頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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第三十二話 イツキに女友達!?

 

 

 

 2台が激しくホイルスピンをさせながら飛び出したのと同時刻、スタートライン近くの駐車場には樹と拓海がハチゴーから降りてきており、盛り上がっているギャラリーたちを見るやいなや樹が完全に乗り遅れたと嘆きの表情を浮かべていた。

 

 

ギャァァァ!!

「うはぁぁ!!?乗り遅れたぁ…!!?くそーいいところ完全に見逃したし…!!」

 

 

 ちなみに何故遅れたのかと言うと昼間に樹は拓海と一緒に茂木やその親友である沙織と遊びに行って、帰りも難なく送り返したまではいいのだが、浮かれていたお陰でてんやわんや状態に(樹が)なってしまったのが原因だとか…。

 もちろんなんとかスタート前に滑り込むことには成功したものの、止める場所を探している間にスタートダッシュを見逃してしまうことに。

 

 そんなオーバーリアクションの親友に対し、やれやれ…という表情を見せていた拓海だったがふと背後から声をかけられたことではっとした表情になる。

 

 

「…はぁ…」

ー遅れた原因の主が何いってんd……ー

「あれ?もしかしてイツキか?」

「へ?」

 

 

 拓海はそこまでま聞き馴染みはなかったのだが樹は聞き覚えがあるようで先程のオーバーリアクションが嘘のようにハッとした表情になると、慌ててそちらに視線を向けていく。

 

 するとそこには金髪のセミロングが特徴的な女性、飯田由紀の姿があり彼女も樹の顔を見るやいなややっぱり…!という表情になる。

 

 

「っうぇ!?その声って……やっぱり!由紀ちゃん!?」

「やっぱり!オーバーリアクションしてたからもしかしてって思ったけど…イツキ君じゃん!!」

 

 

 あまりにも急な展開に最初こそほへ?という表情になっていた拓海であったが、しばらくして見覚えがあるのか思い出したようにあっという顔になった。

 もちろん由紀も何度か拓海の顔を見たことがあるらしく、目が合うと会釈しながら声をかけてきた。

 

 

「……?ってあ…もしかして……、高1のときによく樹が言ってた……」

「おっ?そこにいるのは拓海君じゃん!やっはろー、うちの変なイツキ君が世話になってるねー」

 

 

 ちなみに拓海が言っていたように樹と由紀は高校1年生のときに同じクラスメイトで、いかがわしいことを言っていた彼をよく鉄拳制裁していたとか…。

 まあ言わずとも樹専門のツッコミみたいなポジションだったので、少ししか接点がない拓海でもそれで覚えていたらしい。

 

 

「いやいや、こっちこそ。高1のときイツキの面倒見てくれてたんだし…、俺が言いたいよ」

「別に気にしなくても大丈夫よー、こいつよくいかがわしいことよく言ってたからツッコミしてたようなもんだし」

「いや…あれはどう見ても鉄拳s…『何か言った?イツキ君』イエナニモ……」

 

 

 とまあそんなことを話していた訳だが、ふと拓海が何で今日ここにいるのか…という疑問が浮かんだようでそのことについて尋ねていく。

 確かに走り屋とは関係ないように見える…というか今までそういった話は樹ですら聞いたことがない。

 

 

「…あっそういえば由紀ちゃんって、なんで今日ここにいるの?」

「ほへ?なんでいるかって?」

「いや…イツキの話を聞く限りじゃ走り屋とは関係ないようにも思えるから…なあ?イツキ」

「…言われれば、俺高1のときクラスメイトだったけどそんな話は聞いたことも……」

 

 

 そういえばイツキにもそのことを話してなかったな…と内心つぶやいていた由紀だったが、実はここ最近走り屋としてデビューしたんだと語り出す。

 もちろんそんなの初耳なので、それを聞いたイツキはえぇ!?と相変わらずなオーバーリアクションでつい驚いてしまう。

 

 だがすぐに我に返ると走り屋ってことは車も持っているのかと訪ねていき、彼女も隠すことなくあそこにあるよーと口にしながら愛車のスターレットを指さす。

 

 

「そういえばイツキ君にも言ってなかったけ…(汗)実は私最近免許取ってから走り屋デビューしたんだ!」

「…えぇぇぇぇ!!?まっマジかよ…!?ってことは車とかももう持ってるってことだよな…!」

「…あっ相変わらずなオーバーリアクション(汗)、まあでもそうなるかな?ちなみにあそこにあるスターレットが私のね?」

 

 

 当然スターレットはイツキも知っている車、間違えてハチロクではなくハチゴーを買った自分と照らし合わせながらどうして俺だけ…と頭を抱えながら唸ってしまう。

 しかしその理由を知らない由紀は首を傾げながらどうしたのかと口にしかけるが、拓海がイツキのハチゴーを指さしながらアレが原因だと口にする。

 

 

「うぉ!?スターレットじゃん…!!…いいなー、ハチロクと間違えた俺と違ってなんでみんないい車を……」

「?どうかしたのイツキくn…」

「あー、原因はアレです。アレ…」

「アレ?」

 

 

