頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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渋川の某GSスタンドで働くことが決まった友奈、スタンドにアルバイトとして女の子が来るとは思っていなかった池谷達は心の中で嬉し涙を流していた。




その頃高橋涼介は、啓介を打ち負かしたハチロクに目をつけて興味を示してなぜ再び走り出したのか…密かに闘志を燃やしつつ注目するのである。




(今回は少し長めです)


第二話 リベンジ

 

 

 

翌日

渋川GSスタンドにて 

 

 

 

「「いらっしゃいませー!!」」

 

 

 

蒸し暑い日が続く中スタンドからは相変わらず元気な声が響き渡ってくる。やはり夏休みということもあるのか、遠出をしたりするためにやってくるお客さんがほとんどのようでいつも以上に繁盛していた。

 

 

 

「いつも通りハイオク満タンでお願いするよー。」

 

 

池谷「あっはい…!ハイオク満タン入りまーす!!」

 

 

樹「ひー…!今日は忙し過ぎだろ…!まあ繁盛してていいけど…。拓海ぃ!!今日はボーとする暇ねぇぞ!」

 

 

拓海「へーい……(あちぃ…、なんでこんなときにお客さんがたくさん……)。」

 

 

 

いつも以上に多いとなるとその分テキパキ動かないと追いつかなくなるため池谷達は忙しくあちこちを行ったり来たりしている。拓海に関してはなんでこんな暑いときにたくさん来るのかという不満を心の中で口にしている始末だが、それでも手はしっかりと動いていた。もちろん彼女も例外ではなく……、

 

 

 

友奈「お客さん、灰皿のタバコ捨てておきましょうかー?」

 

 

「おぉー、助かるよお嬢ちゃんー。丁度溜まったから家で処分しようと思ってたからー。」

 

 

友奈「分かりましたー♪捨てておきますね…!」

 

 

池谷「友奈ちゃんー!こっちの車の窓ふき頼めるかー!給油機の上に窓ふき用雑巾あるから…!!」

 

 

友奈「了解です!灰皿捨ててから行きますね…!!」

 

 

 

しばらくはアシスタントとして働くことになった友奈は主に池谷達のサポートのため灰皿のごみ捨てや窓ふきなどを中心に行っており、時間があれば給油の仕方も教わっている。

 

 

 

「いやーやっぱ可愛い子がいると雰囲気がいいよねぇー。しかも真面目で性格も良さそうと来た、俺が学生時代の時なら間違いなく惚れてるなー。」

 

 

池谷「はっはぁ…(やっぱお客さん受けがかなりいいな…。あの子がうちに来てくれて本当に良かったよ。お陰でスタンド働いてて車以外で楽しく感じれそうだ…(心の舞))」

 

 

 

あれだけ忙しく動き回って汗とかもかいているのにも関わらず嫌な顔を一つも見せずにずっと笑顔で対応している影響や、お客さん受けもいいようで時折そんなことを口にする人がチラホラ見受けられる。そんなお客さんとの会話をしていて改めて友奈がここに来てくれて良かったと池谷は実感するのであった。

 

 

  

 

 

 

 

友奈「ありがとうございましたー♪(頭を下げて)」

 

 

 

それからしばらくは忙しい時間が続いたのだがようやく客足が途絶えてスタンドは落ち着きを見せ始めていた。最後のお客さんを見送った友奈は帽子をかぶり直して定位置へと戻ろうとすると祐一が歩み寄りながら声をかけてくる。

 

 

 

店長「友奈ちゃーん、今お客さんいないからついでに水分補給と休憩してきたらどうだー?」

 

 

友奈「あっはい…!でもいま確か池谷先輩しかいないんじゃ……、しかも私が先にしていいのかな…?」

 

 

池谷「大丈夫だよー。この時間ならそこまで人手は要らないし、それにもう時期拓海達が戻ってくるだろうからさ…!」

 

 

店長「今日はかなり暑いからなー、レディもしっかり水分補給ト休憩しないと体が持たないぞー?」

 

 

友奈「んー、そうですね…!分かりました♪友奈水分補給行ってまいります♪(笑みを浮かべ)」

 

 

