頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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(またしてもお久しぶりです((
前回よりは早く投稿…出来たかな?


第二十一話 勝ち負けなんて関係ない

 

 

 それから翌日渋川市内某所にある一軒家。見慣れたMR2がある明日香宅では、ラフな私服姿の明日香がキッチンで鼻歌を歌いながら朝の朝食を作っていた。

 幼い頃に両親を亡くてからは、長い事兄と2人暮らしをしており、仕事が多忙になった彼に変わってここ数年は彼女が料理などや家事をよくするようになったらしい。

 

 ちなみに今彼女の愛車でもあるMR2は元々兄が乗っていた車であり、兄が別の車に乗り換えてからは譲り受けて貰う形で乗ることになったようだ。

 当然MR2に乗っていることからお兄さんは元走り屋であり、明日香も15歳の頃から無免でドラテクを学んで(←おい)免許を取得、現在走り屋としてデビューしている。

 主に妙義をホームコースとしており、よくナイトキッズと絡んで走っている女性のMR乗りとして地味にだが有名になっているとか…。

 

 

 とまあそんなことを話している間にもあっという間に料理を作っていた訳だが、しばらくすると2階から階段をおりてくる軽いドタドタ音が聞こえてくる。

 

 音がしてから少しして、昨夜遅くまで残業していたせいでかなりお疲れ気味であろう兄があくびをしながらキッチンを訪れ、妹といつもの挨拶や会話を交わしていく。

 

 

「ふぁぁ……、おっ明日香おはよう…」

「おはようアニキ、ご飯あと少しで出来るよー」

「うっす…、ならその間に顔洗ってくるわ…」

 

 

 兄が目覚まし代わりに顔を洗うために洗面所へ行っている間にも朝食が出来上がった明日香は、慣れた手つきで2人の座るテーブルに料理を盛った皿を置いていく。

 白いご飯に味噌汁、ベーコンや卵焼きといったメニューは聞くだけでも美味しそうに感じてしまう。

 

 

「……っと…」

ーさてと…出来た出来た♪あとは皿に盛ってテーブルに…ー

 

 

 そうこうしているうちに顔を洗い終わった兄がキッチンへやってきて、おいしそうな朝食が並べられたテーブルを見ながら椅子に腰掛ける。

 遅れるように明日香も腰掛けると兄と妹という関係か息ぴったりの手を合わせながら頂きますと口にしつつ、朝食に手を付け始めた。

 

 

「おぉ、今日も美味しそうだな。んじゃいただきますか」

「ええっ、それじゃ…頂きます♪」

「頂きまーす」

 

 

 朝食を摂りながらも2人はいつもの他愛もない雑談で盛り上がっていた訳だが…、ふと明日香が思い出したように今度バトルするんだと口にする。

 

 だが兄は特に気にした様子も見せず、そうなのかと朝食を食べながら耳を傾けており何気ない口調で何処とやるんだ?と尋ねていく。

 まあよくナイトキッズとつるんで走っている上に、時折バトルをふっかけるなどザラにないため、気にしていないのだろう。

 

 

「あっそうそうアニキ、今度バトルするんだ!」

「ほぉー、またか。んで今度は何処でやるんだ?」

 

 

 もちろん明日香も隠す理由もないため、今度の水曜日に赤城峠である走り屋とバトルすることを説明。

 当然赤城といえば赤城レッドサンズが思い浮かぶため、高橋兄弟とでもやるのか?と冗談交じりで尋ねたのだが…、んな訳ないじゃんと否定されてしまい…

 

 

「今週の水曜日に赤城である走り屋…とね!」

「ほぉー赤城か、なんだ今度はレッドサンズにでもふっかけたか?」笑

「んもーっ、そんな訳ないじゃん。ってかレッドサンズは無理なのアニキも分かってるでしょ?」

 

 

 まあ仮にレッドサンズにバトルをふっかけたとしても残念ながら余程のことがない限り地元では受け付けないよで出来るはずもなく、当然知っている兄もだよなーという雰囲気になる。

 

 それじゃ何処とやるのか…という話になるのだが、あまりにも察しが悪かったのか不服そうにしながらも明日香が『赤城の歌姫』とやるんだと先に切り出した。

 

