頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

42 / 45
第四十話 次のステップ

 

 

 友奈達と別れた(正確には尾行されているが)羽南と祐也は2人で夏休みということもあってか多くの人たちでにぎわう海水浴場を歩きながら、泳ぐ前に何か食べていくことにしたらしい。

 祐也はそのことを何気なく尋ねるが、意識しっぱなしの羽南は表こそ平然を保っているが内心は心臓バクバク状態でそれどころではない様子。

 

 

「…んまあとりあえず泳ぐ前になんか食べていくか?道中あんまり食べてないし、適当に海の家とか屋台でも」

「あっ…うっうん!そうだね…!そうしよう!」

ーヤバい…///内心意識しっぱなしでヤバいかも…///今でこそ平然さを保ってるけど…///ー

 

 

 しかしそんな親友の本心に気づいていない祐也は、たまたま目に入った海の家を指差しながらあそこで何か食べていくかと提案。

 もちろん羽南も断る理由がないためそこにしようと同意していくのだが、ふと何気なく彼が口にした言葉に一瞬反応してしまう。

 

 

「あそことかいいんじゃないか?海の家、丁度人も少なそうだし」

「そっそうだね…!私もそこでいいかも…!とりあえず中入ろう!」

「だなー、まあ今日は俺がおごるから好きなの頼んでいいぜ」

「…ふぇ?」

 

 

 まあそうなるのも無理はない、普段の彼は一緒に食べることがあっても奢ることがほぼなく(たまに友奈含めて3人で食べに行くことはあるが大体割り勘)こういった提案はかなり珍しいのだ。

 珍しいこというね、と興味本位で尋ねた羽南に対し照れくさそうに前のラッキースケベのお詫びだと祐也は理由を口にしていく。

 

 

「めっ珍しいこというね祐也…、大体友奈ちゃん含めてこういう食べに行くときは割り勘なのに」

「あーその…なんだ、前の奴のお詫びみたいなもんだ。事故とはいえ流石に何もしないのはアレだったから…」

 

 

 その言葉を聞いた羽南は一瞬驚きながらも、直ぐに笑みを浮かべながらせっかくだしその言葉に甘えようかな?と口にしつつ、早く行くよと急かすように祐也の手を握りながら引くように歩き出す。

 普段からつるんでいるとはいえ、何時も以上に積極的な親友に祐也は驚いていたものの、そのまま引っ張られるように海の家へと入っていくのであった。

 

 

「……ふふっ♪ならせっかくだし甘えちゃおうかな?そうと決まれば早速いくよ祐也!」

「あっおい…!そんな急がなくても…ってかいつも以上に積極的だなお前」

「ほーら、早く早く♪」

「へいへい…」汗

 

 

 

 

 

 

 

 

「…今のところいい感じか?」

「だね…♪なんだかんだいって羽南ちゃん積極的に動けてるじゃん…!」

 

 

 そんな2人が海の家に入っていく様子を、他人から怪しまれないように尾行していた友奈と明日香は、思っていたより積極的に動けている羽南に関心の眼差しを向けていた。

 だが由紀だけは男性である祐也がエスコートどころか逆にされている状況に呆れているようで、もうちょいしっかりしなさいと突っ込みを入れていく。

 

 

「というか…あれ祐也がエスコートされてるように見えるんだけど…、男子なんだからしっかりしなさいよね…」ハァ

 

 

 まあデート作戦自体は今のところ上手くいっているため友奈がまあまあと宥めながら、自分たちも2人が入った海の家に行こうかと尋ねようとしたのだが…

 ふと背後から声をかけられたので3人はそちらに視線を向けていくと、そこにはチャラそうな20歳ぐらいの若い兄ちゃん3人衆の姿があった。

 

 

「でもまあ、今のところ上手くいってるし問題はないよ♪とりあえず私たちも中に……」

「そこのお嬢さん方、ちょっといいか?」

「へ?」

 

 

