(大変おまたせしました)
賢太が圧倒的優位に思えるレインバトル
しかしその中でも友奈の特徴的な走りに追走していたFCの車内で見ていた啓介は驚きを露にしていくのであった。
赤城山
ゴシャァァァァ!!
土砂降り…というわけではないがそれでもかなりの雨が降っており当たり一帯が暗闇に包まれていた。辺りには地面に打ち付ける雨の音しか聞こえないが、それを打ち破るように甲高いエキゾースト音が山に反響して響き渡っていく。
ー乗れてる!!今日の俺は絶好調だ!!ー
雨が降りしきる暗闇のダウンヒルをヘッドライトで照らすようにオレンジの車、レッドサンズのスッテカーを左リア側に貼っているS14シルビアが疾走していた。そのステアリングを握る賢太はかなり絶好調のようでいつも以上のペースでコーナーを抜ける。
ーいくら赤城の歌姫でも雨には勝てないってことだ!このまま軽く捻って啓介さんの仇を取らせてもらうぜ!!ー
まさに圧勝ムードに包まれていると言っていい状態、軽く捻って仇討ちをしてやると言わんばかりの雰囲気になっていた賢太は更にアクセルを踏み込み立ち上がりで一気に加速。ノンターボとは言えど2リッターのエンジンは伊達ではなく雨にも負けないエンジンサウンドを咆哮しながらストレートを疾走していく。
ー涼介さんが出るまでも無い!アイツなんて雨を味方にした俺d…『チカッ!!』なっ…!?ー
このまま一気に蹴りを付けてやる、そんなことを思っていた賢太であったが彼のそんな考えを遮るようにバックミラーに光が差し込んだ。何事かと向けた賢太はその光景を見て思わず目を見開いてしまい、先程の雰囲気が一瞬にして崩れてしまう。
ーなっ…馬鹿な!アレだけアドバンテージを取ったのに…なんでお前がそこにいる!?ー
一体何が起こったのか理解が追いついていない賢太。そんな彼の視線の先、バックミラーに映り込むように一台の車が勢いよく追いすがってくる。…そう、先程自分が振り切ったと思っていたはずのハチロクが何故かそこにいるのだ。
ー大体ウエット路面のコツは掴めてきた。後はこの子の思い通りに走らせて勝つだけ…っ!ーゴクン!!
混乱を隠せない賢太とは対照的に雨の走りでの感覚を掴めた友奈は落ち着いた表情を見せており、慣れた手付きでステアリングを操っていた。コツを知れば後やることはさほど変わらず、ここからが勝負と言わんばかりの意気込みを見せながら勢いよくギアをシフトアップさせる。
ゴァァァァァ!!
そんな彼女の期待に答えると言わんばかりに賢太のS14にも負けないほどの甲高いエキゾースト音を響かせながら、降りしきる雨をかき分けるようにハチロクは勢いよく加速していく。…まるで、自ら意志を持つかのように…
ーくっ!けど追いつかれたからってまだ勝負は終わってない…!!このまま逃げ切ればオレの勝ちだ!レインバトルは誰よりも得意なんだよ…!ー
ゴァァァァ!!!
最初こそ驚きを隠せなかった賢太であったが、まだまだ勝負は始まったばかりと自分に言い聞かせる。いくら追いつかれて突っつかれても抜かせなければいい話であり、シフトアップしつつアクセルを踏み込む。
ハチロクにも負けないようなエンジン音を奏でながらもS14シルビアはグイグイと自慢の馬力に物を言う言わせるように加速していき、後ろを振り切らんとする勢いで赤城のダウンヒルを疾走する。
ゴクン!!
ウォン!!ウォン!!
ーちっ…!!ー
ーっと…!!ー
そうしているうちに2台は急な右コーナーにもつれ合いながら突っ込み、手前でほぼ同時にブレーキランプが点灯。ヒール・アンド・トゥで2速にギアをぶちこみながらステアリングを切り込む。
ドシャァァァ!!
ギャァァァ!!
