頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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第四十三話 肝心な時に

 

 

 

翌日

パパーっ

「いらっしゃいませー!!」

 

 

 拓海が樹を事故らせた慎吾に対して怒りを露にしながらガムテープデスマッチを受ける決意をした翌日、GSスタンドはそんな池谷達の都合など知らんと言わんばかりに多くのお客さんが詰め掛けてた。

 樹が怪我で離脱していることや普段よりもお客さんが多いということもあってか、お店には応援できたであろう見慣れない人の姿もあり、そのほとんどはひっきりなしに来るお客さんの給油やら洗車といった対応に追われていた。

 

 

「いらっしゃいませー!こちらへどうぞ!!」

「ハイオクにしますか?レギュラーにしますか?」

「はい!いらっしゃいませー!」

「あのっ!灰皿のほうはよろしいでしょうか?」

 

 

 もちろんその中には池谷の姿もあり、何時ものようにやってきた健二に対して昨晩の樹の事故や拓海がガムテープデスマッチを受けると決意した旨を明かしていく。

 当然ガムテープデスマッチの恐ろしさは知っているため、それは無謀と言わんばかりの口調で否定する。

 

 

「え?拓海がガムテープデスマッチを?って!不味いよそれ絶対不味いよ!」

 

 

 とはいえ気持ちは分からなくもないようで、友達の樹が事故させられたんだから無理もないよ…と池谷は宥めながらも、それでもやっぱ無理があるよなぁ…とバトルには否定的な立場には変わりないらしい。

 そんな当の本人は今日お休みのようで、止めようにも止められず、…直接で向こうにも樹が事故したことで池谷自身もてんてこ舞いな状態でそんな余裕がないだとか…

 

 

「アイツ、イツキがやられてキレちゃったんだ。気持ちは分かるけど、やっぱり無謀だよなぁ…」

「今日土曜日だろ!?拓海は…!!」

「今日は休みを取ってる、イツキは病院だし…もうてんてこ舞いだぜ…」

 

 

 ちなみに拓海と樹の学生コンビは休みではあるものの、友奈は本来休みの日なのに忙しいからだろうということでわざわざシフトを弄って出できてくれたらしい。

 何時も以上に忙しく駆け回りながらも相変わらず笑顔は欠かさない様子を横目に、健二はいくら拓海が上手いからといっていきなりガムテープデスマッチか…となんとも言えない表情を見せながらそう呟く。

 

 

「いらっしゃいませー!!こっち空いたんでどうぞ!レギュラーですかハイオクですか!…ハイオクですね了解です!」

「今日友奈ちゃん休みだったんだが、あの娘が気を利かしてくれてわざわざシフト弄って出て来てくれたんだ。…お陰で助かってる」

「……にしてもいくら拓海が上手いからって、いきなりガムテープデスマッチなんて…」

 

 

 もちろん池谷もいくら拓海だからとはいっても無謀過ぎるものがあると思っているらしく、バイトが終わってから直接説得してみてなんとか辞めさせる方向に持っていくらしい。

 そんなやり取りをしていると次のお客さんがクラクションと共に入ってきたため、健二にも手伝ってくれと頼みながら池谷はその対応に向かう。

 

 

「…俺、仕事終わってから拓海の説得にいってみる。なんとしても辞めさせないとな」

「あぁ…」

パパーっ

「わりぃ、少し手伝ってくれ!」

「うぉ!?」

「いらっしゃいませー!!」

 

 

 その様子を見ていた店長は拓海がことわざを口にしながらその気になるのも無理はないと思いながら、恐らく説得したところで聞く耳を持たないぞ…とそんなことを呟いていく。

 

 

ーあぁ…義理がすたればこの世は闇よ…拓海がその気になるのも無理はない、こりゃ説得したところで聞かないぞ……ー

 

 

 説得が駄目ならいっそのことやらせてみたら…そんなことを一瞬考えた店長だったが、ガムテープデスマッチにFF相手ということを踏まえるとやっぱり無謀かと1人自問自答しながら考え込んでいくのであった。

 

 

ーいっそのことやらせてみたら……いやいや、FF相手じゃやっぱり無謀か…ー

 

 

 

 

 

 

 そんなスタンドのメンバーが忙しい時間を過ごしているのと同時刻、焔モータースの整備待ち及び事故車などを保管する屋外駐車場には、後ろのリアゲートが無残にも凹みフロントもそれなりにダメージ受けた樹のハチゴーが他の車に混じる形で鎮座しており、その車を見つめる形で羽南と由紀が話している姿が……

 

 

「…話には聞いてたけど、まさかここまで派手にやられるとはね……」

「リアゲートはへちゃげてるし…ボンネットの方もダメージいってるっぽい、…どのみちエンジンは駄目だろうなぁ……」

 

 

 ちなみに由紀も昨夜の出来事は羽南から聞いており、親友を事故させて病院送りにした慎吾に対して派手にやってくれたな…と最初は怒りを露にしていたらしい。

 もちろん明日香にもこのことを報告しようとしたのだが、こういうときに限って何処にいるのか分からないどころか連絡も取れず、羽南の問に対して首を軽く振りながらそんなことを口にしていく。