 一見すればハチロクにも見えなくはないが、よくよく見てみるとそれがハチロクではなくハチゴーだということに由紀は気づいたようで、それでイツキが凹んでいる理由も察した様子。

 しかし過去にいかがわしいからって鉄拳制裁をしていたとしても高1時のクラスメイトということもありそこ辺のことはしっかりしているらしい。

 

 別に気にする様子も見せずハチゴーとか返って珍しい上にハチロク以上に弄りがいのあっていい車じゃないか、と笑みを見せながら褒めていく。

 

 

「…あーなるほどね、けど別に凹む理由にはならないんじゃない?ハチゴーだっていい車だし、弄りがいもあって楽しいと思うよ?」

 

 

 その様子を見ていた拓海は、案外イツキに厳しいもんだと思っていた子にこんな一面があるとは…と少し驚いたような表情を見せていた。

 とはいえ雰囲気にはいい子だというのは察していたらしく、賛同する形で俺もハチゴーはいい車だと思うこと。そして自分だけの車があるってのが羨ましいですと付け加える。

 

 

ークラスメイトだった時はよくイツキに鉄拳制裁してたけど…、雰囲気もそうだけど案外いい一面もあるもんだな…ー

「俺もです、ハチゴーだっていい車ですし…。何より自分だけの車があるってのが羨ましいです、…俺親父の車に乗ってるようなもんですし…」

 

 

 なんだかんだいって樹の周りは恵まれていると言ってもいいもので、いい友達やクラスメイトを持ったよと涙を浮かべながらそんなことを口にしていた。

 これだけならいいお話なのだが、樹がしかも可愛いくて性格のいい女の子たちと友達になれるとか最高とか口にしたせいで、久しぶりに由紀の鉄拳制裁が炸裂することに。

 

 

「くぅ…!!俺って本当にいい友達を持ったぜ!!」

「ほんと、相変わらずイツキはオーバーリアクションn……」

「しかもかわいくて性格のいい女の子たちと友達になれるとか最高s…『やかましい…!』あべし!?」

 

 

 まあこれも樹らしいと言えばらしいので、それを見ていた拓海は微笑ましい表情を見せていたが、背後から聞き慣れた声が聞こえてくる。

 その声が聞こえてきた方に視線を向けると、そこには祐也や羽南の見慣れた2人の姿がありこちらに気づいているようで声をかけながら駆け寄っていく。

 

 

「おーお前ら来てたのかー」

「よーやくきた、おそいよー?もう2人共スタートしちゃってるし」

「悪い悪い…、ちょっと色々あって来るのが遅れた……」

 

 

 すると祐也が由紀と樹の絡みを見るやいなや、2人が知り合いだということを察したようで、そんな感じのことを尋ねていく。

 もちろん隠す理由もないため樹への鉄拳制裁を止めながらもそうだと口にしながら事情を2人にも説明する。

 

 

「ん?あれっ樹、その由紀さんって人と知り合いか?」

「あーそうそう、知り合いっていうか高校1年生のときのクラスメイト…!よくいかがわしいこと言ってたからこうやって懲らしめてたんだ」

「いっ…いかがわしいことなんて…あとちょっとくっ…苦しい…」汗

 

 

 そんな2人の会話を聞いていた拓海は初対面なはずの祐也が彼女の名前を知っていることが気になったようで、知っているのか?と少し驚き気味に尋ねる。

 当然バトル前に会っている上に親友である明日香からの紹介で知っていたため、祐也がその旨を拓海に話していく。

 

 

「ん?祐也、由紀さんのこと知っているのか?」

「え?あーまあ知っているというか…。この人明日香さんと中学からの同級生みたいで、それで紹介された感じか?」

 

 

 世の中狭いもんなんだな…とそれを聞いた拓海がそんなことを呟いていると、いつの間にか話の内容はお互いの関係からバトルのことへと切り替わっていく。

 もちろん明日香の親友でありよく走りを教えて貰っている由紀としては、当たり前だが彼女を応援するというもの。

 

 だが普通に考えれば、ドヤっている羽南の言う通り友奈の地元である以上こちらが有利なのにはどう見ても明らかに間違いはない。

 

 

「にしても今回のバトルどうなるんだ…?お互い実力は高いってことは確かだけど…」

「ふっふっ…!確かに赤城の歌姫は凄いけど…明日香ちゃんだって凄いんだよー?」

「それはどうかなー、友奈ちゃんはここ赤城がホームコース!おまけにレッドサンズ相手に連勝してるんだよ!一筋縄じゃいかないと思うけどなっ♪」ドヤっ

 

 

 だが事はそう簡単にいかないというもの、このあとの展開を何となくだが予感していた拓海はこのバトルはもしかしたら荒れるかもな…とそんなことを思いながら夜の峠に視線を向けていくのであった。

 

 

ーいや…何となくだけど、このバトル…きっと…いや確実に荒れるな……ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃赤城のダウンヒルを疾走するように下っていた2台は、友奈のハチロクを先頭にその後ろを張り付きながら明日香のMR2が続いていた。

 最初の左急コーナーに差し掛かると、そこに陣取っていたギャラリー達は2台のエキゾースト音でアドレナリンドバドバになっていたのか、ハイテンションで盛り上がっていく。

 

 

ギャァァァ!!