 当然顔も知らない相手なので、友奈は何故自分たちに声をかけたのか分かっていないような表情でどうしたのかと若い兄ちゃん達に話しかけていく。

 …が明日香と由紀は何となく自分たちに声をかけてきた三人衆の目的がナンパであることに気づいているようで、視線をチラリと合わせながら目だけで会話のキャッチボールをする。

 

 

「…あの、どのようなご要件で…」

「あーごめんごめん、いきなり声をかけてびっくりさせちゃったね。ところで今暇かな?ちょっと用事が君たちにあって…」

ーナンパだなー

ーナンパだねー

 

 

 当然ナンパに構っている場合ではないため、今はちょっと手が離せないと友奈はお断りの返答を返すのだが、パット見だけで暇そうと判断した男の1人がそんなことより自分たちと遊んだほうが楽しいと無理やり押し切ろうとしていく。

 

 

「えっと…申し訳ないんですけど、今手が離せないんで…」

「えー?今暇そうに見えるけど、せっかく海に来たんだから俺たちと遊ぼうよー。絶対楽しいって…!」

 

 

 どうやらナンパには慣れているようで、無理やりだが上手い言葉運びに流石の友奈もこのままでは押されそうな勢いになっていた。 

 …恐らく友奈だけ…いや似たような性格の親友だけなら男たちのナンパは上手く言ったのかもしれない、だが残念ながらその目論見は呆気なくとある発言で打ち砕かれる。

 

 

「あっえっと…」

ーいいぞ、このまま行けばナンパは上手くいく…!そうすればこの可愛い3人と遊ぶことが出来る!そしてあわよくば…ー

「申し訳ないですけど、ナンパはお断りです」

 

 

 その言葉を放った主は明日香、まるでゴミをみるような表情で見下しながらこれ以上詰め寄ってくるならこっちも強硬手段を取りますよと脅し気味の口調で逆にジリジリと詰め寄っていく。

 隣では由紀がいつでも一発ぶちかませると言わんばかりのオーラを見せており、その様子を目撃した男3人衆は一瞬で察した雰囲気を見せた。

 

 

「今そんな暇ないんで、それとうちの親友にそれ以上詰め寄るならこちらも強硬手段取りますがいいですか?」

「……」

ー…あぁ、これはこれ以上踏み込んだら駄目な奴だ…ー

 

 

 ナンパをする割にはそういったことは察しが良かったようで、急用を思い出したと適当な理由をつけながらそそくさと急ぎ足で人混みに紛れるように立ち去る。

 そんな後ろ姿を見ていた由紀と明日香は、その程度で逃げるなら最初からナンパをするんじゃないよ…と半分呆れ気味の表情を見せながらそう口にしていく。

 

 

「あっえっと、すっすみませんそういえば用事があったんでした…!それじゃ俺たちはこれで!ほら行くぞ…!(小声)」

「あっおう…!」スタスタ

「……はぁ、この程度で引くなら最初からナンパするんじゃないよ」呆れ

 

 

 やはり普段から走り屋という男の多い環境にいる由紀や明日香だからこそ、ちょっとした会話でも相手を怯ませることが出来たのかもしれない。

 とはいえお陰で穏便に事が済んだのには変わりないため、友奈は2人に助かったと笑みを浮かべながらお礼を述べた。

 

 

「ホント、イツキよりも根性なしだわアイツら」

「あっでも…!お陰で助かったよ、ありがとうね2人共♪」

 

 

 突如ナンパされたことで脱線しかけたものの、本来の目的は羽南のラブラブ作戦のサポートであるため、立ち話はこの辺にして改めて店内にはいることにした3人は2人が先に入った海の家へと足を運ぶのであった。

 

 

「いいってことー、親友が困ってるんだがら助けるのは当たり前。それより早く中入ろ、ナンパ野郎に邪魔されたけど本来の目的は羽南ちゃんのアシストなんだから」

「だね…!それじゃ店内入ろっか、もちろん!祐也にはバレないように…ね!」

「…言われなくてもわかってるわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

パパーっ

「「ありがとうございましたー!!」」

 

