頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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等々樹が峠デビューを果たしたその日の夜
走りに行くために秋名山へ訪れていた一同であったが運悪くそこにやってきていたナイトキッズのガラの悪いメンバーに絡まれていた。

同時刻、別の場所では同じく峠デビューを果たそうとしていたとある少女の姿も…


第十五話 本当の速さ

 

ー秋名山頂上ー

夜8時にて

 

 

 

「なんだァ…ガキじゃねぇーか、こいつら違うぞ」

 

「毅さんが勝てなかったほどのテクニシャンがこんなガキな訳ねぇもんな…」

 

「……(あの車のステッカー…もしかしてこの人たちナイトキッズ?)」

 

 

樹の峠デビューを記念し秋名峠へ走りに来たのはいいものの、丁度秋名のハチロクを求めてやってきたナイトキッズメンバーに四人は絡まれてしまっていた。

 

雰囲気が雰囲気のためか樹に関しては少し戯けているようだがそれ以外はなんだコイツらという感じで見ており、友奈に関しては何処のチームか探っている始末。

 

 

「そういやお前らいくつだァ?ちゃんと免許持ってるんだろーなー、無免だったら勘弁しねーぞ」

 

「もっ…持ってます…、いちおー18だから…(こえー…)」

 

ーなんだこいつら…えらそーに…ーイラッ

 

ーまあナイトキッズはガラが悪いでゆーめいだからな…ーボソッ

 

「ガキ虐めてどーすんだ、やめとけやめとけ(止めに入る)」

 

「ちえっ…」

 

 

やはり見た目の感じもあってか本当に免許を持っているのかと疑われてしまったようで、ナイトキッズと思しき三人衆の一人に軽くオラつかれるように尋ねられる。少し戯けながらも樹は答え、その隣ではあまりにも偉そうな態度に拓海が少しイラっと来てしまったのか軽く睨みつけてしまう。

 

だがナイトキッズの三人衆の一人はそれを見かねてか、オラついていたメンバーの間に入ってそれ以上虐めてどーするんだと静止した。そのお陰もあり一度は収まったのだが…、どうやらまだ納得出来ていない様子で…

 

 

「気にくわねーんだよ、ガキの癖して。いっぱしの走り屋気取りのハチロクなんか乗りやがって」

 

「なんですか…ハチロク乗ってて悪いとか言うんじゃないでしょうね?…」ムス

 

「…あ?当たり前だろ、ただ流行ってるからその車に乗ってるっていうのが俺からすりゃ気に入らねーんだ。ってかなんだその言い方」

 

「……(イラッ)」

 

「こらこら、いい加減その辺にしとけ。ここで揉めて毅さんに迷惑かけたらどうすんだよ。すまないな、ちょいコイツ口が悪いもんで…」

 

「…いえ」

 

 

やはり樹みたいな歳で走り屋気取りの雰囲気全開でハチロク(ハチゴー)に乗ってることがどうしても納得行かず、少し苔にするような喋り方で話していく。

 

…だがその喋り方がハチロクを馬鹿にされたように聞こえたのか、珍しく少し苛ついた友奈が強めの口調で突っかかって一触即発になりかける。だが先程と同様に痩せめの男が割って入ったことでなんとか揉め事は回避出来たようだ(二人はまだ納得してないようだが…。

 

 

「それよりも、お前ら地元だろ?実はオレら秋名で有名なハチロクを見たくて来たんだけど…。なんか知ってるだろ?」

 

「……(チラッ)」

 

「……(軽くウィンク)」

 

「あっいえ…その…あの…。知ってることには知ってますけど…」

 

「おぉ、やっぱ地元だから知ってるよなぁ。んで今日は来そうか?」

 

「あっ…っと…、実を言うと今日は来ないと思います…たぶん…」

 

 

どうやらこのナイトキッズの三人衆は秋名のハチロクを求めてわざわざ秋名山までやってきたようで、何か知っているのかと聞かれた。もちろん樹は知っている(というか真隣にいるし親友)ため少しオドオドしながらチラッと拓海の方へと向ける。

 

すると拓海も察したのか視線を向けながら、軽くウィンクしつつジェスチャーで自分のことは伏せてくれとお願いした。流石に樹でもそのジェスチャーは解ったようで、ナイトキッズのメンバーに知っているが今日はこないかもしれないと答えていく。