少しリアをスライドさせながらも安全マージンを取りつつ迫力のある突っ込みを見せる賢太、アクセルを踏んでいる足を微調整しつつ極力ロスのしないスライドに抑えてコーナーをかける。
それに対して友奈は全開の四輪ドリフトで突っ込んでいくが、かなり変則的なライン取りをしており雨という難しさを感じさせないような走りを見せつつハイスピードで流れていた。
「なっなんだあの走り!?俺の知ってるライン取りじゃねぇ!」
「ぶっ飛んでるぜあの歌姫!!雨だろうがなんだろうがお構いなしの走りだ!!地元でもそんなやついねぇぞ!」
「やっぱすげーよ赤城の歌姫は!流石は高橋啓介を倒しただけはあるぜ!!こりゃどっちが勝つか解んねぇぞ!」
かなり特徴的な走りにコーナーに陣取っていたギャラリー達は次々と歓声を上げながら口々に感想を語っていた。その間にもコーナーで立ち上がったハチロクは速度を乗せたままシルビアの背後にピッタリと張り付く。
自分の得意なレインバトルで高橋兄弟以外に追い回されたことが無かった賢太は、先程よりもかなり焦りの表情が見えてきており必死でステアリングを操っていた。
ー…っ!張り付かれた…!?俺は夢でも見てるのかよ…!得意なレインバトルで…振り切れない…!!ー
ゴシャァァァ!!
ー確かにこの人は速い…、立ち上がりのロスもしっかり抑えてるしライン取りも悪くないけど…。だからって負ける相手じゃない…!ーゴクン!!
「…啓介、歌姫がそろそろ仕掛けるぞ。目ん玉ひん剥いてしっかり見ておけ」
「……(ゴクッ)」
そんなもつれ合いながら雨のダウンヒルを疾走している2台を見物するように、少し間を開ける形でFCが追走していた。ステアリングを操りながらハチロクの動きを見ていた涼介は、なにか感じ取ったのか助手席に座っていた啓介にしっかり見ておけと念押ししていく。
一体どんな物を見せてくれるのか、自分が二度負けた相手である彼女の走りに興味を締めしていた啓介は喉をゴクリと鳴らしていくのであった…。
ゴギャァァァァ!!!
「おっ?来た来た…!」
「この感じだと縺れてるっぽいな…まあ予想はなんとなくしてたけど…(汗)」
赤城峠の中間セクション、そのとある右コーナーに陣取っていた羽南と裕也は聞こえてくる甲高いエキゾースト音で近づいてきたことを察知して少し前のめりに視線を向ける。どうやら音的にもつれ合っているらしく、2台のスキール音が重なるように鳴り響いていた。
「だねぇ、まあ友奈ならやってくれるって私信じてたけどねっ…!」ドヤ
「…さっきまで心配してソワソワしてた奴が言えたセリフじゃねぇな…」ボソッ
「あー?ちょっと何よその言い方ー、それ言うなら裕也d…『来た!2台揃って突っ込んでくるぞ!』」
さっきまで友人をソワソワして心配していた人とは思えないような羽南のドヤ顔発言に、つい裕也は苦笑いをしつつしれっと突っ込みを入れる。そう言われて少し不満に思ったのか、少し不服そうな表情を浮かべていた羽南は突っ込うとしたが…。
…それを遮るようにギャラリーをしていたレッドサンズメンバーの一人である男が声を上げた直後、奥の方から先程よりも大きなエキゾースト音が響くとともにヘッドライトの光が差し込んでくる。
ゴァァァァァ!!!
「マジかよ!賢太の奴煽られっぱなしじゃないか…!!どうなってんだ!?」
「知るかよ!それは俺が聞きたいぐらいだぜ!!というか赤城の歌姫めちゃくちゃ速くないか!?」
「流石は啓介さんを倒しただけはある…!!雨でもものともしない走りを見せてくれるぜ…!!」
「…なんだかんだ言いながら友奈の奴しれっと走れてるじゃねぇか、なんか心配して損した気分だぜ…(汗)」
「いいよー!そのまま行っちゃって友奈ーっ!!」
ゴァァァァァ!!
奥から飛び出してくるように姿を現した3台であったが、S14シルビアが後ろからハチロクにビタビタで煽られっぱなしの状態にレッドサンズのメンバー達は驚きを露にする。
…と同時に赤城の歌姫である友奈の実力も改めて思い知らされ口々に答えながらももつれあっている2台に釘付けになってしまう。それとは対照的になんだかんだ言いながら案外走れていることに思わず裕也は苦笑いを浮べ、隣ではスキール音にも負けない声援を羽南が投げかけていた。
そんな一同の目の前を互いに甲高いエキゾースト音を響かせながら雨をかき分けるようにほとんど速度を落さず、ハイスピードで2台は駆け抜けていき相変わらず縺れ合いながらコーナーへと突っ込んでいく。
ー…!!ークワッ!