 

 友奈達が海水浴を楽しむ羽南と祐也を尾行しているのと同時刻、GSスタンドでは池谷と拓海が何時ものように給油を終えてスタンドを後にするお客さんを見送っていた。

 相変わらずカンカン照りなのには変わりないが、それでも今日はお客さんが少ないだけマシと言ってもいいようなもので、2人は見送りを済ませるとそそくさと日陰へと退避していく。

 

 

「ったく、相変わらず蒸し暑くて敵わないぜ…。拓海ちゃんと水分取るんだぞ」

「あはい……」

 

 

 その後店内にてエアコンの効いた部屋で飲み物を飲みながら休憩していた2人だったが、ふと拓海がそういえば今頃樹はデートの最中かと時計に目をやりながら呟いた。

 もちろん樹だけでなく今日お休みを取って県外の海水浴場へ遊びに(何やら意味深なことを言っていたが)友奈の方も今頃楽しんでるんじゃないですかね…、と拓海が続くようにそう口にする。

 

 

「ふぅ…やっぱ暑い日はエアコンの効いた部屋に限る、って…そういや今頃イツキの奴はデートの真っ最中か…」

「…ですね、というか友奈ちゃんも今頃県外の海水浴場にいる頃じゃないですか」

「そういやそうだな、やけに意味深だったのが印象深いけど……」

 

 

 まあそれはそれとして池谷としては年齢=彼女いない暦の自分より先に、よりによって樹にいい女が出来たことがよっぽど悔しいようで空になったペットボトルを握りしめながらわなわなしていた。

 拓海も気持ちは分からなくもないようだが、自分にもなつきという女の子がいるためそこまで気にならないような表情で先輩の背中を見つめていたのだが…

 

 

「…だがそれより…よりによってイツキに女ができるとは……、改めて思うと悔しくて仕方ないぜ…!」

「……」

 

 

 ふと外に目をやった際に黒色のR32GTRがスタンドの敷地内に入ってくるのが目にとまったため、嫉妬している池谷を放置して駆け足で店内から出ていくとそのGTRの元へと向かっていく。

 

 

ブロロロ

「あっ…、いらっしゃいませ…!」

 

 

 すると給油機の前に停車したR32GTRの運転席が開き、車内から黒髪セミロングの女性がぬっと顔を出しながら駆け寄ってきた拓海に対してハイオク満タンをお願いする旨を伝えてきた。

 

 

ボムっ

「すみません、ハイオク満タンでお願い出来ますか?」

 

 

 明らからに年上なのは彼でもわかったが、それを感じさせない綺麗な顔つきに拓海は一瞬だが見惚れてしまう。

 それと同時に何処となく友奈と似た雰囲気を纏っていることにも気付いたが、流石にずっと見るわけにはいかないのでそそくさと作業に取り掛かる。

 

 

「…あっはい!分かりました…!ハイオク満タンですね…!」

ー綺麗な人だな…、というか何処となく友奈ちゃんの雰囲気に似て…ー

 

 

 するとその最中にR32のドライバーである黒髪セミロングの女性がここの店長は今いるかと給油中の拓海へ尋ねていく。

 一瞬そのことに驚いた拓海だったが、直後何処からともなく現れた店長が彼女の名前を口にしながら久しぶりだなと口にしながら現れた。

 

 

「あとそれと、今店長さんっていらっしゃるかしら?」

「あっえっ…てっ店長…ですか?」

「おーだれかと思えば春香じゃないか、久しぶりだなー」

 

 

 どうやら顔見知りのようだが、拓海は初対面のようなものなので店長にこの人は知り合いなのかと尋ねる。

 もちろん拓海の聞いた通り店長の知り合い…というか昔からの付き合いがあるというか、なんならアルバイトで働いている拓海達の同級生、友奈の母親だと明かしていく。

 

 

「あっえっ…てっ店長知り合い…なんですか?」

「あーそうだ、昔からの付き合いでな。というかこの人、実は友奈ちゃんのお母さんなんだよ」

「え…!?おっお母さん…ですか!?」

 

