頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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少しぶりです
今回はお話メイン回です
あと1、2話ぐらい話を挟んだらレース回にしようと思います((


第二十八話 左足ブレーキ

 

 

 

「左足ブレーキ?」

 

 

 友奈の口から聞き慣れない言葉が飛び出てきたため、池谷や樹たちは驚いたような表情を見せながら思わずなんだそりゃと言わんばかりの顔を見せる。

 もちろん普段聞くような言葉じゃないことは友奈も分かっており、池谷たちに分かりやすいように簡単にだがしっかりと説明していく。

 

 

「はいっ、と言っても私たちみたいなFR乗りは滅多に使うこと…ないテクニックですけどね(汗)」

 

 

 友奈曰く左足ブレーキというのはFF乗りがよく使うテクニックのようで、限界領域の姿勢制御に左足ブレーキを使うとのこと。

 そもそもFF自体アクセルを開けるとアンダー傾向になりやいため、そうならないように右足はアクセルを踏んだままラインをはらませないように左足でブレーキを踏みつつ調整しながらリアの荷重を抜くテクニックらしい。

 

 

「まあ簡単にいえば限界領域の姿勢制御に左足ブレーキを使うんですよ、シビックみたいなFFはアクセル開けるとアンダーになっちゃうので…。それを防ぐために右足はアクセル踏んだまま左足でブレーキを踏んで調整するみたいな…」

 

 

 彼女もサーキットなどでFF車に乗った際にはよく使っているテクニックではあるものの、メインがFR乗りなのでそこまで上手ではないとのこと。

 しかしFF乗りだからといって誰もが出来るかと言われればそんなことはなく、かなりのハイテクニックとのことでそのEG-6乗りは友奈から見ても腕は確かなもののようだ。

 

 

「私もサーキットとかでFF使うときはよくやってるんですけど…、結構なハイテクニックなんで完璧にはできないですね…。多分そのEG-6のドライバー、相当に速いですよ」

 

 

 それはもちろん池谷も分かっていたことではあったが、だとしても自分の車にわざとぶつけてスピンさせられたと思うと許せない気持ちで一杯らしい。

 

 

「…確かに速かったけど、オレは許せねーなあのヤロー…」

 

 

 丁度そのEG-6に絡まれる前にサイドスピンの練習をしていたお陰でぶつけずに済んだものの、危うく直ってきたばっかりのS13が入院するところだったのも事実。

 今度会ったらただじゃおかないぞ…と、そんなことを口にしながら池谷は怒りを少し露にしていく。

 

 

「丁度サイドを引いてスピンする練習をやった直後だったから上手くぶつけずにスピンして逃げられたから良かったけど…、今度会ったらただじゃおかないぞ…あのEG-6」

 

 

 とまあそんな先輩を見ていた3人ではあったがふと拓海がそういえばEG-6ってどんな車なのか?という疑問が浮かび上がったのか、何気なく1人で呟いた。

 もちろんEG-6はホンダシビックであるために、樹は何聞いてんだと言わんばかりの表情を見せながらも答えていく。

 

 

「…EG-6って」

「シビックだよ…!シビックっ!」

「…ならそう最初から言ってほしいな」

 

 

 どうやらシビックはFFだが走り屋には特に人気の車のようだ(主に関西などはその傾向が強い)。

 エンジン自体はハチロクと同じ1.6リッターのノンターボではあるものの、VTECと呼ばれる自慢のエンジンが搭載されており高回転域などでは強力なパワーを発揮するだとか…

 

 

「シビックはFFだけど、走り屋には人気の車なんだぜ。ハチロクと同じ1.6リッターのノンターボなんだけどVTECっていう自慢のエンジンが乗ってて、すっごいパワーがあるんだよ」

 

 

 ちなみにそんなシビックはハチロクであるレビトレ(レビンとトレノ)とは宿命関係にあるようで、樹はハチロク乗りである拓海に意識するように念押ししていく。

 もちろん樹もレビン(ハチゴー)なので、シビック相手には道を譲らんと言わんばかりにドヤ顔を見せながら仁王立ちしていた。

 

 

「昔からシビックとレビトレは宿命関係にあるんだ、お前もハチロク乗ってるからには意識しないと駄目だぞ?」

「……」

「まっオレもレビンだからなぁ、シビック相手には道は譲らないぜっ!!ふっふっ…!」

 