 

「まあ地元じゃ余程のことない限りレッドサンズの連中はバトル受け付けんからなー、んじゃどのチームとやんだ?」

「察しが悪いなアニキー、今レッドサンズ以外で私が興味引きそうな走り屋は1人しかいないじゃん。赤城の歌姫だよっ」

 

 

 それを聞いたアニキはなんだ赤城の歌姫かー…と流しかけたのだが、直後我に返ったようにハッとした表情を浮かべつつ多少のタイムラグで声を荒げながら反応。

 

 元走り屋ということもあり峠の走り屋事情には詳しい彼は、当然今話題の赤城の歌姫も知っていた訳だが、まさか自分の妹とバトルするとまでは想定してなかったらしい。

 だが明日香は冷静に、なんなら少し取り乱した兄をジト目で見ながら宥めながら話を続けていく。

 

 

「ほー赤城の歌姫か、最近また走り出したことで有m…っては!?今赤城歌姫ったよな!?それ本当か!?」

「…アニキ取り乱し過ぎ、そりゃいきなりそう言われたらそうかもだけど……」

 

 

 その後妹から経緯を聞いた兄はようやく落ち着きを見せたようで、なるほどな…という表情を浮かべながらご飯を食べる手を再び動かす。

 まさか今巷で話題沸騰中の赤城の歌姫、そのドライバーが明日香の通う学校の同級生だったとは(もちろん郊外厳禁)…という彼を見つつ、彼女もびっくりしたでしょ?とにこやかな笑みを浮かべていた。

 

 

(経緯説明中)

「…なーるほどな、その今の赤城の歌姫がお前の通う学校の同級生だったのか…なら知り合って納得だ」汗

「分かってるとは思うけど郊外は厳禁だよ?…んまあそれはさて置いてびっくりでしょ♪今噂の歌姫さんが私と同級生なんて!」

「そりゃびっくりどころじゃないさ、お前と同い年でレッドサンズ相手に連勝してるなんて想像出来ないぜ…。ただでさえ少し前は秋名のハチロクで最近持ちきりだったのに…」

 

 

 だがバトルをふっかけたとなれば勝機はあるのか…という疑問が出てくる、というのも相手はかつて群馬で暴れ回っていた赤城の歌姫。

 ドライバーが違うという情報もあるが、それでも現在赤城レッドサンズ相手に地元で連勝しているのをみるに一筋縄では行かないのは確か。

 

 そのへんはどうなのか?と聞かれた明日香は一瞬うーん…と首を傾げながらも、あんまり勝ち負けとかは気にしてないかなと答える。

 

 

「けど勝機はあるのか明日香、なんせ相手は昔群馬で暴れ回っていた赤城の歌姫。今はドライバーが違うって話もあるが、それでもレッドサンズ相手に連勝してるんだ。一筋じゃいかんぞ」

「うーん…勝機があるかって言われても…、特にそのへんは気にしてないかなー?」

 

 

 一見走り屋らしからぬ回答にも思えるが、彼女からすれば巷で話題のハチロク乗りとバトル出来るだけでも幸せらしい。

 相手のホームコースというハンデを背負い、今の実力でどれくらい通用するのか…という思いもあるのだろう。

 …そんな楽しそうに話す妹を見ながらも兄は、本当に変わった妹だがこれからが更に楽しみだな…と笑みを零していくのであった。

 

 

「だってあの赤城の歌姫とやれるんだよ!勝ち負けどーこより絶対楽しいじゃん、今の私で何処までやれるのかなーって!」

「ははっ、明日香らしいセリフだよ♪」

ーまっ勝ち負け関係ないって走り屋らしからぬ言葉だ、我ながら変わった妹だけど……それはそれで楽しみだな…ー

 

 

 

 

 

 それから少しして群馬県内渋川市某所、県民がよく利用することで有名な県道前に構える個人モータース『ホノモータース』では何時も通り営業を行っており、整備工場内には何台か車が入っていた。

 

 個人の整備工場ではあるものの、ディーラーに負けない設備を揃えおまけにある程度古い車もしっかり見てくれることから群馬県内でもかなり有名らしく、主に走り屋やら旧車乗りに頼りにされているとか…

