頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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ナイトキッズとのバトルが終わった直後に突如として現れたMR2に苦戦を強いられた拓海と友奈。

だがここまでのテクニックを見せられては、悔しいというよりか相手がどんなドライバーなのか気になって仕方ないようだ。

しかしそれはMR2のドライバーである明日香も同じのようで、相手と直接話したいためハザードを炊きながら麓の自販機前へと誘導することに。

 
いきなり来いと誘導されていることに少し困惑していた祐也であったが、友奈は丁度いいということで意を決してついていくのであった。





第十八話 初めての愛車 そして峠

 

 

ゴフッ!!

フガッ!!

 

 

 

時間帯もあってが静まり返り人気がほとんどない秋名山の麓、蝉の鳴き声が響き渡る中それを掻き消すようなエキゾースト音が辺り一帯に鳴り響いた。

 

先程の激しいバトルとは裏腹にゆっくりと降りてきたMR2とランエボはそのまま誰も居ない自販機目の前の駐車スペースへ入っていく。

 

 

「止まった…ね」

 

「ああっ…、一体どんなドライバーなんだろうな…。とりあえず降りるか…」

 

「うん…(ガチャ)ってあっ向こうが先に降りてきたよ?」

 

 

予想通り麓の自販機前に止まったと目を合わせながら呟く二人、一体あれだけの走りを見せたドライバーはどんな人なのか気になるのだろう。

 

だがそんなことを思っても答えが出るはずもないため、とりあえず降りることにした二人はドアノブへと手を伸ばす。…しかしそれは相手も同じだったようで、先にMR2の運転席側ドアが開いた。

 

 

「…」ボムっ

 

「うっ…うへぇ…、なんか気が強そうな人が出てきた…。ってかあの走りで女性の走り屋かよ…」

 

「…私も男の人だと思った、私だってあそこまでアグレッシブに走れないよ?」

 

「…いや、お前はあの人とは違う意味でアグレッシブだから安心しろ()」

 

「ちょっとそれどういう意味よ…、って呑気に話してる場合じゃない…。私達も降りよ…!」ガチャ

 

「ほっ…本当に行くのかよ…(汗)」ガチャ

 

 

降りてきた明日香を目にするや否や、気が強そうで近寄りがたい雰囲気に思わず怖気づいてしまう二人。どうやら友奈も女性の走り屋だとは思っていなかったらしく、ちょっと困惑しつつも意を決して車から降りる。

 

 

「どうも…!こんばんはです…!」

 

「ども、アンタ…ここじゃ見ないけど他所から来たのか?」

 

「えっあっはい…!赤城からきました…!」

 

「へぇー、ちなみに秋名を走ったことは?」

 

「いっいえ…今日が初アタックで…、秋名に来たのも友達に誘われたからで…」

 

ー嘘でしょ…?確かにラインが怪しかったから走り慣れてないのは解ってたけど…、初アタックであの走り…(汗)ー

 

 

祐也はちょっと警戒気味だが、それとは対照的に友奈は積極的に挨拶を投げかけていく。いくら赤城で有名とは言えど、普段見ない走り屋のためすぐに他所から来たのかと明日香に見抜かれる。

 

最初こそ男気っぽいクールそうな雰囲気を見せていた彼女であったが、あれだけの走りをしながら今日が初めてだと答えた友奈に内心驚きを露にしていた。

 

 

「…ちなみに、そのランエボはオマエのか?」

 

「あっいえ、このランエボはこっちにいる親友の奴でして…。私自体別のに乗ってますね」

 

「ども…」

 

ーイヤイヤ…、勘弁してくれ…(汗)人の車であんな走りしてたのか…確かに攻めきれてない感はあったけど…それなら納得…ー

「驚いたな…、まさか初めての峠で更に自分の車じゃないのにあそこまで踏み込めるなんて…」

 

「別に大したことはないですよ〜…、そちらの方がいい走りしてましたし…!」 

 

ーうーん…、性格からじゃあの走りは想像出来ないな…人のであれだから自分のでだったらどうなることやら…ー

 

 