コーナーに差し掛かると、ここだと言わんばかりのタイミングで賢太が素早くブレーキペダルをリリース。ヒール・アンド・トゥで3速から2速へギアを叩き込みながらアクセルを微調整しつつコーナークリアしようとする。
もちろん続いていた友奈も同様に素早くブレーキペダルをリリースして慣れた手付きでギアを2速へと叩き込む。テールランプが点灯したと思ったら、自由にラインを変更しつつハチロクは後輪を滑らせてハイスピードの四輪ドリフトでガードレールぎりぎりに車体を寄せつつ流れていく。
「…なんか友奈の走りって特徴的だよなー、上手いのは確かに上手いんだが…なんか車に自我持ってるような動きをしてるってか…」
「まっそれは確かにそうかもね〜。普通ならドライバーが行きたい方向に車向けるのに、友奈に関してはその逆みたいな感じだし〜」
「でも友奈にテクニック教えてたお母さんも元走り屋なんだろ?ってことはお母さんの代からあの走りなんかな」
「うーん…、友奈のお母さんは元走り屋ってことは聞いてるんだけどあんまり詳しくは聞いてないんだよねぇ…。走りからしてお母さんもそうなんだろうけど…」
コーナーを流れていくハチロクの後ろ姿を見ながら、ふと思ったことがあるようでポツリと裕也や羽南がそんな言葉を口にする。確かに彼らの言う通り友奈の走り方は他の走り屋とはまた違ったような感じがひしひしと伝わってきており、まるで車の意思に身を委ねているようにも感じた。
…と同時に先代の歌姫である春香の過去も気になったようでどんな人なのかと何気なく裕也は羽南に尋ねる。しかし昔走り屋をやっていたこと以外何も知らないのか、彼女もかなりあやふやな答えを返す。
ゴァァァァァ!!!
もちろんその間にもコーナーに突っ込んだ2台は出口でもほとんど速度を落とさずに走り抜けるが、突っ込みの速度は友奈のほうが上だったためか立ち上りで背後霊のようにぴったりと張り付く。
最初こそ抜かされるまいと意気込んでステアリングを握っていた賢太であったが、なかなか離れない上にコーナー勝負で負けているといった事実を突きつけられたせいで徐々にフラストレーションが溜りに溜まっていた。
ー…コーナーを抜けるたびに追いつかれる…!まさか俺の方が遅いってことか…!?クソッタレが!そんなの冗談じゃない…!!ここは俺達のホームコースだ!ーギャン!!
ー賢太の奴動きが怪しいな…立ち上がりで挙動が荒くなってやがる…振り切れないことで躍起になってるなアイツ…ー
フラストレーションが溜まっているというのは外からでも分かるもので、先程からS14シルビアの挙動が怪しくなっており立ち上がりもかなり不安定になっていた。その様子を助手席から見ていた啓介は賢太が振り切れないことで躍起になっているな…と内心ふと思う。
ーったくアイツもまだまだだな…躍起になったらそれこそ相手の思う壺だぞ。それを経験した俺だからこそ分かる…コイツの前でムキになったら確実に負けるってことを…ー
ーS14の動きがさっきから怪しい…たぶん向こうのドライバーフラストレーションが溜まりまくって躍起になってるのかも…ー
もちろんS14の挙動が怪しいことは啓介の予想通り友奈も気づいているようで、ステアリングを握りながら落ち着いた表情で観察していく。挙動が怪しいということは相手はフラストレーションが溜りまくって躍起になっていることを意味し、現に賢太は立ち上がりで余計なホイルスピンをさせていた。
ー…つまり仕掛けるには絶好のチャンス…!いつまでも後ろに居るわけにもいかないしさっさとぶち抜いて終わらせるっ!ー
43コーナー(左)
ゴァァァァァ
ギャァァァ!!
「おっ、来た来た。そろそろだな…!」
『(ピッ)こちら43コーナー、間もなく2台が来ます…!この感じだとかなり縺れてるっぽいです!』
静まり返って雨粒が地面に叩きつける音しか響き渡らない赤城山に響き渡るように甲高いエキゾースト音が鳴り響く。ここ43コーナーで雨を凌ぎつつ陣取っていたギャラリー達も気づいたらしい。
他のギャラリー達が視線を向けていく中、レッドサンズ所属で報告役のメンバーが無線機片手に頂上へとそろそろ来るという報告を伝える。その間にもどんどん音は近づいていき……
ギャァァァ!!