池谷「おう…!(駄目だ…こんなクソ暑い日にあんな笑顔がされると惚れちまいそうだ……。俺には出来ねぇ芸当だな…(汗)」

 

 

 

祐一や池谷の後押しを受けて、先輩一人だけで大丈夫なのかという不安があったようだがせっかくならお言葉に甘えようと言う形で水分補給や休憩をする為に一度席を外す友奈。その最、笑顔一杯の表情を見せた彼女に対して池谷は思わず惚れそうになってしまう。

 

 

 

樹「お?友奈ちゃん休憩かー?」

 

 

友奈「うん♪一足先にしちゃうから少し申し訳ないような気持ちもあるけど……(汗)」

  

 

拓海「別にいいよ…、俺達は何年も働いてるからある程度耐性あるけど…。友奈ちゃんはそうも行かないだろうからさ……。」

 

 

樹「そそっ!なんかあってもいけないし、それに友奈ちゃんがいてくれるとけっこう助かるんだ…!!」

 

 

友奈「えへへ♪そう言ってもらえると嬉しいなー♪それじゃちょっと水分補給と休憩してくるねー♪(手をひらひらしつつ)」

 

 

 

途中戻ってきた樹たちとすれ違ったためちょっと話を挟んでいるがすぐに別れて友奈は休憩室に入っていくのであった。そんな彼女を見つつ二人は池谷達の元へと戻ってくるがすぐさま友奈の話で盛り上がる。

 

 

 

樹「凄いっすよね友奈ちゃん…!こんなクソ暑い日でのバイトなのに疲れた表情一切見せませんでしたよ…!!」

 

 

拓海「女の子って俺達男と比べるとどうしてもこうゆうのはキツそうに思えるんだが……、下手すればこっちよりも体力あるんじゃないか……?」

 

 

池谷「あぁ…、しかもそれであんなクソ可愛い表情見せてくれるんだから客受けもいいしな…。心なしかお客さんとの会話する回数だって増えてきてるし…(シミジミ)。」

 

 

樹「くぅ〜〜〜ッ!!やっぱ改めて友奈ちゃんが来てくれて良かったすよー…!!これで俺のバイトにも薔薇色生活が…!」

 

 

拓海「そこまで変わるもんか……?(そう言いながらも案外拓海も満更ではない表情をしている)。」

 

 

 

ウォン!!ウォン!!

 

 

 

友奈が新しく入ってからの日課とも言えるほどになってしまっている話題で相変わらず男連中が盛り上がっていると、後ろから独特なロータリサウンドが聞こえて来た。その音に気づいて池谷達がそちらに視線を向けると、『レッドサンズ』のステッカーが貼られ、尚且つ嫌というほど見慣れた黄色のFDがスタンドに入ってくる。

 

 

 

樹「げっ……あの黄色のFDは……。」

 

 

池谷「間違いない…高橋啓介だなありゃ……、今度は何しに来たんだ?」

 

 

拓海「……(真剣に見つめる)。」

 

 

樹「まさか…拓海にリベンジマッチの申し込みっすかね?」

 

 

池谷「…いや…雰囲気的にそれはなさそうだな…。ひとまずいつも通りの対応するぞ…。」

 

 

 

まさかこのタイミングで啓介のFDが来るとは思っていなかったようで、一体何事かという視線を三人は向けていた。だが明らかにバトルの申し込み…という感じの雰囲気ではないためひとまずお客さんとして対応することに……。

 

 

 

啓介「ハイオク満タン頼めるか?あっあと窓ふきもお願いするぜ。」

 

 

池谷「分かりました…!ハイオク満タン入りまーす!!」

 

 

啓介「あーそれとだ、今日藤原いるか?いるならちょっと呼んできてほしいんだが…。」

 

 

池谷「拓海を…ですか?」

 

 

啓介「そうだ、あっいや別にリベンジマッチとか申し込むわけじゃないぜ。少しアイツに確かめたいことがあってな。」

 

 

池谷「了解です…。おい拓海ィ!!ちょっとこっち来い!!なんかお前に話したいことがあるらしいぞ…!!」

 

 

拓海「おっ俺ですか……?」

 

 

樹「なんだ……?別にバトルとかの申し込み…って感じの雰囲気じゃなさそうだし……(首を傾げ)。」

 

 

 

まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったのか、思わず拓海が驚きの表情を見せる。雰囲気からしてバトルの申し込みでないのはわかっているため樹も何故拓海を呼んだのかと不思議そうに首を傾げていた。とりあえず呼ばれていることには行かないといけないため仕方なく拓海は啓介のFDに駆け寄っていく。

 

 

 

池谷「とりあえずお前は窓ふき頼むわ。たぶんそのときに高橋啓介の方から話があると思うから……。」

 

 

拓海「分かりました…(ひとまず窓ふきをすることに)。」

 

 

 

と言ってもただ突っ立って話を聞くわけにもいかないためひとまず池谷が給油している間に窓ふきをするように依頼して、その通りに拓海がせっせと窓ふきをしていく。そこから少ししたくらいで静かにしていた啓介が口を開いてこんな話を切り出す。

 

 

 

啓介「…なあ藤原、一つ変なことかもしれねぇが聞いてもいいか……?」

 

 

拓海「別に構いませんが……なんです……?」

 

 

啓介「お前、赤城にもハチロク乗りがいるのを知っているか?」

 

 

拓海「……はい?」

 

 

 

だが切り出された内容が自分の思っていたの違い完全に想定外だったのか、拓海が思わず声を出して目を見開いてしまう。まあ突然そんなこと言われたら誰だってこんな反応になりますわな…。

 

 

 

池谷「…お客さん、それがどうしたっていうんですか…。確かに今どきハチロク乗りは珍しいです…。それと拓海が一体なんの関係が……?」

 

 

啓介「ふっ…そりゃ突然そんなこと言われたら誰だって困惑するよな……。…このことはまだ一部の奴にしか言ってないんだが……、俺はそのハチロクに負けちまったんだ…。」

 

 

拓海「……!」

 

 

啓介「…しかも俺が誰にも負けないと思っていた地元の赤城でお前とバトルする前に……な…(フッ)。」

 

 

池谷「たっ拓海とバトルする前に赤城で負けた……!?そのハチロクにか…!?」

 

 

 

まさかの啓介の口から発された衝撃的な事実、あまりのことに拓海でさえも思わず目を見開いて驚きを隠せずにいる始末。池谷に限っては思わず声を荒げてしまい慌てるように問い詰める。

 

 

 

啓介「あぁそうだ……、藤原とバトルする前に赤城で同じハチロクにあっさりと負けたんだよ。悔しいくらい完璧なパーフェクトドリフトに鮮やかなラインを見せつけられてな…。」

 

 

店長「……(ほう、アイツ再び走り出したのか…。今度久しぶりに電話でもかけてみるかな…。)」

 

 

 

明らかに嘘を言ってるようには見えないため、二人が驚きを隠せない中隅っこから見ていた祐一は何か知っているようで少し笑みを交えていた。そんな中でも啓介の話は続く、

 

 

 

啓介「たぶんお前たちが見ても同じことになるだろうな…。まるで歌姫かのようなスキール音に惚れてしまいそうなキレイなドリフト…、藤原とは全く違う走りだったな…(フッ)」

 

 

池谷「まっ待ってくれ…!そんなことがあり得るはずないだろ…!?走りで歌姫のようなスキール音を響かせるなんて……!!」

 

 

啓介「あり得るんだよ…、そりゃ普通なら出来るはずもないし俺でもそんなのは無理だ…。だが一人のハチロク乗りを覗けば…、ソイツなら出来てしまうんだよ…。」

 

 

拓海「……。」

 

 

啓介「だから俺はソイツを見つけてリベンジを申し込む…!!このままやられっぱなしなんて俺のプライドが許さないからな…!!」

 

 

池谷「…ちなみにそのハチロクはどんなのなんだ…!そこまで言うなら相当な奴なんだろ…?」

 

 

啓介「色は藤原と同じパンダカラー…だがボンネットがカーボン仕様でエンジンも推測通りなら恐らく換装してある…。そのハチロクは必ず俺が仕留めるが……、藤原も気をつけるんだな………!」

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『赤城の歌姫』には…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

池谷「……(どうゆうことだ…!?拓海とやる前に負けたなんて…、しかもアイツの地元赤城でだと…。頭の整理が追いつかないぜ……)。」

 