 

 

「ちえっ…、くそつまんねーの…」

 

「せっかく見に来たっていうのによ…、いねーならさっさと帰るぞ…!」

 

ーやれやれ…ようやく帰るか…、相変わらずだなナイトキッズも…ー

 

「けどハチロクに乗ってるそこのオマエ、一つ言っておくけどよー。走り屋気取りなのは構わねーがあんまりダセーのは勘弁してくれ…」 

 

ーあーまた始まった…しゃーねだろ樹の乗ってるそれハチロクじゃなくてハチゴーなんだから…ー

 

 

また秋名のハチロクがこない(厳密には本人は目の前にいるが)と解ったようで、少し不満そうな表情を見せながら三人衆はぞろぞろと切り上げ始める。

 

ようやく帰ってくれるか…そう思って安堵した祐也であったが、樹のハチロク(ハチゴー)の見た目が気に食わないのかさっきの男が再びイチャモンつけ始めた(どうやらハチゴーだと解っていない様子)。

 

 

「見てみろよこのレビン、ダセーノーマルのホイール。見てる方が恥ずかしいぜ」(おまけに車高高いし)

 

「……」

 

「ゲキダサだよ、しかもハチロクでこんななさけねー音出してんじゃねーよ…!!ってかだいたいハチロクのこと解ってんのかおまえ?」

 

「……(ムカァ)」

 

ーあー苛つく…、もし殴っていいならどストレートで吹き飛ばしたい気分…ーイライラ

 

「いや…あの…、このレビンはハチゴーだから…その…。正直いってマフラー変えてもいい音出ないしー…(変えたいとは思っているんですけど…)」

 

ーバカだなイツキ…、そんなこと黙ってりゃいいのに…。またバカにされるぞ…(もーっ)ー

 

ーあー…これは…ー

 

「ハチゴーだァ!?」

 

 

しかも一言二言ではなく、かなりボロッカスにいいたい放題樹のハチゴーを馬鹿にしまくるため拓海と友奈の苛々はどんどん溜まっていっていた。まあハチゴーだと気づいてない人からすりゃこんなハチロクは文句も言いたくなるのかもしれない…。

 

だが樹も黙っていればそれ以上言われることもなかっただろうに、余計な一言でこの車はハチロクではなくハチゴーだと口を滑らせしまう。拓海も祐也も察して言わなければいいのにと思ったのだが、時すでに遅しというもので……

 

 

ぶわっはっはっはっはっ!!

「どーりで見た目がハチロクの割にはあれだと思ったぜ!!ハチゴーならそのダサさも納得だ!!」ひーっ

 

「マフラー変えたくってもハチゴーのマフラーなんて探しても売ってねーんだよォどこにも!!」ギャハハ

 

「涙出てきたぜー!この時代にハチゴー乗ってる奴が世の中にいるとは!?」くるしぃ!

 

「……チッ…」

 

ーあっ…アイツの堪忍袋が切れた…\(^o^)/ー

 

 

ハチゴーだと解った瞬間、さっきのピリピリした雰囲気が嘘のように三人衆は笑いを抑えきれず盛大に吹き出してしまった。…まあ骨董品みたいな車に乗ってるのがよほど珍しかったのと馬鹿にしているのもあるのだろうが、そこまでするかというほどに樹をコケにしていく。

 

…だが親友をここまでコケにされてそのまま終わるはずもなくついに堪忍袋が切れた友奈が思わず舌打ちをする(もちろん相手には聞こえないように)。それを横で聞いていた祐也も彼女が珍しくキレたことを内心で察してしまい…

  

 

「ガキにはお似合いだぜハチゴーは…(ひーっ)、まあせいぜい観光バスに煽られねーように頑張ってくれや」

 

「んじゃさっさと帰るかー…」

 

「だなハチロクには会えなかったが久びさに笑わせて貰ったぜー」ボムッ

 

「……(シュン)」

ガオオオオ!!