更には自分の車じゃないと言い出す始末に、明日香でさえどうなってんだという表情を露にしていた。まあそりゃ慣れてないどころか初トライを人の車であそこまで走れれば誰だってそう思ってしまう。

 

 

「…ちなみにだがさっき一緒に走っていたハチゴーがアンタ達の連れか?」

 

「はい!そうですね、たぶんもう少ししたら…」

ブェェェ

 

「おっ噂をすれば来たな」

 

 

それから少し話してから、ふとさっきまで一緒に走っていたハチゴーのことが気になったようで君たちの連れかと尋ねる。

 

もちろんそうであるため、友奈がもちろんと答えると少し遅れる形で特徴的なエンジンサウンドが響くとともにハチゴーがようやく降りてきた。

 

 

ゴフッ!

ボムっ

「……」ぬっ

 

ーえっ…ハチゴーであんな走りしてたのがコイツ…なのか?失礼かもしれないけど到底この表情じゃそう思えないけど…ー

 

「…(チラッ)友奈ちゃん、もしかしてさっきの奴って…」

 

「そう、そこのMR2がさっきの車だよ〜。んでこっちに居るのがそのドライバーの…」

 

「滝沢明日香だ、まさかハチゴーをあそこまで走らせるとは驚いた…。そりゃナイトキッズの連中も喰われる訳だ」

 

「えっ?さっきのナイトキッズの人たちと顔見知りなんですか?」

 

 

車が止まってから間もなくして、運転席からぬっと姿を現すように拓海が降りてくる。どうやらランエボの前に止まってるMR2と近くにいる明日香を見て察したようで、それに答える形で彼女も自己紹介をしていく。

 

 

「まあ正確にはナイトキッズのリーダーと…なんだけどね、中里毅って人いるだろ?ほらっ黒の32Rに乗ってる…」

 

「あー、あの人ですね?GTR乗りでべらぼうに速いって…」

 

「そうそれそれ、アタシその人とツルンでる関係でちょっと面識があるんだ」

 

「そうなんですか…」

 

「…ってまさかとは聞くけど、そのハチゴーもアンタのじゃないって言わないでしょうね…?」

 

「…もちろん俺のじゃないですよ…、親友の車ですから…」

 

「……」頭を抱えかける

 

 

どうやらナイトキッズとは面識があるようで、特にリーダーでもあり群馬エリアでは凄腕GTR乗りとも言われる中里毅と交流があるらしい。

 

…がそんなことよりもと言わんばかりにまさかそのハチゴーも自分の車じゃないのかと尋ねる明日香。当然拓海のではないためすんなりと違うと答えるが、すんなり言われたことで思わず頭を抱えかけてしまう。

 

 

ー嘘だろ…?勘弁してくれよ、ドノーマルハチゴーでしかも自分の車じゃないのにあの走りかよ…一体どうなってんだ…ー

 

「あっあの…大丈夫…ですか?」

 

「…こっちのことだから気にしなくても大丈夫よ…」

 

ーまあ…、そりゃ常人ならその反応するわな…コイツらが例外なだけでー

 

「そっそれで、そのハチゴーは親友のって言ってたが…ソイツは今居ないのか?」

 

 

まあそりゃランエボならともかく、ドノーマルでサスやタイヤがスカスカ、おまけに人の車であんな走りをされたら誰だって同じような意見になるだろう(まあ祐也の言う通り、拓海や友奈が例外なだけであるが…)。

 

友奈に心配されながらもどうにかこうにかして落ち着きを取り戻した明日香は、拓海に本当の持ち主はここには居ないのかと尋ねていくが…。

 

 

「…あー…えっと…」

 

「ん?どうした?なんか歯切れが悪いが…」

 

「…居るにはいるんですけど…その…」

 

「…?」

 

 

 

 

 

 

 

「ぁ…ぁ…もうひゃめて…くぇ…」Ω\ζ°)チーン

 

「あー…(察し)」

 

「流石に拓海君の走りに耐えきれなかったか…(汗)」

 

「…アレ?もしかしてアタシやっちゃったパターン…?」

 

 

…拓海の歯切れの悪さで大方察してはいたが、案の定というかハチゴーであんなことされて無事なはずがないもので、綺麗に助手席で伸びている樹の姿があった。

 

お互いになんとも言えないような雰囲気に包まれてしまい、しばしの間棒立ちしていたのだが…

 

 

ゴァァァァ!!