 

 

そう言い残してスタンドを後にするFDを見つつ一体どうゆうことなのかと池谷は驚愕していた。秋名で拓海が勝てたのも地元の地理を活かしたからでありあれが赤城でのバトルならそうもいかないだろう。

 

それだけ彼の実力はかなり高いということを意味しておりそんな啓介を地元赤城であっさりと倒してしまったハチロクのことを思うと頭の整理が追いつかずにいた。

 

 

 

友奈「お待たせしましたー♪友奈只今戻りましたー♪」

 

 

樹「おかえりー!」

 

 

拓海「おかえり……。」

 

 

池谷「おっおう、おかえり…(いや…待てよ…?)。」

 

 

 

啓介が立ち去った丁度のタイミングで休憩を終えた友奈がいつものように笑みを浮かべながら拓海達の元へと戻ってきた。そんな様子をふとみて何か気づいたのか池谷の表情がハッとなり、もちろん彼女にではなくその視線は後ろに止まっているハチロクに向けられている。

 

 

 

池谷「……(確か友奈ちゃんのハチロクもカーボン仕様のボンネットだったよな……。それにエンジンもレース用に換装してある……、それにハチロクに乗ってるやつなんて今どき限られてる……まさか…)。」

 

池谷「……(フッ…まさかな…、そんな偶然があり得るはずがないぜ……。ましてや友奈ちゃんが走り屋になんて見えないし…あのハチロクは親からの譲り受けだからな…)。」

 

 

 

一瞬啓介の言っていたハチロクの正体は友奈ではないかと思った池谷であったがそんなはずがないと首を振って否定する。彼女がそんな風には見えないし、ましてやこんな可愛い子が走り屋なんて到底思えない。 

 

 

 

友奈「そういえばさっきお客さんと話してたけど、何話してたのー?」

 

 

拓海「……さあな…。なんか人探ししてるっぽかったけど…、俺にはよく分からなかったな……。」

 

 

 

一人池谷が考え込んでいる中友奈は先程啓介との会話をしていたのを見ていたのか何を話してたのか拓海に首を傾げながら質問をするが、拓海は平然を装っていつもの表情をしながら何気なく答えるのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方

更衣室にて

 

 

 

友奈「んしょっと…!」

 

 

 

今日のバイトが終わったのか更衣室では友奈がスタンドの制服から私服に着替えている。やはり汗をかいているのもあるのか時折置いてある扇風機に体を当てたりタオルで吹いたりしながら身だしなみを整えていた。(ちなみに服装は薄いオレンジ色のスカートとシャツが一緒になっている服と青色のボタン付き上着を着ており、足には少し眺めの黒色靴下、靴は動きやすいスニーカーを履いている。)

 

 

 

友奈「それじゃお先に失礼しまーす♪」

 

 

池谷「おう!お疲れさんー!帰り気をつけてな…!」

 

 

拓海「お疲れ……。」

 

 

樹「またなー…!!」

 

 

 

支度を終えると荷物片手に更衣室を後にして、まだ仕事中の池谷達に挨拶をしつつ車の元へと駆け寄り乗り込んでエンジンをかける。相変わらずいい音を響かせながら、ゆっくりと動き出した彼女のハチロクはスタンドを後にしていく。

 

 

 

ウォン!!ウォン!!

ブロロロ…!

 

 

 

樹「やっぱあのハチロクいい音しますよねー(後ろ姿を見ながら)。そういえば池谷先輩、拓海と一緒に高橋啓介のFDのところで何か話してたっすけどなんかあったんすか?」

 

 

 

走り去っていくハチロクを見ながら相変わらずいい音を響かせているなーっと思っていた樹であったが、ふと思い出したかのように二人に視線を向けつつ先程啓介と話していた会話の内容が気になっている様子で尋ねる。

 

 

 

池谷「あー…えっとな…。とりあえず言うが今のところはこのことナイショにしておけよイツキ…?けっこう場合によっては重大な奴だから…。」

 

 

樹「あっはい…、それは大丈夫ですけど…。(ここまで言うならかなり重大な話なんだろうな……)」

 

 

池谷「…高橋啓介が…地元の赤城で拓海とやる前に負けたそうだ……。白黒のパンダトレノに…。」

 

