頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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樹のハチゴーを馬鹿にしまくったナイトキッズの連中を見事完膚なきまで叩きのめした拓海と友奈コンビ。
…がそんな二人に目をつけた少女が追いかけてきてるとは思いもしなかった。

そしてその少女のことを叩きのめされたナイトキッズのドライバーは知っているようだが果たして…?


第十七話 乱入者

 

 

 

ブオオオオ…

 

 

先程の激闘がまるで嘘のように静まり返った秋名峠。やけにむかつくナイトキッズの三人衆をこれでもかというレベルで捻ったことで比較的落ち着きを取り戻した2台はペースを落としながら走っていたのだが…

 

 

「…ぁ…あぁ…」

 

「…(ヤベ…本気になり過ぎた…)」

 

 

…やはりあれだけのペースで走り続けられば当然常人が耐えられるはずもなく、特に荒ぶっていたハチゴーの助手席では樹が伸び切って干されそうになっていた。

 

これには鈍感で定評の拓海でもやり過ぎたと思っているようで、ステアリングを握りながら思わずやっちゃったという表情を浮かべてしまう。

 

 

「流石拓海君だね〜、ハチゴーでシルビアとワンエイティに勝っちゃうなんて…!私じゃ出来ないな〜」

 

「…それいうならお前も大概だよ…、慣れてない秋名であのペースは異常過ぎるぜ…」

 

「いや、慣れてない峠を本気で走る訳ないじゃん〜。あれでも6割くらいのペースだよ?」

 

「あれで6割かよ……、本気出してるように感じたぞ…」

 

「人の車で本気なんて出さないし、エボの性能ならそれくらいが丁度いいからね〜」

 

「どの口がいいますか…」

 

 

そんなハチゴーと比べるとまだ比較的マシの部類ではあるものの、流石にこちらも答えたようで祐也も少しげんなりしたような表情を見せている。

 

…が派手に飛ばした張本人である友奈はピンピンどころかいつも通りらしく、むしろ拓海の走りに関心の表情を見せてしまうほど…。どうやらあれで6割ペースで走っていたようで、それを聞いた祐也は嘘だろ…という雰囲気になっていた。

 

 

「まあでもあの人たちもう追う気ないみたいだから安心して…!これ以上飛ばす気ないしっ」

 

「相手にはそうして貰わんとしぶとく来られたらこっちが持たん…」

 

「もーこれぐらいで耐えられなきゃ走り屋やってけないよ?まっとりあえず麓まで降りたら休憩しよっか」

 

 

だがバックミラーを見る限り追い上げてくる様子が見られないことから相手は完全に戦意喪失したらしい、そうと分かればこちらももう飛ばす必要もないだろう(祐也からすればその方がいいが)。

 

とは言えどこのまま直帰する訳にもいかないためとりあえず麓まで降りたら休憩しようということになったため、しばらくゆっくり出来ると思われたが…

 

 

チカッ!!

ギャァァァァ!!

ー…?誰か追い上げて来る…さっきの人たちまだ諦めて……いや…これ違う…!ー

 

「おいおい…、勘弁してくれ…。せっかく休めると思ったのにまだ諦めてなかったのかよ…」

 

 

バックミラーに入り込むヘッドライトの光とともに響き渡るスキール音が遮ったことで状況は一変。最初こそ先程のナイトキッズ連中が追い上げて来たと思いかけた友奈であったが、すぐにその考えを否定する。

 

だが祐也は気づいていないようで、呑気にまたナイトキッズの連中が来たのかと嘆いているが…

 

 

「ったく諦めの悪いナイトキッズ連中だぜ…、流石ガラが悪いことだk…はぇ?」ゴクン!

 

「祐也、悪いけどさっきの言葉前言撤回するね!ちょっと飛ばすよ!!」

 

「おいちょま…()」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー流石にこのまま帰るわけにもいかねぇよな…、仕方ないとりあえず麓の自販機辺りで休憩するか…ー

 

 

後ろから追い上げてくる車が現れる直前、ハチゴーの車内では伸び切った樹を横目にこのまま帰るわけにもいかないよな…と拓海はそんなことを思っていた。

 

ひとまず麓にある自販機あたりで休憩するかと考えた拓海は、麓まで樹にこれ以上負担をかけないようにゆっくり流そうとするが…

 

 

チカッ!