 

 その後遅れる形でやってきた池谷も会話を聞いていたようで、そうなのかと驚きながら黒髪セミロングの女性で友奈の母親である春香へと視線を向ける。

 だが当の本人はこういった流れには慣れているのか、自己紹介と娘がいつもお世話になっている旨をご丁寧に頭を軽く下げながら話していく。

 

 

「そっそうなんですか…!?」

「いつも友奈がお世話になってますー、母親の春香です♪」

 

 

 歳を感じさせないその姿に池谷も同様に見惚れているようだが、店長だけは相変わらず歳を感じさせない容姿が羨ましくて仕方ないと口にする。

 だが春香自身は少し不便さを感じているようで、髪色違いということもあるが若くみられるせいで娘と一緒に行動していても家族に見られないと悩みを明かしていく。

 

 

ー全然そうは見えないぜ…、なんならまだ20歳ちょい上…いや三十代ぐらいのようにも見える…。うちのおかんとは偉い違いだ…ー ←おい

「相変わらずべらぼうな美人さんだなー、羨ましくて仕方ないよー」

「案外これも不便のようなものよー?髪色が違うってのもあるけど、若く見られるせいで友奈といても家族に見られないことが多くて…」汗

 

 

 しかしそれよりもこの人がかつて群馬エリアで最速を争うほどの実力の持ち主だった初代赤城の歌姫だったのか…と、池谷は興味深そうな表情を浮かべる。

 そんな池谷達とは別で車から降りた春香は店長である祐一と何気ない世間話(主に友奈のことに関して)を交わしていた。

 

 

ー…ってことはこの人が初代赤城の歌姫…、確かに友奈ちゃんと似たオーラを纏ってるが…ー

「そういや最近友奈ちゃん赤城で負けなしみたいだな、モータースポーツ出身揃いのレッドサンズ相手に連戦連勝みたいじゃないか」

 

 

 確かに祐一の言う通りここ最近友奈は地元とはいえ赤城ではほとんど負けなしと言っていいもので、レッドサンズに関しては涼介を除き啓介と賢太相手に連戦連勝。おまけにナイトキッズのトップ集団と絡んでいるMR2乗りにも勝っているのだ。

 だが春香はそこまで凄いとは思っていないようで、まだまだこれからだという旨を明かしていく。

 

 

「おまけにナイトキッズのトップ集団と絡んでる走り屋にも勝ってるし、これからが楽しみだな」

「何言ってんの祐一、これからが本番みたいなもんよ?」

 

 

 

 確かに負けなしなのには変わりないが、走りを継承しているということは走りのスタイル変わっていないということ。

 そうなれば走りの分析はしやすいと言っていいもので、特に高橋涼介には嫌ってほどここまでのバトルで分析されてるには違いない。

 

 

「言っとくけどあの走りはすんなり変えられるわけじゃない、昔と一緒なんだから高橋涼介当たりとかには隅から隅まで分析されてるに違いないわ」

「…言われてみればそうだな、あの走りだからこそ歌姫って呼ばれてる訳だし」

 

 

 今でこそ通用したとしてももしレッドサンズの高橋涼介に勝ったとなれば同じクラス…いや下手をすればそれ以上の走り屋達に目をつけられるのは間違いなく、その際に通用しない可能性も充分にあり得る。

 そろそろ次のステップに進む時期かしら…そんなことを思いながら春香は手にしていたお茶を飲んでいくのであった。

 

 

ーそれに今通用したとしても今後どうなるかも分からない、……そろそろあの娘を次のステップに進ませるべきかしらね…ー

 

 

 






まあナンパをした相手が悪かったですね
普段から走り屋の男と絡んでる由紀と明日香に勝てるわけもなく…、無事に帰れただけナンパ集団も良かったでしょう((

 そもそも2人がいる時点で成功するシチュエーションが全く想像できませんけど
(出来たとしても先が読めない)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。