 

 

しかし友奈や拓海がそんな状況になっていることを知らない三人衆は笑うだけ笑い、せいぜい観光バスに煽られないようにと忠告するように話す。どうやら本来の目的であるハチロクには会えなかったが、樹のハチゴーでコケにしまくったことで満足したらしい。一言二言話しながらそれぞれの車に乗り込んでその場を後にしていく。

 

だが残された一同はなんとも言えない雰囲気に包まれており、流石の樹もかなりショックを受けたのかかなり落ち込んでいた。それから少しの間そんな時間が続いていたが…

 

 

「あーもムカついた…!なんなよアイツら!こっちが言わないからって好き放題言って!」

 

「ゆっ…友奈ちゃん…?」

 

「あぁ俺も同意だ、流石に俺もカンベンできねー…!」

 

「…?」

 

「イツキ…オレにちょっとだけこの車運転させてくれ!!」

 

 

あれだけ好き放題言われて黙っていられるはずもなく、怒りが限界突破した友奈やそれに乗る形で拓海も完全に限界のようだ。

 

まあそりゃ親友の車馬鹿にされたら相手をシバきたくなるのも無理はなく、連中に納得行かない拓海は樹に対してハチゴーを貸してくれと頼み込む。

 

 

「ええっ!?」

 

「とりあえずイツキ助手席乗れっ!早く!!」

 

「どーする気だ!まさか追っかけんのか!?」

 

「それ以外に何があるってんだ!!」

 

「無茶だよ、これハチゴーだぞ!サスだってスカスカでタイヤ70なのに!!おまけにLSDだって…」

 

「LSDとかゴチャゴチャ言っても解んねーよ!!いいからさっさと乗ってシートベルトしろっ!!」バダン!!

 

ーオイオイマジか…ハチゴーでシルビアとワンエイティ相手にやるのか…正気か拓海の奴…ー

 

 

ハチゴーを貸してくれとということはまさかさっきのナイトキッズの連中相手を追いかける気かと察した樹は、慌てるように静止しようとする。まあそれもそのはず、このハチゴーはドノーマルのハチロクもどきのようなもの。

 

車体以外は正直言って走りに完全に向いていないためエンジンも非力だし、なにより足回りに関してはスッカスカと言っていいほど意味をなしてないのだ。そんな状況でシルビアやワンエイティなどのゴリゴリな走り屋車と遣り合うのは無謀と言っていいだろう。

 

 

キュルルルル!!

「ちょっと怖い思いすると思うけど俺を信じてガマンしててくれ!おまえの大事なクルマ、絶対ぶつけたりしねーから!」 ヴェン!!

 

「……」

 

「…しっかり見てろよイツキ、みんなが笑ってたこのクルマの本当の限界を今から見せてやるから…!」

 

「……(ステアリング握った瞬間目が座った…)」

 

「行くぞ!!」ゴクッ!!

 

ギヵャオ!!

ギャァァァ!!

「わぁぁ…!?」

 

 

だがそんなこと知ったことないどころか、だからこそみんなが笑ったこの車の本当の限界を見せてやると拓海がひとけりしていく。でも樹の大事なクルマは絶対にぶつけないと約束しながらエンジンをかけてステアリングを握る。

 

その際普段のボケーっとした姿とはまるで嘘のように違って見えており、ステアリングを握りながら目が座った拓海を見て思わず樹は息を飲む。

 

 

…がそんな時間が続くはずもなく、勢いよくギアを叩き込むと拓海はハチゴーを急発進。そのままの流れでホイルスピンをさせながらスピンターンをしながら追いかけるように秋名のダウンヒルへと飛び込んだ。

 

 

「…おうおう、ハチゴーで派手に行くな拓海の奴ー…。まあ親友のクルマ馬鹿にされたらそりゃそうなr…(スッ)ってあ…!?」

 

「裕也ごめん!ちょっとランエボ借りるね!」ダッ

 

「えっあっ…おっおい待て待て…!まさかお前も追いかける気か!?」

 

「そう!そのまさか!というか置いてかれたくなかったら早く乗って!」

 

「マジカヨ()」

 

 

ハチゴーの派手なスピンターンを見てやってんなーという表情で眺めていた裕也であったが、そのどさくさに紛れに友奈が手にしていたランエボの鍵を拝借して車へと駆け出す。

 

どうやら彼女もあの集団を追いかける気満々のようで、丁度いい感じで裕也のランエボがあったためそれを使うつもりらしい。あまりにも唐突のため戯けながらも慌てて裕也は友奈の後を追いかけるように乗り込んでいく。

 

 

キュルルル

ブォォォン!!

