ユーリア・ワイルドスミスの開発日誌 作:かませ犬
「ワイルドスミス! そんなところで何をしているのですか!」
ある暖かな日差しの昼下がり。
廊下で、ある
ウィーズリーの双子なら、マクゴナガルの濃いグリーンのローブが曲がり角から見えた瞬間に逃げ出しただろう。
しかし、ユーリアはそうしなかった。
彼女の心には一片のやましさもなく、自分が咎められるようなことをしているとは微塵も考えていなかったからだ。
「こんにちは、マクゴナガル先生!」
だから、すっきりはっきり、明るい声で挨拶をした。
「こんにちは、ワイルドスミス。ハキハキとした良い挨拶で結構。では、その
マクゴナガルがぴしゃりと言う。
昼寝をしていた絵画の住人たちが、マクゴナガルの声でむくむくと起き始めた。そして興味がなさそうに片目を閉じて、耳だけはしっかりとユーリアとマクゴナガルの方に向けている。
「先生、この
ユーリアはにわかに高揚した。
実験のことを聞いてくれる人なんて、この学校にはほとんどいないのだ!
最初は興味をもってくれていたルームメイトも、今ではすっかり
ユーリアが実験をしていても、みんな遠巻きに見るだけ。
マクゴナガルほど近くに来て、質問までしてくれた人は初めてだ!
ユーリアはマクゴナガルが興味をもっているのだとすっかり思い込み、興奮して話を続けた。
「これは新しく改良を加えた
「実け──実験ですか。どうして、こんなところで? ここが公共の場所だということはお分かりですね?」
マクゴナガルは言葉に詰まりながらもそう言った。
うわあ、やっぱりこの人は研究者なんだ。
実験には環境が一番大事だって、分かってるもんなんだな。ユーリアは感心しながら答えた。
「先生、この廊下が他と違うところは何だと思いますか?」
「この廊下が……? 至って普通ですが」
ユーリアは首を横にふった。
「いいえ、先生。石畳とカーペットが多いホグワーツの廊下の中で、ここは数少ない、大理石の床材なんです。おまけにその中でも凹凸が少なくて、
「もう結構です」
マクゴナガルはぴしゃりと言った。
「いいですか、ワイルドスミス。廊下で実験をしては──」
「あ、すみません、先生。もう時間みたい」
ユーリアの足元の
「ワイルドスミス、待ちなさい! まだ話は──」
マクゴナガルが言い終わらないうちに、白い炎はユーリアを飲み込み、ユーリアは粉と炎とともに跡形もなく消え去ってしまった。
冷たい大理石の床の上にはマクゴナガルだけが取り残される。
「まったく!
マクゴナガルはぷりぷりしながらも元来た道に戻っていった。
どこに行ったか分からないユーリアを探すよりは、夕食まで待って、のこのこ大広間にやってきたところで罰則を宣告する方が効率が良いと思ったのだろう。
そしてマクゴナガルの予想通り、ユーリアは満足そうに大広間にやってきて、一週間の暖炉掃除を言い渡されることになった。