頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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レッドサンズのメンバーでありS14シルビアを相棒としている走り長、中村賢太からレインバトルを申し込まれた友奈

ナイトキッズとの交流戦前日というかなり攻めた日程でのバトル、そしてそのゴタゴタで受けようか迷いかけた彼女であったが本能的に受けるという回答を返すのであった…。



果たしてレッドサンズの策略はいかに…?



第十話 涼介の策略

 

 

 

 

 

その日の夜

高橋邸にて

 

 

   

 

 

「……(カタカタ)」

 

 

 

賢太が友奈にレインバトルを吹っかけたその日の夜、高橋宅の二階一室では涼介が真剣な表情で何やらパソコンの画面とにらめっこしながらキーボードの音を立てて作業をしている。ふと画面に視線を移してみるとそこには彼が作り上げている公道最速理論の論文のページが表示されていた。

…が今彼が見ているのはそれではないようで、論文ページをバックに啓介のFDに載せられているドラレコ映像を事細かにチェックしているらしい。

 

 

 

ー…まさかあの年でここまでの実力を持っているとは…驚いたぜ…。だがこれはこれで改めてあの子に興味を持てそうだな(フッ)ー

 

 

 

コンコン

「アニキ、入るぜ」

 

 

「啓介か。いいぞ、入ってこい」

 

 

 

ドラレコの映像にぼんやりとだが映し出されている友奈のハチロクの後ろ姿を見ていた涼介は、まさか彼女がここまでの技術を有していたことに驚きを見せていた。…がそれと同時に改めて赤城の歌姫に対して興味が湧いているようで、密かに笑みも浮かべている。

 

…とそんな中扉をノックする音とともに向こう側から啓介の声が聞こえてきたため、そちらに椅子を回しながら体の向きを変えながら入っきていいぞと返す。涼介の返答が聞こえたため、ノブを回しながら啓介はゆっくりと部屋へと入っていき定位置であるベッドに腰掛けて座っていく。

 

 

 

「聞いたかアニキ、賢太の奴赤城の歌姫にバトル吹っ掛けてに言ったらしいぜ。しかも秋名のハチロクとナイトキッズの中里って奴の交流戦前日に申し込んだと来た…、全くアイツは何考えてんだか…(呆れ顔)」 

 

 

「まあ賢太らしいと言ったところだろう、アイツもそれなりにライバル意識が芽生えてるらしいからな。…それにそれを許可したのはオレだ」

 

 

「へ?アニキが許可したのか?」

 

 

 

どうやら賢太が赤城の歌姫にバトルを吹っ掛けたのは啓介にまでも伝わっているようで、なかなかリスキーなタイミングでの挑戦に頭をポリポリ掻きながら少し呆れたような表情を見せていた。涼介の部屋に来たのもそれを伝えるためだったようだがすでに情報は言っていたようで特に驚いたような雰囲気を見せず、なんなら自分が許可したと伝えて逆に啓介を驚かせる。 

 

 

 

「そうだ、彼女の実力を更に知るためにもいい機会だしな。レインバトルが得意な賢太相手にどこまでやれるか見ものだぜ」

 

 

「…よく言うぜアニキ、端っから賢太が勝つなんて思ってもない癖によ。大方興味があるのは歌姫の方だろ」

 

 

涼介「ほお、まだバトルをしたわけじゃないのに分かりきった言い方だな。そんなんじゃお前を信頼している賢太に申し訳ないぞ?」

 

 

「…そんなんしなくても分かりきってるぜ、2度バトルしたことのある俺だから分かるのさ。賢太にはわりぃがアイツごときが太刀打ち出来る相手なんかじゃねぇ」

 

 

 

どうやらわざわざかなり攻めた日程でのバトルを許可したのも、やはり赤城の歌姫の実力を探るためのようで賢太が得意のレインバトルでどこまでやれるのかかなり興味を持っていそうな言い方をしていた。…がそれはあくまでも表向きの表現であり啓介は嘘つけと呟きながら本当の目的は賢太じゃないだろ?…と口に出す。

それにいくらレインバトルが得意で地元ならかなりいい走りが出来る賢太でも友奈には勝てないことをハッキリと名言していく。まだバトルをしたわけでもないし、赤城の歌姫が雨のバトルに不慣れならまだ勝機があるかもしれないのだが…。

 

だが2度彼女とバトルしたことのある啓介だからこそ分かるものがあるのかもしれない。自分が太刀打ち出来なかったのに天候だけで賢太が勝てるとは思えない…と。

 