 

 

「…あの野郎、私の親友に何してくれてんのよ…。1発殴りたい気分だわ」

「…ところで由紀ちゃん、明日香ちゃんは…」

「っとその話をしにきたんだった、…生憎連絡はとれずじまいってとこ。こんな肝心な時にどこほっつき歩いてんだか…」ハァ…

 

 

 とはいえそれ以上に不味いのが拓海がガムテープデスマッチを受けてしまったという点、どう考えてもFF有利なうえにクラッシュの危険だってあり得るバトルは誰がどう見ても無謀というもの。

 ひとまずそれだけは避けなければならない…訳だが…、その拓海も今日はバイトを休んでおり止めようにも止められずにいるのだ。

 

 

「まあそれもだけど、それ以上にやばいのが拓海君がガムテープデスマッチを受けちゃったことよ。あんなヤバい奴相手となんて命いくつあっても足りない…何とかして止めたいけど…」

「…その拓海君はバイトを休んでるし…、明日香ちゃん同様に何処にいるのかさっぱりの状況…」

 

 

 だがもたもたしている場合でないのも事実であり、ガムテープデスマッチのバトルは今日の夜、秋名峠で行われてることになっている為、猶予も残されていない状況。

 どうにかこうにかして止められないだろうか…そんなことを思いながら唸っていた2人だっだが、由紀がダメ元で探してみると提案していく。

 

 

「…こうモタモタしている間にもバトルの時間は迫ってる…、というか期限がそもそも今日の土曜日夜10時…」

「…あんまり猶予も残ってないんだよねぇ……」

「私、ダメ元でもう一回探してみる」

 

 

 もしかすればもう一回検討がある場所を探すことで鉢合う可能性もあるし、そうでなくても何処かですれ違うかもしれない。

 それを聞いた羽南も自分も手伝うと提案していき、それを聞いた由紀はなら二手で分かれて探そうと口にしながら車置き場を後にしていく。

 

 

「もしかすれば同じ場所を探して鉢合うかもしれないし、そうでなくても何処かですれ違うかもしれないし」

「なら私も手伝うよ、人は多いほうがいいでしょ?」

「…なら二手に分かれて探すか、そのほうが効率いいし」 「だね」

 

 

 もちろんその後を羽南も続き、敷地内の適当な空きスペースへと向かうとそこに停めていた80スープラとスターレットに各々乗車。

 それぞれ特徴的なエキゾーストサウンドを奏でながら焔モータースを後にしていき、幹線道路に合流すると左右に分かれる形で車を走らせていくのであった。

 

 

キュルル

ブォン!!

ウォンウォン!!

カララララン

 

 

ゴオオオオオ

 

 

 

 

 

 それから少したった夜、赤城山から少し離れた場所に存在するレッドサンズ高橋兄弟の家。親や涼介自体太いことがあってか立派な外観をしているこの一軒家、そのとある自室では何時ものように涼介がパソコンとにらめっこしながら作業をしていた。

 すると扉の奥の方から聞き慣れた籠もったような声が聞こえたと思ったら、ドスドスという駆け足と共に啓介が滑り込むように扉を開けて入ってきた。

 

 

カタカタ

『…アニキ!!』

バァン

「どうした?」

 

 

 どうやらその内容は、秋名のハチロクがナイトキッズの庄司慎吾とガムテープを受けることになったことに関連してのことのようで、既にかなり情報が広がっているらしい。

 だが啓介もガムテープデスマッチはFF有利のバトルであることは分かっていることであり、あまりにも無茶過ぎると拓海に対して切れ散らかしていく。

 

 

「秋名のハチロクがナイトキッズナンバー2のガムテープデスマッチを受ける気になったらしい!」

「…何?」

「しかも相手はEG6だ!アイツ何考えてんだ!ガムテープデスマッチはFR殺しの罠だ!」

 

 

 確かに普通に考えれば啓介の言う通りガムテープデスマッチはFR殺しのFF有利として知られるバトル方式のため、本来であるならば無謀と言わざる終えないはず。

 だがそれはあくまで常識的に考えてというもの、そもそも秋名のハチロク自体常識を大きく逸脱している存在であり、涼介はもしかすればアイツなら攻略できるかもしれない…と踏んでいるようだ。

 

 

「常識的にFF相手に勝てるわけないじゃないか!」

「…常識的ではな」

「へ?」

「だが…乗るのはアイツだ、アイツが乗れば常識など遥か遠くにすっ飛んでいく」

 

 

 それを聞いた啓介はそれなら言ってみるか?と腕を組みながら訪ねていき、涼介も無言ではあるもののいくと言わんばかりの雰囲気を醸し出していくのであった。

 

 

「…どうする、行ってみるか?」

「……」

 

 

 

 

 

