頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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第四十一話 大成功の裏で

 

 

 

 海水浴場にやってきたのは午前中ぐらいだったのだが思ったより楽しく過ごせたようで、気づけば時刻は午後3時頃。

 こういう時って案外時間が過ぎるのが早いんだよな…そんなことを呟きながら、祐也は海水浴場に設置された時計の時刻や少し離れた先にいる周りの人たちに視線を向ける。

 

 

「……もうこんな時間か、はえーよなぁこういう時って…」

 

 

 やはり自分たちと同じ遠くから来た人たちや家族連れなどはレジャーシートやパラソルなどを片付け帰る支度をしていたりいるようで、それをみた祐也は自分たちもそろそろ引き上げるか…そんなことを呟きかけたのだが…

 羽南が発した声によって遮られてしまい、驚いた祐也は彼女へと視線を向けていく。

 

 

「俺等も引き上げるかぁ…、早めに帰らないとあっちに着いたt…」

「あっ…あのさ!祐也」

「ん?どうした羽南」

 

 

 どうやら今日一日を通して自分と過ごしてどうだったのか…それが気になっているようで、普段の彼女らしくない恥ずかしそうな口調で尋ねてきた。

 やはり友奈達がいない分自分じゃ役不足だったかな…と続く形で少しネガティブな発言を口にした羽南だったが、祐也はいや…と即刻で否定する。

 

 

「…その、わっ私と今日2人過ごしてみてどう…だった…?やっぱその…友奈達がいない分役不足……」

「…そんな訳ないだろ、むしろ逆さ」

 

 

 確かに友奈とは昔ながらの幼馴染、明日香や由紀はそうでないにしても女友達みたいな感じで確かに一緒にいやすい仲なのは確か。

 …がやはり祐也的には羽南と過ごしていたほうが遠慮なく接しやすいようで、久しぶりにこんな楽しく遊べたと少し嬉しそうな雰囲気でそう述べた。

 

 

「…確かに友奈は幼馴染で接しやすい、由紀や明日香も女友達では話しやすいのは確か。…でも正直羽南の方がいいんだよな」

「…え?」

「その…遠慮なく話せるっていうか…、友奈とはまた違うっていうか…。まっお陰で久しぶりに楽しめたよ、サンキュ」

 

 

 本人は別に至って普通に褒めたつもりだったのだが、その言葉で完全に堕ちた羽南は一瞬目を見開きながらも今までにないぐらいの笑みを浮かべながら、勢いよく祐也の胸元へと飛び込んでいく。

 流石にこの展開は読んでいなかったのか、羽南相手とはいえ女の子に抱きつかれたいう本能で思わず驚きの声を上げながら祐也は頬を赤らめた。

 

 

「……、ふふっ。ありがと、祐也♪」ギュ

「なっ…!?おっ…まっ…!?」

 

 

 幸い人目につかない場所なので他人の目線は気にしなくていいのだが、それでも視界の通りやすい上にいろんな人が訪れる海水浴場でのハグは祐也的には色々と困るというもの。

 もちろん普段の羽南ならそんなことはわかっているため絶対にハグなどしないのだが、完全にスイッチが入ったようで抱きついたまま顔を上げると、直後ぶっ飛んだ発言をかましていく。

 

 

ー…いっいきなりハグって…、幸いここは人目につきにくいとはいえど…。ってか羽南ってこんな積極的だったか…?ー

「おっおい…、流石にここでハグは色々と不味い…」

「……私は別にいいよっ、だって。祐也のこと…好き…だもん♪」

 

 

 …まあこれも祐也からすれば想定してなかった言葉だったようで、一瞬フリーズしかけたもののすぐに我に返り聞き間違えじゃないよな…と念のために羽南へ再度確認する。

 当然聞き間違えではないため、彼女がそんな訳ないじゃんと突っ込みを入れながら、改める形で恋人として付き合って欲しいと口にした。

 

 

「………はっ…!?あっえっ…今好き…って言ったか?聞き間違えとかじゃ…」

「んなわけないでしょ?私は至って本気なんですけどー…(ムスー)、もちろん恋人として」

 