 

 

「…いや、たぶん群馬エリアのほとんどの走り屋でも張り合えないだろうよ。アイツと張り合えるったらアニキと…あとは藤原ぐらいさ…」ボソッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして…

赤城でのバトル当日

友奈宅

 

 

ザァ―――

「うひゃー…こりゃ結構な土砂降りだねぇ……」

 

 

 

いよいよ賢太とのレインバトル当日、外の天候というものは予想以上にかなり乱れているようでかなりの土砂降りに見舞われていた。この日偶然にも友奈宅へ遊びに来ていた羽南は、差し出されたお茶を啜りながら驚きの表情を浮かべながら降りしきる雨を眺めている。

 

 

 

「昨日の猛暑からじゃ考えられないくらいだよ〜…、しかも梅雨時期以上の雨だし……」

 

 

「むしろ昨日暑かった分降ってたりして…、というか友奈って雨の峠走ったことあるの?意気揚々にバトル受けてたけど…」

 

 

「う〜ん…、走れないことはないんだけど…。得意かと言われればそうじゃないんだよね…(汗)基本雨の走りは好まないから…」

 

 

「えっそれちょっとやばいんじゃないの…?相手さん結構自信有りげだったからレインバトル得意そうだったし…」

 

 

 

昨日の猛暑日とは打って変わっての急な天候に友奈も同様に驚いているらしく親友と同じようにお茶を啜りながら外の天候を見つめていた。とそんな雨の話をしているうちにふと羽南が彼女に対して雨の中峠を走ったことはあるのか尋ねていく。やはり今夜行われるレインバトルでどこまで走れるのか気になるところがあるようだが、友奈から帰ってきた返答はあまりいいものではなかった。

 

もちろん走り屋である以上別に雨の中走れない…というわけではなく彼女も何度か走った経験はある。…しかしそれも数える程度であるため、拓海のような感覚を通して路面の状態が伝わってくるほどの実力があるかと言われればかなり怪しいだろう。

 

 

 

「とは言えど今それを気にしてても仕方ないし、受けちゃった以上どうにかやり切るしかない(お茶を飲みながら)」

 

 

「うぅん…、そりゃそうだけど…。本当に大丈夫なの…?雨の走りって現役のプロレーサーだって簡単にスピンするって聞くけど…」

 

 

「…心配してくれてありがとうっ♪大丈夫、私だって簡単に負けるつもりはないし無理をするつもりもない…!絶対に勝ってみせるから…!」

 

 

 

だが受けてしまった以上、走り慣れてない路面状況でのバトルでもやるしかない。それが走り屋としての定めであり車で挑まれたらどのような相手であろうと受けてたつということだ。とは言えどやはり不安な雰囲気は拭いきれないようで羽南は本当に大丈夫なのかという口調で尋ねていく。

 

…しかしそんな親友の心配そうな気持ちを知って知らずか、友奈はいつもの明るい表情を見せながら大丈夫という自信満々な笑みを見せていた。もちろん彼女だって考えもなしに走るというわけではない、果たしてレインバトルが得意な賢太相手にどんな走りを見せるか…?

 

 

 

 

 

 

それから少しして

夕方

渋川GSスタンド

 

 

 

「いよいよ今夜か…、にしても結構な土砂降りだなこりゃ…。…本番は視界も路面状況も最悪なバトルになりそうだ…」

 

 

「…というか友奈ちゃん大丈夫なのかな…?聞いた感じ雨の走りは数える程度しか経験してないって言ってたけど……」

 

 

 

夕方になっても勢いを衰えることを知らない降りしきる雨粒を眺めながら池谷と健二は今夜のバトルについて話し合っていた。ちなみに拓海は今日は休みで、樹に関してはナイトキッズの件でかなり凹んでいるせいで今日は休みを急遽取ってここにはいないらしい。

 

とは言えどここまで激しく降っている状態では、池谷の言う通り路面状況や視界などは最悪と言っても過言ではないのは確か。しかも雨の走りに友奈はあまり慣れていないらしく、素人が見ても明らかに苦しい戦いになるのは間違いないだろう。相手が相手のため本当に大丈夫なのだろうかという表情を健二は浮かべながら心配そうな顔をしていた。

 

 

 

「…ハッキリ言って雨の峠っていうのは危険信号だらけの状況でのバトル。オマケにダウンヒルでのレインバトルはいつすっ飛んでもおかしくない」

 

 