 

 

 整備工場の敷地内に視線を向けると、丁度整備をしてもらいこれから帰るのだろうか?1台のGTOがゆっくりと駐車場から顔を出す。

 近くには濃い緑に黒い帽子を着けた作業着姿の羽南がお見送りをするために駆け寄ってきており、ドライバーと何やら話していく。

 

 

「何時もご利用頂きありがとうございます…!」

「おぉ、羽南ちゃんか。今日もありがとねー。俺のGTO、整備してくれたんでしょ?」

 

 

 元々メカに詳しいくて車の整備や技量を幼い頃から家族に叩き込まれた…ということもあってか、高校生ながら並の整備士以上には実力のある彼女。

 それもあってか家族経営の整備工場で車のメンテナンスを任されており、実際このGTOも彼女が整備を行ったらしい(今回はタイミングベルトの交換)。

 

 助かったよーと話すオーナーに対して、これぐらい整備士として当たり前ですよ…♪とちょっと誇らしそうに羽南は離しながら照れていた。

  

 

「いえいえ♪コレぐらいはモータースの娘として出来ないと…!だって今回はタイミングベルトの交換だけですし♪」

「いやそれでも充分助かるさ、まだ若いのにこれ以外の整備も出来ちゃうんでしょ?将来が有望だなー」

 

 

 とまあそんなことを話ながらも、車を駐車場から出し終わるとそれじゃまた来るよと挨拶をしながらオーナーはGTOを発進させていき敷地内から幹線道路へと合流。

 もちろんお見送りでここにいるため、元気いっぱいの口調でありがとうございましたー!と口にしながら帽子を外しながら頭を下げる。  

 

 

「それじゃそろそろ帰るわ、またなんかあったら頼むからよろしくねー」

ウォンウォン

「あっはい!!ありがとうございましたー!またご来店お待ちしてますね!」 

ブロロロロロ

 

 

 その後無事に見送ったあと、再び帽子を被り直した羽南は駆け足で工場へと戻るかと見せかけて駐車場へと楽しげに駆け足で向かっていく。

 というのも今日はお客さんが来ると行っても何時もよりは少ないため、手が空いた時間を利用して自分の車をメンテナンスするつもりらしい。

 

 前におやっさんに解体屋から引っ張りだして貰った際、公道を走れるようにほぼ整備はして貰ったが、前走った際にリアのタイヤをかなり消耗させてしまったので、その交換も兼ねているようだ。

 

 

「さーてとっ!あとはたっぷり時間あるから、そこを利用してスープラちゃんのタイヤ交換しとこっか♪…なんせ前に走った時に変に消耗させちゃったし…」汗

 

 

 既に整備をするためのリフトや親からの許可も確保しているため、ポケットから車のキーを取り出すと駐車場の隅に止めてあったスープラへと乗り込む。

 慣れた手つきでエンジンを始動、若干のミスファイヤが入った2JZらしからぬ高いサウンドを奏でながらゆっくりと発進させる。

 

 

「もうお父さんには許可貰ってるし、リフトも確保してるからちゃちゃっとやっちゃおーっと!」

ボム

 

キュルルル

ブォォォォォン(カラカラカラ)

ウォン!!ウォン

 

 

 その後は問題なく整備工場の端っこで開いていたリフトにスープラをバック突っ込ませ、足などをかけながらリフトアップ。

 ある程度の高さまで上げると自分の工具箱からインパクトやらソケットを取り出し、ナットなどを外しながらそれなりに重いホイールを一生懸命に降ろしていく。

 

 

「……ふぃぃ(汗)この子が履いてるホイールなかなか重いねぇ、流石に降ろすのに一苦労いるかも…」汗

 

 

 だが体力と力にはそれなりに自信があるようで、少し重そうにしながらも難なくタイヤを左右共に外している中、幹線道路から1台軽トラックが敷地内へと入ってきた。

 