 そんなやり取りが交わされていた高橋宅と同時刻、バイトを終えた池谷と付き添いでついてきた健二は拓海の家である藤原豆腐店へと足を運んでいた。 

 もしかすれば家に一旦帰っているかもしれないと踏んでダメ元でバトルの前に寄ってみたらしく、同じくついてきた友奈を引き連れて池谷は建物内へと声をかけながら足を踏み入れる。

 

 

「すみませーん!」

 

 

 お店の中にはいると丁度少し奥の方で見慣れた後ろ姿の中年男性店じまいをしているのが目に入り、池谷の声に気づいた文太は顔を上げながらタバコを口に加えつつもう店じまいだと口にする。

 だが別に豆腐を買いに来た訳じゃない池谷は、そうじゃないと一言口にしつつ拓海は居ないのかと尋ねていく。

 

 

「もう店じまいだぜ、厚揚げもがんもも売り切れだ」

「いえ今日はそうじゃなくて…、あっえっ…拓海君は」

 

 

 しかし文太も拓海は知らないようで、昼過ぎにハチロクに乗って出かけたきっり戻ってきていないらしく、行き先も知らない様子。

 もちろんそうなればお店にハチロクがないということであり、はいる際に駐車場が空っぽだったことに気づいていた友奈はやっぱりか…と少し焦りの表情を浮かべながらそんなことを思う。

 

 

「拓海ィ?さあどこ行ったかなぁ、昼過ぎにハチロクに乗って出かけたままだ。行き先は知らねーよ」

ーいつも店先の駐車場に停めてあるって言ってた場所にハチロクがないからなんとなくは察してたけど…、戻ってきてないのか…ー

 

 

 それを聞いた池谷達はマジか…という表情を見せながら顔を見合わせると、池谷が文太に対してガムテープデスマッチはやったことがあるかと尋ねていく。

 すると文太は一間開けるかたちでやったことがあると明かしていき、それを聞いた池谷がもし拓海がやったらどうなるのかとも質問する。

 

 

「…!あっあのオヤジさん、ガムテープデスマッチってやったことありますか」

「…あぁ、昔な」

「もし拓海君がやったら…」

 

 

 拓海がガムテープデスマッチを?そう呟いた文太であったが、まだまだ下手っぴな拓海がそんなバトルをやったら谷底行きだなと迷いもなくそんなことを呟く。

 当然実力もある文太がそんなことを言うということはかなりヤバいということであり、健二がほかの場所を探してみようぜ!と提案。

 

 

「拓海が?…さーて、アイツはまだ下手っぴだからな。きっと谷底行だな」

「…!いっ池谷…!ほかの場所探してみようぜ…!」

 

 

 もちろん池谷もそのつもりであるため、文太にもし拓海が家に帰ってきたらガムテープデスマッチはやるなととめるように説得してくださいと頼み込み、その後失礼しますと駆け足でお店を後にする。

 当然友奈もその後に続こうとした訳だが、そのタイミングで文太に呼び止められるように、表にシルビアと一緒に止まっているハチロクは君のかと尋ねられた。

 

 

「あぁ…!オヤジさん、もし拓海君が帰ってきたらガムテープデスマッチはやるな…!って停めてください!じゃ失礼します!」タタッ

「あっわっ私もこれで…!」

「…っとお嬢さんはちょい待ってくれ」

「…はい?」

「その表に止まってるパンダカラーでカーボンボンネットのハチロクは、アンタのか?」

 

 

 まあ別に隠すものではないのでそうですと答えた友奈に対して、内心懐かしそうな雰囲気(相変わらず表情は分かりづらいが)を見せながら、もし拓海がガムテープデスマッチをやるならアドバイスをしてほしい依頼しえいく。

 それを聞いた友奈は驚きの表情を露にし、何故自分が…?と尋ねていくと、文太は加えていたタバコを一旦離すと一間空けてこう呟いた。

 

 アンタならきちんと伝えてくれそうだから…と

 

 

「あっえっ…そっそうです…けど…」

「なるほど、…ところでアンタに頼みたいんだが。もし拓海の奴がガムテープデスマッチをやるなら、アンタからアドバイスをほしいんだ」

「…私が…ですか?…それは何故…」

ふう〜

「…アンタなら、きっちり拓海のやつに伝わりそうだからな」

 

 

 だがそれがどういう意味なのかは流石に友奈でも理解出来なかったらしく思わず首を傾げるが、池谷に呼び止められたことでハッとなると、失礼します!と頭を下げながらその場を足早に後にしていく。

 そんな後ろ姿を見つめていた文太は、ふと何処となく懐かしい雰囲気を友奈とハチロクから感じながら、同時にいい腕だ…と走りをみてもいないのにそんなことを呟くのであった。

 

 

「……?あのそれは…」

「友奈ちゃん!モタモタしてないで行くぞ!拓海がバトルに行く前に見つけないと…!」

「あっはい…!!すっすみません、私はこれで…!!」

「……」

 

 

 

 

すう〜

「いい腕をしてるな、…それにあの雰囲気…昔を思い出しちまいそうだ」

 

 

 

 

 

 

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