 

 当然この話題となれば友奈のハチロクも含まれるため、ちゃんと忘れずに覚えていた樹は彼女に対してもシビックは意識するように念押しする。

 まあとはいえ走りのテクニック以外知識が皆無な拓海に対して、車などの知識が豊富な友奈には店長が言うように問題なさそうではあるが…

 

 

「ってか…!それなら友奈ちゃんもそーだよなっ、拓海と同じハチロク乗りなんだからさ!」

「そっ…そうかな(汗)」

「いや心配することはないぞイツキ、友奈ちゃんはお前以上に知識や経験が豊富だ。それにこの子のハチロクはレース用エンジン、普通のシビックと比べる方が酷だろう」

 

 

 そんなやり取りをしているとふと池谷がそういえば明日、いよいよ赤城で明日香とバトルするんだったなと思い出したように尋ねる。

 もちろんその通りであり友奈もそうだと答えていくと、先程まで話していたEG-6の話題から完全に明日香とのバトルで持ちきりになってしまう。

 

 

「ってかそういえば明日じゃないか?友奈ちゃんと前言ってた妙義で有名なMR2乗りの女の子とのバトル」

「ですね、明日の8時に赤城峠の頂上で」

「そうですよ!くぅ〜!!友奈ちゃんと明日香ちゃんのバトル楽しみすぎるぜ!!」

 

 

 明日香については樹達からある程度聞いていた上に、走り屋間の噂などでもかなり有名だったことから、実力についてはある程度知っている池谷は、そのことを踏まえながら友奈に勝算はあるのかと尋ねていく。

 

 

「けどお前らが言ってた明日香って子、結構速いんだろ?妙義の連中とつるんでるって聞くし…その辺どうなんだ友奈ちゃん」

 

 

 もちろん池谷が尋ねるように質問してきた通り、友奈からしても明日香はかなり高いレベルに纏まっている走り屋らしい。

 そもそも秋名で樹のハチゴーデビューの際に初遭遇したときも、親友のランエボだったとは言えど速すぎて道を譲ったと友奈は口にしていく。

 

 

「そうですね…私から見ても走り屋としてはかなり高いレベルなんじゃないかなって思います」

「マジか…」

「それに明日香ちゃんと初めて出会ったイツキ君のハチゴーデビューの時の秋名じゃ、祐也のエボとはいえ速すぎて譲っちゃいましたから…」

 

 

 友奈レベルの実力でいくら他人の車や走り慣れてない峠だったとは言え、そんな彼女と張り合えるレベルとなれば池谷達からすれば衝撃的というもの。

 やっぱナイトキッズのナンバー1、2とつるんでるだけはあるよなー…と池谷がうんうんと頷くが、樹は友奈のホームコースである赤城じゃ分からないんじゃないかと自信満々に口にしていく。

 

 

「友奈ちゃんでさえもか…、やっぱナイトキッズの1、2とつるんでりゃ速いのは当たり前だよなぁ…」

「でっでも!それは人の車と峠でですよねっ!赤城じゃまだ分からないッスよ!」

 

 

 まあ確かに樹の言う通りホームコースが赤城である友奈と相棒とも言えるハチロクならまだどうなるか分からない、それに池谷の言う通り赤城では群馬エリアでは強豪ともいえるレッドサンズを2連勝で倒しているのだ。

 だがそんな自信満々な親友に対して、拓海がそれでもまだ友奈にとって厳しいんじゃないかと珍しく不安げな口調で話す。

 

 

「だってあの時の友奈ちゃんは他人の車でしかも秋名でしたから…!でも赤城であのハチロクなら問題ないっすよ!」

「確かに言われてみれば…、それに友奈ちゃんは赤城じゃレッドサンズ相手に連勝してるんだ。心配するだけ損かもな」

「…いえ、それでもかなり厳しいと思います」

 

 

 珍しく意見を言ってきた拓海に対して、黙って話を聞いていた祐一がお前らしくないぞと口にしながらどうしたのかと聞いていく。

 というのもその秋名でのハチゴーデビューで明日香と遭遇した際、友奈と似たような感じで自分も樹の車に乗って訳だが、かなりヤバイオーラを感じたようだ。

 