 一見すればお客さんに見えなくはないが、その車…ホンダアクティの荷台へ箱型で覆いかぶされた幌には前田鉄工所と書かれているところ見るに違うようだ。

 その軽トラックのステアリングを握っている青年、前田宗一はここのモータースで間違いなさそうだな…とホノモータースと書かれた看板を見ながら確認していく。

 

 

ー…ホノモータース…、ここで間違いなさそうやなー

 

 

 元々関西出身の彼だが今は親戚である叔父の家に居候してており、家業である自動車部品を加工する鉄工所の仕事を手伝っているらしい。

 なので軽トラ(ホンダ アクティ)に乗っては鉄工所で造った部品などを製作所に運ぶ運搬も行っているとか…

 

 ちなみに補足だが、叔父はこのモータース社長と仲がいい関係もあってかよく鉄工所に部品を注文してくれている常連客の立ち位置。

 なので時折叔父自身が持って行くのだが、今日は手が離せない…ということなので製作所を回るついでで彼に頼んだ…という訳だ。

 

 

ーにしてもまあ叔父のとこって製作所メインのとこあったけど、まさかモータースとの付き合いもあったとはなぁ…。珍しいというかなんというか…ー

 

 

 そんなことを思っているうちに業者用の駐車場にアクティを止めると、エンジンを止めてから車を降りつつ軽トラックの荷台側へと慣れた感じで回っていく。

 幌の蓋を開けながら中を覗くと、そこにはこれから持って行くであろう製作所向けの部品が入った段ボールの箱が置かれていた。

 もちろんこのモータース向けの奴も含まれており、名簿で確認しながらも荷台から降ろした台車へと載せる。

 

 

ーまあえぇ、とりあえず部品さっさと渡していかんとなぁ。まだ回るとこぎょーさんあるし…ー

 

 

 何個か箱を載せると台車を押しながら工場側へと向かうと、恐らく丁度オイル交換をしていたタイミングだろうか?裕司が宗一に気付くや否や動かしている手を止めずに挨拶を投げかけてきた。

 

 

「よっと……ええっと、確か叔父が言うにはぁ…工場方に行けばええとは言って……」

「ん?おぉ、前田さんのとこの若いのか!お疲れさん、部品持ってきたんだよな?」

 

 

 もちろん彼も挨拶を返しながら部品を持ってきたんだろ?という問にそうです、と答えながら今日は諸事情で叔父がこれないことを付け加えていく。

 そりゃ大変だなと答えながらも、丁度オイル交換で手が離せないから少し待っててくれと伝え、別の子に対応させることも伝える。

 

 

「ええっはい、いつもなら叔父なんですけど。今日は手が離せないらしくて…それで俺が」

「そうかぁ、大変そうだな叔父さんも。ちょっと待っててくれ、今手が離せないから誰か呼ぶから」

「分かった」

 

 

 すると視線を別の方に向けながら自分の娘の名を大きい声で呼んでいくと、はーいっ!という元気な声が返ってくると共に駆け足で茶髪ショートを揺らしながら羽南が駆け寄ってきた。

 

 その後裕司から事情を聞くと宗一の方に視線を向けながら、いつもの明るい表情を見せながら対応することを伝えていく。

 

 

「羽南ーっ!すまんがちょっと来てくれ!」

「はーいっ!!どうしたのお父さん…!!」トテトテ

「今ちょっと手が離せないから、そこの若いのから頼んでた部品受け取ってくんねぇか?あと伝票も」

「ほーいっ、あっどうも!あとはこちらで受け取り対応させてもらいますね♪」

 

 

 年相応の雰囲気を見せながらも、受け取った伝票を慣れた手つきで書きながら搬入された部品に間違いがないかなど羽南な真剣な目つきで確認。

 そんな羽南の様子を見ていた宗一だったが、思った以上の手際良さに思わず感心の表情を浮かべながら時折確認するような質問に答えていくのであった。

 

 

「えっと……これはこうで…よしこれはオッケーか…」

「……」

ー手際めっちゃええな、見た感じオレより若いんとちゃうか?すげぇな…ー

「あっすみません、この部品は何処に…」

「えっあぁそれはな、確かこっちに…」

 

 

 

 

 






(ペンギン太郎さまのキャラを採用させて頂きました!!
改めてありがとうございます!!)

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