「路面が滑りやすくなってるからFRじゃトラクションが全くと言ってもいいほどかからないし…、おまけに路面のミューも低くなるからグリップが無くなって曲がれないっていったらなんの…」

 

 

「それが相手も同じ状況なら良かったんだが…よりによってレインバトルが得意な奴と来た…。しかも相手も同じ地元となれば話は変わって来るだろうな」

 

 

 

まあ健二が心配するのも無理はない、それだけ雨の峠というのは難易度が跳ね上がる。サーキットなどで走っているプロレーサーでさえも、雨が降れば簡単にスピンしてしまうほどてあり、それが明かりの一切ない峠となればより厳しさが増してしまう。路面の状況やミュー、更には視界のどれを取っても最悪な状態に近い。

 

しかも今回はダウンヒルでのレインバトル、雨のせいでただでさえ止まらないし曲がらないのに慣れない走り屋が限界ギリギリの全開走りをすればいつすっ飛んでもおかしくない。いやそれだけならまだいい方で最悪の場合、コントロールを失ってガードレールを突き破って谷底に真っ逆さまだろう。

 

 

更に友奈の相手である賢太はレッドサンズ内でも上位を争うほど雨の走りが得意であり、それは啓介や涼介も認めるほどの実力。プラス地元となればいくら走り慣れた友奈でさえも苦戦してしまうのは誰にでも予想出来る。

 

 

 

「下手すれば前の高橋啓介よりも厳しくなるんじゃないか…?結構ピンチかもしれないな…」

 

 

「…だが俺たちがここでどんなに言おうと何かが変わるわけじゃない…、友奈ちゃんだって無造作にバトルを受けているわけじゃないんだ。…きっとどうにかしてくれるさ」

 

 

「…だといいんだがなぁ…」

 

 

「……」

 

 

 

だがいくらここで気にしててもバトル時に何か変わる訳でも有利になるという訳でもない。それに友奈だって完全に考えもなしでバトルを受けるような性格ではないことは池谷達が良く知っている。きっと策があるに違いない、そう思うことにした池谷と健二であったがその表情はやはり落ち着きが見えなかった。

 

…とそんな不安そうな雰囲気を見せている二人を店内からタバコを吸いながらも祐一が眺めているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよあと少しだな…」

 

 

「だな…、とは言えどこんな土砂降りで本当にバトルなんてすんのか?いくらレインバトルだとしてもこの量は中止になりかねないんじゃ…」

 

 

「いや、お互い同じ地元だしFR同士のバトルだから条件は一緒のようなもんだ。それにレッドサンズが雨ごときで逃げるかよ」

 

 

「賢太は雨の走りは結構自信あったからなぁ…、後はあの赤城の歌姫がどこまで走れるかによるが…」

 

 

 

いよいよバトル開始の時刻が迫ってきた中、朝よりかは落ち着いてきたものの未だに降り続いている赤城峠には今回のレインバトルを一目見ようと土砂降りの中多くのギャラリー達が詰めかけいる。やはり数日前にあった一戦でかなり注目が集まったようで、啓介戦に劣らない人の姿がありそれぞれ傘や雨ガッパに見を包みながら今か今かと待ち望んでいた。それはこちらも例外ではなく…

 

 

 

「とりあえずは昼よりかは雨はマシになったけど……それでもこの量……(空を傘越しに見上げながら)」

 

 

「まあ予想通りというかなんというか…、視界は最悪って言ってもいいくらいなんにも見ねぇな…」

 

 

 

赤城峠の中間セクション、そのとあるコーナー区間で他のギャラリーと同様に陣取っている祐也と羽南は雨のせいで最悪と言ってもいいほどの路面や視界状況に思わず驚きの表情を浮かべながら眉を細めていた。ただでさえ夜で視界が良くないのにこれが更に悪くなったらと言ったらもう…、

 

 

 

「…でも本当に大丈夫なのかな…、本人は問題ないって言ってたけど…」

 

 

「まあ大丈夫かと言われならそうではないだろうよ…、なんせ雨の走りに慣れていないんだし…。けど俺たちがとやかく言えるかって言われたらそうじゃない」

 

 

「だよねぇ…、不安だけど友奈ちゃんに任せるしかないか…走るのあの子な訳d…『ウォンウォン!!』っておっ」

 

 

 

本人は大丈夫と名言していたが、それでも雨に慣れていないという事実には変わりはなくいくら走り慣れたは峠だとしても端から見れば不安になるのも無理はない。少しソワソワした感じで心配そうに呟いていた羽南、そんな彼女に対して同じような気持ちになっていた祐也が宥めるように自分達ではどうしようも出来ないという言葉を投げかけていく。