 

「ほう、おまえにしちゃ珍しい意見進言だな。なんか理由あるのか?」

「…まあ理由というか、イツキのハチゴーで秋名行った時に明日香ちゃんと遭遇したって言ってたじゃないですか…?あの時オレイツキのに乗ってたんですけど…結構ヤバかったですから…」

 

 

 だがその話をした瞬間に、池谷がえっという表情になりながらお前あのハチゴーで走ったのかと尋ねていく。本人はさほど気にしていないのか正直にはいと返事をしており、詳細を変わる形で樹が事情を説明する。

 

 

「へ?拓海お前、イツキのハチゴーで走ったのか?」

「えぇ、まあはい…」

「…実は(経緯を説明中)…というわけで」

 

 

 あのハチゴーでナイトキッズのワンエイティとシルビアをダウンヒルとはいえど千切ったなど、にわかに信じがたい話。

 だが友奈がその光景を目撃していたことから樹の言っていることは事実、おまけに明日香のMR2とやり合ったとなれば拓海のドライビングテクニックは想像よりも高いということになる。

 

 

「…信じられますか店長、いくら拓海とは言ってもハチゴーですよハチゴー」

「普通だとちょっとなー…、ハチゴーだし」

「…全然信じてないですね」ムスー

「いっ…イツキ君の言ってることは本当ですよ、私とか今居ないですけど祐也も観てるので…」汗

 

 

 にわかに信じがたいことではあるものの、まさかハチゴーをそこまで乗りこなせるとはな…と内心祐一はそんなことを思っていた。

 一見見た目は似ていそうでもハチゴーと文太のハチロクでは天と地ほどの差が出てくる。ボディーが同じでも乗りこなせる訳では無い。

 

 

ーいつきの言う事は怪しいが…、友奈ちゃん達も観てるとなれば事実だろうな…ー

「しかしまあそこまで乗りこなせるとは…、思っていた以上に拓海のテクニックは高いな」

「でもハチゴーならハチロクと車体は同じですし…、操縦性も」

「あほう池谷、そんな単純な話じゃない。拓海のハチロクは文太が熟成させたようなもんだ、ノーマルのハチゴーとじゃ話にならん」

 

 

 つまりすべての車…とまではいかないが、FRレイアウトの車に限って言うなら拓海はちょっと走ればその車のポテンシャルを限界まで引き出せる可能性が高い。

 まあそもそも文太曰くハチロク自体そういった車のようなもので、誤魔化しが効かないからこそ高い適応力が身につくのだろう。

 

 

「じゃっじゃあ!拓海はどんな車でも…」

「流石にそこまで…ではないだろうが、FRに限っていえばちょっと走っただけで限界のポテンシャルを引き出せるかもな」

「……」

「そもそもハチロク自体誤魔化しが効かない車だ、だからこそ基本操作がしっかりしないといけない」

 

 

 

 

 

 

『クルマはドライバーを育てる』

「……文太はいつもそういってたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまあそんな感じで盛り上がっている2人のお陰で完全に空気扱いになりつつある拓海達だったが、ふと樹がそういえば明日香はどんな走りをするんだ?と友奈に尋ねていく。

 もちろん友奈もすべて把握している訳では無いが、ハチゴーデビューの際にみた走りから察するに、後追いで輝くタイプだということだけは分かっているらしい。

 

 

「…そういえば友奈ちゃん、明日香ちゃんってどんな走りするんだ?」

「うーん…、すべて把握してるって訳じゃないけど…。イツキ君のハチゴーデビューの時の走りを見る感じだと後追いで輝くタイプ…かな?」

 

 

 それとブレーキング勝負にも強いということも把握しているようで、あのバトルでそこまで見てるのか…と樹を驚きを隠せずにいる。

 もちろんそれは拓海も同じように思っていたわけだが、心の奥底で無意識にライバル意識を芽生えさせているのか一瞬それを匂わせるようなこと呟くのであった。

 

 

「すげー…そこまで見てるのかよ、さっすが友奈ちゃん」

ーやっぱ友奈ちゃんすげーよ…、オレとは天と地の差……知識じゃ叶わねーな。…でも走りなら俺だt…ー

「あれ…なんで俺友奈ちゃんを意識して……」

 

 

 

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