ーん?祐也のエボの後ろから誰が来て…(プシャァァァァ!!)っ!?ー

 

ーごめん!先に行かして貰うね!ー

ゴァァァァ!!

 

ーいきなりどうして…っ張り付かれた…!まさかさっきの奴らか…!ー

 

 

 

ふと背後から追い上げてくるヘッドライトの光に気付いて、右ミラーへ視線を移そうとしかけた直後。いきなり友奈がペースアップしてハチゴーをいとも容易く抜き去っていく。

 

それはもうターボのウエストゲートがハッキリ抜ける音が聞こえてくるレベルであり、あっという間に前へと躍り出てしまう。突然何事かと思った拓海であったが、その間にも後ろの車はあっという間に拓海の背後へと張り付いた。

 

 

「まさかナイトキッズの連中相手にハチゴーで勝つとは…、このドライバーはよほどいい腕してるみたいね…!」

 

ーいや違う…、雰囲気がどう見てもアイツらとは違う…じゃあ別の奴ら…?ー

 

「本当はアイツらシバこうかと思ったけど…、予定変更!ランエボの方はやる気みたいだし…!」

 

 

拓海の操るハチゴー、その背後に張り付いたMR2のドライバーで、尚且今どき珍しい女性の走り屋でもあゆ滝沢明日香は興味深そうにステアリングを操りながら見ていた。

 

元々はあれだけ煽り散らかしたナイトキッズ連中をしごこうかと考えていたようだが、ハチゴーであっさりと千切った一部始終を目撃したことによってターゲットを変えたらしい(どっちにしろランエボの方はやる気のようだ)。

 

 

ーどーするかな…樹がこんなんだし今回は譲るか…?いや…そんな気分じゃないよな…友奈ちゃんもやる気みたいだし…ー

 

「はへぇ…たくびぃ……」

 

「悪い樹、また飛ばすぞ。しっかり捕まってろ」ゴクン

 

「うぇあっちょ…もう勘弁してくれぇぇぇぇ!!?」

ゴギャァァァァ!!

 

ーおっ、ハチゴーのドライバーもやる気になったか…!じゃあこっちも乗らないとね…!ー

ゴクン!

ゴァァァァ!!

 

 

 

もちろん最初こそ樹に配慮してパスしようか悩んだ拓海だったが、自分が走り慣れた地元でしかもそんな気分じゃなければ断る理由にもならない。

その上友奈もやる気となれば答えは一つしかなく、伸びかけた親友にごめんと言いながアクセルを一気に踏み込んで加速して後ろを振り切りにかかった。

 

もちろん明日香もそうなれば引くはずもなく、乗ったと言わんばかりの表情を見せながらMR2を更に加速させて2台を追い縋る。

 

 

ウォン!!ウォン!!

ーっ!ー

 

「っと…!」ゴクン!!

ゴギャァァァァ!!

 

 

コーナーが迫ってくると直前で2台はフルブレーキングでブレーキランプを点灯させながら減速、ほぼ同じタイミングで友奈と拓海はヒール・アンド・トゥで3速から2速へギアを叩き込む。

 

その後はランエボはインベタグリップ、ハチゴーは四輪ドリフトでコーナーを剛速球で抜けて立ち上がった。もちろん明日香も遅れるまいとブレーキングドリフトでリアを滑らせながら追随していく。

 

 

ー2台ともいい走りしてる…!ブレーキングのポイントも抑えてるしテクニックもいい!これならアイツら喰われても納得ね…!ー

ゴァァァァ!!

 

ー…ってもやっぱハチゴーの方は辛そうね…!まああんだけサススカスカなのにタイヤもグリップが低いとなれば…!ーゴクン!

 

ーちっ…!このタイヤ全然喰い付かねぇ…おまけに足回りが動きについてこれてないから走りにくい…!ー

 

「ぅぅうははぁぁぁぁ!!?」

 

 

だが明日香の言う通りで、いくら拓海の腕を持ってもハチゴーのドノーマル足回りではどうにもならないもので、かなり苦しそうな表情を見せていた。ちなみに樹はというと死にかけ状態で更にトドメを刺されそうな顔をしながら絶叫している。

 

 

ーでも流石秋名に慣れてる走り屋ってとこかしら、いいライン走ってるじゃない…!…けど…そろそろ限界なんじゃない?ー

ゴァァァァ!!