ギュン!

「ん?…ってあアイツらさっきの!」

 

「…!!」

 

「今頃降りてきたか…」

 

 

それから少ししてスキール音とともに先程煽ってきながら、あっさりと3人にねじ伏せられたナイトキッズの2台が降りてきた。

 

 

「止まりは…しないか。まああんだけ煽ったハチゴーに負けたんじゃメンツが持たんよなぁ…」

 

「こらー!ちゃんとイツキ君とハチゴーに謝りなさーい!」プンスカ

 

 

当然メンツボロボロにやられたのに謝りに来るはずもないもので、ちょっと場が悪そうな雰囲気を見せながらも目の前を通過していく。

 

もちろん親友と車を馬鹿しながらその程度で許すはずもなく、友奈はプンスカしながらも通り過ぎる2台に声を上げる。

 

 

「…はぁ、ったくだからナイトキッズはガラ悪いって言われるんだよ…」

 

「……」

 

「んじゃ、もうちょいお話したかったけどこれからアイツらシバいてくるからお先に失礼するぞ…!」

 

「あっはっはい…!」

 

「…っとあとこれ!」(200円を投げ渡す)

 

「うおっとと…!?」

 

 

ナイトキッズらしいというかそうなのだが、だからガラが悪いと言われるんだよと明日香はため息を溢しながら呆れた表情を見せる。

 

当然それで許すはずもなく、本来の目的である連中をしばくために先に失礼するようだ。…がその前に思い出したかのようにポケットから200円を取り出して友奈に投げ渡す。

 

 

「そのお金で今伸びてる子に飲み物でも買ってあげな!せめてでものお詫びの品だからよ!」

 

「えっあっ…」アタフタ

 

「じゃまた会おうぜ!」ボムっ

ゴギャァァァァ!!

 

 

何がどうなっているのか解らないため思わずあたふたする友奈を横目に、満面の笑みで一言二言話すと滑り込むように愛車へと乗り込んでいく。

 

直後エンジンがかかったと思いきや派手にリアをホイルスピンさせながらMR2は急発進させて、走り去るのであった…。当然残されたメンツは、あまりの展開の速さにしばらくの間、呆然と立ち尽くしているのであった…。

 

 

「…何者なんだ…アイツ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

それと同時刻

赤城山にて

 

 

ゴギャァァァァ!!

カララランンッ!!

 

 

今日は特に走りに来ている走り屋が少ないのか、いつもより静けさを見せている赤城山。しかしその静寂さを打ち破るようにけたたましいエキゾースト音が児玉していく。

 

 

プシャァァァァ!!

「うおっとと…!?」クンッ!

 

 

コーナー奥からヘッドライトの光が漏れて、それに少し遅れる形でスキール音とともにどデカなウィング、特徴的な音とともに赤の80スープラが勢いよく姿を現す。

 

その車内、ステアリングを握っていた羽南は話にあった通り以上のドッカン仕様にちょっと驚いているようで、とっちかりそうになったリアをなんとか抑えながら走っていた。

 

 

「本当おじさんの言う通りね〜、立ち上がりのラグが大きい分アクセル踏んだ時のパンチがデカいわね〜」

 

「のっ呑気に関心しないでよお母さん…!?こっちは一杯いっぱいなんだけど…!」

 

「あら〜?この車を選んだのは羽南ちゃんなんだからそれくらいは乗り慣れて貰わないとねぇ〜」

 

「ぐぬにゅにゅ…」

 

 

ある程度解っていたとは言えど流石にここまでじゃじゃ馬だったというのは想定外だったのか、これには羽南もつい根を上げてしまうほど。

 

しかし助手席に座っていた来海は呑気に荒川のおやっさんが言ってた通りだわ〜と関心しているらしく、羽南にしれっと指摘する余裕があるらしい。

 

 

カララランンッ!!

ウォンウォン!!

