発した新型ロケットへ乗ることになった。成層圏さえも突破できるこの新型ロケットに搭載したミサイルで、シン・ゴジラ=ギガ・アースの顔面に一発お見舞いしてやろうというのである。
命懸けのサカキ大尉の勇敢さを仲間たちは讃え、激励し、声援を送った。
「行ってらっしゃい、サカキ大尉!」
「どうかご武運を、サカキ大尉!」
「頑張って、ハルオ先輩!」
ああ、行ってくる!
かくして勇敢なサカキ大尉は新型ロケットへと乗り込み、決死の特攻へと臨んだ。
「カウント……3……2……1……発進!!」
そして打ち出されたロケット。サカキ大尉を乗せたロケットが強烈な加速Gに耐え、雲を抜けると、シン・ゴジラ=ギガ・アースの臍が見えてきた。
「まだだ、まだ行ける……っ!」
そうやって歯を食い縛りながら、サカキ大尉はなおも上空を目指した。目指す先は地上50,000メートル。なにしろシン・ゴジラ=ギガ・アースの鼻づらへミサイルをお見舞いしてやろうというのだ、こんなところで満足していてはまだまだである。
やがてサカキ大尉を乗せたロケットは、とうとう成層圏と中間層の境目である高度50,000メートルにまで達した。
そこで見たシン・ゴジラ=ギガ・アースの正体に、サカキ大尉は驚愕した。
「な……!?」
……シン・ゴジラ=ギガ・アースは、ロケットで急接近しつつあるサカキ大尉に気づきもしないまま、その巨大な顔を俯けて手元の装置へ夢中になっている。
手にしていたのは、これまた結滞な大きさの液晶モニター。縦の幅は4,000メートル、人類のスケールで言えば常識外れの大きさであるが、シン・ゴジラ=ギガ・アースからすれば手元にすっぽり収まるサイズである。
……いいや違う、とサカキ大尉は気が付いた。
見たまえ、シン・ゴジラ=ギガ・アースの手の動きを。これまた馬鹿げた大きさの掌と指を、シン・ゴジラ=ギガ・アースは液晶モニターの画面上で懸命に滑らせているではないか。
サカキ大尉は気が付いた。これはただの液晶モニターではない、『スマートフォン』だと。
「なんてことだ……」
サカキ大尉は絶句した。
雲の上からの視点から見れば、シン・ゴジラ=ギガ・アースが歩行中にスマートフォンでのゲームアプリに興じていることが明らかであった。歩きながらのスマホゲーム、つまり……
「『ながらスマホ』だと……!?」
地球上の全人類を恐怖と絶望のどん底に陥れた史上最強最悪の超巨大ゴジラ、シン・ゴジラ=ギガ・アース。彼の行動の背後には深い意味も計画もなく、地上から攻撃されていることにすら気づかないまま、ひたすら
やめよう、ながらスマホ!!!!
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