ギャン!!
「うおっ!?3台連なってくるぞ!!賢太のS14が頭でその後ろが歌姫のハチロク…!一歩引いて高橋涼介のFCだ!!」
「というか賢太めっちゃ煽られてるじゃねぇか!?どうなってんだこれは…!!」
「分かんねぇよ!?アイツ雨の走りはけっこう自信あったしテクニックもかなり高いはず…!しかもあそこまで煽られてるなんて初めて見たぜ!」
「流石は赤城の歌姫…!啓介さんを倒しただけはあるぜ…!!雨じゃものともしてないぞ!」
奥からヘッドライトの光に遅れる形で姿を現したS14シルビアとハチロク、そしてそれに追随するFCが姿を現すとギャラリー達が声を上げる。と同時に、今までにないほど賢太が煽られてるという光景に衝撃を受けながら自分たちのいるコーナーに突っ込んでくる3台を見つめていた。
ウォン!!ウォン!!
ゴフッ!!
「…っ!!」ゴクン!!
手前でフルブレーキングからの4速から2速に叩き込みステアリングを切り込んでいく賢太、しかしなかなかハチロクを振り切れないことで焦りを見せているのかかなり奥めで踏んでいる。
本人はそんなつもりでは無かったが、彼の熱くなりやすい性格のせいで無意識に走りがヒートアップしてしまったらしい。そのせいで友奈の突っ込みも一瞬遅れてしまい少し両者の車間が開くが…
ギャァァァ!!!
ー…大方コーナーで振り切るために奥目でブレーキしたんだろうけど…!私から言わせればそれは甘いっ!勝負あったね…!ー
ー…なっ!?ー
「マジかよ!!賢太の奴滑りを抑えきれてないぞ!?外にじわじわと膨らんでいくっ…!!」
途中までいい感じでラインを謎っていたS14シルビアであったが、中間当たりからじわじわと外に膨らんでいく。どうやらコーナー勝負で優位に付くため、いつもより奥目でブレーキングをしたようだがそれが返って裏目に出てしまったらしい。
「アイツいつもより突っ込み過ぎたんだ!!そのせいで抑えきれる滑りの限度を超えて制御出来てない…!!しかもこの雨だ…!」
「つまり一度膨らんじまったらカバーが効かないってことか…!!ってかこれじゃイン側ががら空きだぞ…!!」
「っ…!!見ろっ!ハチロクが抜きに行くぞ!!」
ただでさえ滑りやすいウエット路面なのに一度でも滑ってしまったら、すぐに元のラインへ戻ることは不可能で後輪を滑らせてながらS14シルビアはじわじわと外へと膨らむ。
賢太もカバーしようと試みるが制御出来る範囲を超えてしまったため立て直しが出来ずにいた。…こうなればギャラリーの言う通りイン側が完全にがら空きになってしまうが、…もちろん友奈がこんなチャンスを見逃すはずもなく…。
ー貰った…!!ー
ゴフッ!!
ー何っ!?ここでだと…!!ー
ー…勝負あったな、あぁなれば賢太がブロックラインにつくのはもう無理だ…ー
待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべた友奈はすぐさま反射的にステアリングやアクセルを微調整しながら車の向きを変えて空いたイン側のスペースにハチロクを突っ込ませる。
もちろん賢太も気づいてはいたが既に懐に潜り込まれて、更にアウト側に膨らんでしまったせいでブロックすることも出来ない。啓介の考察通りイン側についたハチロクはグイグイとコーナーで前へと出ていく。
ギャァァァァ!!!
「マジかよ…!?こんな雨の中でのあのツッコミなのにほとんどブレてない!!コントロール力強すぎだろ…っ!?」
「雨の走りに自信があった賢太がこんなにも呆気なく仕掛けられるなんて…いくら焦っていたとは言えど…!」
ーくっくそっ!こっちはアウトに膨らんだせいでアクセルが踏めない…っ!ー
賢太より鋭いツッコミのはずなのにほとんどブレてない友奈の走りにギャラリー達は驚きの表情を次々と見せていた。その間にもアウトに膨らんだせいでアクセルが踏めないS14を横目にハチロクはどんどん前に出ていき少し頭を出した状態で次の右コーナーへ並んだ状態で突っ込む。
ドシャァァァ!!