 

樹「たっ高橋啓介か負けた…!?(思わず声を上げるが慌てて声を小さくする)」

 

 

拓海「いっイツキ声が大きい……(汗)」

 

 

樹「すっすまねぇ…、でもそれ本当なんですか……?秋名ならいざ知らず…地元で…。確か赤城じゃ高橋啓介はけっこう速いって……。」

 

 

 

まさか池谷の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった樹は思わず声を上げてしまうが、すぐに我に返り慌てて声のトーンを落としつつ驚いている拓海に謝りつつ小声で真意を確かめる。

 

 

 

池谷「俺も信じがたいが……あの高橋啓介が嘘を言うようには思えない…。それにあの表情……、あれは間違いなく本当のことだろうな……。」

 

 

樹「嘘だろ………拓海以外に勝てるやつが赤城でいるなんて…、しかもハチロクでだろ…?そんな走り屋聞いたことがありませんよ……。」

 

 

店長「いーや、赤城でべらぼうに速いハチロクなら一台いるぞ。それも文太クラスの実力持っているやつがな…!」

 

 

拓海「うおっ…!?びっくりした……。」

 

 

 

本当にそんな走り屋がいるのかと樹が半信半疑で尋ねるが、その言葉を待ってましたと言わんばかりのタイミングで祐一がどこからともなく現れてきた。だがいきなりだったためか拓海は一瞬驚いて店長へと視線を向ける。

 

 

 

店長「悪いな拓海ーィ、…んでその話を戻すが昔赤城には『赤城の歌姫』って呼ばれていたハチロクがいたんだ。恐らくあの高橋啓介って奴が言ってたのもソイツだろうよ。」

 

 

樹「たっ確かに…!高橋啓介もそう言ってました…!!」

 

 

池谷「アイツも歌姫のように走らせるって言ってたからな…。そうゆうあだ名で呼ばれても不思議じゃない……、でもその言い方だと今は走ってないんですか?」

 

 

店長「あぁ、もう数年前に走り屋辞めて今は普通に暮らしてるはずだが……どうやら再び走り出したようだなぁ…。いやぁ、若い頃が懐かしく感じるよ…(しみじみ)」

 

 

拓海「……そのハチロクって…当時どんくらいヤバかったんですか…?」

  

 

店長「おっ、珍しく拓海が喰い付いて来たなー。そりゃもちろんけっこうヤバかったぜ?お前や文太みたいに荒っぽい走りはしなくてどちらかというと滑らかな走りを好んではいたが……、それでもかなり速くて当時のダウンヒルじゃ負けなしだったレベルだぞ。」

 

 

樹「そんなに速かったんだ……、でもなんで一度降りたのに再び戻ってきたんっすかね…?店長が若い頃にバリバリ走ってたなら今はけっこう年いってると思いますが…。」

 

 

池谷「まあイツキの言うとおりかもな……、拓海のオヤジと違って本格的に降りてるわけだし…。その訳も気になるよ…。」

 

 

店長「まっ理由は俺にも分からんが、こりゃ今年の群馬エリアの夏は大盛りあがりだろうなー。赤城や秋名両方とも賑やかになりそうだ。」

 

 

 

何故一度降りたのに再び走り出したのかは祐一にもわからな

いようだが、それを抜きにしても今年の群馬エリアは賑やかになりそうだという言葉を口にしつつ懐かしげに夕焼けの空を見上げているであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城山

午後9時……

 

 

ゴフ!!

ゴァァァァ!!!

 

 

相変わらず暗闇に包まれた赤城山のダウンヒルを、スキール音を響かせながらカーボン仕様のボンネットを身に着けたハチロクが夜道をライトで照らしながら駆け抜けているようだ。

 

 

 

友奈「やっぱこの時間が一番いいねー♪大体の走り屋は引き上げてるし、尚且つ遅すぎないから寝不足にもなりにくい…♪」

 

 

 

そのステアリングを握っている友奈は上機嫌な雰囲気を見せながら暗闇に包まれたダウンヒルをハイスピードで下っていた。スピードメーターの針ははすでに140キロ近くを指しておりこの狭い峠では普通なら出せないような速度を出していた(いやこの速度でなんで上機嫌な雰囲気出せるんですか())。

 

 

 

友奈「よっと…!(ゴクン!!)」

 

 

 

コーナーが迫ってくるとフルブレーキングでテールランプを点灯させながら減速、滑らかな手捌きで4速から2速へとヒール・アンド・トゥでシフトダウンさせてステアリングを斬り込む。

 

 

 

ゴギャァァァ!!!