「…でも慣れたら面白いかも…!こっちはドリ車だって乗り尽くした経験あるんだから…!カウンターなら得意分野!」

 

「ふふっ♪昔からいろんな車をあの人がサーキットとかで乗らせた経験が生きたわね〜、当時はぶつけないかヒヤヒヤしてたのが懐かしく感じるわ〜」

 

「それにこの子は私の相棒なんだし…!早く乗りこなせるのうに頑張らなきゃ…!!」ゴクン!

 

「まあ無理しない程度にね〜、ゆっくり確実に慣れていくのよ〜?」

 

 

だがこの車を選んで後悔したかと言われればそんなことはないようで、むしろ今まで乗ってきたいろんな車の経験を活かして乗りこなしてやると意気込んでいる様子。

 

もちろんそんな羽南の意気込みはアクセルを踏み込む足にもしっかりと伝わっており、甲高い過給器音を響かせながら暗闇に包まれた赤城のヒルクライムを疾走していくのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

「落ち着いたか?イツキ」

 

「あぁ…なんとかな…」

 

 

明日香が去ってから少し時間が経った頃、どうにかこうにか意識が戻った樹は彼女がくれたお金で買ったと思われるコーヒー片手に一息ついていた。

 

 

「オレ…前池谷先輩の言ってた意味がやっとわかったよォ(ふーっ)拓海のダウンヒルは異常だって…」

 

「そんなにか…?確かにちょっとはやり過ぎたとは思ってるけどそんなに…」

 

「バーカおまえ自分で気がついてねーだけだ、車があんな風に走るなんてオレは考えたことも想像したこととなかったし…」

 

ーまあ…普通に考えりゃ車があんな走り出来んわな…(汗)ー

 

 

前に拓海のダウンヒルに付き添ったことがある池谷が言った言葉を樹はようやく理解できたらしく、親友のダウンヒルは異常だと口にする。

 

確かに拓海のダウンヒルはどこかぶっ飛んでるようなもので、祐也の言う通り車があんな走りをするだなんて普通に考えればまずありえない。

 

 

「ほんとっオレの人生観が変わったぜ…ものすごい衝撃だったし異次元空間体験って感じだよー…」

 

「…そんなに怖かったのか…まあ延びかけてたしな…、悪い…」

 

「…オマエが謝ることねーよ拓海、オレ嬉しくてしょーがねーんだからサ…」

 

「え…?それってどうゆう…」

 

「イツキ君はきっとハチゴーでも勝てることを拓海君が証明してくれたから嬉しいんだと思うよ♪」

 

 

それは人生観が変わるレベルというもので、樹からすれば異次元の体験だっただろう。流石の拓海でもそれを聞くと申し訳無さそうな表情を浮かべてしまう。

 

しかしすぐに樹は否定し、それどころかむしろ嬉しくてしょうがないと笑みを浮かべる。一瞬拓海はその意味を理解出来なかったが…

 

 

「ああっ、友奈ちゃんの言う通りだよ。ハチゴーでも腕さえよけりゃあんなに凄い走りが出来るってわかったからな…」

 

「……」

 

「オレこのクルマ好きになっちまったかも…、誰に笑われようが大事に乗って一生懸命練習するよ」

 

「うんうんっ♪もうイツキ君のレビンだからねっ!大切に乗らないと!」

 

 

だが友奈はその意味を理解したようで、付け加えるように笑みを浮かべながら話していく。やはりハチゴーでも腕さえあればあんな走りが出来るのだと分かっただけでも嬉しいのだろう。

 

 

「だなっ…やっぱ最高だよオレのレビン…」

 

「…そうだな、悔しいけどオマエのレビン…だしな…」笑み

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに樹のレビンを煽りに煽ったナイトキッズの三人衆はというと…… 

 

 

 

「お前らナイトキッズのメンバーとしてあんなことして恥ずかしくないのか!少しは弁えろ!!」

 

「「「ひぃぃぃぃ!!??」」」

 

 

あのあとあっさりと明日香に捕まってしまい、夜の駐車場でみっちりと物理的なお説教を受けているのであった…。

 

 

 

 

 

 







第十九話 世間は案外狭い
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