「ってか本当に追いかける気なのか…!?いくらキレてたとはいえ拓海がハチゴー乗る時は大人しかったのによ!」

 

「そりゃ拓海君のほうがイツキ君と付き合い長いんだから当たり前でしょ…!私だって図々しくないんだから…!」

 

「だからオレのランエボを使うってことですか…()」

 

「だってアイツらムカつくもん…!ハチゴーやハチロクどころか人を馬鹿にして…!一回捻ってやらないと気が済まない…!」ゴシャァァァァ!!

 

「ってうお!?追いかけるのいいがぶつけるのだけは勘弁してくれよぉぉ…!!」ギャァァァ

 

 

拓海がハチゴーに乗る際に落ち着いていたのは、彼が樹と付き合いが長かったから単純に譲っただけらしい。だからといって相手を許した訳ではなく、むしろ捻り潰さないと気が済まない様子。

 

裕也のランエボを借りたのも丁度良さげなところにあったからという至ってシンプルな理由であり、エンジンを掛けるや否やスキール音を響かせホイルスピンをさせながらハチゴーの後を追うようにコースヘ飛び出していくのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

「…全く、相変わらずナイトキッズの連中は性格悪すぎよ。リーダーの毅さんは至ってまともなのになんでかしら(呆れ)」ゴシャァァァァ

 

 

…がその一部始終を反対側の駐車スペース。自販機の近くで飲み物を飲んでいた一人の少女が目撃していたようで、相変わらずのナイトキッズの柄の悪さに呆れていた。

 

赤みを帯びた茶色の髪と青紫の瞳を持ち、腰まで伸びているロングヘアーが特徴的な彼女は、話し方的にどうやらナイトキッズリーダーの中里と面識があるらしい。近くには彼女の車と思われるスーパーレッドⅡカラーのMR2 GT-S(SW20)が止まっていた。

 

 

「おまけに走り屋が車馬鹿にするってどーなのよ、…仕方ない今中里さんはバトルに負けてナーバスみたいだし…私が直接お灸据えよっと」カラン

 

 

流石の彼女もこの光景を目にして流石に呆れを通り越すレベルで呆れており、あまりにも見過ごせないため直接お灸を据えることにしたらしい。飲んでいた飲み物をゴミ箱に捨てるとその流れで愛車のMR2へ乗り込んでいく。

 

 

キュルルルル

ブォン!!

ウォン!!

「あっ、喧嘩ふっかけられたあの子達もやる気みたいね。追いかけ始めた」ギャァァァ!!

 

 

乗り込んでからエンジンを掛けると、丁度拓海や友奈がハチゴーとランエボでそれぞれ追いかけるタイミングと被ったらしい。2台それぞれ勢いよくコースへ飛び出していく様子を眺めていた。

 

 

「そりゃ車馬鹿にされたらそーなるよねぇ…、とは言えどナイトキッズのアイツらも下手ではないからなぁ…」    

ウォン!!

ウォン!!

 

「…やっぱ追いかけてみよっと、どっちにしろ連中を黙らすなら走りでねじ伏せたほうがいいし」

ギャァァァ!!

 

 

そりゃ愛車をあそこまで馬鹿にされて黙ってるはずがないよねぇと内心思いながら、拓海や友奈の実力を知らないため下っ端とはいえナイトキッズ相手にどこまでやれるのかという不安もあるらしい。

 

まあどっちにしろあのナイトキッズ連中を黙らせるには走りでねじ伏せるしかないため、そうなったら追いつく必要がある。

 

 

ゴァァァァ!!

 

 

そのため様子を見るのも兼ねて追いかけることにした彼女は、一速にギアを叩き込みながら車を急発進。そのままの勢いで暗闇に包まれた秋名のダウンヒルへと飛び込んでいくのであった。

 

 

 

 

 






第十六話 友情パワー炸裂

(まだ正確な自己紹介はしていませんが、エナジーマンさんのリクエストキャラクターを追加させて頂きました!
ありがとうございます!)
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