ギュ!!

 

 

 

余裕の持った減速をしたハチロクはまるで生きているかのように自由なラインを取りながら鮮やかなドリフトでコーナーを流していく。進入から立ち上がりまで不規則で自由度の高いラインを取りながらも誰もが見惚れてしまいそうな落ち着いた走りを見せつつガードレールギリギリに立ち上がって加速する。

 

 

 

友奈「今日は後6本くらい走ったら切り上げて帰ろうかな…♪いい感じに走れてることだし、タイヤも余力があるしねー♪」

 

 

 

そんなことを口にしながらも赤城のダウンヒルを友奈は相棒のハチロクとともにとことんまで攻め込んでいく。静まり返った赤城山には…、まるで歌姫かのようなスキール音が響き渡り、特徴的な音色が奏でられるのであった…。  

 

 

 

赤城山頂上

道のど真ん中にて

 

 

 

ドン!!(効果音)

 

啓介「……(何がドンだよ……、見え見えじゃねぇか……)。」

 

 

 

すでにほとんどの走り屋が撤収して静けさを取り戻した赤城山頂上では路肩にFDを止めて道のど真ん中でどっしりと構えている啓介の姿があった。どうやら誰かを待っているらしい。

 

 

 

ゴァァァァ!!!

 

 

啓介「…(ようやく来たか…、相変わらず無駄にいい音出しやがって……。だがそれはそれで判別しやすいから助かるが…)」

 

 

 

すると下の方から聞き慣れた音が響いてきたためしっかりとみがまえてその主が登ってくるのを今か今かと待ち続けていた。音が聞こえてきてから待つこと少しするとコーナーの奥から友奈のハチロクが姿を現す。

 

 

 

友奈「………?(この時間なら誰もいないはずなのに……。それに…あの雰囲気…、私を待ってた感じがする…)」

 

 

 

もちろん友奈も気づいており、何故普段なら誰もいないはずの時間帯に一人ポツンといるのかと疑問に思っていた。しかし明らかに自分を待っていたように感じたためひとまず車を止めてみることに。

 

 

 

ウォン!!ウォン!!

 

 

 

啓介「…さてと…そろそろお見えか…、当時最速と言われた『赤城の歌姫』…。どんなやつか拝見させて貰おうじゃねぇか…!」

 

 

 

自分をあっさりとちぎり、兄の涼介が注目している『赤城の歌姫』とは一体どんな走り屋なのだろうか。そしてどんなドライバーが乗っているのかと考えながら、止まったハチロクの運転席ドアが開くのを闘志を燃やしながゆっくりと歩み寄っていく。

 

……がリベンジに燃えていた啓介であったが次の瞬間、視界に広がったまさかの光景にその闘志は一瞬で困惑や驚きに変わってしまう。

 

 

 

友奈「どうされましたかー?」

 

 

啓介「……へ?」

 

 

 

涼介の話を聞く限りかなりのベテランドライバーで尚且これほどのテクニックを持っているなら自分よりも年上だと思っていた啓介であったが、降りてきた友奈の姿を見て一瞬フリーズしてしまっていた。

 

まあ無理もない、これほどのテクニックを持っているなら自分よりも年上なのは確実。しかし蓋を開けてみれば年下でしかも20歳にも満たない少女だったときの驚きは計り知れないものだろう。

 

 

 

啓介「………(嘘だろ…、俺の思っていたのとは完全に想定外の流れだぜ……。本当にコイツが昔ここで大暴れしてた赤城の歌姫なのか……?まさか人違いとか……、いや…雰囲気はあの時と一緒だからそんなことは……)。」

 

 

 

まさかの出来事に啓介でさえもここまでの流れは想定外だったようで、本当に彼女が赤城の歌姫なのかとしばらく自問自答する有様であったのだった…。

 

 

 

 

 







第三話 挑戦状
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