 

 

とはいえど明日香からみてもかなりいいラインを走っているようで(まあ乗ってるのが拓海だから当たり前っちゃ当たり前)、思わず関心の表情を浮かべていく。

 

…がそれでも所詮ハチゴーはハチゴー、なんとか拓海の腕で騙し騙し走らせてるからこそこのような動きが出来たというもの。当然そんな走りをすれば後にその反動が響いてくるもので、

 

 

ゴギャァン!!

ーなっ…!しまっ…ー

 

ー予想通り…!!そしてインがガラ空きよ!ー

ギャァァァァ!!

 

ー…!?ー

 

 

先程と同様にコーナーに差し掛かったためフルブレーキングで減速しながら2速にギアを叩き込み、ステアリングを斬り込む拓海。

 

…しかしタイヤが垂れていたのかリアを滑らせた瞬間にふらついてしまい、アウトへと余計に膨らんでしまう。もちろんすぐに立て直しを図ろうとするが、その前に待ってましたと言わんばかりにガラ空きのインへ明日香はMR2の鼻先をねじ込む。

 

 

ー確かに貴方は腕は良い…!けど流石にその足回りじゃ何時迄も同じような走りは出来ないでしょうね…!ー

 

ーやられた…、やっぱ騙し騙し走ってたのは相手にバレてたか…ー

ゴシャァァァァ!!

 

 

いくら拓海の腕を持っても完全にインへ滑り込まれた状態ではお手上げのようなもので、あっさりと明日香に抜かれてしまった。恐らく乗り慣れたハチロクならこうは行かなかっただろうが、やはりドノーマルハチゴーが足を引っ張っているのは否めない。

 

一気にハチゴーを抜き去ったMR2はそのままの勢いで少し離れた先を疾走するランエボを捕まえに行っていた。

 

 

ーっ…!拓海君がやられた…!?ハチロクじゃないだとしても相手もかなり速い…!さっきのとは全然比べ物に…ー

ゴァァァァ!!

 

「うおっ…!?もう来やがったぞ…!張り付かれた!」

 

「…そんなの解ってる…!ってか祐也相手の車種とか分かる?こっちそれどこじゃなくて…!」

 

「んにゃ暗くてわかんねぇ…!!けどリトラクタブルとやけにのっぺりしてるってことぐらいは…!ってうぉ!?」

ギャァァァァァ!!

 

 

 

地元でなく走り慣れてないのと人の車のため、拓海と違い限界のプッシュをしていない友奈。とはいえど端からみれば到底そうとは思えないようなスピード感覚でかっ飛ばしており、なんとか後続を突き放そうと試みる。

 

…がやはり走り慣れている明日香相手には流石に部が悪いのか、あっという間に背後に張り付かれてしまいビタ付け状態になっていた。

 

 

ーおっ…!威勢がいいわねぇ…!そういう走りを見せられちゃうとこっちも乗っちゃうかも…!ー

 

ー離れるどころか逆に距離を詰めてくる…!こっちだってなれない峠をめいいっぱい攻めてるってのに…!!ー

 

ー…ってもこっちは車と峠に慣れてないって感じかな?思うように攻めきれて無さそうだし、ラインも手探りで走ってる感じが…ー

 

ー駄目…!向こうのほうがペースが早すぎる…!!これじゃ振り切れない…!ー

 

 

人の車+慣れない峠でもなんとか踏み込めるだけ踏み込んだコーナーリングで流していくも、やはり慣れきったハチロクとは感覚が違うため思うように踏み込めていない様子。

 

本人もそれは解っているようで、明らかに向こうのほうがペースが早過ぎると内心愚痴を溢してしまう。もちろん明日香もそれは解っており、相手が手探りで突っ走っていることを直感で感じていた。

 

 

ゴシャァァァァ!!

ウォン!!

ーっ!ー

 

ーよっと…!ー

 

 

その後またしてもコーナーが迫ってくると2台はほぼ同時のフルブレーキングんで減速、…いや正確にはMR2の方が一方奥に踏み込めておりビタビタにブレーキングで詰めていた。

 

3速から2速へギアを叩き込み、鋭くステアリングを斬り込む友奈と明日香。ランエボは四駆の瞬発力を活かしたグリップ走行で駆け抜けていくが、後続のMR2はブレーキングドリフトでリアを派手に滑らせながらもハイスピードで駆け抜ける。

 

 

ー…ふぅ…、流石にこれ以上続ける訳にもいかないか…タイヤの感覚もちょっと怪しい、それに祐也の車潰すわけにもいかないし…(左ウィンカー)ー

 

ーんぅ?左ウィンカーか…、どうやら向こうはこれ以上攻める気はないみたい…ー

ギャン!