 

 とはいえ祐也からすればまさか羽南から逆告白されるとは思ってもみなかったため、本当に俺なんかで良いのか…と少し自信無さげに尋ねていく。 

 だが羽南は今日一緒に過ごしてみて確認したようで、むしろ祐也じゃないと嫌だと言わんばかりの口調で少し照れくさそうな表情でそう話す。

 

 

「……本当に、俺なんかでいいのか…」

「……今日一緒に遊んでみて確認したの、やっぱ私は祐也とじゃないといけないんだなって…」

 

 

 そもそも恋人として釣り合わないのは自分じゃないのかと思っているようで、駄目なら駄目って強制しないから答えて欲しいと照れくさそうにしながらも真剣な口調で質問していく。

 …確かに最初こそびっくりはしたものの、むしろ告白されたのが羽南で良かったと彼女からしても想定外の返答が返ってきた。

 

 

「…というかむしろ聞きたいのは私だよ、…だってその…女の子っぽくないし…可愛くもないから…。こんな私が祐也と付き合えるか…」

「…なーに言ってんだ、俺はむしろ羽南となら喜んで付き合うぜ」

「…え?」

 

 

 先ほど彼が言った通り羽南となら友奈とはまた違った風に遠慮なく話せる上に、実は祐也自身も羽南と付き合ったらどうなるか…と考えたことがあるらしい。

 …まあそのきっかけは十中八九あのラッキースケベであり、それを聞いた羽南が胸元を押さえながら変態…と少し引きかける。

 

 

「さっきも言ってたけど羽南となら話しやすいし…、何より俺もお前と付き合ったらどうなるか…って考えたことがあるんだ」

「……それって、いつから?」

「………その…大変言いづらいが…、アレ(ラッキースケベ)で…」

「…変態///」

 

 

 といえ自分も似たような奴なので人のことは言えないか…と頬を赤らめながら苦笑いを浮かべていき、2人は互いに似た者同士だな…と思わず笑みを零していく。

 

 

「…まあ私も似たような状況だし…///人のこと言えない…///か」

「…お前もか…///」

「「ふふっ…///」」

 

 

 その後改める形で祐也が軽く咳払いをすると、恋人として自分と付き合ってくれるかと…手を差し伸べながら少し照れくさそうにそう話す。

 もちろん羽南に断るという選択肢(自分がそもそも最初に告ったため)があるはずもなく、もちろん!と自信溢れる笑顔で答えながらこれからもよろしくね!と差し出された手を握り返す。

 

 

「…そのなんだ、これから…俺と付き合って…くれるか?///」

「…当たり前でしょ…///私から告ったんだから、…いいよ。これから…よろしくね♪///」

 

 

 とまあそんな感じで無事カップル成立(リア充爆発しろ☆←主の声)したわけだが、羽南が周りをちらりと見渡しながらせっかく恋人になったんだからキスとかしてみたい…と恥ずかしさのあまりどうにかなりそうなるのを堪えながらそんなことを口にしていく。

 

 

「……(チラッ)あっあのさ…///祐也、その…///せっかく恋人なったんだし…///キス…とか…///」 

 

 

 だが流石に自分からは一歩踏み出せないようだが、その光景があまりにも可愛い過ぎたのか祐也は周りに誰もいないことを確認すると覚悟を決めたと言わんばかりに羽南を勢いよく抱き寄せる。

 羽南もびっくりしてどうしたのかと尋ねようとしたのだが、その前にその口を塞ぐように自分の唇を彼女の唇に重ねるようにつけた。

 

 

ー…可愛い…///ー

「…すまん///」

「なっ…!?///祐也どうしt…ん!?///」

 

 

 最初こそは驚きのあまり目を見開いていた羽南だったが、その後スイッチが入ったのか瞳をゆっくりと閉じながら身を委ねるように祐也の背中に手を回しながら抱きつく。

 もちろん祐也もそれに応えるように羽南の背中に手を回していくと、そのまま2人だけの幸せな時間を過ごしていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「…おー祐也なかなかアクロバティックだねー♪」