 

彼に宥められて少し不服そうだが確かにそうかも知れないという顔をしながら見守っていくしかないか…と言いかけた瞬間に麓の方から甲高いスキール音が響き渡り、それに気づいたのか二人はそちらに視線を向ける。

 

 

 

「来た来た…っ!ついに主役がやってきたぞ!!」

 

 

「やべぇ…!あのハチロク見てたらゾクゾクが止まんねぇ…!?相変わらず迫力があるぜ…!」

 

 

「まだ本気で走ってなくて流してるだけなのに…飲み込まれてしまいそうな雰囲気だ…!」

 

 

「前回はいい写真が取れなかったんだ…!今日こそはいい感じの写真を撮ってやる…!」

 

 

 

二人に続いて他の人たちも相次いで視線を向けた直後、コーナーの奥からヘッドライトの光が照らされると同時に雨の暗闇から勢いよく見慣れたハチロクが姿をスキール音を響かせながら姿を現す。陣取っていたギャラリー達が歓声を上げていく中、雨の中でもペースを落とさなずに歌姫のハチロクは一同の目の前を通っていく。

 

 

 

「本日の主役のお出まし…ってとろこか」

 

 

「頼んだよ友奈…っ!前みたいにデカいの一発ぶちかましちゃって…!!」

 

 

   

 

 

 

 

 

「そうかっ、あぁ分かった(ピッ)麓から連絡だ、たった今例のハチロクが上がっていったらしい」

 

 

「いよいよですねっ…!啓介さんには悪いですけど今回でキッチリと勝って敵討ちしてやりますよっ!」

 

 

 

麓のゴール地点に陣取っていたレッドサンズメンバーから例のハチロクが上がってきたという報告を無線で受けた忠浩は切りながら涼介達の方へ視線を向けながらそう伝えていく。それを聞くと相変わらず威勢はいい賢太が気合い充分と言わんばかりの口調で暑く語っているが…

 

 

 

ー…ってそんなこと言ってるが事はそんなに甘くはないぜ賢太……。…確かに雨の走りに慣れてなければ勝機はある…、けどお前はアイツの凄さをまだ知らない…ー

 

 

 

そんな賢太の意気込みとは裏腹に啓介は雨に打たれながら厳しそうな表情を浮かべながらその様子を眺めていた。確かに友奈が雨の走りに慣れてなければ勝機はあるかもしれない、しかも彼はレッドサンズ内では上位を争うほどレインバトルが得意なのは啓介も充分知っている。

だが事はそんな単純なものではなく、彼女の隠された実力の恐ろしさは啓介自身が嫌というほど分かっていた。…いや自分でもまだ見たことのない領域が隠されているかも知れない。

 

 

 

ー果たして赤城じゃレインバトルで上位に食い込むほどの実力を持っている賢太相手にどこまで走れるのか…楽しみだぜー

 

 

 

…と眉を細めながら何やら考えている啓介の横顔を見ていた涼介であったが、彼の目はレッドサンズとしではなく一人の走り屋として鋭い目つきを浮かべておりかなり友奈に対して興味を見せているようだ。…がそんな雰囲気を遮るかのようなスキール音が周囲に響き渡っていく。

 

 

 

ゴァァァ!!!

ウォンウォン!!

 

 

「来た!赤城の歌姫が来たぞ!!」

 

 

「こっちに誘導しろっ!モタモタするんじゃないぞ!」

 

 

ー…どうやらお出ましのようだな…、本日の主役が…ー

 

 

 

スキール音に釣られて聞こえてくる特徴的な4AGサウンドが耳に飛び込んでくるや否や、密かに笑みを見せながらそちらへと涼介は視線を向けていく。するとそこにはレッドサンズメンバーに誘導される形で雨に打たれながら駐車場にゆっくりと入り込んで来た一台のハチロクの姿が…

 

 

 

 

 

 

ーいよいよだぜ…っ!赤城の歌姫だろうと容赦はしない…!レッドサンズ…いやこの俺の実力を見せつけてやる…!!ー

 

 

 

 

 

…とそんな啓介の不安など知って知らずか、歌姫に対してライバル心むき出しの表情を浮かべていた賢太。そんな彼は雨に打たれながら入ってくるハチロクをしっかりと見つめていくのであった…。

 

 

 

 

 

 






第十一話 AE86(結城友奈)VS S14シルビア(中村賢太)
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