 

 

これだけ走ればもはや勝負は決したようなもので、流石にこれ以上攻めるのはリスクがあると判断した友奈は後続にお先へどーぞという意味を込め左ウィンカーを出しながらスローダウンさせる。

 

どうやら慣れない峠の上に車ということもあってかタイヤの消耗が早かったらしい、それに無理に攻めて親友の車を壊すわけにもいかなかったのだろう(彼女らしい)。

 

 

明日香もそれを察してか、ステアリングを右へ振って車を加速させつつ空いたスペースからランエボを追い越しにかかっていく。

 

 

「えっあっ…ゆっ譲るのか?」

 

「…当たり前でしょ、ここまで走ってだいたい相手の腕前も分かったし無理に走る必要もない。タイヤもちょっと喰い付き悪いし」

 

「はっはぁ…」

 

「それにさっき言ったでしょ?これは祐也の大切な車なんだし、無理に飛ばしてお釈迦にしたくないって。私が本気になる時はハチロクだけだもん」

 

 

 

先程までいきなりのバトルに困惑していた祐也だったのだが、突然ペースダウンしたことに少し驚きながらいいのかと尋ねていく。だが友奈は特に気にした様子もなく、相手の実力も解ったしタイヤの喰い付きも怪しいからこれで充分と答える。

 

やはり彼女でもあの走りはどんな車でも出来るという訳でもなく、ハチロクでしか体現出来ないということなのかもしれない。

 

 

ー…相手の正体はMR2か…、どーりでコーナリングがいいと思った…。…でもこのドライバーも速そうな雰囲気はあるんだよねぇ…ー

 

ー…にしてもあのハチゴーといいこのランエボといい…なかなかの腕前だったわ…、…けどなんていうか、完全に本気で走ってる感じじゃない…ー

 

ーちょっとドライバーがどんな人か気になるかも…、出来れば休憩ついでに会って話したいけど…ー

 

ーそれに…どんなドライバーなのかも直接会ってみたいしね(ハザード)ー

 

 

 

抜き去った際に車種を確認した友奈は、一枚やられたなーという表情を見せながら納得の表情を浮かべていた。もちろん車だけでなく、ドライバーの腕がいいのも解っているようで直接会って話してみたいなという気持ちになったらしい。

 

それは彼女だけでないようで、明日香も同じ気持ちだったようで相手がどんなドライバーなのか気になったようだ。ふとハザードに手を伸ばして点灯させる。

 

 

ーん?ハザード…着いてこい…ってことかな?ー

 

ー頂上で見た感じ年齢も近そうだったから案外話せるかもね、これで着いてきてくれればいいけどっー

 

「着いてこいって…言ってるみたいだな…」

 

「そう…みたいだね…?お話でもしたいのかな…?」

 

「…どうする?着いていくのか?」

 

「…相手がそう言うなら着いてってみるよ、私も直接会って話したいと思ってたし」

 

 

相手がハザードを炊いたことに気づいた友奈は、明日香の意図である着いてこいという解釈を感じ取ったらしい。

 

だが相手がどんな人かも解らないため本当に着いていくのかと尋ねた祐也に対して、自分も会って話したかったためもちろんと答えながら着いていくのであった…。

 

 

 

ー…でも、なんか面白くなりそうな予感…♪…まあまだ顔すら見てないんだけどね…(汗)ー

 

 

 

 

 

登場人物

滝沢明日香 タキザワ アスカ 女性

(エナジーマン様より)

年齢 : ??歳

身長 : 166cm

体重 : 50kg

好きなもの : ドライブ、家事

嫌いなもの : 弱いものイジメ、上から目線の人

得意技 : ブレーキングドリフト、先行の走りの観察

 

モデルはトロピカル〜ジュプリキュア!の滝沢あすか

 

 

搭乗車種

トヨタ MR2 GT-S 1997年式 (SW20)

カラー : スーパーレッドⅡ

(詳しい説明は次回で)

 

 

 






第十八話 初めての愛車 そして峠
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