ー…駄目だっ…!ラインが制約されてるのもあるけど…それ以上に向こうと同じ速度で突っ込めない…っ!?ー
アウトに膨らんでラインが制約されているのもあるが、それ以前に友奈と同じ速度で突っ込むことが出来ないことを受けて賢太の脳内は終始混乱しっぱなしになっていた。まあ無理もない、自分が走り慣れたはずの地元で明らかな年下相手にテクニックで負けるなんて誰が想像したことか。
ギャァァァ!!!
そうこうしているうちに先程の左で頭を抑えたハチロクは次の右でS14のラインをブロックしつつ前に出ていき、アウト側のガードレールギリギリを攻める形のハイスピードでコーナーを駆け抜けていく。
ゴシャァァァ!!
「ひぃー!?なんだよあのハチロク!!雨なのにアホみたいにガードレール寄せるじゃねぇか!!あんなんいつ当たってもおかしくないぜ!」
「賢太の奴完全に頭取らせたぜ!!これじゃここで抜き返すのも不可能だ!というか向こうの方がコーナーめちゃくちゃ速い!!」
ー…確かに貴方は速いかも…けどマージンを取ってるからってそれが速いとは言えない…、ハッキリ言えば攻めきれてないってこと…!ー
ギャラリー達が見届ける中、完全に頭を抑えたハチロクは高いコーナー速度を活かしてどんどん前へと出ていき出口でS14の頭を抑えながらほぼ速度を落とさずに立ち上がる。
確かに賢太はレッドサンズでも高いレベルでレインバトルは得意だ。…が原作のいつぞやで涼介や啓介がいったようにだからといって速い走りが出来るかと言われればそうでもない。それだけ雨の走りは思う通りにいかないことであり、友奈からすれば甘いと言わざる負えないだろう。
ー…つっ着いていけない…!?コーナーで確実に離されていく…!!ー
もちろん抜かされたからって簡単に引くような人間ではなくなんとか喰らいついていこうとした賢太であったが、前に出されたことでペースの差がさらに露見してしまいコーナーを抜けるごとにジワジワと離されていく。
ー…ふざけるな…っ!!俺は誰よりもこの赤城を走り込んで来た…!!なのに…、一体アイツと俺で何が違うっていうんだ!?ー
プシャァァァァ!!!
自分が得意としてきたレインバトル、そして何度も走り込んで来たはずの赤城でここまで差が出来てしまうというのは彼にとって最大の屈辱とも言っていいだろう。
同じ地元の走り屋でどうしてここまで差が生まれてしまうのか…、自問自答している賢太とは正反対にS14からは悲しげなエキゾースト音が雨の赤城へ微かに児玉していくのであった…。
赤城麓にて
「どうだった?お前に勝った奴の走りを特等席から見て」
「…どうもこうも言われてもな。腹立つぐらい文句ねぇよ…改めて見てみてハッキリと分かったぜ…俺が二度負けた意味が…」ポリポリ
ゴール地点近くの駐車場、他のメンバーやギャラリー達とは間を開ける感じで駐車していたFCで運転席側のドアに寄りかかっていた涼介は啓介に対して彼女の走りはどうだったかと尋ねる。
だがどうだったかと言われても文句なしのテクニックを見せつけられてしまえば言うことなどほとんどなく、頭をポリポリかきながら啓介はそう呟いていく。
「慣れない雨での走りもすぐさまコツを掴んで適応していくし…、完璧なまでのコントロール…。今の俺じゃ到底出来そうにない芸当だぜ…(汗)」
「それにまるで車に意思があるかのような自由気ままなライン取り、歌姫かのような耳に響くスキール音…。ふっますます彼女に興味が湧いてきたぜ…」
「……ということはアキニ、そろそろ行くのか?」
「あぁ…、レッドサンズを二度にまで負かしたんだ…。ここでリーダーである俺が動かないでどうする?…それに…だ」
確かに啓介の言う通り、あの年であそこまでのテクニックを有しているというのは誰にだって出来ることではない。完璧なまでのコントロールや早い適応力、そして車の思う通りに走らせるラインは誰だって認めてしまうだろう。
もちろんそれは涼介も例外ではなく…
「…今度こそ決着をつけようじゃないか…、どっちが赤城で速いかをな…?『赤城の歌姫』さん」
そう呟いていた涼介表情は赤城レッドサンズのリーダーとしてではなく、一人の走り屋『赤城の白い彗星』として野心的な雰囲気を浮かべながら密かに雨が降りしきる暗闇の空を見上げていくのであった…。
第十三話 ハチゴーでも!