「やるじゃん祐也、そういうのはエスコートする男性にとっては大事だし」

 

 

 誰もいないと思っている2人だったが、当然ながらその様子は友奈達がバッチリ目撃しており、いい感じの雰囲気にこれはラブラブ作戦大成功なのでは…という雰囲気になっていた。

 とはいえ盗み見みたいな状況なので、由紀はそこは空気読んでみないであげるのがいいのでは…と突っ込みをしていく。

 

 

「…あんた達そこは空気読んでみないであげるのが普通じゃない?これ盗み見みたいなもんよ」ハァ

 

 

 だがそんな由紀もしっかり2人の様子は見ているようで、言ってることとやってることが矛盾してますよと明日香に弄られたため、軽いゲンコツをお見舞いして無理やり黙らせた。

 

 

「…そーいう由紀もガッツリ見てるじゃないですか、もしかして羨まs…(コンッ)いて」汗

「…うるさい…///」

 

 

 まあでも祐也と羽南が無事にくっついてよかったのも事実というもので、この作戦を立案した友奈は満足げにウンウンと頷きながら、内心羽南に良かったね…と称賛するコメントを投げかけるのであった。

 

 

「うんうん…♪」

ーラブラブ作戦大成功…!いやー我ながら完璧だなー、…まあそれはさておき。良かったね、羽南ちゃん♪ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当たりが暗くなり街灯や月の光以外暗闇に包まれた秋名峠のダウンヒル、日中なら様々な人で賑わっているのだが時間帯もあってか虫の鳴き声以外は静寂な時間が流れる。

 …がその静寂なひとときをかき消すように特徴的なエキゾーストサウンドが聞こえてきたと思ったら、コーナーの奥から勢いよくカーボンボンネットやド派手なウィングが特徴的な赤色の80スープラが飛び出してきた。

 

 

ゴァァァァァ!!

ギャァァァ!!

カランカララン!!

 

 

 そのステアリングを握る羽南は何処となく上機嫌な表情を見せており、500馬力のドッカン仕様という狭い峠では扱いづらいスープラを、多少リアを暴れさせる程度で走らせていく。

 途中まではいい感じに走れていたものの、助手席に座っていた友奈が茶々を入れてことで、あっという間に表情が崩れ恋する乙女の表情になった。

 

 

「…♪」

「…いやー、お昼はお暑かったねー。2人とも」

「ぶっ…!?」

 

 

 友奈の表情から察するにキスをしていたシーンや抱きついていた場面も見れていたのは確か、わざわざ誰もいないことを確認してからしたつもりがどうやら覗き見されていたらしい。

 見られてたか…スープラをペースダウンさせながら恥ずかしそうな雰囲気で呟いた羽南に対し、友奈はそりゃ自分が立案したラブラブ作戦なんだから、最後まで見届けるのは当たり前とドヤ顔で腕を組む。

 

 

「…誰もいないことは確認してたのに、…やっぱ見られてたか…///」

「そりゃ当たり前だよー、私が立案したラブラブ作戦。最後まで見届けるのが常識ってもんさ」ドヤ

 

 

 とはいえ内心は上手くいくかハラハラドキドキだったらしい(今の様子では全然想像できないが)、下手すればバトルの時より緊張したそうで、それを聞いた羽南が今絶賛注目の的である赤城の歌姫が何言ってんだが…と思わず突っ込みをいれようとしたが…

 

 

「…ってそんなこと言ってるけど、実際はハラハラだったんだよ。下手したらバトルの時より緊張したかも」

「…今群馬エリアで有名な歌姫さんが何いってr…」

 

 

 直後スープラのヘッドライトで照らされた地面に光る粒みたいなのが複数映り込んだ途端、先ほどの表情は何処へ…と言わんばかりに友奈がブレーキ!と叫ぶ。

 もちろんいきなりそんなこと言われた羽南は思わずハッとした表情を見せながらも、反射的にアクセルからブレーキに足を踏み変えながらフルブレーキングをかます。

 

 

「…っ!羽南ちゃんブレーキ!!!」

「うおっ…!!?」キキッー!!