「きたきた!!2台揃って突っ込んでくるぞ!!赤城の歌姫が先頭だ!!」

「くぅー!?やべぇエキゾースト音だけでアドレナリンドバドバなのにあんな密着された2台見たら更に興奮しちまう!」

 

 

 当然その間にもコーナーに差し掛かった友奈はフルブレーキングしつつヒールアンドトゥでギアを2速に叩き込み、リアを滑らしながらステアリングを切り込む。

 もちろんその動きを真似るように明日香も同様にフルブレーキングからのギアを2速に叩き込み、リアを派手に滑らせる。

 

 

「うひゃー!!流石赤城の歌姫!?ライン取り完璧!!見てて惚れちまいそうだ!!」

「それだけじゃねぇ!ドリフトしてる時のスキール音もいいっていうか…!タイヤを労ってる感じがひしひし伝わってくる!」

「でも後ろのMR2だって負けてねーぞ!ブレーキングドリフト完璧じゃねぇーかあれ!?めっちゃ鋭い!!」

 

 

 派手ながらハイスピードのドリフトに歓喜している間にも、ギャラリーたちの目の前を通過していった2台はそのままガードレールギリギリに車体を名いっぱい寄せて立ち上がる。

 樹のハチゴーデビュー時もそうだが、明日香のブレーキングドリフトのテクニックが高いことにバックミラーを見ながら友奈は感心していた。

 

 

ドキャァァァァ!!

「……」

ーイツキくんのハチゴーデビューの時もそうだけど…、明日香ちゃんブレーキングドリフト上手い…。こりゃ気を抜いたらあっという間にやられるかも…ー

 

 

 だがそれは明日香も同じであり、秋名で出会ったときよりもキレの良いドリフトや走りに、流石は赤城の歌姫と呼ばれるだけはあるな…と内心そんなことを思っていく。

 実際今も余裕があるかと言われればギリギリあるようなもので、少しでもミスればあっという間に決着をつけられそうな状況でもある。

 

 

ーうひゃー、流石友奈ちゃん。キレ良すぎ…。流石は赤城の歌姫って呼ばれるだけはあるな…ってそんな呑気にしてられないか…こっちもギリギリなんだよね…ー

 

 

 しかしどんなにすごい走り屋であっても必ず弱点というものは存在する、それが走りにこだわりのある赤城の歌姫なら尚更だ。

 絶対に見逃さない、少しでも隙があればぶち抜く…そんなことを思いながら明日香は覚悟を決めた表情で更にアクセルを踏み込みMR2の心臓部を唸らせながら加速していくのであった。

 

 

ゴァァァァ!!

ーけど…!そんなすごい人でも絶対弱点はある…!走りにクセがある友奈ちゃんなら尚更…!絶対に見逃さない、少しでもチャンスがあればぶち抜く…!ー

 

 

 

 

 

 

「ほぉ…流石やなぁ、走りに迷いがない。こりゃオモロイバトルになりそーや」

 

 

 ギャラリー達が盛り上がっている中、最初の急な左コーナーに陣取っていた宗一は、2台の走りに感心した表情を見せていた。

 かつて自分がホームコースとしていた環状線や六甲峠で流行っていたシビックやCR-XなどといったFF車が突っ込んでは走り抜けるのとは違うものの、それでもFRでドリフトという走りに魅力を感じているらしい。

 

 

「俺が走ってた環状線や六甲峠とじゃ全然違うが、こういう走りもなかなかわるーないんやな」

 

 

 特に赤城の歌姫と呼ばれるハチロクは一味違うように感じているようで、あの独特な走りは六甲峠でも見たことがないゆえかなり興味を惹かれている様子。

 

 

「あのMR2もそーやが、赤城の歌姫っちゅうハチロク乗りはもう別次元やな。あんなん六甲峠でも見たことあらへん」

 

 

 しかしそんな隙すらないようにも思える赤城の歌姫、その走りに少しばかり気がついたことが彼にはあるようだ。確かにあの完璧で綺麗なドリフトは自分どころか誰にだって簡単に真似が出来るとは思えない。

 

 だが今見る限りではあるものの、彼女の走りとしては荒々しさのないスマートで綺麗な走りを特徴としているようにも感じる。

 もちろん鋭い走りやハイスピードなドリフトは本物、しかしそれでも彼の目には綺麗でスマートな走りを優先しているようにも見えるのだ。

 

 

ーアレは誰にだって真似出来るような走りやない…、けどあの走り屋は見た目とかスマートな走りを優先してるように思えるなー

 

 

 今のところそれが致命的な弱点になっているようには思えない、しかし六甲峠などで激しいバトルを繰り広げてきた彼にとってそんなこだわりのある走りが弱点として牙を剥く可能性があると踏んでいる様子。

 

 しかしそんな彼の思いとは他所に2台は峠一体に大きなエキゾースト音を響かせながら、もつれ合うように暗闇に包まれたダウンヒルへと再び突っ込んでいくのであった。

 

 

 

 

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