 

 

 かなり速度が乗っている状態からのフルブレーキングだったためディスクがレーシングカー並みに真っ赤になりながらも、スープラはその巨体を無理やり止めるようにABSをガンガンに効かせながらなんとか急停車。

 

 とはいえ何もない峠でいきなり急ブレーキと叫ばれた羽南は、どうしたのかとと顔を上げながら視線を友奈のほうに向けかけるが…。

 その道中に飛び込んできた光景を目の当たりした瞬間、驚きのあまり声を失ってしまう。

 

 

「あっぶなー…、ってか友奈どうしたの急に!?いきなり急ブレーキって叫ぶ…か…r…」

 

 

 羽南と友奈が視線を向けている車前方、スープラのヘッドライトに照らされる形で映り込んでいたのは、コーナー入り口付近のガードレールに運転席側から突き刺さるようにクラッシュしたツートンカラーの車が…

 どうやら少し前に散らばっていたガラスの破片、恐らくヘッドライトかガラスが散ったものがたまたまスープラのヘッドライトの光で照らされたことで友奈はこの先にクラッシュした車がいると察したらしい。

 

 そのため反射的にブレーキと叫んだようで、羽南の咄嗟の適応力も相まってなんとか突っ込まずに余裕を持って止まれたらしい。

 

 

「これって…事故?……この感じだと出来立てホヤホヤ…」

「この少し前ぐらいのストレートにガラスの破片が散らばってるのに気づいて、それでこの先で誰か事故してるって思ってブレーキって叫んだの。びっくりさせてごめん」

「あっいや…それはいいんだけど」

 

 

 まあそれはさておき問題はこのクラッシュした車、恐らく何らかのミスで制御不能になってガードレールに突っ込んだのは間違いないが、状態から察するにしたてホヤホヤ。

 発煙筒や三角板がまだ置かれていないところを見るになら怪我をしたドライバーがまだ車内にいるのは確か、なら同じ走り屋として放っておけない。

 

 ちょっと確かめてみる、そう告げながら降りようとした友奈だったが、羽南がちょっと待ってと彼女を制止する。

 

 

「見た感じ事故したてってところか、…けど発煙筒とか三角板がないところ見るにドライバーは車内に…。ちょっと確認しt」

「ちょ…ちょっと待って友奈、あっあれって…」

 

 

 どうやらクラッシュした車を改めて見た瞬間何かに気づいたらしい、震える声で指をさしていく親友に対してどうしたのか…という表情を浮かべながら再度車のほうに視線を向ける。

 一見すればツートンカラーに角張った角から察するにハチロクのようにも思えるか、明らかに柔らかそうな足に特徴的なホイール、ダサいマフラーから察するにこれは恐らくハチゴー。

 

 そしてそのリアガラスには秋名スピードスターズと書かれたステッカーが…、そもそも不人気のハチゴーはハチロクに比べそこまで台数が多くないため乗っている人はかなり限られる。

 おまけに秋名スピードスターズのステッカー、それを目の当たりした友奈の額には冷や汗が流れた。

 

 

「あれって…」

ー…一見すればハチロク…、けど足の高さ…それにあのマフラー…間違いなくアレハチゴー…ってあのステッカー、もしかして秋名スピードスターズのー

 

「…まさか…」

 

 

 秋名スピードスターズというステッカーだけでもかなり絞られるのにハチゴー…自分の考えられる中では1人しかいない、そう思った時には弾かれたように車外に飛び出していた。

 今までにないぐらいの冷や汗に羽南が慌てて車外に出て呼び止めるが、そんなことお構い無しに友奈は指示を出していく。

 

 

「……っ!!」ボムッ

「あっちょ…!友奈!」

「羽南ちゃん!三角板と発煙筒をスープラの後ろに!早く!!」

 

 

 当然羽南もあのハチゴーと秋名スピードスターズのステッカーは見ているはずであり、その持ち主が誰かもわかっているはず。

 慌てて助手席やトランクから発煙筒やら三角板を取り出す親友を横目に友奈はクラッシュしたハチゴーの元へと急いで駆け寄っていくのであった。

 

 

 

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